INTERVIEW
等身大の「私」を、まだ出会っていない人たちへ届けませんか?
サイト登場者(エルジービーター)募集

“普通” に暮らすことが、性の多様性を知ってもらう一番の近道【前編】

幼少期からお笑いに興味をもち続け、人前でパフォーマンスしてきた東濵正純さん。大学4年生の現在は、テレビ番組制作会社という業界で就職活動の真っ最中。お笑い・テレビ好きが高じてプロデューサーを目指すようになるまでの半生を語ってもらった。

2025/09/07/Sun
Photo : Tomoki Suzuki Text : Hikari Katano
東濵 正純 / Masazumi Arihama

2004年、沖縄県生まれ。石垣島、宮古島で小中学生時代を過ごす。高校から沖縄本島で寮生活を始めるとともに、髪を伸ばすなど、中性的なスタイルを楽しむようになる。大学進学を機に群馬県で一人暮らしをはじめ、19歳を迎えたタイミングで、SNSでMTXだとカミングアウトした。

USERS LOVED LOVE IT! 17
INDEX
01 アメの父、ムチの母
02 小さいころからテレビっ子
03 仲良しな小学生コミュニティ
04 「笑われる」のは悔しい
05 もしかしたら好きかも?
==================(後編)========================
06 高校デビュー?
07 忙しすぎて不調に
08 子どもたちからもらったエネルギー
09 「LGBTの人と、そうでない人」で分けたくない
10 目指すは敏腕プロデューサー!

01アメの父、ムチの母

石垣島と沖縄本島

沖縄県・石垣島で、一人息子として生まれる。

「石垣島は、沖縄本島よりもかなり南に位置してます。この間、石垣島にあったマクドナルドが閉店しちゃったんですけど、そうしたら最寄りのマックが沖縄本島じゃなくて台湾になったって気づきました(笑)」

「何もないところかもしれないけど、やっぱり地元だから、ぼくにとっては安心できる場所ですね」

同じ「沖縄」でも、それぞれの島で文化が大きく異なるのが、沖縄の特徴のひとつだ。

たとえば、標準語で「いらっしゃい」に当たる方言は、沖縄本島では「はいさい」だが、石垣島では「おーりとーり」と言う。

「もっと言えば、同じ島のなかでも、集落が違えば言葉も変わってくるんです。いまは、昔に比べれば、そこまでの違いはなくなりつつありますけどね」

しつけに厳しい母

石垣島出身の母は、沖縄で小学校の先生を務めている。

「アメとムチで言えば、母はムチのほうです(苦笑)。家のなかでも、ぼくに厳しいですね」

特に小さいころは、欲しいものを母がなかなか買ってくれなかった、という記憶がある。

「小学生のとき、周りの友だちはみんなスマホや携帯ゲーム機を大体もってたんですけど、ぼくはなかなか買ってもらえなくて・・・・・・」

「早く寝なさい! って、寝る時間にも厳しかったですね」

一方、宮古島出身で、何度か職を変えている父は「アメ」タイプ。

「父は、正純の人生なんだから好きなようにやりなさい、って言ってくれました」

きびきびした母と、おおらかな父の性格。2人が合わさることでちょうどバランスがとれているんだろうな、と感じている。

02小さいころからテレビっ子

テレビが大好き!

現在、就職活動でテレビ業界を志望している理由は、幼少期からテレビが好きだったから。

「小さいころは、Eテレをよく見てました。母は厳しいところもありましたけど、テレビを見ることについては、特になにも言われなかったですね」

テレビがきっかけでお笑いも好きになった。

「いまはミーハーかもしれないですけど、令和ロマンさんはやっぱりワードセンスが抜群だなって思います。ラランドさんや、さらば青春の光さんもよく見てますね」

芸人がもつ独自のキャラクターに、よく練られたネタの面白さがかけ合わさって、面白さが倍増する。だから、芸人本人もネタも、両方とも大好きだ。

沖縄はお笑いに厳しい!?

大学進学を機に群馬県内で生活するようになってから、つくづく感じていることがある。

「沖縄は、ほかの地域よりお笑いに厳しいんじゃないか? って」

「お笑いに厳しい地域」と言えば、やはり大阪を中心とする関西周辺が有名だが、沖縄も負けず劣らずお笑いの文化が根付いているのかもしれない、と思うのだ。

実際、群馬に来てから、関東の人がオチのない話を平気ですることや、日常のコミュニケーションのなかで、ボケたりツッコんだりしないことに驚いた。

「沖縄にいたときには、ふつうに話してるときでも『いまのツッコミ、よかったね!』って盛り上がることが結構あったんです。もしかしたら、ぼくの周りの人がたまたまお笑い好きだっただけかもしれませんけど(笑)」

03仲良しな小学生コミュニティ

勉強のできる優等生

保育園を卒園したあと、地元の小学校に進学する。

「石垣島も宮古島も人口は6万人くらいいて、そこまで田舎って感じではないんです」

でも、通っていた小学校は1学年につき20人程度で、1クラスのみだった。

「小学生のときは、周りから優等生タイプだって思われてたみたいです」

というのも、今年、成人式のために地元に帰った際、同級生から「勉強ができる子だな、って思ってた」と言われたのだ。

「学級委員長を務めたこともあったので、そう認識されてたのかな」

個性爆発

クラスメイトとは、男女関係なくみんな仲良しだった。

「いろいろなキャラの子がいて、みんな全然かぶってなかったんです」

ジャイアンのような、ちょっと大柄で運動が得意なガキ大将。
ほかにも、スリムな体形でオタク気質、天然キャラ、お母さんのような包容力がある子など、さまざまな個性をもつ子がそろっていた。

