INTERVIEW
等身大の「私」を、まだ出会っていない人たちへ届けませんか?
サイト登場者(エルジービーター)募集

ゲイである自分と葛藤しながら。24 歳で描く、等身大の未来。【前編】

穏やかな笑顔と柔らかな声音。とにかく人なつっこい。白石さんの第一印象だ。しかし自らの半生に話が及ぶと、和やかな語り口の向こう、苦悩の跡が見え隠れする。加えてゲイであることを受け入れたからこその強い決意も。今は好きなこと、将来の夢を穏やかに話す白石さんの、甘かったり辛かったりする24年を振り返っていこう。

2016/11/24/Thu
Photo : Mayumi Suzuki  Text : Koji Okano
白石 朋也 / Tomoya Shiraishi

1992年、茨城県生まれ。立命館大学産業社会学部在学中にLGBTサークル「color-free」の代表を務めると同時に、学生有志とともに支援団体「プランシーズ」を立ち上げ、高校生LGBT対象のスタディツアー、HIV啓発、また障がい者や在日外国人差別に関する勉強会の開催など、精力的に活動する。卒業後はPR会社に就職。主に化粧品や薬品のPRを担当する。

USERS LOVED LOVE IT! 85
INDEX
01 男の子が人形を好きでもいい?
02 スタンダードに乗ってない感覚
03 ムカつかれない存在
04 手の感触と、柔軟剤の香りと
05 どうしても好きとは言えない
==================(後編)========================
06 自分がゲイなら、どう生きればいい?
07 大学に進学、解放されていく心
08 自分が悩んだから、知ってほしい
09 僕に向いている仕事って?
10 LGBT、社会人として描く未来

01男の子が人形を好きでもいい?

ゲイである自分と葛藤しながら。24歳で描く、等身大の未来。【前編】,01男の子が人形を好きでもいい?,白石朋也,ゲイ

伯母の一言

「お姉ちゃんがセーラームーンの大ファンで、コスプレのセットを持っていました」

幼稚園のとき、小学生の姉を習って自分も好きなった。『僕も着る〜!!』と言って、家でスカートを履いて遊ぶのも、日常だった。

「お父さんとお母さんは、コスプレしたがる僕を見て、止めはしないけど『男の子なのに、変な子だな』とは思っていたみたいです」

「僕がお人形を欲しがったときには、買い与えることに反対しました」

救いの手を差し伸べてくれたのが、九州から訪れた伯母さんだった。

「『いいじゃんいいじゃん。男の子はこの色、女の子はこの色って決めつけるのがおかしいよ。別に男の子が人形を欲しがっても普通じゃない?』って、お父さんとお母さんに言ってくれました」

「いま思えば、伯母さんもあまり深く考えてはいなかったのかもしれないです」

そういって伯母さんは、人形を買い与えてくれた。両親も以降は「まっ、いっか」と、それほど気にもしなくなった。

幼稚園の記憶で今も覚えているのが、年に1回、海外旅行に出かけていたことだ。父親の勤務する会社の社員旅行は家族の同伴が可能だった。

「グアムやサイパン、オーストラリア、タイに連れていってもらいました。今でも海外に興味があるのは、この頃の経験が大きいのかもしれません」

好奇心を高められる環境で、幼少期を過ごした。

習い事の日々

「喘息の持病があったので、体力をつけるために1歳から水泳を始めました。それが小学校の頃には、選手コースで本格的に取り組むことになって、気づいたら週に5日も練習に通うことになっちゃって」

ちなみに中学生のときは、学校の水泳部で練習をした後に、スイミングスクールに通っていた。1日5時間は拘束された。

「他にも小学生の頃には、ピアノ、習字、合奏団、陸上クラブ、バスケットボール、英語のレッスンにも行っていました。陸上とバスケット、あと中学校に入ってから習い始めたバイオリンは自分が希望したものだったけど、あとは全部、親のすすめです」

とくにバイオリンは本当に習いたくて、親に頼み込んだ。オーケストラへの強い憧れがあったからだ。

父親の教えの中に「自分へ投資しろ」という言葉があったから、可能なかぎり、応えてはくれた。

「めっちゃくちゃ忙しい小学生でした。でも毎日、友達と遊ぶ時間はありました」

「家から帰ると、まず友達の家に行って30分くらい遊ぶんです。その後に母が車で迎えに来てくれて、習字教室に向かう。終わったら今度は水泳へ、というような段取りです」

習い事の毎日でも、決して寂しい思いをすることはなかった。

02スタンダードに乗ってない感覚

自分はダサい?

