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好奇心に素直に、彼女と胸を張って生きていく【前編】

ファッション誌のスナップに載っていそうな立ち姿も、お茶目なポーズも次々と繰り出していく山本千都さん。そんな明るさの素地となったのは、自由で愛にあふれた家庭環境かもしれない。自分も世の中を変えていく一員にとLGBTERへ応募。好奇心に忠実に、パートナーと胸をはって生きていく。

2022/10/08/Sat
Photo : Yoshihisa Miyazawa Text : Hikari Katano
山本 千都 / Chisato Yamamoto

1992年、大阪府生まれ。いたずらっ子としてのびのびと育った。男性、女性と付き合った経験から、パンセクシュアルだと自認している。2022年4月に人材派遣会社の営業職に転身。約1年前から付き合っている同性パートナーと家族になりたいと考えている。

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INDEX
01 思うままに過ごした幼少期
02 いたずらがやめられない小学生
03 「クソガキ」恋愛カウンセラー
04 人気者の女子バスケ部部長
05 間関係を円滑にするためのお付き合い
==================(後編)========================
06 定まらない進路
07 セクシュアリティは分類しなくてもいい
08 やりたいことを自由にやるのがモットー
09 パンセクシュアルとして声を上げること
10 彼女との関係を、いつかオープンに

