INTERVIEW
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バイセクシュアルであることを隠すって、大変でしょ(笑)。【前編】

ほのぼのとした雰囲気をまとい、さまざまなエピソードをざっくばらんに話してくれた宮田純さん。あっけらかんとした語り口で、「セクシュアリティに関して悩んだことはないかも」と話す宮田さんは、ろう者(聴覚に障害がある人)の両親や弟に囲まれて育った。五体満足で生まれたが、他の誰とも違うような気持ちで生きてきたという。でも、それこそが自分自身なんだ。

2019/09/15/Sun
Photo : Rina Kawabata Text : Ryosuke Aritake
宮田 純 / Jun Miyata

1978年、宮城県生まれ。自身は健聴者だが、両親と双子の弟は聴覚に障害があり、幼い頃から手話でのコミュニケーションが主だった。20歳の時に上京。さまざまな職に就き、宮城、群馬と転々としながら、24歳の時に現在の男性パートナーと出会う。その“相方” とは養子縁組を行い、同じ戸籍に入っている。

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INDEX
01 コーダにとっての普通と常識
02 不得手な口語コミュニケーション
03 恋する相手と性的な興味の揺れ
04 最愛の人たちとの永遠の別れ
05 受け入れ始める “同性愛への興味”
==================(後編)========================
06 都会とバイセクシュアルの自分
07 偶然が重なった運命的な出会い
08 いざという時に顔が見られる関係
09 いつでも受け止めてくれる家族
10 自分自身を “隠さない” 理由

01コーダにとっての普通と常識

ろう者の家族との生活

宮城県登米郡(現在の登米市)で、生まれ育った。
父、母、3歳上の姉、双子の弟と自分の5人家族。

「父親と母親、弟はろう者で、母の両親や父の兄弟も耳が聞こえないです」

「姉や父方のおじいちゃん、おばあちゃんは聞こえます」

自分と姉はコーダ(ろう者の親を持つ聴者の子どものこと)。

生まれた時から、家族や親戚との主なコミュニケーション手段は手話。

両親と弟との生活で、言葉を発することはなかったため、声での会話はほとんどなかった。

「基本的に手話で通じるんで、困ったことはなかったです」

「親戚にろう者やコーダが多いから、特別なことだとも思ってなかった」

幼稚園ではしゃべらなくても友だちと一緒に遊べたため、不都合も感じない。

声を使った会話

自分が小学生になる頃、父方の祖父母と一緒に暮らすことになる。

「一緒に住んでから、ストレスを感じましたね(苦笑)」

祖父母のコミュニケーション手段は、主に声での会話。
祖母からは、よく「口に出して話しなさい」と言われた。

「おばあちゃんも近所にろう者の友だちがいたんで、手話ができるんですけど、言葉を求められましたね」

小学校に上がれば、当然授業があるため、日本語は少しずつ頭に入っていった。

「言われることはなんとなくわかるけど、言葉が出てこない感じでしたね」

「ただいま」って何?