一緒に遊ぶ友達は、男の子ではなく、女の子だった。

「小4までは、女の子の友達しかいませんでした。遊んでいて楽しいのは女子なんです。おままごとしたり、ドッジボールしたり」

「女の子との方が話しやすかったし、一緒にいて楽しかったです」

父親は単身赴任だったので、家はお祖母さん、母親、姉で女性ばかり。

たまに母親と一緒にママ友のお茶会に行っていたので、大人の女性の中に自分だけひとり男、という環境にも慣れっこだった。

「一番仲の良い子が、スポーツ万能でボーイッシュな女の子でした。その子が男の子と遊ぶことがあったので、その時だけ、男子に混ざって遊びました」

しかし小学4年生の頃、気持ちの変化が訪れた。

「男の子の友達を作った方がいい?と思い始めたんです。一応、意識しだしたというか。そのとき仲の良かった男の子と、よく遊ぶようになりました」

けれどもどこか溶け込めない、という感覚はあった。とくに学年で目立つグループの男の子たちには。

「自分ダサいなぁ、と思いました。スタンダードに乗ってない感があって。今ごろ同級生の男子同士が遊んでいるんだろうけど、僕はそこには入れないんだろうなぁって、頭で考えていました。友達になれないんだろうなぁ、とも」

「自分は普通の男の子と違うんだ、変なんだなと感じたんです。そこがダサく感じられて、劣等感がありました」

たまに男子から「オカマ」とからかわれることもあった。でもいじめられているような感じはしなかった。

「オカマなのかなぁ、と思ったけど、傷つきはしませんでした。そういえば女の子とばかり一緒にいるから、そう言われるのかなぁって」

少なくても男友達もいたからだろうか、からかいをそれほど気にとめることもなかった。

父親の思い

小学校のとき苦痛だったことで今でも覚えているのが、子供会のスポーツ大会だ。男子はソフトボール、女子はドッジボールと競技が決まっていた。

「球技が苦手なうえに、野球やソフトボールは最も不得手だったんです」

「でもドッジボールは好きだったから、練習では女子に混ざっていました。終わった後も、ドッジボールの話をして、女の子と盛り上がってました」

しかし父親は野球が好きだった。

よくキャッチボールの相手をさせられ、しごかれた。

「ものすごい速い球を投げられて、顔にぶつけられたこともありました(笑)。テニス、ゴルフ、野球はお父さんのテリトリー。それが得意な子になってほしいという親心もあったみたいです」

「テニスにも連れて行きたがるので、どうしても嫌で、お風呂やトイレにこもったこともあります。でも、強引に連れて行かれました」

父の価値観とのズレも、自分は普通の男の子、スタンダードじゃないと考えるようになる一因かもしれない。

03ムカつかれない存在

ゲイである自分と葛藤しながら。24歳で描く、等身大の未来。【前編】,03ムカつかれない存在,白石朋也,ゲイ

自分の立位置

男子のスタンダードじゃない。

しかし学校で目立っていなかったかといえば、そうでもない。

「クラスの出し物の劇では全部、主役。学校が良しとするような、お利口さん的な目立ちたがり屋でした。勉強もできたからです」

しかし、そのことで同級生から反感を買うこともあった。あいつ、なに賢ぶってんだよ、と。

それでもいじめられなかったのは、あまり考えないで自分を晒け出してきたからだと今は思う。

「あまりムカつかれない存在であり得たというか。自分を隠さないで、ありのままに生きてたから、ムカつくけど、こいつなんかヘンなところもあって面白いやつかも、と思われていたのかもしれません」

クラスの文集の最終ページでは「面白い人ランキング」の2位に選ばれた。「100歳まで生きそうな人ランキング」においては、第1位だ。

「キラキラポジションではなく、オリジナルポジションでした」

そんな個性に、惹かれたのだろうか。女子との距離が近いのも理由かもしれない。女の子から告白されることも多かった。

「もうやめてー、っていう感じでした。面倒臭いって。友達でいたいのにと困りました(笑)」

小学校のあいだは、男子も女子も、どちらに対しても恋することはなかった。

女子との距離

小学校卒業後、私立の中高一貫校に入学した。

進学校でもあったが、練習環境の整った水泳部があったからだ。

「入学してみると思ったほど設備が整っていなかったり、水泳部員なのに泳げない人がいたりして、あれ〜!って。でも地元の公立中学校には水泳部がなかったので、仕方がなくて」

共学だったが、ここでも女友達の方が多かった。

しかし、ちょうど思春期。中学2年生になると、女の子も男の子を意識し始め、距離感が生じる。

「カミングアウトはしていないけれど、中学のときはもう、そういうキャラでした。ゲイとは分からなくても、女子とは付き合えない人なんだなって」

そうであっても、自分の男の性を意識して、離れていく女友達がいた。

「男友達と仲良くしないと、と思いました。でも、特定のグループには所属できなかった。けれど当時から美術とか音楽が好きだったので、趣味の話ができる男の子と仲良くなれました」

さらに男友達とつるみたい、と思わせる自体が発生した。

中学2年生のとき、初恋が訪れたのだ。

04柔軟剤の香りと、手の感触と

においが好き

「背が高くて、頭が良くて、スポーツ万能で、優しくて。すごくいいにおいのする同級生がいたんです。その男の子を好きになっちゃって」

実は10年経った、24歳の今でも彼が好きだ。友人関係は続いている。

「1年に1回くらい、向こうから会おうよって言われて、ごはんに行きます。中学生のときに感じたキラキラはもう感じないけど、やっぱり好き。もう殿堂入りで好き、って感じなんです」

