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レズビアンカップルでも幸せになれる、と伝えたい【後編】

レズビアンカップルでも幸せになれる、と伝えたい【前編】はこちら

2017/12/24/Sun
Photo : Taku Katayama Text : Yuko Suzuki
豊里 和希 / Kazuki Toyozato

1989年、沖縄県生まれ。高校卒業後、警察犬訓練士を目指して上京し専門学校へ。ペット・ショップを経て、現在は飲食系サービス会社に勤務。LGBTが集い、自由に語り合えるカフェの開業を目指して、パートナーとともに勉強&準備をしている。

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INDEX
01 家にも学校にも居場所がない
02 初めてのキスの相手は女の子
03 彼氏ができる
04 沖縄から東京へ
05 初めて女性とつきあう
==================(後編)========================
06 男性はもう、たくさん
07 やっぱり女性が好き
08 親へのカミングアウト
09 やっと出会えた最愛の人
10 幸せの輪を広げていきたい

06男性はもう、たくさん

ドッグトレーナーの道を断念する

専門学校卒業後は、ペットショップに就職。

本当は訓練士になりたかった。

そのために2年間、食費を削ってでも勉強を続けてきたのだから。

「でも、訓練士養成所に入るとお給料が出ない。修業みたいなものです」

進もうと思っていた訓練所は住み込み型で、朝は5時起き帰りは深夜。

自由な時間を持てるはずがなく、そんな生活は自分にはとても無理と訓練士への道をあきらめた。

「何より、自活しないといけないから、お金を稼ぐ必要がありました」

知識と技術をせっかく身に着けたのだから、犬に関わる仕事をしようと、就職先にペットショップを選んだのだった。

「親には『接客業は向いてない』と言われ、自分でもそう思いました」

「でも、お客様に犬や猫をお渡しする時に『こんなふうに接するといいですよ』と、専門的なアドバイスをすることができたんです」

「犬や猫を介してなら、お客様と話をするのは全然苦になりませんでした」

後日、愛犬や愛猫を連れて店に遊びに来てくれる人も少なくなかった。

「そんなことがあると、自分も役に立てたんだな、犬や猫たちも幸せになれて良かったなとうれしくて」

訓練士への道は断念せざるを得なかったが、自分の進むべき道が新たに見つかって、仕事に邁進した。

立て続けに ”ダメ男” につかまる

ひと通り仕事を覚えると時間的に少しゆとりができ、プライベートを楽しめるようになった。

定収入を得られるようになったことで、心のゆとりも生まれた。

「同じ店で働いている男性とつきあうことになったんです」

お互いに動物好きなので、話しが合う。

「女性ともつきあえたけど男性のことも嫌ではなかったから、彼とつきあうことに抵抗はありませんでした」

ところが、ある出来事をきっかけに彼に対する気持ちが冷めてしまった。

「東日本大震災がありましたよね。沖縄ではあれほどの地震に遭ったことはなかったので怖くて、夜も眠れない日が続きました」

しかし、新潟出身の彼は、その数年前に地元で大きな地震を経験したこともあり、揺れには慣れていた。

「だから、怖がっている私の横で平気で寝ているんです」

「この歳になれば何があっても怖くはないですけど(笑)、その時はまだ20歳だったから心細くて」

大丈夫? 怖くない? の一言くらい、声をかけてほしかった。

次につきあったのも、同じ会社の男性。

地方から単身赴任してきた30代の人だった。

「20歳の私からするとすごく大人の男性に見えて、好きになってしまいました。まあ、女性の扱いに慣れていただけなんですけどね」

つきあって1年ほど経ったある日、彼に妻と子どもがいることを知る。

「周囲はみんな知っていて、知らなかったのは私だけだったんです」

「こういうことってドラマの中のこと、と思っていたけど実際にあるんだな、私、こういうのに引っかかるんだなと、自分にびっくりしました」

その次に、アプローチしてきた男性も既婚者。妻の妊娠中だった。

「自分には男運がない、と思いました」

そもそも、妻がありながら他の女性に手を出すなんて、信じられない。

男性はもう、たくさん。

以来、男性にときめいたことはない。

07やっぱり女性が好き

女性がラク

30代の男性との恋愛沙汰が会社の幹部にばれ、異動になった。

新たな店では客からのクレームが続き、心身ともにぐったりする日々。

「なりきり掲示板」で、つい弱音を吐いてしまった。

「すると9歳上の女性が相談に乗ってくれて、それがきっかけでつきあうようになりました」

それほど大変なら転職を考えたほうがいいのではと、就職先を探してくれ、身上書を書く際にも力を貸してくれた。

