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「Xジェンダーの枠」なんてない。迷いの末に見つけた本当の自分【後編】

「Xジェンダーの枠」なんてない。迷いの末に見つけた本当の自分【前編】はこちら

2020/01/11/Sat
Photo : Mayumi Suzuki Text : Koharu Dosaka
白川 恵那 / Ena Shirakawa

2001年、愛媛県生まれ。現役高校生のXジェンダーで、チャンネル登録者数1万人以上のYouTuber “ぺさ” として活動する。幼い頃から明るく活発な人気者だったが、中学時代のある出来事を境に、自分の性別について悩むようになり、不登校に。2019年6月、YouTubeの映像制作会社に採用されたことで親元を離れて上京し、一人暮らしをスタート。現在はYouTuberとしての活動、映像制作会社の仕事、通信制高校の授業に奮闘中。

USERS LOVED LOVE IT! 28
INDEX
01 YouTuber “ペさ” になるまで
02 スクールカーストのトップ
03 中2で訪れた人生の転機
04 正体不明のモヤモヤ
05 Xジェンダーという答え
==================(後編)========================
06 本当の自分を知ってほしい
07 全校生徒の前でカミングアウト
08 学校への不信感 再び不登校に
09 YouTuber “ぺさ” としての活動
10 性別からの真の解放

06本当の自分を知ってほしい

親友へのカミングアウト

初めてカミングアウトした相手は、小学校時代から家族ぐるみで付き合いのあった、一番仲の良い友だちだった。

「その頃、TwitterでつながったLGBTの人たちがみんな続々とカミングアウトしてて、背中を押されました」

「自分も早くカミングアウトして楽になりたい、大切な人に知ってほしいなと思って」

面と向かって話すことはできず、親友にはLINEで伝えた。

「まず、Xジェンダーって性別がどんなものなのかと。自分がそのXジェンダーなんだよ、ってことを説明するところから入って」

「自分は何も変わらないし、接し方も変えないでほしい。ただ、自分がXジェンダーであることを知ってほしいって伝えましたね」

親友は、「Xジェンダーだからって、別に恵那が変わるわけじゃないじゃん」と受け止めてくれた。

母への告白

親友に打ち明けて1~2週間後、母にもカミングアウトした。

「いつ、どうやって言うかすごく悩んで、当時付き合った彼女にも伝え方を相談したりして」

「毎日、明日言おう、明日言おうって思い続けてたんですけど、あるとき『いや、今しかないやろ!』って思えたタイミングが来たんです。けど、それが朝のお互い出かける直前で(笑)」

その頃は、再び学校に通いだしていた時期だった。朝の支度を終えたあと、仕事に行く直前の母を呼び止め、カミングアウトする。

「実はずっと自分の性別のことについて悩んでて、Xジェンダーっていう男でも女でもない性別でね、って説明しました」

「母親はものすごく困惑していて。ゆっくり話す時間もなかったんで、とりあえずお互い学校と仕事に行きました」

帰宅後、改めて詳しく話をした。

反対も否定もされなかったが、母は動揺しているように見えた。

Xジェンダーについては知らなくても、たまたま母の周りにゲイやレズビアンの人がいたため、ある程度LGBTの知識はあると知る。

「だから自分も、『どう受け取られるだろう』ってドキドキはあったけど、反対される、否定されるっていう心配はしてませんでした」

「それでもやっぱり、『女の子だと思って育ててた自分の娘が・・・・・・』っていうショックはあったんでしょうね」

母はその後、しばらく悩んでいた。LGBTやXジェンダーについて、自分なりに調べてくれているようだった。

受け入れてくれた家族

カミングアウトから1週間ほど経った頃、再び母から「詳しく聞かせて」と言われ、自分のセクシュアリティや悩みについて説明した。

「母親は受け入れてくれて・・・・・・」

「『学校ではどういうふうに過ごしたいの?』とか、『将来どんなふうにやっていきたいの?』とか、いろんなことを気に掛けてくれました。ありがたかったですね」

父に直接言うことはできず、母が伝えてくれた。

「お父さんに言ったよ、って報告は受けたけど、怖くてどんな反応だったかは聞けなかったんです。いまだに、父親がどう思っているのかわからないですね」

今は両親だけでなく、いとこ家族もセクシュアリティについて理解してくれている。

「自分の周りは寛容な人が多いな、と思いますね」

07全校生徒の前でカミングアウト

制服を変えたい

「中3のときにまた学校に行くようになったんですけど、女子生徒の制服を着るのがすごく嫌で」

「セクシュアリティがはっきりわかり始めたのに、嫌な格好でいるのを我慢したくないなと思いました」

日に日に抵抗感が強くなり、「女子の制服から男子の制服に変更したい」という気持ちを抱くようになる。

「担任の先生はすごく良くしてくれる方だったんで、セクシュアリティのことを打ち明けて、制服を変えたいって言いました」

それでも、学校もまた一つの組織。担任の先生の判断だけで制服を変えることはできない。

学年主任の先生にも伝えたがやはり難しく、結局、校長先生や教頭先生、教育指導の先生にも報告することになった。

親と二人で校長室に呼ばれ、校長先生、教頭先生、教育指導の先生、担任の先生と話をした。

「まず、自分のセクシュアリティについて説明したんですけど、『白川さんはこの学校でどう過ごしたいんですか』『トイレは男女どちらを使いたいんですか』『体育は男女どちらに参加したいんですか』みたいにたくさん聞かれて」

