INTERVIEW
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レズビアンカップルでも幸せになれる、と伝えたい【前編】

ボーイッシュで、キリリとした印象の豊里和希さん。「遅刻するのは嫌なんです」と約束の時間の15分も前に来て、待っていてくれた。インタビュー中もつねに、こちらが理解しやすいようにと気遣い、言葉を選びながら話をしてくれる。それでいて、自分自身のことについては言葉に迷うことがない。それは、意思がはっきりしていることの表れだろう。そう、誰もが自分の人生を、胸を張って生きていけばいいんだ。豊里さんの話を聞いているうちに、勇気がわいてきた。

2017/12/22/Fri
Photo : Taku Katayama Text : Yuko Suzuki
豊里 和希 / Kazuki Toyozato

1989年、沖縄県生まれ。高校卒業後、警察犬訓練士を目指して上京し専門学校へ。ペット・ショップを経て、現在は飲食系サービス会社に勤務。LGBTが集い、自由に語り合えるカフェの開業を目指して、パートナーとともに勉強&準備をしている。

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INDEX
01 家にも学校にも居場所がない
02 初めてのキスの相手は女の子
03 彼氏ができる
04 沖縄から東京へ
05 初めて女性とつきあう
==================(後編)========================
06 男性はもう、たくさん
07 やっぱり女性が好き
08 親へのカミングアウト
09 やっと出会えた最愛の人
10 幸せの輪を広げていきたい

