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「レズビアンの自分」を受け入れ、周りに打ち明けたら、心の壁が消えた。【後編】

「レズビアンの自分」を受け入れ、周りに打ち明けたら、心の壁が消えた。【前編】はこちら

2021/03/03/Wed
Photo : Taku Katayama Text : Ryosuke Aritake
荒木 千慧 / Chie Araki

1993年、宮城県生まれ。小学生の頃から、男の子に恋心を抱きつつ、女の子にも興味を覚えていた。工業高校、ダンスの専門学校を卒業後、地元で就職し、22歳の時に自身がレズビアンであることを受け入れる。2019年4月に上京し、さまざまな職業を経て、現在はフリーランスでコーチング、オイルマッサージ、イベント企画などを行っている。

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INDEX
01 個性豊かで大好きな家族
02 変わりたいのに変われない自分
03 好きなものと華奢な精神力
04 自分の将来を考えるタイミング
05 恋愛対象は “多分” 男の子
==================(後編)========================
06 「自分はレズビアン」と受け入れること
07 カミングアウトが取り除いた心の壁
08 こだわらなくていい性別
09 今の自分が東京でできること
10 悩みに悩んだ先にあるヒント

06 「自分はレズビアン」と受け入れること

優先順位の低い彼氏

専門学校卒業後は、さまざまな職場で働いた。

「ある職場の同僚で、お子さんのいる女性がいたんです」

「その人が仲良くしてくれて、『千慧ちゃんはめんこいね』とか言って、甘えさせてくれたんですよね」

「きっと、家で親に甘えられなかった記憶があるから、甘えさせてくれる人を探してたのかもしれません」

ほかの職場でも、同じように年上の女性と仲良くなることが多かった。

「当時は意識してなかったけど、そのお姉さんたちには、恋愛感情に近いものを抱いていたんだと思います」

社会人になってからも、男性とつき合うことはあった。

しかし、彼氏との約束よりも、職場の女友だちとの約束を優先している自分に気づく。

「私の中の優先順位がダンス、仕事、女友だち、趣味、彼氏って順番で、おかしいと思い始めましたね」

してはいけないこと

新たな職場で、仲良くなった子がいた。同世代で、家も近い女の子。

「職場の行き帰りは自分の車に乗せていったり、よく2人で出かけたりしてました」

その姿を見た同僚から、「千慧ちゃんは、あの子のこと好きなんでしょ?」と、言われる。

「そう言われるようになって、ある時から、その子に挨拶しても無視されるようになってしまって。女が女の子を好きになると、関係が終わってしまうんだ、って感じました」

「そもそも女同士の恋愛があるとも思っていなかったから、まさか自分が恋愛感情を抱いているとは、考えてもいなかったんですけどね」

レズビアンである自覚

別の職場でも、同僚の女の子と仲良くなる。

「友だちとして毎日LINEをして、月一くらいでうちに泊まりに来てました」

「その子との約束は、何よりも優先していましたね」

その友だちに、彼氏がいることは知っていた。

ある日、彼氏と入籍したことを報告される。

「その報告がすごくショックで、号泣してしまったんです」

その瞬間、自分はその子が好きだったのだ、と認めざるを得なかった。

「それまでの自分は、女の子を好きになるはずがない、って恋愛感情を気づかないようにしていたんだと思います」

「でも、友だちの入籍がきっかけで、閉じていたフタが開いて、押さえきれなくなってしまったんです」

「改めて振り返ると、友だちから彼氏の話を聞くことも、すごくイヤでしたね」

自分の恋愛対象は女性、と受け入れる時なのだと感じた。

「レズビアンであることを受け入れたら、すごくラクになったんです」

無意識で自分を押し込め、疲弊していたのかもしれない。
男の子に抱いていた感情も、恋愛ではなく憧れだったのだと気づいた。

07カミングアウトが取り除いた心の壁

意外だった周りの反応

自分がレズビアンであることを、1人では抱えきれなかった。
だから、中学時代からの親友に打ち明ける。

「親友から『知ってたよ。昔から女の子が好きでしょ』って、言われたんです」

「カミングアウトした時の周りの反応ってそんなもんか、って拍子抜けしちゃいましたね」

ずっと気づかないようにしていた感情は、自分が思うほど特別なものではなかったのかもしれない。

親友のひと言がきっかけで、ほかの友だちや職場の同僚に対しても、オープンになれた。

「その時の職場は男性が多かったので、ちょっと躊躇したんです」

「でも、いざ話したら、『へぇ、どういう子が好きなの?』みたいに普通にしゃべってくれて、すごくいい人たちでした」

その流れで、仲良しの弟にも話してみる。

「ふ~ん、いいんじゃない」と、特に驚いた様子はなかった。

「“無難な子” でいようとしていた頃は、人に踏み込まれないように、自分で心の壁を築いていたんですよね」

「でも、レズビアンだと受け入れて、カミングアウトしてから、その壁がなくなりました」

「こういうことを言ったら変に思われるだろうな、って考えがなくなったんです」

気楽に、人と接することができるようになった。

両親に気づかせる方法

両親には、まだ直接伝えられていない。

「ただ、薄々感づいているんじゃないかと思います」

初めて彼女ができた時、家に連れてきて、自分の部屋で過ごしていた。

「お父さんが勝手に部屋に入ってきて、彼女に腕枕しているところを見られたんです」

「その時の彼女は女性らしいタイプの子だったから、お父さんは話したかったんだと思います(笑)」

「でも、腕枕してたから、『おぉ、生きてたか』って言って、出ていきましたね(笑)」

急に部屋に入ってきたことに驚きはしたが、いい機会だったと感じている。

「親に直接話す勇気はまだなかったから、レズビアンであることをチラつかせようと思ってたんです」

「だから、腕枕はいいきっかけだったと思うし、お父さんも感づいてくれたかなって」

家族と一緒にいる時に、あえて女友だちの写真を見せて、「スタイルいいよね」と言ったりしている。

女性とつき合うようになってから、長かった髪を切り、今くらいの短さにした。

「髪を切ってから、ある時、お母さんに『胸を取る手術とかはしないでね』って、言われたんです」

「その時は『そういうんじゃないし』って、ひと言で済ませてしまったけど、気づいてくれているみたいですね」

母はトランスジェンダーだと思っているようだが、それ以上追求してこない。

「お母さんもお父さんも、『結婚しろ』と、言わなくなりました」

「察したうえで、否定することはなく、今のままでいさせてくれて感謝ですね」

08こだわらなくていい性別

もしかしてバイセクシュアル?

