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Xジェンダーという言葉や存在を知ってもらいたい。知ってもらうことで社会が変わるきっかけになればいい。【後編】

Xジェンダーという言葉や存在を知ってもらいたい。知ってもらうことで社会が変わるきっかけになればいい。【前編】はこちら

2018/09/19/Wed
Photo : Taku Katayama Text : Mayuko Sunagawa
鈴木 彩音 / Ayane Suzuki

1995年、神奈川県生まれ。母親の影響で幼少期からジャニーズの熱烈なファン。神奈川大学人間科学科心理コースに在学中で、臨床心理士の資格を取得すべく博士課程への進学を目指す。昨年、「Xジェンダー」というワードを知って自認に至り、LGBTのNPO活動に参加している。

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INDEX
01 勉強とジャニーズが好き
02 家族関係と自分の性格
03 女と認識されることへの嫌悪
04 人生が好転したターニングポイント
05 女性が好きな自分は何者?
==================(後編)========================
06 心理学の知識を活かした仕事を
07 Xジェンダーの答えにたどり着く
08 大切な人にだけわかってもらえればいい
09 Xジェンダーのこと、自分のことを知ってほしい
10 セクシュアリティの問題に捉われすぎないで

06心理学の知識を活かした仕事を

心理学の道に進む

小さい頃からテレビが大好きだった。

だから、将来の夢はテレビ制作に関わる仕事に就きたいと思っていた。

大学進学はテレビ局や制作会社への就職が有利になるように、メディア系の学部を志望した。

そして、滑り止めとして、興味本位で心理学が学べる学部も受験した。

結果、メディア系の学部は不合格。

人間科学科心理コースに入学した。

心理学を選んだのは「単純に面白そう」というのが一番の理由。

自分のことをもっと知りたいという気持ちもどこかにあったのかもしれない。

現在、大学4年生。

心理学を学んだことで、自分を客観的に捉えることができるようになったと思う。

「ストレスには打たれ弱いんですが、その中で自分がストレスとどう向き合っていったらいいのか、ストレスとの向き合い方を知ることができました」

臨床心理士を目指して

現在、卒業研究に取り組んでいる真っ最中。

今後は大学院に進んで、臨床心理士の資格を取得したいと考えている。

「臨床心理士の資格が取れたら、ジェンダークリニックやセクシュアルマイノリティの団体に勤めることを考えています」

「セクシュアルマイノリティの人たちをサポートする仕事ができたらいいなと」

セクシュアリティについて悩む人の気持ちが、少しはわかるのではないかと思っている。

ただ、テレビの世界で仕事をする夢もまだあきらめていない。

「将来、ドラマの監修とかどんな形でもいいので、テレビに関わる仕事をすることができたらいいですね」

「テレビの世界に少しでも関われたら、これ以上幸せなことはありません」

07 Xジェンダーの答えにたどり着く

セクシュアリティの所属はどこ?

自分のことは女だとは思っていないし、男だとも思っていない。

「女子好きは前からそうだし、でも男じゃないなら何なの? って、思っていました」

自分は何者なのか。

セクシュアリティの所属はどこなのか。

レズビアンか? バイセクシュアルか?