自分より長く人生を歩んできているぶん、転職のことに限らずアドバイスはいつも的確。

尊敬できる人だった。

「やっぱり、女性とつきあっているほうが気持ちがラクだなあと」

同性だから感性や考え方も似ている。

レズビアンであることを確信する

男性は、自分からすれば未知の生物で何を考えているのかわからない。

「自分はレズビアンなのだと確信しました」

彼女とのつきあいは1年半ほど続いた。

「ある日唐突に、彼女から『親しくなりすぎて、もう恋人としては見られない。家族愛みたいな感じ』と言われたんです」

家族愛=究極の安心感なのかもしれない。

でも、恋愛感情がなくなって、つきあう意味があるのだろうか。

「少なくても私には意味がないので、別れることにしました」

08親へのカミングアウト

「あんた、頭がおかしい」

自分がレズビアンであることを、母親と妹は知っている。

「23歳の時、当時つきあっていた年上の女性を親に紹介したくて、ある日の夜、母親に電話したんです」

母親は「そんなふうに育ててしまって、ごめん」と泣いた。

そして「あんたが本当にその人のことを好きならいい」と言って、電話を切った。

ところが翌朝、母親から電話。

「『あんた、やっぱり頭がおかしい』と言うんです。ほかにも、否定的なことをいっぱい言われて」

「もういい。これ以上、母親を頼るのはやめようと思いました」

自分が生きているのか死んでいるのかわからないように、家族とも親戚とも連絡を断った。

「自分ことを受け入れてもらえないのは寂しかったけど、血がつながっているとはいえ父親も母親も死ぬまで一緒にいるべき存在かといえば、そうじゃない」

「私には私の人生がある。そう思ったんです」

社会の流れが後押ししてくれた

自分は自分の道を歩んでいく。

ただ、だからといって家族からの電話を無視するような、子どもじみたことはもうやめようと思った。

「ある時、つきあっていた年上の女性と沖縄に行こう、という話になったんです」

「どうせなら、やっぱり親に引き合わせたい。母親に電話をして、さりげなく沖縄の天候について聞きました」

母親は許してくれていたのかわからないが、彼女には会ってくれた。

「最近、テレビや新聞にもLGBTのことが取り上げられるようになりましたよね」

「母親もそうした報道に触れて、LGBTへの理解が少し進んだのかもしれません」

ただ、父親にはカミングアウトしていない。

「つれて行った彼女のことも、ただの女友だちだと思っています(笑)」

いずれわかるだろうから、あえて言わなくてもいいかなと思っている。

09やっと出会えた最愛の人

”男性役” を演じ続ける苦しさ

その後、何人かの女性とつきあったが、だんだん苦しくなってきてしまった。

「私は ”男性役” を求められることが多いんです」

「気が強くて甘え下手なので、まあそうなのかなあと思っていたけど、つねに頼られてばかりいるのは、きつい」

自分だって、時には弱音を吐いたり、甘えてみたい時もある。

「男性とつきあったりしたのも、そのせいかもしれません」

だから、あえて服装もフェミニンな感じにしていた。

「ひとりの人間でも、いろいろな面を持っていますよね」

「どの面が出るかは日によって、あるいは一日のうちでも朝と夜とでは違うかもしれない」

「だから単純に『私は女性役、あなたは男性役』ということにはならないと思うんです」

お互いに ”ありのまま” を受け入れられる

相手の丸ごとを受け入れ、相手も自分の丸ごとを受け入れてくれる。

そんな関係を築きたい。

とある日、掲示板でひとりの女性と知り合った。

彼女も男性役に回ることが多く、そのしんどさを分かち合うことができた。
この人だったら。

「つきあってほしいと、告白しました」

「一度、断られたんですけどあきらめずにいて、しばらくやりとりをしてからまた、告白したんです」

焦らず時間をかけ、彼女の気持ちを尊重した。

会話を重ねてきたので、信用してもらえたのかもしれない。

今度は、OKの返事をもらえた。

「初めて会った日、一目惚れしたというか、惚れ直したというか(笑)」

「彼女は金髪で、スリムな体にボーイッシュな格好。中身はもちろんステキだけど、外見もかっこいい! とぞっこんになりました」

だからといって、彼女にボーイッシュな格好を強いたくはない。

逆に、自分も好きな格好をしたい。

今では、彼女は女の子らしい服を好んで着ることが多く、自分は逆にボーイッシュな格好に落ち着いている。

あの母親が、認めてくれた

つきあい始めてしばらくは、半同棲の状態が続いていた。

1年ほど前から一緒に暮らすようになった。

直接のきかっけは、彼女のマンションの契約更新の日が迫ってきたことだ。
「一度、彼女を沖縄につれて行きたいと思っていたので、ついでに父親に契約更新の保証人になってもらおうと、家族に引き合わせたんです」