22歳でレズビアンだと自覚してから、男性とつき合ったことはない。
男性に対して抱いていた感情が、恋愛ではなく憧れだったと気づいたから。

「ただ、男性と体の関係を持つことはありました(笑)。性的な行為は、イヤではなかったんです」

恋愛感情は女性にしか抱かないが、性行為は性別に関係なく受け入れられる。

「自分はバイセクシュアルなのかな、みたいに感じた時もありましたね」

「だからといって、男性とつき合いたいわけではないし、自分自身が謎でした」

不思議に感じたが、生活に支障が出ることではない。

だから、気にしない、という結論に至る。

「今は、自分みたいな人がいてもいいんじゃないかな、って思ってます」

気分で決めるファッション

性自認は女性、性的指向も女性だから、レズビアンという呼称を使っている。

「ただ、自分の中には女性の部分も男性の部分もあるから、 “FTX” のように感じる時もあります」

「性行為の対象が男女両方であるのと同時に、女性に対しても、2つの面があるんです」

「相手が女性らしい人であれば攻めたいし、相手が攻めたい人であればウケになれます」

日常生活の中でも、性別にこだわってはいない。例えば、ファッションは、その日に着たいものを着る。

「今は髪が短いので、ボーイッシュな服装が多いし、ナベシャツを着て胸をつぶすこともあります」

「日によっては、ウィッグをかぶって髪を伸ばし、化粧をして、ワンピースを着ることもありますよ」

男になりたいわけではないが、女性らしさを強調したいわけでもない。

どの服装が落ち着くということもなく、純粋にファッションとして楽しんでいる。

「どちらかの役割に徹しなきゃ、って感覚はないですね」

09今の自分が東京でできること

思いつきの上京

2019年4月、生まれ育った宮城県を離れ、東京に出てきた。

「もともと東京への憧れは全然なかったし、上京を考えたこともありませんでした(笑)」

「当時、同じ仕事をしていた友だちが東京にいて、『こっち来る?』って、言ってくれたのがきっかけです」

その頃、友だちに会うため、月一で東京に出てきていた。

友だちから、「通うより、こっちに住んだ方が安くない?」と、疑問を投げかけられたのだ。

「言われてみればそうだと思ったし、友だちが『うちに来なよ』って言ってくれたので、上京しようかなって」

キャリーケース1つだけで、東京に向かう。

「両親には、上京する前日に『明日から東京だから』って、伝えました」

「それまでも仕事を変えたり辞めたり、自由にしてきたから、両親も『あっそう』くらいの感じでしたね(笑)」

最初の1カ月は友だちの家に住ませてもらい、その後、シェアハウスに引っ越した。

若い世代のための仕事

現在はフリーランスでアロママッサージやコーチング、セクシュアルマイノリティ向けのイベント企画などを行っている。

「勢いで上京したものの、自分が何をしたいのか、よくわかってなかったんですよ」

「その状況にモヤモヤしてた時に、コーチングをされている方に出会ったんです」

コーチングを通じて、自分がしたいこと、自分の生き方をようやく見つけた気がした。

「自分自身がコーチングで救われたから、同じように迷っている人を助けたい、って思ったんです」

すぐにコーチングを学び、若い世代を中心に、生きる道を探す手助けをしている。

「やりたいことが見つからない、一歩が踏み出せない子たちに寄り添って、一緒に見つけてあげたいな、と思っています」

大きな夢を描いているが、こんなに早い段階でフリーランスになるつもりではなかった。

「もともとマッサージ店で働いてたんですが、3月くらいからお客さんが来なくなってしまって、収入がゼロになりました(苦笑)」