「特に仲のいい親友はいなかったですけど、みんなと一緒に過ごすことが楽しかったですね」

04「笑われる」のは悔しい

いじられキャラ

母の転勤に合わせて、小学校3年生のときに石垣島から約130km離れた宮古島に引っ越したあと、中学進学を機に再び石垣島に戻ってきた。

「小学生のときに住んでた学区とは違うところに越してきたので、同級生は知らない人ばかりでした」

1学年150人以上、4クラスほどもあり、小学校と規模感がまったく違った。

地元に戻ってきたはずなのに、なじめないと感じる。

「『変なヤツ』認定されて、周りから笑われるようになりました」

友人が一人もできなかったり、陰湿ないじめを受けたりしたわけではない。

「実は小さいころからダンスが好きで、中学生のときは踊りたくなったら、所構わず踊り散らかしてたんです。いま思えば黒歴史ですね(苦笑)」

近所にダンス教室がなかったことと、教室に通うこと自体に苦手意識を覚えていたため、本格的にダンスを習ってこそいなかった。

でも、大好きなテレビを見ながら独学でダンスを身につけ、学校内で突然踊り出していたのだ。

「もともと目立ちたがり屋ではあったので、注目してもらえることはうれしかったんですけど・・・・・・」

自分が周囲を笑わせているのではなく、からかわれていることに悔しさを覚えた。

テニス部に、吹奏楽部に

中学校ではソフトテニス部に所属する。

「両親がテニスをやっていて、ぼくも小さいころから一緒にやってたんです」

男子ソフトテニス部の同期はたった一人だけで、しかも同期のほうが上手かった。

「ぼくは地区大会で勝ち進めるのかどうか、ってくらいでした。同期のおかげで県大会に連れてってもらえました」

その代わりにぼくが部長を引き受けた。

「後輩に対してリーダーシップを発揮したり、先生と話したりするのに向いてるのはぼくのほうだよね、っていう暗黙の了解があって、流れで部長になりました」

しかも、3年生の夏の大会でテニス部を引退後には、吹奏楽部に所属する。

「ウチの吹奏楽部はマーチングが強くて、全国大会にも常連だったんです」

マーチングバンドを編成するには、それなりの人数がいないと華やかさに欠ける。そのため、急ごしらえで部員を募っていたのだ。

「楽器がなにもできなくてもいいから!! って言われて、お手伝いするつもりで入りました(笑)」

でも、本当になにもせずにただ歩くわけにもいかず、リズム隊の要である大太鼓を任される。

「みんなの足を引っ張っちゃいけない! って、めちゃくちゃ頑張りました(苦笑)」

「自分が好きなことや興味のあることに対しては、ほかのことが疎かになるくらいに、とことんやり込むタイプなんです」

努力の甲斐もあり、マーチングバンドの全国大会では4位の成績を収める。

「ぼくは、みんなにしがみついて端っこに置いてもらってただけで、みんなの頑張りの成果です」

05もしかしたら好きかも?

小さな違和感

小学校高学年のころから「悩み」にはならないほどの性別違和を、少しずつ感じるようになった。

「声変わりする前は、女の子よりも声が高かったんです」

高めの声が、自分のかわいいタイプの顔とマッチしていると思い、結構気に入っていたのだが、小学校高学年で少し早めの変声期を迎える。

「正直、いまでも自分の声はあまり気にいってないんです。不必要に手術を受けることには抵抗がありますけど、変えられるなら変えたいですね」

中学校に上がると女子の制服がかわいいな、と気になった。

「でも、男子が女子のことを恋愛的に女子を好きになることの延長線上で、自分も女子の制服が気になってるんだろうな、って思ってました」

一方、男子が話す下ネタには嫌悪感を覚えた。

「男子たちがどんなAVを見てるか、って盛り上がってたのを覚えてますね・・・・・・」

自分は周囲から「突然踊り出す変な人」という印象を強く持たれていたので、下ネタの輪から距離を置くことができた。

あっさり乗り換えられて

中学生のとき、ある女の子のことが気になるようになった。

「同じ図書委員を務めてた友だちなんですけど、急によく絡まれるようになったというか、距離を詰められたんです。『今日私熱っぽいんだけど、おでこ触ってみる?』とか言われたりして」

自分に興味があるのかな? こちらから告白しようかな? などと考えているうちに、甘酸っぱい期間はすぐに終わりを告げる。

「そのうち相手が別の人のことを好きになったみたいで、離れていきました(苦笑)」

「成人式に合わせて行われた同窓会のときに、相手の子とも会って、そのときのことを話しました。やっぱり友だちは、当時ぼくのことが好きだったみたいです」

ほかにも、「自分に気がある」と周囲から噂されて気になるようになった女の子もいたが、中学時代はだれかと付き合うことはなかった。

 

 

<<<後編 2025/09/14/Sun>>>

INDEX
06 高校デビュー?
07 忙しすぎて不調に
08 子どもたちからもらったエネルギー
09 「LGBTの人と、そうでない人」で分けたくない
10 目指すは敏腕プロデューサー!

関連記事

array(1) { [0]=> int(33) }