家の中で階段から落ち、ケガをしてしまったことがある。

その日は、家に両親しかいなかった。

「落ちればドーンってすごい音がするし、ふつうは親が見に来るじゃないですか」

「でも、両親は音が聞こえないから、気づかない。見に来ないんです。それがうちの中では普通のこと」

患部から血を流したまま、親のもとに向かった。

手話で事情を説明し、病院に連れて行ってもらう。

「コーダであるあると思うんですけど、何か起きた時に、まず親に説明してから手話なり口話なりで泣くんです」

「ただ泣きわめいても、親は来てくれないから(苦笑)」

友だちの家に遊びに行った時、誰もいない玄関で「ただいま」と言っていることに驚いた。

「うちの場合、家に帰ったらまず親を探して、肩を叩く感じだったから」

「『ただいま』って何? みたいな(笑)」

02不得手な口語コミュニケーション

片言な日本語

小学生の頃は、同世代の子どもと比べて日本語能力が低かった。
そのためか、徐々に同級生とのコミュニケーションは減っていく。

「『あいつに言ってもわかんないよ』みたいな雰囲気は、なんとなく感じてました」

「頑張って輪に入っていけば能力が伸びたんでしょうけど、まあいいや、って感覚でしたね」

仲のいい友だちが1人、2人いたから、それで十分だった。

中学に進むと、環境は一変する。

「地元の中学には、ハーフや帰国子女の子が多かったんですよ。2つ上に、コーダもいました」

日本語が片言な同級生で集まり、互いに教え合うことができた。

「小学校まで単語レベルだった日本語能力が、グーンと伸びましたね」

「会話のコミュニケーションも、増えていきました」

「その頃の友だちとは、大人になった今でもLINEでつながってます」

日本語ならではの言い回し

「ただ、今でも手話の方がラクだな、って感じます」

「コーダによってさまざまだけど、手話も口語(話し言葉)も同じくらいできる人は少ないと思います」

自分のように手話がラクな人もいれば、声で話す方がラクな人もいる。

「声で話し始めた頃、日本語の遠回しな表現が理解できなくて、大変でした」

例えば、パートナーや友だちに「今度のイベント参加する?」と聞くと、「その日、出かけるから」と返ってくる。

「うちは『行く』『行かない』で答えてほしいんです」

「『出かけるから』だけだと、間に合わないのか帰ってから行くのか、わからないじゃないですか」

手話では、質問に対して、明確に答えることが求められる。

「よく『手話は英語に近い』って、言われるんですよね。ズバッとはっきり言うから」

「手話の感覚で話すと、パートナーや友だちとすれ違っちゃうんですよね(苦笑)」

「どこ行くの?」

幼い頃、スーパーに出かけた時に、親とはぐれたことがある。

親からは「どこに行くか私たちに伝えてから、離れなさい」と、きつく言われた。

「その経験があるから、今も家の中では、相方に『どこ行くの?』『何しに行くの?』って、すぐ聞いちゃいます(笑)」

そのたびに、相方は「部屋にケータイを忘れたから、取ってくる」と、教えてくれる。

「うちもどこに行くか、相方に言いますね」

「でも、耳が聞こえる人って、あんまり聞かないみたいですね」

ろう者の両親に育てられた経験が、今の自分を形作っている。

03恋する相手と性的な興味の揺れ

恋愛対象は女の子

記憶にある初恋は、幼稚園児の頃。

「同級生の女の子と、普通にチューしてました」

「小学校に上がってから、別の同級生に『あの子とキスしてたでしょ』って言われて(笑)」

「小学生になって自我が出てきて、過去の出来事が気になったんでしょうね」

子どもの頃の恋愛対象は、女の子だった。

「その頃は “同性愛” ってものを知らなかったし、興味もなかったですね。男同士って概念がなかった」

中学1年の時、2つ上の男の先輩から、ちょっかいを出された。

「雑誌に載っているエロ漫画を見せられて、服の上から股を触られたんです」

「その時は、いやいや男だし・・・・・・って感じでした」

先輩も男同士のじゃれ合いに過ぎなかったようで、再びちょっかいを出されることはなかった。

男友だちのちょっかい

中学2年になり、同級生の家に遊びに行った時のこと。

「男4人でこたつに入ってたんですけど、その家の子が、こたつの中で触ってきたんですよ」

他の2人にバレないよう、こっそりと股を触られた。

「いやいや、って思ったんだけど、だんだん気持ちよくなってきちゃって(笑)」

夕方になると、他の2人は帰り、家が近かった自分だけが残った。

「2人きりになって、お互いに触り合いましたね(笑)」

「でも、その時はそれで終わりでした」

学校でたまたま2人きりになった時、その男友だちは後ろから抱きついてきた。

「服の上から触られるくらいで、深い関係にはならなかったです」

「でも、その頃から、男の人もありかも? って、思っちゃいましたね」

だからといって、男の子に恋心を抱くことはなかった。

04最愛の人たちとの永遠の別れ

弟の最期の瞬間

中学2年の時、弟がこの世を去る。

「自転車に乗って、一緒に出かけたんです」

「弟が前を走ってて、信号を渡りながら振り返った瞬間に、車がドンって」

自分と弟の誕生日の出来事。

目の前にいたはずの弟が、突然いなくなった。