01思うままに過ごした幼少期

猫のような末っ子

3人きょうだいの末っ子として生まれる。兄が2人だったこともあり、待望の女の子だった。

「親の女の子出産への期待が大きかったせいか、病院の先生に、ギリギリまで性別を隠されてたそうです(笑)。だから、女の子の名前と男の子の名前、両方が考えられていて」

兄たちとは、それぞれ11歳、6歳の差がある。そのため、小さい頃から自分のことをかわいがってくれた。特に下の兄とは仲が良い。

「2番目のお兄ちゃんは子ども好きで、私の面倒を一番見てくれました」

家族全員からかわいがられるなか、自由にのびのびと育った。母親からは、3人兄弟のなかで一番「暴れていた」と言われている。

「1番目の兄が生まれたときに飼ってた猫がやってたいたずらと同じことを、私が全部したって親から言われました(笑)」

「ふすまを破いたり、破いた穴を広げたり。障子も破って、ティッシュを全部引っ張り出すとか・・・・・・(苦笑)」

家中を引っ掻き回しても、怒られた記憶はない。

「もちろん、お母さんからは、人を傷つけちゃいけない、殴っちゃいけないとは言われていたんですけど、いたずらに対しては笑ってくれました」

やりたいことを自由にさせてくれたことが、今も尽きない興味や好奇心につながっていると思っている。

人見知りも、母親の背中を見て学ぶ

家の中で、プラスチックのバット振り回し、ボールを蹴飛ばし、やんちゃに過ごした。一方で、大の人見知りでもあった。

「小さい頃は、知らない人から話しかけられたら泣いちゃうくらい人見知りで、3、4歳は、お母さんの後ろにずっと隠れてるような子でした」

幼稚園や保育園に通っていなかった分、小さい頃は母親と一緒に過ごした。

毎朝、市場に買い物に行く母親に着いていくと、周りの大人たちがあれこれと話しかけてきた。

「市場のおばちゃんが『どないした?』って話しかけてくるのに対して、にらみつけてました(笑)」

母親は、私を無理に人前に出そうとはしなかった。

それでも、母親の姿を見ているうちに「人と会ったら、まずあいさつをする」と自然と学んだ。

「そのおかげで、普通にあいさつできるようになりました」

美術も好き

小さい頃からさまざまなものに関心を向けてきたが、その中でも興味のあったものの一つが、絵を描くことなど芸術分野。

「物心ついたときには、チラシの裏にずっと絵を描いてました」

「クレヨンやえんぴつが欲しいって言ったら買ってくれたし、そういう方面でもすごく自由にさせてくれて」

絵画だけでなく、民俗史料にも興味があった。家の近くにあった国立民族学博物館には何度も通った。

「国内で一番くらいの収蔵数なんで、見飽きないんですよ。いろんな民族のお面が置いてあったり、調理に使う道具が置いてあったりとか」

あらゆることに興味を持ちながら、思うままに生活を送る。

02いたずらがやめられない小学生

人間関係を母親に報告

小学校に入学して、しばらくは友人ができず、周囲を観察して過ごした。

「周りの子は、みんな幼稚園に行ってたから、そのコミュニティで固まってたんですよ。その中に入ってくのが難しくて、家に帰ってから毎日泣いてました」

「あの子とあの子は仲が良いとか、あの子とあの子は仲が悪いとか全部観察して、どこのグループに入ればうまくやっていけるだろう、ってすごく考えてました」

周囲の人間関係は、信頼している「ボス」でもある母親に逐一報告した。時間が経ってやがて友人ができてからも、母親への報告は続いた。

「当時、友だちと連絡を取りたいときは家の電話にかけてたので、連絡網を出してお母さんの横で電話するんですけど」

「『今日はだれと遊ぶの? この子を誘えばええやん』ってお母さんに言われても、『この子とこの子が仲悪いからダメ!』って全部説明してました(笑)」

先生に怒られても止まらないいたずら

家の中と同様に、学校でも好奇心を止められず、いろんなものに手を伸ばす。

「入学してすぐは周りのものに興味があったので、学校で飼ってるうさぎやにわとりを触りに行ったり、花壇の植物に水をあげたりしてました」

「小3のとき、クラスで飼ってたメダカにえさをいっぱいあげたら喜ぶかなって思って、水面いっぱいにえさをまいたら、水が汚くなるだろうって先生に怒られました(笑)」

先生に怒られないようにいたずらをすることを覚えつつ、いたずらをしながらいろいろなことを学んでいった。

03 「クソガキ」恋愛カウンセラー

男女ともに遊ぶ、ボーイッシュな女の子

トランスジェンダーだとは自認していないが、小さい頃からボーイッシュな格好を好んでいる。

「ボーイッシュなほうが、自分としてはかわいい感じがして好きなんですよね」

「小学校のときから、よく男の子に間違われてましたけど、嫌だと思ったことはあんまりなくて。たしかにね、男の子みたいな格好してるもんなって」

遊び相手も、男女ともにいたが、周りから何か言われることもなかった。

「男女どっちともうまく遊んでたからかなと思います」

得意な人間観察を活かして恋愛カウンセラーに

小学校高学年になると、周りは恋バナをよくするようになった。自分には、恋愛として好きになる相手は現れなかったが、話の輪に加わるようにしていた。

ここで、男女分け隔てなく遊んできた交友関係や、人間関係を観察していたことが活きてくる。

「あいつは、こいつのことが好きなんだなって情報がどんどん入って来て、恋愛全然したことないのに、恋愛カウンセラーみたいになってました。中身はクソガキなのに(笑)」

「男子は、だれを好きとかっていうことに自分ではまだ気付いてないんですけど、それでも “あの子にいたずらしてるから、きっと好きなんだろうな” ってわかるじゃないですか。そういう様子を見て、女の子に『あいつ、いけると思うよ』ってこそっと伝えたりして。めちゃめちゃ取り持ってましたね」

一方、恋バナが自分に振られたときは、テキトーに流していた。

「『だれか気になる人いないの?』って聞かれたら、『私は○○くんが気になってるけど、まだそういう段階じゃないかな~』って答えてました」

「OLの昼休みみたいなことを言ってました(笑)」

もともと、自分の話をするより、人の話を聞くほうが好きだったこともあり、恋バナを聞いて仲を取り持つことが多かった。

04人気者の女子バスケ部部長

バスケットボールとの出会い

中学校に進学し、最初は陸上部に入ろうと考えていた。でも、母親に反対される。

「あんたは個人競技より集団競技のほうがいい、って言われました」

もともと小さい頃から球技が好きで、サッカー、ドッジボール、キックベースに明け暮れていた時期もある。

そこで、母親に勧められた女子バスケ部に仮入部に行くと、見事にハマった。

「仮入部のときに、先輩と1on1をやったたんですよ。初心者なので、できないなりにボールついて行ってたんですけど、自分の一挙手一投足で、相手が揺さぶられるのが面白くて」