01家にも学校にも居場所がない

妹が生まれ、自分の存在が消えた

9歳の時、妹が生まれた。

「両親、親戚・・・・・・みんなの関心がすべて妹に向いて、私のことなんて無視、というかまったく目に入らなくなってしまったみたいで」

母親が妹を産んだ時、自分も同じ病院に入院していて、母親と同じ日に退院することが決まった。

「退院の日は誰か迎えに来てくれるかなと思っていたけど、誰もこないから自分で荷物をまとめました」

「母親の病室に行くと、父親も親戚もみんなそこにいたんです」

「なんだ、みんな、私より赤ちゃんのほうが大事なんだ、とものすごく寂しい気持ちになりました」

最初、妹ができると聞いた時はうれしかった。

「お姉ちゃんとして、お手本にならなくちゃ」と、食事の後の洗い物などを自ら進んで手伝い始めていた。

しかし、いざ妹が生まれると私なんていないも同然。

「だったら家の手伝いなんてやる必要もなかったじゃないかと」

「自分はその時9歳で、もはや赤ちゃん返りをするような幼子ではなかったけど(笑)」

「9年間ずっと一人っ子として育ってきたので、まわりの空気のあまりの変わりように戸惑ったんでしょうね」

「今なら『自分も子どもだったな』と思えるけど、当時は寂しかった。その時の気持ちは、今でも鮮烈に覚えています」

学校では、いじめが始まる

小学2年生くらいからテレビゲームに夢中になり、あまり外で遊ばなくなった。

体を動かさないから徐々に体重が増え、いわゆる ”ぽっちゃり体型” に。

「『太った』とからかわれているうちに、『☓☓菌がうつるから側に寄るな』みたいな感じで、いじめが始まりました」

学校を休みがちになった。

「すると母親が、何かおかしいと気づいて理由を聞いてきました」

「事情を話すと、母親はすぐに学校に行って校長先生と担任の先生に、子どもたちにいじめをやめさせるように訴えたんです」

責任を問われた担任は精神的に参って休職したが、新しく来た先生がクラス会議を開いてくれて、いじめは収まった。

それも、自分の異変に母がいち早く気づいて学校に乗り込んで行ってくれたからこそ。

「私にはもう関心がないんだ」と思い込んでいたけれど、ちゃんと見ていてくれたのだ。

「まあ、母親は単に気が強いだけなんですけどね(笑)」

02初めてのキスの相手は女の子

「女の子って、かわいいな」

ガールスカウトに所属していた。

「キャンプに行くことが多くて、そうなると1つのテントに3、4人が一緒に寝るんですね。当然、全員女の子です」

「・・・・・・女の子ってかわいいな、と思ったんです。『好き』という感情ではなかったような気がしますけど」

ある時、同じガールスカウトに所属していた子を家で預かることに。

母親同士が友だちで、何らかの事情があってそういう話になったらしい。

「その子がうちにいたのは1年くらいだったかな。年齢も近かったから、私のベッドで一緒に寝ていたんです」

「そうしたらある日、自然に、どちらからともなくキスをしていました」

それが、まったく嫌ではなかった。

入塾テストに合格、自信を得る

思い返せばあの時、「自分は女の子が好きだ」ということを自覚したのかもしれない。

キスは、その時のたった一度だけ。

ほどなくして彼女は自分の家に戻って行き、他の女の子に惹かれることもなかった。

「5年生から学習塾に通い始め、勉強以外のことを考えるヒマもなかったんです」

その塾には、年上のいとこが通っていて「勉強、楽しいよ」と聞き、通いたくなった。

ただ、塾に入るにはテストにパスする必要が。

「誰でも入れるようなところだったら嫌だけど、テストがあるなら受けてやろうと思って」

合格。

入塾が許された。

「テストに合格したんだから、自分はちょっと頭がいいのかな? と思うじゃないですか、幼少期だから(笑)」

塾で、親しい友だちもできた。

「勉強がというより、みんなに会えるから塾に行くのが楽しかった」

ほかのこと、たとえば「家に居場所がない」とか、女の子とのキスのこともいつしか考えなくなっていた。

03彼氏ができる

サッカーに夢中になる

小学校の同級生がそのままスライドするような感じで、ほぼみんなが同じ中学へ。

「もういじめられることもなかったけど、正直、中学時代の思い出はほとんどないです」

部活にも入らず、学校が終わると家に直帰。

「帰宅部ですね(笑)」

「同じ団地に小さな子たちがたくさんいて、その子たちの面倒を見ることが多かったです」

「なぜか、ちっちゃい子たちが私を慕ってくれて」

部活に入ったのは、高校に進んでからだ。

サッカーに熱中した。

漫画が好きで『キャプテン翼』の世界に憧れてはいたけれど、とくにサッカーというスポーツに興味があったわけではない。

「ちょうど私が入学した年に女子サッカー部ができて、何となく入ろうかと」

「先輩もいないし後輩もいない。同じ学年の子ばかりという気安さもあって、すごく楽しかったんです」

ところが、”成長痛” だったのだろうか、足を痛めてサッカーができなくなってしまった。

恋の相談に乗るうちに・・・・・・

2年生の時、初めて彼氏ができた。

「最初、彼が私の友だちのことを好きで、その恋の相談に乗っているうちに『好きになった』と告白されたんです」

「彼女とうまくいかなかったから私のところにきた、ということでしょう」
「まあ、よくあるパターンです(笑)」

彼のことが好きだったわけではないが、「好きになってくれたんだから、いいか」と、つきあうことに。

「彼氏ができるって、楽しいのかな、それともつらい思いをするのかなと、男の子とつきあうこと自体に興味がありました」

つきあってみると気が合い、毎日が楽しい。

彼が家に遊びに来ることも多く、そんな二人を見て親は心配をした。

「父親が、『大丈夫か?一線を超えてないか?』って(笑)」

「一線を超える」の意味は知っていた。

「母親が愛読していたレディスコミックを小さい頃から隠れて読んでいたので、どういうことをしたら子どもができるとか、だいたいのことは知っていたんです」

「知っていたからこそ逆に、こわくて何もできない。一線を超えるなんてとんでもない、と思っていました」

そうこうするうち、「別に好きな女の子ができた」と言って、彼は離れていった。

その後は、彼氏をつくることはなかった。

女友だちと遊ぶのが楽しかったのだ。