レズビアンもバイセクシュアルも性指向の話なので、自分のそれとはちょっと違う。

なんだかしっくりこない。

「自分にはセクシュアリティの所属がどこにもないのかなって、考えてました」

「でも、自分はセクシュアリティの問題について、あまり思い悩むことはしませんでした」

恋愛こそすれば女の子を好きになり、セクシュアリティの問題にぶち当たることもあった。

しかし、そうでなければ、自分の人生において、セクシュアリティの問題は大きなウェイトを占めない。

セクシュアリティに捉われ過ぎずにいられたのは、性別にこだわりなく接してくれる友だちの存在が大きかったかもしれない。

「友だちは自分のことを女だと認識していると思うけど、女性らしさや女性としての振舞いを押し付けてこないですし」

自分のことを一人の人間として見てくれている。

それがうれしい。

「友だちに、明日から男になるからと言っても、『そうなんだ』とすんなり受け入れてくれるんじゃないかと思います」

性別にこだわりがなく接してくれている友だちがいるから、自分は自分らしく振舞っていられるのだと思う。

Xジェンダーという答え

レズビアンやバイセクシュアルなどの説明を見ても、今までは「これじゃない」という感覚があり、腑に落ちなかった。

昨年、大学の勉強の過程で、Xジェンダーという言葉と存在について初めて知る。

Xジェンダーの説明を読んで、すごく合点がいった。

「自分が長年思っていたことが、“Xジェンダー” の定義そのものでした」

一番しっくりくる自分の説明をしてもらえた感じがして、すごくうれしかった。

「あー、やっとたどり着いた」とほっとした気持ちにもなった。

自分の性自認は男でも女でもない。

「一人の人として見てほしいと思っています」

「1人の人として接してもらえたらうれしいですね」

08自分の大切な人にだけわかってもらえればいい

母親へのカミングアウト

1ヶ月前、母にカミングアウトした。

何か特別なきっかけがあったわけではなく、ふと「言おうかな」と思い立った。

言おうと思ったタイミングじゃないと、このまま一生言わないかもしれないと。

母を呼び出してお酒を飲みながら話をした。

しらふではとても話せなかった。

自分のセクシュアリティについて、現在のLGBTの講演活動のこと、臨床心理士を目指していることなど、自分の大事な話をたくさんした。

母の反応は拍子抜けするくらい普通だった。

「たぶん少しは驚いていたはずなんですけれど、『そっかそっか』って」

「テレビでXジェンダーのことを知っていたみたいで、自分が言う前に『Xジェンダー?』って」

「Xジェンダーのことは、すでに知っていたようです」

「母に何か聞きたいことはあるか聞いたら、『ない。要望はあるの?』って聞かれました」

「要望はないけど、成人式の振り袖写真は撮りたくないって伝えました(笑)」

それから、男の人と付き合ったことはあるけれど、今後は付き合うつもりはないし、結婚はしないとも伝えた。

母にカミングアウトする前から、否定はされないだろうと思っていた。

逆に、自分から大事な話をするのは初めてだったから、どんな内容でも母は喜んでくれるだろうと思っていた。

実際、カミングアウトをして、自分のことをたくさん話したことで、母は喜んでくれたように思う。

母が喜んでくれたのなら、カミングアウトをして良かったと思っている。

ありのままの自分を受け入れてくれた

みんなにわかってほしい。

誰にでも打ち明けたい。

そう思っているわけではない。

自分にとって大切な人、自分が仲が良いと思っている人にだけわかってもらえたらそれでいい。

昨年、自分がXジェンダーだとわかってから、周りの友だちにも「自分は男でも女でもないんだ」とカミングアウトしていった。

カミングアウトはやっぱり怖い。

インターネット上の友だちは、プロフィールに女性が好きなことを書いており、最初からある程度知っているからハードルは低い。

しかし、リアルの友だちは何も知らないところからなので、ハードルが高くなる。

カミングアウトは伝えても大丈夫だと思える人にしか言っていない。

自分が信頼できる相手にカミングアウトしているので、たいてい反応は「そうなんだ」というあっさりしたものだ。

これまで嫌な思いをしたことは一度もない。

カミングアウトしたからといって、自分と友だちとの関係性は揺るがない。

みんな自分のことを1人の人間として見てくれている。

09 Xジェンダーのこと、自分のことを知ってほしい

LGBTの講演活動

昨年夏にNPOシップに参加し、今年5月にNPOリビットの活動に参加し始めた。

参加した理由は、LGBT当事者とのつながりがほしかったからだ。

大学の卒論の研究テーマは「セクシュアルマイノリティのアイデンティティの確立について」。

研究に協力してくれる当事者を探していた。

「活動に参加したのは、何か高い志があったわけではなくて」

「講演会で自分のことを話してみようかな、というくらいの軽い気持ちで始めました」

現在、講演会で自分の生い立ちや経験を話している。

聴講者はバラエティに富んでいて、小学生から大学生まで。

市の職員や学校の先生もいる。