「自分は、制服を変えるだけだから、そんなに難しいことじゃないかなと思ってたんですけど。大ごとになってびっくりしました」

校長先生の言葉に、さらに動揺は大きくなる。

「『いきなり制服を変えると混乱を招くから、他の生徒にもカミングアウトしてください』って言われて」

「制服を変更する事情を、全校生徒の前で説明することになったんです」

真っ赤な原稿

当初は教育指導の先生が話す予定だったが、LGBTのことをよく知らない先生に任せるのは嫌だった。

「それならいっそ自分の口から説明しよう」と覚悟を決めた。

教育指導の先生には、「集会で話すことを事前に紙に書いて提出するように」と言われた。

自分の性別について、世の中にはさまざまな性別の人がいることについて書いたら、戻ってきた原稿は真っ赤に訂正されていた。

「『全校集会はLGBTやXジェンダーについて広めるためのものじゃない。あなたの制服を変更するっていう報告なので、余計なことは省いてください』って言われました」

納得いかなかった。
でも、抵抗はできなかった。

全校生徒は450人。頭が真っ白になるような緊張の中、なんとか原稿を読み上げる。

終わったあとは感情があふれ、仲の良い友だちのところに駆け寄って号泣した。

08学校への不信感 再び不登校に

何の対応もしてくれない学校

全校生徒の前でのカミングアウトの末、制服は変更できたが、学校はLGBTに対して、それ以上の対応はしてくれなかった。

「LGBT支援をしているNPO法人の人が、LGBTに関する講演会を、校長先生に申し出てくれたんですよ。けど、それも断ったらしくて」

「学校に不信感を持ちました」

せっかく制服を変更したが、学校に行く気力はなくなってしまった。
反抗の意も込めて再び不登校になり、卒業式にも出なかった。

「ただ、担任の先生、学年主任の先生はすごく良くしてくれたんです。不登校の期間も、担任の先生が毎日、その日の学校の様子や次の日の時間割を書いたノートを持ってきてくれて」

「卒業式の日も二人が家まで卒業証書を持ってきてくれて、頑張ったねって言ってくれました」

もし学校がLGBTに関する活動をしてくれたら、学校がLGBTの存在を認めてくれたら、また登校できたかもしれないという思いはある。

「友だちは不登校の間も変わらず仲良くしてくれたし、担任の先生や学年主任の先生にはすごくお世話になったけど、学校に対してはいろんな感情があります」

「本当はバレーボールを続けたかったな、とも思いますね」

他の生徒に与えた影響

学校に不信感を持つ一方で、「山場をやっと越えた」という達成感も湧いていた。

「親は、自分が勇気を振り絞って学校側に告げたことを『よくやった』って褒めてくれました。学校に行きなさいって言われることもなかったですね」

嬉しい出来事もあった。

「自分のカミングアウトのあと、学校内でもちらほらカミングアウトする子がいたらしくて」

「Xジェンダーの子も、ゲイの子も、レズビアンの子も、MTFの子もいたみたいです」

高校に入ってYouTube動画の配信を始めてからも、同じ中学校に通っていた後輩から感謝のコメントをもらった。

「『学校は何もしてくれなかったけど、同級生の間では話題になって、自分の性別に気付けた子もいました。カミングアウトしてくれて、ありがたかったです』って言われて」

「勇気振り絞ったかいがあったなって、救われた気持ちになりましたね」

中学卒業後は全日制の高校に進学することも考えたが、自分の性別をどう扱うべきか悩んだ。

性別について説明するのも、制服の変更を求めるところから始めるのも嫌だった。

「どうせ同じ高卒の資格を取れるなら、学校に通う必要がなくて、制服もない通信制の高校でもいいかもな、と思いました」

そんな気持ちから、今の高校への進学を決めた。

09 YouTuber “ぺさ” としての活動

正しい情報を伝えたい

高1の6月から始めた“ぺさ” としてのYouTubeでの動画配信。

有名になってからも、登録者を増やそう、再生回数を伸ばそうという気持ちはあまりなかった。

明るくキャッチーな雰囲気を心がけながらも、観る人を傷つけたくなかった。正しく誠実に情報を伝えたかった。

どうすればそれが叶うかを必死で考え、細心の注意を払って動画を作ってきた。

「例えばゲイいじりみたいに、YouTubeでは人を傷つけるネタをやったり、炎上を狙ったりして再生回数を稼ぐ人もいます」

「でも、自分はそういうことはしたくない。観てくれてる人と誠実に向き合いたいです」

マジョリティの「わからない」もわかる

当事者以外の人にも、LGBTやXジェンダーについて知ってほしいという思いもある。

「LGBT当事者以外の人でも興味を持ちそうな動画をアップして、まずは自分の、“ぺさ” としてのキャラクターを知ってもらって、好きになってもらうことを目指してます」