「私を含めて5人のグループで、誰かの家でゲームをしたり、那覇の国際通りまで出かけて行って、みんなでプリクラを撮りまくったり」

彼氏は必要なかったのだ。

「高校への定期券代を浮かせて、それをプリクラ代に当てていました。青春ですねえ(笑)」

04東京へ

とにかく家から離れよう

高校を卒業したら沖縄を出ようと、前々から考えていた。

「沖縄というより、家から出たかったんです」

小学生の頃に「自分の居場所がない」と思った経験を引きずっていたわけではない。

「父親はとてもやさしくて頼りになる人なのですが、お酒を飲むと人が変わってしまうタイプ」

「アルコールに強いから毎日、飲んで帰ってきて荒れるわけです。その姿を見るのが嫌だったんです」

そんな調子だから、母親との夫婦げんかも絶えなかった。

「大きな声で言い合いが続くので、幼い妹はおびえてしまう。そんな彼女を放っておけないけど、夫婦喧嘩のたびに妹を気遣うのも正直、大変で」

両親のことも妹のことも、嫌いなわけではない。

ただ、両親のいがみあいを見るのはもうたくさん。

「こんな毎日は嫌」と言う代わりに、高校2年の時に「卒業したら勉強するために県外に行く」と宣言した。

「両親は反対しませんでした。『ひとり暮らしするんだから、家事を覚えなさい』と母親に1か月の食費を渡され、私が食事を作るようになりました」

「母親は家事が得意じゃなかったので、ちょうどよかったんでしょう(笑)」

ドッグトレーナーになりたい

ただ、目的もなく「家を出よう」と考えていたわけではない。

「ドッグトレーナーになる」という目標があった。

「ある日、テレビを見ていたら警察犬の特集をしていて、訓練士というものを知ったんです」

「かっこいい、私はこの仕事をしたいと思いました」

訓練士になるためにはどんな資格が必要か、自分で学校を調べ、東京の専門学校へ行くことに。

東京は沖縄からはずいぶん離れているが、親戚がいたこともあって家族で何度も遊びに行っていた場所。

「それに、東京には兄がいたんです」

母親から「会わせたい人がいる」と言われたのは、小学校2、3年生の頃だっただろうか。

その人とは、母親が現在の父親と結婚する前、ほかの男性との間にできた子どもだった。

「自分はずっとひとりっ子だと思っていたので、『この人があなたのお兄ちゃん』と言われてもピンとこなくて・・・・・・」

「すぐには受け入れることができませんでした」

しかし、上京するにあたって部屋を見つけてくれたのは、兄だった。

今は彼に感謝している。

05初めて女性とつきあう

経済的には苦しかったけれど

学費、家賃、光熱費は奨学金でまかなったが、生活費は、当時兄が働いていた宅配ピザ店でアルバイトをして稼いだ。

食事作りを母親から任された経験から、限られたお金の中でやりくりする力はついていた。

それでも、生活はきびしかった。

「1日にヨーグルト1個だけとか、たくわんを1本買ってきてそれをかじって空腹をおさえたり(笑)」

「おかげでかなりダイエットできましたけど、あの生活をまたやれと言われても無理。若かったからできたのだと思います」

どんなにひもじい思いをしても、親に泣きつくことはしなかった。

「子どもの頃から、人の手を借りるのがすごく嫌だったんです」

「母親に似て、気が強いんでしょうかね(笑)」

何より、学校生活が楽しかった。

1年は座学がメインだったが、2年になると学生4人で1頭の犬を育てることに。

4人の意見が揃わないと犬が混乱するので、みんなで意思疎通をはかって協力しあう必要がある。

「そこでもめるグループもありましたけど、幸い、私のグループは最初から全員の意見が一致して」

「充実した毎日でした」

「ああ、この道もアリなのかな」

学校とアルバイトで1日があっという間に終わる。

遊ぶ時間はほとんどない。

息抜きといえば、漫画を読んだりネットをのぞくこと。

そのうち、漫画やアニメ、ゲームなどのキャラクターや実在するバンドメンバーなどになりきってインターネットの掲示板に書き込む「なりきり掲示板」にハマった。

19歳の時、掲示板で知り合った4歳年上の女性とつきあうように。

「最初は、相手の相談に乗っていただけなんですけど、2か月くらいやりとりするうちに『つきあってほしい』と言われて」

掲示板上では性別も年齢も明かさなくていいのだが、相手は自分が女性であることを明かしてくれた。

「その時は、女性だから嫌だとかうれしいとかもなく、好きになってくれたんだからつきあってみようか、という軽い気持ちでOKしたんです」

「メールでやりとりをするうちに、相手の考え方とかもわかっていたから、会うことに不安は感じませんでした」

初めて会ったその日の夜、彼女の部屋に泊まることに。

「特に何をするわけでもなく、普通にご飯を食べておしゃべりをして、眠くなったから寝ただけですけど」

彼女は会社勤めをしていたので、翌朝、自分より先に部屋を出なくてはならない。

「その時に部屋の鍵を渡されたんです。きのう知り合ったばかりの相手に、こんなに簡単に鍵を渡してもいいの? って驚きました」

同じことを何回か繰り返すうち、合鍵を渡された。

彼女の ”完ぺきさ” についていけなかった

自分たちの関係に名前をつけるとしたら「レズビアンカップル」。

それは当然、知っていた。

「でも、つきあいを続けることに迷いはありませんでした。小学生の時から、女の子のことをかわいいと思っていたわけですし」

ただ、「女性とつきあっている」と周りの人に言えるかとなると、そこはまだちょっと不安で、誰も言わないでいた。

彼女は高校時代の女友だちとは全然違って、大人びていた。

「そのあたりの4歳差って、大きいじゃないですか」

「それに彼女は考え方がしっかりしていて、身なりもきちんと整えているし、部屋もきれいにしている」

「憧れの女性像として、完ぺきでした」

ただ、完ぺきがゆえに、ついていくのが苦しい。

初めての女性との恋は、1年と少しでピリオドを打つこととなった。


<<<後編 2017/12/24/Sun>>>
INDEX

06 男性はもう、たくさん
07 やっぱり女性が好き
08 親へのカミングアウト
09 やっと出会えた最愛の人
10 幸せの輪を広げていきたい

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