「講演会で自分のことを話すのは楽しいです」

自分のことを話したいという欲がずっとあった。

今はそれができているので満足している。

「自分の経験を誰かに伝えて役に立ちたいという気持ちよりも、正直、自分が発信したいという気持ちのほうが大きいです」

「それが活動の本来の形として、正しいかどうかはわからないですが」

「今時点では、自分が楽しいからやっている。それでまあいいかと思っています」

人のためじゃなくて、自分のためにやっている部分が大きい。

でも、自分の講演を聞いた誰かの役に立つことができたらうれしい。

まずは知ってもらうことから

Xジェンダーという言葉やその存在は、まだまだ世間に知られていない。

「まずはXジェンダーの存在を知ってほしいんです」

「知ってもらうことからしか、何も動いていかないと思うから」

「LGBTもかつては言葉を知ってもらうことからでしたから、Xジェンダーもまずは言葉や存在を知ってもらうところからだと思うんです」

とはいえ、自分が積極的に活動して認知を促したい、社会を動かしたいという気持ちがあるわけではない。

それは、やりたいと思う他の誰かに任せたい。

でも、せっかく発信できる立場にあるのだから、それを活かしていきたい
とも思っている。

講演会の場で発信して、1人でも多くの人にXジェンダーの存在を知ってもらえたらうれしい。

そして、それが社会を動かす力のひとつになっていってくれたらいい。

そんな個々の活動が大きな力になって、理想を言えば、性別に捉われない社会になっていってくれたらうれしい。

そして、いつかは同性婚を認めてもらいたい。

そのために今自分ができることを、できる範囲でやっていきたいと思っている。

10セクシュアリティの問題に捉われすぎないで

どこかに自分を受け入れてくれる人は必ずいる

本当の自分を誰にも話せず悩んでいる人、カミングアウトができなくて悩んでいる人には「無理に話をする必要はないよ」と伝えたい。

言いたいと思っても言えない時もあるだろう。

「今は苦しいかもしれないけれど、どこかに自分を受け入れてくれる人は必ずいるはず」

「自分からカミングアウトしたいと思える人、自分のことをわかってくれると思える人にきっと出会えるはずです」

また、リアルなつながりだけでなく、ネットのつながりにも目を向けてみるといい。

「リアルなつながりでは上手くいかなくても、ネット上で同じ境遇の人とつながることができれば、苦しさは少しまぎれていくんじゃないかと思うんです」

自分もカミングアウトをした時は怖かった。

でも、実際の反応は好意的なものばかりだった。

「受け入れてもらえないんじゃないかと思っていても、案外人は寛大に受け入れてくれるものです」

「『この人なら言っても大丈夫かも』という人が現れたら、少し探りを入れてみて、それで大丈夫そうならカミングアウトしてみてもいいんじゃないでしょうか」

自分のことを信じてあげてほしい

「自分にとってセクシュアリティの問題は、自分の中のごく一部のこと。
それが、すべてじゃありません」

「自分はそう思えているから良いけれど、そういう人ばかりではないかもしれませんよね」

セクシュアリティの問題にどっぷりつかってしまうと、すごくつらくなってしまう。

それに時間をかけてしまうと思い詰めて、自分がおかしいんじゃないかとふさぎこんでしまうこともあるだろう。

かつて自分もそう思い悩んでしまうこともあった。

そんな時は、顔を上げて前を向いて、誰がどう思おうが、自分はおかしくないと思うことが大事だ。

「自分だけは、自分を信じてあげなきゃいけない」

「周りがどうこうじゃなくて、自分のことを信じてあげてほしい」

幸いにも自分には、自分のことを否定しない友だちがいてくれた。

取り組んでいる活動を「すごいね」と言ってくれる友だちがいてくれた。

だから、自分を信じてやってこれたのだと思う。

「一人でも自分を見てくれる人がいれば生きていける」

誰かが自分を認めてくれるはずだ。

「今は周りに誰もいなかったとしても、自分を信じてくれる誰かが見つかるまでは、自分だけは自分をあきらめずに認めてあげてほしいです」

今いる環境がすべてではない。

中学・高校まではまだまだせまい世界。

「だけど、大学に行ったり社会に出たりすれば、世界は広がっていきます。その時まで待っていれば、意外と今悩んでいる問題が落ち着くかもしれません」

「だから今だけに捉われて、悩みすぎないでほしい」

世界が広がるのを少し待ってみてほしい。

きっと今の自分を認められる世界に変わっていくはずだから。

あとがき
未来へ向けるネガティブな想像は、暴走する。けれど「今いる環境がすべてではない」と、彩音さんは言う。本当にそう思う。今の “感じ” は、今の心だから感じること。同じ場面でも、来年は違う心持ちで見つめるかもしれない■大人になると体裁のいい言葉を選ぶ場面が多くなるけど、心のうちにあることがダメとかイイとか、評価なくまずは知りたい。自分を知りたい■奇跡はなくても「こんな人生を楽しみたい」には出会えるかもしれない、彩音さんみたいに。(編集部)

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