「『Xジェンダーについて知りたいから、この動画を観る』んじゃなくて、『ぺさが動画を上げてるから見る』って感じになれば、自然とLGBTやXジェンダーについて知ってもらえると思うんですよね」

時には否定的なコメントが来ることもある。でも、「むしろチャンス」だ。

「Xジェンダーって、マジョリティの人にとっては想像しにくいから、よく知らないと『そんなの勘違いじゃん』と思っちゃうのも仕方ないのかなって」

だが、Xジェンダーは実際に存在している。

「今までよく知らなかった人が、自分の動画を観て、『そういう人がいる』ってところまででも知ってくれたら嬉しいですね」

10性別からの真の解放

自立への道

「今年の6月に愛媛を出て、今は東京近郊で一人暮らししてます」

YouTube動画を配信する会社で動画制作スタッフの募集があり、応募したところ、見事採用され上京した。

今は一人暮らしをしながら週に5日働き、合間に勉強している。
時間を見つけて自分の動画を作ったりもする、忙しくも充実した日々を過ごしている。

「会社の人はみんな自分のセクシュアリティを理解してくれてて、すごく働きやすいです」

「個性的な人ばっかりで刺激になるし、トップクリエイターの人と接することもあって、勉強になることが多いですね」

「上京して一人暮らしをしたい」と両親に告げたとき、母は「あなたの好きなことをやって」「せっかくの機会だし、世の中を知って自分の視野を広げるためだから」と応援してくれた。

父からは反対されたが、結局、母が父を説得してくれた。

「父親とは、上京する直前にやっと話ができました。『変な男にも変な女にも騙されるなよ』『自炊しっかりしろよ』『一人暮らしするからには、親に甘えず自立した生活を送りなさい』って言ってくれて」

「こんなに話すのは、めずらしいけど嬉しいな、ありがたいなって思いましたね」

実家を離れ、一人暮らしを始めて、親のありがたさがいっそう身に染みた。

Xジェンダーの枠にとらわれない

Xジェンダーについて知ったばかりの頃は、「男性でも女性でもない」という言葉に安心できた。

得体の知れない自分のモヤモヤに、やっと答えが出たと感じた。

「ただ、今度はLGBTとはなんだ、Xジェンダーとはなんだ、自分はXジェンダーとしてどう生きなきゃいけないんだ、って悩み始めて。Xジェンダーって枠にとらわれてましたね」

「『Xジェンダー』で検索すると、女性の戸籍で生まれた人はみんなボーイッシュな格好してて、メイクもしない人が多くて、中性的で」

「自分もこの枠に当てはまらないとXジェンダーじゃないのかな、Xジェンダーって名乗っちゃいけないのかなって悩みました」

だが、高校に進学し、上京して働き、いろんな人と関わる中で視野が広がる。

いつしか、悩みや迷いは薄れていった。

「そもそも性別にとらわれないのがXジェンダーだから、『あるべき姿』なんてものはないんだ、って気付きました」

「『Xジェンダーはこうあるべき』って枠に、自分からはまる必要はないなって」

「Xジェンダーなのに、メイクが好きなのはおかしいのかな、って悩んだこともあったけど、メイクも自分の見せ方の一環」

「セクシュアリティと好きなものはまったく関係ないし、どんな性別であっても、好きなものは好きでいいと思うんです」

ありのままの自分を見てほしい

たくさん考え、たくさん悩んで、「Xジェンダーも、男も女も所詮は同じ人間。根っこはみんな変わらない」という答えにたどり着いた。

「今でもふわっと『自分はXジェンダーだ』って意識はあるけど、性別の枠に自分を無理やりはめ込むことはもうないですね」

「ありのままの自分でいたい、ありのままの自分を見てほしいと思ってます。実際、本質は昔から何も変わってないんです」

幼少期から変わらず、人と真摯に向き合い、人を大切にしてきた。
今では他人だけでなく、自分自身の気持ちともまっすぐ向き合っている。

今後はYouTubeで発信するだけではなく、もっとマルチに活動したい。

「LGBTやXジェンダーへの理解も広げたいし、Xジェンダー向けのリクルートスーツを作りたいって夢もあって」

性別から解放された先に、真の「自分らしい人生」が広がっていた。
小学生の頃と変わらない。

心の中は夢いっぱいだ。

「やりたいことはたくさんあります。思ってるだけじゃ何もできないんで、とにかく行動に移したいです!」

あとがき
中学生だったぺささんの憧れの人は、明石家さんまさん。取材後のイベントでたまたま再会し、一緒にやき鳥屋さんに向かうエレベーターで、なんと、 さんまさんと出会った。引き寄せ力すごい!■迷いや不安を感じた時に、変化を選んだぺささん。変化は、安定から遠ざけることもある。でも、たとえ今思うように運べないことがあっても、挑戦したことはいつか必ず笑い話にできる。だから大丈夫!! 「誠実に」と何度も加えた気持ちと、たくさんの応援が支えてくれるよ。(編集部)

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