INTERVIEW
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パートナーとの死別を乗り越えて【前編】

「パートナーとの死別はとてもシビアな経験。より多くの人に伝えたい」という思いからインタビューに応じてくれた松村さん。パートナーとの突然の別れやその後に訪れた辛い現実、また、バブル期のゲイ事情や演劇への情熱など様々なエピソードを赤裸々に語ってくれた。

2019/01/09/Wed
Photo : Taku Katayama Text : Mayuko Sunagawa
松村 恵二 / Keiji Matsumura

1966年、山口県生まれ。関西学院大学法学部を卒業後、株式会社TBSテレビに入社。ドラマやバラエティの制作を経てイベント事業に携わり、現在「IHIステージアラウンド東京」の支配人を務める。自らのセクシュアリティをオープンにしている。

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INDEX
01 演劇が好き
02 演劇に打ち込んだ青春時代
03 性への興味
04 ゲイの世界、現実の世界
05 女性との結婚生活
==================(後編)========================
06 16年連れ添ったパートナー
07 ゲイカップルのシビアな現実
08 戸籍上の家族でないと起こる問題
09 カミングアウト指南
10 過去があるから今がある

01演劇が好き

テレビ業界で演劇の仕事に

バブル真っ只中の1989年、新卒でTBSに入社した。

2年間ドラマ制作に携わった後、12年間バラエティ番組を制作。

その後イベント事業に異動した。イベントの企画・プロデュース、劇場運営などの仕事に携わり、今年で16年目になる。

去年3月に豊洲に新しくできた劇場「IHIステージアラウンド東京」は立ち上げから関わり、劇場の支配人として運営を任されている。

「いろいろ構想はあるんだけど、なかなか企画が成立させられなくて(苦笑)」

演劇に目覚めたのは大学時代。

演劇サークルに所属し、役者や脚本・演出、裏方まで幅広く経験した。

「演劇にどっぷりはまっていたので、大学卒業後も演劇の仕事に就きたいと思っていたんです」

「だから今、演劇に関わる仕事ができているのはありがたいこと」

「上司からも『好きなことを仕事にしていてお前はいいな』と言われます」

ドラマを作りたい

母親は保育士で教育熱心な人だった。

「母は大学に行きたかったけど行けなかったので、子どもには絶対大学に行ってほしかったんだと思います」

「『勉強しなさい』とよく言われました」

両親ともに本が好きだったので、その影響で小さい頃からよく本を読んだ。

「僕を本好きに育ててくれたことは、両親に感謝しています」

「学校では国語が得意。文章を書くのも好きでした。その流れで、テレビドラマや演劇をよく観るようになったんです」

「大学に入った時に、将来テレビ局に入社してドラマを作る仕事ができたらなぁ、って漠然と思っていたんです」

当時就職は売り手市場だったが、テレビ局は狭き門。入社するにはコネがないとダメだと言われていた。

「コネもないのに『テレビ局に入りたい』なんて、とてもじゃないけど周りに言えませんでしたよ(笑)」

それでもドラマを作りたくて、大学ではラジオドラマを作る放送部に入った。

「その頃は、バブル真っ盛りで、テレビ局でバイトしている先輩もいたり、なんだか浮かれて軽い感じだったんですよ」

「山口から出てきたばかりの素朴な田舎少年にはなじめなくて、すぐやめてしまいました」

その後に演劇サークルに入った。

「演劇の技術を理論的に体得しようとする、すごく真面目なサークルでした」

上下関係も厳しく、体育会系の演劇サークルだった。

「走り込みもしたし、発声練習や感情表現など芝居の基本を繰り返しやりました」

「みんな本気で演劇に向き合っていましたね」

サークルのストイックな雰囲気が合わず辞めていく人は多かったが、理屈っぽい自分には、理論的に芝居を作っていくサークルのやり方が性に合っていた。

人間関係の様々な問題はあったが居心地が良かったので、4年間そのサークルで演劇に打ち込んだ。

02演劇に打ち込んだ青春時代

本当は脚本・演出をやりたい

辞めていく人が多かった演劇サークルは慢性的な人手不足だった。

「本当は脚本・演出をやりたかったんですが、そんなことは言っていられない。役者もやるし、裏方もやりました」

役者デビューしたのは、大学2年生の春。
新入生歓迎公演だ。

惨憺たる結果だった。

「まったく上手くできず、先輩に『あなたと一緒に舞台に立ちたくない』とまで言われましたよ(苦笑)」

「次の公演ではもう役者はやりたくなかったんですが、先輩方が出演しなかったので仕方なく自分に役が回ってきたんです」