「バレーボール部かバスケ部で悩んだけど『あんたは網を挟むより目の前に相手がいたほうがいい』ってお母さんに言われて、バスケ部に入りました」

人間関係の難しさを知った、部長の経験

部活は、練習すればするほどできることが日々増えていくことが面白い。どんどんのめり込んでいった。

「初心者から始めたんですけど、中1から試合に出させてもらってました」

努力する姿勢や、急速に上達した技術を顧問の先生に買ってもらい、先輩がいるにもかかわらず、中2から部長に任命された。

ほどなくして、人間関係で壁にぶつかる。

「部員が二分して、対立することもあって」

「周りを見て動くことは得意だったんですけど、集団をまとめることがこんなに難しいんだっていうことを、そこで初めて知りました」

上手くいかない日々に苛立ち、自ら部長を降りたこともあった。

「私一人対みんなで対立関係になったときに『何やねん、この環境』って思って」

「私、部長辞めるから、一週間みんなで部長を回してください。私は平部員になって部長の言うことを聞きます、って宣言したことがありました」

「一週間後、みんなが私に謝ってきて。そこから、みんなちゃんと練習するようになりました」

そこまで振り切った行動ができたのは、バスケの技術に自信があったから。

「私が部長を辞めたら、困るのはみんなだよって当時は思ってました(笑)」

勉強も美術もバスケも

中2から部長を任されるほどの腕前。目立っていたこともあり、中学校では男女問わず人気者になった。

「部活の練習中には、だれかがいつも練習を見に来てました」

「隣で練習してる男子バスケ部も『山本、やるやん』って言ってくれたりとか」

「体育の授業中にも、女の子たちからかっこいいってキャーキャー言われました(笑)」

周りから注目され、褒められることは嬉しかった。でも、まだこのときは他人に関心を強く寄せていなかった。

「人が好きっていう感覚があんまりなくて。かっこいいって言われて嬉しいし、ありがとうとは思ってましたけど・・・・・・」

男女問わず周りの人気を集めていると実感しても、そこから一歩、人に深く興味を持つことはなかった。

05人間関係を円滑にするためのお付き合い

とりあえず受けた告白

中学では、人気者ゆえ、男子から告白されたこともあった。

「他人には興味なかったんですけど、人間関係を円滑にするために、告白されたら付き合ったほうがいいかなと思って、付き合ってみました」

ひとまず付き合い始めるも、恋人として過ごすことにどこか冷めている自分がいた。

恋人らしいことをして喜んでいるフリはしていても、俯瞰で見ている自分が「それ、ほんまに楽しいんか?」と問いかけるほど。

「一緒に帰ったりとか、どこか出かけたりとかしたんですけど、まあ普通というか・・・・・・正直、何とも思ってなかったですね(笑)」

「手をつなぐときとか、相手はすごい緊張してるんだろうなとか思うと、ちょっと面白かったですけど」

恋人として接することそのものに嫌悪感を抱くことはなかったが、心から楽しんでいる実感は得られなかった。

お前とは友だちがいい

最初に付き合ったのは、小学校からの幼なじみ。

「1人目は、めちゃめちゃ仲良い友だちだったんです。その子に対しては『嫌いじゃないんだけど、お前とは友だちがいい』って自分からちゃんと伝えて、お付き合いを終わらせました」

人間的にとても好きだったからこそ、友人として関係を続けたいと思った。

「付き合って別れちゃったら、そのあとに関係が切れちゃうことってあるじゃないですか。それがすごい嫌だったんですよね」

1人目の彼氏だった男子とは、大人になった今でも電話で相談し合うなど、友人としての関係が続いている。

2人目とは、付き合い続けることに疑問が湧いて別れるに至った。

「その男子が、私との関係について、別の女の子にしょっちゅう相談してたんですよね。2人でいつもしゃべってるから、それならそっちと付き合えば? って思って」

「別れようって言ったら、相手からは『えーっ?』って言われたんですけど、いや、別の子とあんなに仲良くしてるのにそんなこと言われても、って(笑)」

その男子とは、別れてから口をきくことはなかった。

「好き」がちがう

小中学生のときには、周りの恋バナや男女間の「好き」が、自分の知っている「好き」と違うことは理解していた。

でも、それに思い悩むことはなかった。

「私が言う、人に対する好きは『コーヒーが好き』ってのと一緒だったんですよね」

「みんなの言う『好き』ってなんだろうとか、付き合うってなんだろうとか、考えることもありましたけど、悩んではなかったですね」

この頃は、セクシュアリティやLGBTにアンテナを張ることもなかった。

中学では、計3人の男子と付き合ったが、結局どの相手とも自分の感情が湧き立つことなく別れた。

 

<<<後編 2022/10/15/Sat>>>

INDEX
06 定まらない進路
07 セクシュアリティは分類しなくてもいい
08 やりたいことを自由にやるのがモットー
09 パンセクシュアルとして声を上げること
10 彼女との関係を、いつかオープンに

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