好意を抱いたのは、一時期、彼が見せていた妙な癖が原因だった。

「彼のなかで、なぜか変な期間があって。中学2年生の1年間は、男の子と話すとき、必ず相手の手を握って話していたんです」

自分も手をギュッと握られながら、話をした。ドキッとして、一気に好きになってしまった。

「外見も内面も、当時は全てにおいて素敵な彼だったけど、なかでも好きなのがにおい。あまりにも好きなので、においの出どころ、どんな柔軟剤を使っているのか、真剣に調査しました(笑)」

行きついたのは、柔軟剤自体が理由ではなく、そこに彼の体臭が交じって素敵なにおいになるんだ、という答えだった。

「冬に一緒に登校するときに、彼にマフラーを借りるふりをして、においを嗅いでいました(笑)」

「あのにおい、やばかったです」

彼女の出現

彼を好きになったとき、彼に恋人はいなかった。

しかし同じ学び舎で過ごした6年間、何度か彼女が出現したことがあった。

「彼女ができたときは、僕の女友達ネットワークを使って、交際がどこまで進んでいるか、逐一チェックするようにしていました(笑)。一度は離れていった女友達だったけれど、だんだんとまた、仲良くなり始めたので」

「『いま二人はどんな感じなの?』『どこまで進んだのかな?』って聞くと、彼女側に探りを入れてくれるんです。どの人と付き合っても『手を繋いだだけらしいよ』だったので、安心していました」

彼には直接聞けなかった。

聞いて、本当のことを知ったり、そこから恋愛相談をされるのが嫌だったのだろう。

05どうしても好きとは言えない

ゲイである自分と葛藤しながら。24歳で描く、等身大の未来。【前編】,05どうしても好きとは言えない,白石朋也,ゲイ

予感は確信に

「彼のことを好きになって、自分は普通の男の子と違うんだ、ということを確信しました」

「けれど中学1年生のときに、同級生の綺麗な女の子に心を惹かれたことがあって。かわいいな、これが恋愛感情なのかなと思って、同級生に言いふらしたんです」

「その効果があったのか、中学生のあいだは彼が好きだということ以外は隠さず、思いのままに過ごしても、決してゲイとかホモとか、からかわれることはなかったです」

また逆に、彼は「ホモキャラ」として同級生にイジられていた。

「男友達の手を握りながら話していた時期もあったし。基本、男の子との距離感が近いんです。でも女子に対しては、そうではない。だから余計にゲイっぽいと言われていたんでしょうね」

しかし想い人の彼はそうやってイジられても、嫌そうな素振りは全く見せなかった。

「結局、周りの同級生も、彼がゲイじゃないって分かっているから、イジれるんですよね。本当にそうなら、絶対にからかわないと思います」

絶望のなかで

そして恋のときめき、自分の性への気づきは、苦悩を強いてきた。

「僕の場合は、自分がゲイなんだと苦しむというより、彼のことが好きだと言えなくて辛いという感じです。ゲイという意識は、このときはあまりなかったです」

「彼が好きだって誰にも言えない。親にも言えない。ずっとこのまま誰にも告白できないで、ひとりで死んでいくのかなって、真剣に考えていました」

「本心を胸に閉じ込めなければいけない」と思い込んだことで、深い孤独に苛まれ始めた。また同時に、将来のビジョンを描けなくなった。

「もともと何になりたいとか、大学に行きたいという気持ちもなかったけれど。自分が普通の人生を送れないと気づいて、勉強なんてやっても意味がないや、と感じました」

「もう成績なんてどうでもよかったんです」

生きる目的を見失い、男の子が好きだと言えない苦しさ、窮屈さを、どこに向けたらいいか、わからなくなった。

さらに苦しみに追い打ちをかける事態が発生した。高校生のとき、彼が自分の女友達と付き合い始めたのだ。

「彼に初めて彼女がいると聞いても、全く嫉妬しませんでした。そりゃいるだろうな、くらいにしか思わなかったんです」

「でも自分がよく知っている女友達と付き合い始めたときは嫉妬を覚えました。彼に恋愛の相談をされるたびに、別れたあと、ひとりで泣きました」

彼にすれば「白石は彼女の友達だから」と、何の悪気もなく、投げかけた相談だろう。

いつも通り無邪気に頼ってきてくれたからこそ、余計にやるせなくて、せつなくて涙が止まらなかった。

「学校からの帰り道、彼と一緒に駅に行ったら、たまたまホームの片隅に彼女がひとりでいて。『声をかけて一緒に帰るべきかな?』って相談されたこともあります」

「うん、あの子と一緒に帰った方がいいよ」と笑顔で言って、自分はさっと、その場を立ち去った。

彼に嫌われないためには、本心を隠さないといけない。思いが行き場を失ってさまよっていた。

どうやって生きてればいいのだろう。

答えを求めて、押しつぶされそうな毎日だった。

 

<<<後編 2016/11/26/Sat>>>
INDEX

06 自分がゲイなら、どう生きればいい?
07 大学に進学、解放されていく心
08 自分が悩んだから、知ってほしい
09 僕に向いている仕事って?
10 LGBT、社会人として描く未来

関連記事

array(1) { [0]=> int(26) }