「コーチングなどの学びのために投資していて、収入がなくなるのは困るから、自分で動かないとダメだ、って思い立ったんです」

まだ独立して半年も経っていないが、順調に進められている。

経験にあふれた街

「まだ、宮城県には帰りたくないですね」

都会でしかできないであろう経験にあふれているから。

「いろいろなことをしている人に出会えて、いろいろな機会に恵まれて、刺激もたくさん受けてきました」

「それに東京って、周りと違うことをしている人のことも、受け入れてくれるじゃないですか」

「地元だと、そもそも周りと違うことをする人がごく一部だし、情報も少ないし、新たな事業も続けづらいんですよね」

だから、今は東京でさらなる経験を積み、人間的にもやりたいことのスキルの面でも成長したい。

「そして、35歳くらいを目処に宮城に戻って、地元で活動していきたい、と考えています」

10悩みに悩んだ先にあるヒント

紹介したい人

現在、交際している彼女がいる。
格闘技をしていて、体ががっしりとしている女性。

「そろそろ両親にも、自分のことをちゃんと話したいな、と思ってます。だから、彼女を連れて、実家に帰ろうかなって」

両親には、ただ「紹介したい人がいる」とだけ、話している。

「彼女は放射線技師と自衛隊を経験していて、今は格闘技をしているんです。その経歴だけ、伝えてみました」

「だから、両親は “彼氏” を想像してるかもしれません(笑)」

「実家に帰る時は、彼女にあえてボーイッシュな服を着てもらおうかな、って考えてます(笑)」

今、笑って話せているのは、親が察してくれていることを感じられているから。

自分を押し殺すことなく、自然体で生きられているから。

求めなくていい “正解”

かつての自分のように、自身を抑え込んだり、答えの出ない悩みを抱いたりしている人は多いと思う。

「不安や迷いがあるなら、悩むだけ悩んでいいと思います」

「悩むのは、それだけ本気ってことだから、こんなに悩める自分すごいじゃん、って思ってもいいくらいですよ」

悩みを抱えている自分を、かわいそう、とは感じなくていい。
無理に悩みを放棄する必要もない。

「悩み抜いたら、解決する手立てを調べ始めるじゃないですか」

「状況を変える行動に自然とつながって、どこかのタイミングで、ヒントが下りてくるはずなんです」

「そして、辛い時期を乗り越えた自分は、解決のヒントに気づけるようになってると思います」

悩んでいる事柄に対するアンテナが立ち、情報をつかみやすくなっているはずだから。

「何事も白黒はっきりさせたくなるのが、人間だと思うんです」

だから、迷い、悩むのだろう。

「ただ、何を選んでも、正解・不正解はないわけだから、『そのままでいいよ』とも言ってあげたいですね」

誰からも愛されるように、 “無難な人” を演じてきた。

本来の自分をさらけ出した時、周りの人は当たり前のように受け入れてくれた。

自分が思い描いていた世界とは違うのかもしれない、と気づく。
私もあなたも、そのままでいい。

あとがき
千慧さんは「憧れ」という言葉を何度も使った。人生経験をつむほど、具体的な目標や憧れを口にしにくいのは、到達しないときの格好悪さを想像するからか? 不言実行?? 実行するならまだいいか???■「不安や迷いがあるなら、悩むだけ悩んでいいと思います」。悩み抜いて手にした、現在への実感があふれていた。千慧さんに感じる軽やかな行動力は、長く世の中に漂う閉塞感を忘れさせてくれる。止まるよりも足踏みを。足踏よりも前進を。少しでずつも。(編集部)

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