「事故の原因は、信号無視をした弟にありました」

「でも、すっごく泣いて、すっごく落ち込んで、1カ月くらい学校に行けなくて・・・・・・」

仲のいい友だちが、毎日のように迎えに来てくれた。
それでも部屋から出られず、誰にも会いたくなかった。

「弟とはすごく仲が良かったから、ショックでしたね」

初めての恋人

同じ頃、初めての彼女ができる。

近所のろう学校に通っていた、1つ年上のろう者の女の子。

「弟の学校の先輩で、小さい頃から知ってる人でした」

大きなきっかけがあったわけではなく、自然な流れでつき合うことになった。

「初めての夜は大変でした(苦笑)」

お互いに初体験で、手探り状態。

彼女に言われるままに行い、行為を終えると、彼女から血があふれ出した。

「実は、小学生の時に、同級生のおばあちゃんが事故に遭った現場にも遭遇してるんです」

「そこで血が苦手になってたから、初体験の時も青ざめましたね(苦笑)」

その後、いいムードになって彼女から誘われても、なかなか応えられなかった。

突然1人になる寂しさ

彼女とは、約5年間交際した。

自分は19歳になり、アルバイトに励み、彼女は正社員として働いていた。

ある日、アルバイト先に、自分宛の電話がかかってくる。

「電話口で『事故です。すぐに病院に来てください』って、言われました」

信号待ちをしていた彼女に、車が突っ込んだらしい。

事故が起こった瞬間に、彼女は息を引き取っただろう、とのことだった。

「事故現場を見ていないこともあってか、弟の時よりは冷静でした」

大切な人を2人も事故で失い、またか・・・・・・と、思った。

「1つ言えるのは、2人とも耳が聞こえないから事故に遭ったわけではないこと」

弟が亡くなった時、周囲の人から「あなたの耳が聞こえなかったら、あなたが事故に遭ってたかもしれない」と言われた。

「聞こえるかどうかは関係ないのに、耳が聞こえる人からよく言われましたね」

事故に遭ったのは、決して特別だからではない。

05受け入れ始める “同性愛への興味”

偶然の再会と秘め事

時が経ち、自分も20歳になり、成人式を迎える。

「成人式が終わってから、小学校の同級生と集まることになったんです」

当時は特別仲が良かったわけではないが、飲みに行けば盛り上がった。

かなり酔っ払った記憶がある。

「店が家の近所だったんで、歩いて帰ったんですよ。その道中に、中学時代の男の先輩と偶然会ったんです」

1つ上の先輩と話していると、なんとなくいい雰囲気になっていった。

先輩に誘われるまま、2人でラブホテルへ。

「なんでそうなったか覚えてないんですけど、酔っ払ってた勢いでしょうね(笑)」

「中学生の時に同級生と触り合った経験があったから、ちょっとは気持ちもあったのかな」

「素面だったら、断ってたかもしれないです」

初めて、男性との行為を経験した。

「男の人も気持ちいいじゃん、って思いましたね(笑)」

「その先輩がイケメンだったっていうのも、大きいかもしれないけど(笑)」

裸体が載っている雑誌

書店に行くと、表紙に裸の男性が載っている雑誌を見つけた。

「『薔薇族』だったと思います。いけないものを見てしまったような感覚がありました」

しかし、その雑誌に何が載っているのか、興味が湧いた。

「『薔薇族』を読めば、女の子が好きだけど男の子にも興味がある自分が何者なのか、知れる気がしたんです」

「その頃は『ゲイ』って言葉は知らなくて、『ホモ』って認識してましたね」

書店に通い、手に取るか迷った挙句、3回目でようやくレジに持っていくことができた。

「関係ない本を重ねて、女性の店員のレジに持っていきました」

「男性の店員だと、引かれそうじゃないですか。女性なら、お互いに害がないし(笑)」

購入した雑誌は、中身が見えない袋に入れて渡された。

「例えば、生理用品を買うと、中身が見えない袋で渡されるじゃないですか。この雑誌もそういう部類なんだな、って感じました」

逃げ場所としての “東京”

ラブホテルに行って以来、1つ上の先輩とは、何度か関係を持った。

「2人の関係は、結構続きましたね」

「その流れで、先輩から『つき合ってほしい』って、言われたんです」

自分には、つき合いたい、という気持ちは少しもなかった。
だから、応えることができなかった。

「『やだ』って断って、すぐに東京に行くことを決めたんです」

「もともと上京したい願望があったけど、先輩から逃げたい気持ちがきっかけかも」

告白されてからは、連絡を取らず、関係も持たなかった。

「上京から少し経って、新宿二丁目を通りがかった時、『純』って声をかけられたんです」

声の主は、その時の先輩。

当時は男性っぽい印象だったが、再会した先輩の言葉遣いや振る舞いは女性っぽくなっていた。

「雰囲気がガラッと変わってて、びっくりしちゃいましたね(苦笑)」

 

<<<後編 2019/09/18/Wed>>>
INDEX

06 都会とバイセクシュアルの自分
07 偶然が重なった運命的な出会い
08 いざという時に顔が見られる関係
09 いつでも受け止めてくれる家族
10 自分自身を “隠さない” 理由

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