ところが、2回目の公演はすごく楽しかった。

「あっ、芝居の楽しさってこういうことなのかなと、少しわかった気がしました」

「役者としての何かが掴めそうな感覚があって、気持ち良く芝居ができたんです」

その後も役者として何度も舞台に立つことになる。

大学3年の時には、念願の脚本・演出も担当できたし、舞台監督も経験した。

「脚本・演出を担当した大学3年の秋公演は、学生だけじゃなく一般のお客様も観に来る公演だったんですが、反響がとても良かったんです」

公演終了後に、ご近所に住んでいた一般のお客様から長文の手紙をいただいた。

「『とても感動した。自分が今感じていることとリンクした内容で良かった』と書いてありました」

「あぁ、やって良かったなと心から思いました」

サークル活動以外にも月蝕歌劇団の大阪公演に役者として参加したり、役者をやらないかと、他から声がかかったりするようになった。

しかし、肝心の脚本・演出の依頼はまったくなかった。

「脚本・演出をやれるところがないなら自分で劇団を立ち上げるか、プロデュース公演をするしかありません」

脚本・演出をやるなら、東京に行ったほうがいいだろう。
そんな気持ちもあり、大学卒業後は東京に行こうと決意した。

「まさかその時は、TBSに就職するなんて夢にも思いませんでした」

就職活動

「ある時先輩から『新卒で就職活動できるのは一生に一度。それを使わない手はないよ』と言われました」

「そうだよな。せっかく4年間大学に行って卒業証書をもらえるんだから、使わない手はないなって思ったんです」

とりあえず就職活動してみてどこも受からなかったら、東京で演劇をやればいい。

軽い気持ちで就職活動に臨んだ。

周りの友だちが就職活動をスタートしたのは、大学3年の8月。

自分が就職活動を始めたのは大学4年の5月だったので、かなり出遅れたスタートになった。

「初めは商社とかメーカーとかを受けようかと思ったのですが、募集要項を見てとてもつまらなそうに見えたんです」

「入社してもすぐ辞めてしまいそうだから、面白そうなイベント会社や広告代理店、新聞社などを受けようと思いました」

「在京・在阪のテレビ局、ラジオ局もすべて受けました」

「その中で唯一受かったのがTBSだったんです」

「コネがないと受からないと思っていたテレビ局の就職試験に受かった時には、やったー! という感じでしたね」

大学時代、芝居しかしてこなかった自分が、まさかテレビ局に入社することになるとは思ってもみなかった。

03性への興味

ゲイだと気付いたきっかけ

小学生までは奥手で、性について無知で無関心だった。

中学生にあがると周囲の影響で性についてすごく興味を持つようになった。

「入部した吹奏楽部は男女の仲が良い部活動で、よくみんなで集まっては話をしていました」

話の内容で覚えているのは ほとんどエッチな話。

周囲が話しているのを聞いて、自分は初めて性行為というものを知った。

「初めて知った時は本当に驚いて。1~2時間はショックで固まってました(笑)」

「でも、その後は僕も興味津々で」

「同級生と性の知識を披露しあったり、先輩に隠語の意味を教えてもらったり、グラビアを回し読みしたりしましたね」

「雑誌『明星』の「HOW TO SEX」のページには、ホモ、レズというワードも載っていて、同性を好きになる人がいることも知りました」

「エロ本、エロ雑誌、三島由紀夫文学の性描写などなど、とにかくエッチな物を次から次へと見漁っていきました(笑)」

そのうち、女性単体の裸よりも男女の絡みがある裸のほうが興奮することに気付く。

ある時、隣町の古本屋で偶然ゲイ雑誌を見つけた。

「手に取った瞬間にこれだ! と思いました」

「その時、僕はゲイなんだ!! って、はっきり気付いたんです」

今思えば男女の絡みのある写真は、女性ではなく男性のほうを見ていたのかもしれない。

性的魅力を感じるのは男

初恋は幼稚園の女性の先生だ。
今思えば性的な対象ではなく、憧れだったのだと思う。

性的な対象としての初恋は、中学校の先輩。

すごいカッコイイ男の先輩で、気付いたら目で追っていた。
でも、当時は自分の気持ちを抑圧していた。

好きだという気持ちを伝えることは絶対にしなかった。

「伝えても困らせるだけですから」

「男性と恋愛をするのは、絶対に無理だと思っていました」

「でも、性的な対象は男性であることはハッキリ自覚してました。だから、いつしか男性は肉体的な相手として考えようとするようになって」

高校にあがっても男性を好きになることがあった。

でも、けっして自分の気持ちを相手に伝えることはしなかった。

04ゲイの世界、現実の世界

隠し事のある恋愛

昔から少女漫画の世界に憧れを抱いていた。

「街中で手をつないだりキスをしたり・・・・・・。そんな普通の恋愛に憧れていました」