その時、母親がこう言った。

「長くつきあっているのに、2人それぞれ家賃を払っているなんてもったいない。いつ一緒に暮らすの?」

その言葉を、母親は娘がレズビアンであること、そして彼女とのつきあいを認めてくれたものと受け止めた。

「母は、彼女に会ってその人柄に惹かれたのだと思います」

「つきあいが長く続いていることに、私たちの覚悟を見てくれたのかな」

沖縄の空港に見送りに来てくれた母親が、彼女に言った。

「うちの娘のこと、よろしくお願いしますね」

10幸せの輪を広げていきたい

大切な人が家で待っていてくれている幸せ

パートナーとつきあい始めて3年が経った。

その間、けんかをしたことは一度もない。

お互いに言い争いがきらいなこともあるが、2人の間に争う理由が見つからない。

それが本当のところだ。

「たまに、意見がすれ違うことはありますよ。それで数十分、お互いに無言になってしまったり」

でも、それ以上に長引くことはない。

「これを言われたらイラッとする、というスイッチがどこにあるか、お互いにわかっているというか」

「2人はすごく似ているんだと思います」

仕事でぐったり疲れても、家に帰ればパートナーが温かく迎えてくれる。

それは、この上ない幸せだ。

大切なのは、自分たちが幸せかどうか

パートナーの母親は2人の関係をまだ知らない。

「以前、パートナーがつきあっていた人に対して、お母さんがとった態度を彼女が気にしているんです」

「あなたを傷つけてしまうかもしれない、って」

でも、パートナーもいつかは母親に認めてもらいたいと言っている。

ならば、彼女のタイミングで紹介してもらえればいい。

その時に何を言われても、私は大丈夫。

「2人がつきあっていることに反対されても、それは一つの意見として受け止めます」

「それで別れるつもりはまったくありません」

世の中の人の多くはまだ、「女性同士でくっつくのはおかしい」「結婚しても幸せになれない」と考えているようだ。

「でも私からすれば、『女性が男性と結婚して、必ず幸せになれますか?』と聞きたい」

自分は、言い寄ってきた妻子ありの男性にひどく傷つけられた。

「大切なのは、本人同士が幸せでいられるかどうかだと思うんです」

「パートナーが私とはやっていけないと言うのなら考えますが、それ以外の人に何を言われても私は気にしません」

でも、2人が幸せにまじめに暮らしていたら、パートナーの母親も少しずつわかってくれるかもしれない。

自分の母親がそうであったように。

「どうして許してくれないの! と反発して衝突するより、幸せな姿を見せて安心してもらって、少しずつ理解を得られたら。そう思っているんです」

沖縄で結婚式を

2人には目標がある。

1つは、結婚式を挙げること。

残念ながら、今2人が暮らしている町には同性パートナーシップ制度は導入されていない。

でも、「ずっと一緒にいて、力を合わせて、幸せになろう」という2人の気持ちは揺るがない。

「パートナーとは、ただつきあって楽しいだけの関係ではなくて、家族として寄り添って行きていきたいんです」

「だから、まずは結婚式を挙げて、できれば家族みんなにも祝福してもらえたら」

式は、青い空と海が美しい沖縄で挙げたい。

資料を取り寄せて、会場や衣装を検討中だ。

認めてほしい!と拳を振り上げるよりも

もう1つの夢は、カフェを開くこと。

「ドッグカフェを!とも思うんですが、何より、LGBT当事者が気軽に立ち寄れるようなお店を作りたいんです」

新宿二丁目にはすでにそういう店はたくさんある。

でもそこは、当事者にとってもある意味、特殊な場所であることは否めない。

「どんなに小さな町にだってLGBTの当事者は存在しているはず。でも、その多くは心を割って話せる相手がいない」

「誰に遠慮なく話せる場所がないと、寂しい思いをしているのが現状だと思います」

LGBT当事者が相談をしたり、のろけ話でもシモネタ話でもいい。

何の気兼ねや遠慮もなく、誰もが話したいことを話せる空間を作りたい。

また、ごく自然に楽しく過ごしているパートナーと自分の姿を見てほしい。

「不安や迷いを抱えている当事者、とくにレズビアンの方に『自分もいずれはパートナーに出会い、幸せがつかめるんだ』と思ってもらえたら」

自分たちの店が幸せの発信地になれたら、LGBTに対する偏見も徐々に弱まっていくのではないだろうか。

「どうして理解してくれないのか、わかってほしい、と声を上げることも大切だと思っています」

「その気持ちが強すぎると反発され、闘いも起きるじゃないですか」

「でも、闘っていいことなんて何もない。傷つき、相手のことも傷つけるだけだと思う」

それよりも、身の周りから少しずつ、幸せの輪を広げていきたい。

パートナーと暮らし始めて思うことがある。

「自分1人では不可能だと思われることも、2人でならできる」

カフェ開業も、そう遠くない日に実現しそうな気がしている。

あとがき
陰りそうなエピソードも、静かに穏やかに振り返る。和希さんは、与えられた環境も遭遇した経験も、今の自分をつくっている、と言うかのように翻訳しながら話してくれた。感じられる強さは、きっとそんな思考にあるのだろう■現在のパートナーを話題にするたびに、涙ぐんだ和希さん。涙の質は、LGBTERでは語り尽くせなかった溢れる愛情と、「この人と生きる」というまっすぐな覚悟。お二人の絆はとてもシンプルで確かだ。(編集部)

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