高校2年の時に女性の先輩と初めて付き合い、それ以降、社会人になるまで女性としか付き合ったことがなかった。

付き合った女性は、いつも本気で好きになった。

「女性との普通の恋愛がすごく楽しかったんです」

でも、今思えば、性的な対象として見てなかったのかもしれない。

「精神的には女性と恋がしたいと思っていましたが、肉体的に惹かれるのはやっぱり男性でした」

「自分以外にも男を好きになる男性がいると知っていたので、そういう人とエッチをすればいいんだと思ってました」

高校2年の時から一夜限りの恋を繰り返した。

「サウナや飲み屋に行って初めて会った男性と一夜を共にしました」

ゲイの世界では、自分は完全にクローゼット。

「本名や出身地、身分などプライべートはいっさい明かしませんでした」

「飲み屋のパーティーで写真を撮る時も絶対に写ろうとしなかったので、周りは困ったと思います」

ゲイの世界と現実の世界は完全に分けて考えていた。

その生活に違和感はなかったし、特段苦しさもなかった。

「ゲイの世界では、一生プライベートは明かさずに生きていこうと思っていました。その時代は、そういうゲイはたくさんいましたよ」

「男性は性欲を満たす相手、女性は恋愛をする相手だと思っていました」

嘘が一つもないゲイ同士の恋愛

TBSに入社してまもなくの24歳の時。

「バブル真っ盛りの時で、同じような業界に勤めていた美女と付き合っていたんですが、なかなか手ごわい相手でした(笑)」

「たくさん貢いだ挙句に自然消滅しました」

「そこから女性と付き合うのが、少し疲れてしまったんです」

そんな時にサウナで2つ年上の男性と出会い、その男性と初めて付き合った。

「初めは一夜限りだなと思ってたんですが、なんとなく付き合うようになりました」

男性との初めての恋愛は、とても幸せなものだった。

「付き合ったその男性にだけは、本名を伝えていました」

「嘘が一つもない恋愛はすごく楽しかったんです」

女性との恋愛と男性との恋愛の違いは、隠し事があるかないかだ。

「女性との恋愛では自分がゲイだと隠して恋愛し、ゲイの世界でもクローゼットになっていましたし・・・・・・」

「付き合った男性との間には隠し事が一切なく、オープンでいられるんです」

05女性との結婚生活

結婚、娘の誕生

世の中には、自分がゲイだと隠している人が大勢いる。

自分が20代だった30年前は、世間体を気にして女性と結婚しているゲイが大勢いた。

「クローゼットの人がほとんどで、女性の恋人を作ったり結婚したりしている人はけっこういました」

自分も結婚して子どもを持つのが当たり前だと思っていた。

高校生の頃から家庭内でトラブルが起き、両親に不信感を抱いてしまったというのもあって、とにかく自分の家族がほしかった。

「20代後半にはすごく結婚したい! 子どもが欲しい! という気持ちが高まりました」

当時付き合っていた彼女と、出会って半年で結婚する。

すぐに子宝にも恵まれ、最初の2年半は幸せな結婚生活を送った。

「娘ができたことは僕の人生においてとても重要なことです」

「子供がいる僕はすごく幸せだなと思います」

離婚

離婚した原因は、セクシュアリティの問題ではない。
価値観がまるで合わなかったことが原因だ。

「元妻とは、清潔感や時間感覚がまったく違いました」

「元妻はちゃんとし過ぎてて、逆に自分はちゃんとしてなさ過ぎていて」

「家に帰っても窮屈な生活であることに耐えられませんでした」

「女性との生活がダメということではなく、とにかく価値観が合わなかったんです」

また、元妻の要望があり結婚している間は会社に掛け合い、仕事をだいぶ減らしてもらった。

仕事が終わると早めに家に帰って、家事や育児を手伝った。

「元妻が友人に『夫は教育していかないとダメよ』って話しているのを聞いて」

「あっ、これ教育されているんだ・・・って思ったら、すごく嫌になりました」

自分なりに家庭が上手く回るように努力もしたが、結局上手くいかず離婚することになった。

離婚する時に、元妻は弁護士に「夫はゲイなのではないか?」と聞いたという。

元妻は感づいていたのだろう。

離婚後、娘とは月一回の面会権があったのだが、小学校に上がる前から一回も会えていない。

もう21歳になっている。
いつかは娘に会いたい。

もし会えたら、離婚した時のことやなぜ長い間会えなかったのかについてきちんと話したいと思っている。


<<<後編 2019/01/11/Fri>>>
INDEX

06 16年連れ添ったパートナー
07 ゲイカップルのシビアな現実
08 戸籍上の家族でないと起こる問題
09 カミングアウト指南
10 過去があるから今がある

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