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カミングアウト、” 知る “ と” 理解する “ の違い【後編】

カミングアウト、” 知る “ と” 理解する “ の違い【前編】はこちら

2016/04/08/Fri
Photo : Mayumi Suzuki Text : henshu-bu
新保 浩司 / Koji Shimpo

1975年、埼玉県生まれ。ジャーナリスト・マスコミ系の専門学校に入学するも、ライターが本分ではないと見切りをつける。卒業後は、電話やメールを通じてのユーザーサポート業務に16年間従事し、高い接遇力を身につけた。しかし体調を壊したことをきっかけに退職。その後、2015年4月シータヒーリングやカラーセラピーのセッション、講座を行うセラピーサロン『にじいろヒーリング』を開業した。

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INDEX
01 人を男女で分ける必要はないはずだった
02 思春期のいじめ「オカマ・オンナ男」
03 いじめられていた当時を振り返る
04 一大決心のキャラチャンジ
05 少なすぎる情報量に戸惑う学生時代
==================(後編)========================
06 積極性が芽を出した
07 社会的カミングアウト、23歳
08 電話ごしのサポート業務で学んだこと
09 ゲイは自分の一部分でしかない
10 公表は、自分なりの誠意

06積極性が芽を出した

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二十歳で初めてのカミングアウト

自分のセクシュアリティを自認し始めた20歳の頃、世間では20~30人ほどが集まる自己啓発セミナーが数多く開催されていた。

「セミナーに参加して、世の中には色々な人がいて、色々な考え方がある。その広がり感に魅せられました。自分は自分のままで良いという自己肯定感も高まり、すんなりカミングアウトできたのは不思議です」

人生初のカミングアウトは、参加したセミナーメンバーに対してだった。

「自分は自分でいい」というメッセージを学びに来ているメンバーの前だけに、苦もなくスッと気持ちを吐き出すこともできた。

ゲイである自分を、すんなりと外に出せたこと、どんな告白も肯定的に受け止めてくれる仲間がいることは心の支えになった。

カミングアウト後も態度を変えずに接してくれるメンバーに感謝したという。

そして、同じ価値観を強制せず、笑顔で迎え入れてくれる仲間へ本音を告白したことで、”知って” もらうことが、”理解して” もらえることへ繋がるのだと気づいた。

仲間がいるという力強い支えが、与えた影響は大きかった。

初めてのカミングアウトが快く受け止めてもらえたことも幸運だった。

折しも、インターネットが普及し始めた頃だった。

HPを持つことがステイタス!

その頃、ゲイの世界ではホームページを立ち上げることが流行していた。

ネット上の自分は現実世界と切り離されているため、余計にカミングアウトもしやすいという。

「ネット上では自分をさらけ出すことも躊躇なくできる。実家暮らしだった当時は、弟と同室だったのですが、ホームページの更新に、一目でゲイとわかるような画像をディスプレイに表示していたことも多々ありました。でも、弟は無関心でいてくれたのか? 気づかなかったのか?(笑)」

家族の間でセクシュアリティについて話題になることはなく、「彼女を作りなさい」とか、「早く結婚しなさい」などと言われたことは一度もなかったという。

そうこうするうちに、ネットを通じて知り合った人たちと、オフ会に参加してリアルに知り合えるようになった。

そこでは、ゲイであることも臆せず、抱えた思いを共感できる人たちに巡り合うことができた。

07社会的カミングアウト、23歳

本格的なカミングアウト

「二十歳当時は、”なんでもウェルカム!” な印象の人たちに対してだけ、『自分はゲイでこういう人です』と伝えていました。聞く耳をもった人ならば、安心してカミングアウトできたんですよね」

「23歳頃ホームページを通じてするようになったカミングアウトは、不特定多数、つまり “公” という意味での ”広い告白” だったかもしれません」

ネットを通じて自分を表現するうちに友人の輪も広がり、ゲイであることを隠す必要性もなくなった。

結果的にカミングアウトする相手を選ばなくなっていった。

しかし、こうして徐々に本来の自分でいられるようになったものの、まだ伝えていない大切な人がいた。

それは、家族だった。

けじめをつけたかった、家族への告白

ヒーリングやセラピーで独立しようと、徐々にその思いが強くなっていた頃だった。

ゲイのセラピストとして実名で仕事をしようと思い始めたとき、起業する前に家族へのカミングアウトをしておこうと決心する。

「親に対しても、そろそろけじめをつけなくては」という思いもあった。

「自分は男性しか愛せないんですと伝えたら、両親は『・・・・・・あぁ、そうなんだ』と。胸の内は分からないけれど、それ以上突っ込まれることも、質問もありませんでした」

カミングアウト自体には抵抗を感じず、さまざまな場面で告白できるようになったものの、これほど緊張したことはなかったという。

肉親への告白は、自分のセクシュアリティを伝えるだけではなく、「結婚」「子を授かること」「孫への期待感」など、ともすると様々な事柄に直結するからだ。

何となく、気づいていたのかも

「カムアウトするまでは、家族へ “悟って、悟って” のオーラを出してましたよ(笑)。例えば、家で口ずさむ歌は、全部女性アイドルだったり、週末になるとクッキーを焼いたり。今で言う女子力を見せていました」

しかし、面と向かって宣言するのとはわけが違う。

結果、緊張しながら臨んだ両親への告白も、特別なことは何も言われなかった。

「普通の男の人のように、孫の顔を見せてあげることができないんです」と、伝えた時も両親は静かに耳を傾けた。

「深くは聞きたくない思いもあるかもしれないし、既に気付いていたのかもしれないですね。咀嚼してくれたような気もします」

今まで一度も、結婚を急かされることがなかったのも、もしかしたら息子の思いに気付いていたからなのかもしれない。

08電話ごしのサポート業務で学んだこと

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顔が見えない分、心を研ぎ澄ます

IT企業やゲームアプリの開発会社で、カスタマーサポート業務に16年間従事した。電話やメールでのサポート業務。当時の仕事を振り返る。

「顔が見えない対応なので、相手の呼吸や間、空気感で理解の度合いも分かった。できるだけ専門用語は使わずに、案内のスタンスを変えてみるなど試行錯誤しながらサポートしました」

「お客様から電話をくださっているのに、黙ってしまう方もいるんですよね。その “間” が “そのお客様独自の持ち味なのか” “考えているだけなのか” ということを瞬時に読み取って、カスタマー満足度につなげないといけない」

「難しさでもあり楽しさでもありました」

例えば、後ろで赤ちゃんの泣き声がしたら、「どうぞあやしてあげてください、こちらはお待ちしていますので」という配慮をするのが自然になっていった。

相手のニーズに辿り着くために

どのように伝えれば、お客様が求めているところに早くたどり着くか、それを日々大切に業務にあたった。

そして、電話ごしに伝えられる限られた情報を、いち早く理解し、お客様の立場に立った対応に落とし込む。

「電話は声だけしか伝わらない。正確に伝えるだけでは、お客様の不安感を拭えないんです。だから笑顔で発生する “笑声” の練習もしましたよ」

慣れない新人さんへも優しく指導した。

困っているスタッフがいれば快く交代し、お客様それぞれのご要望に応えようと、配慮しながら個別対応を心掛けていた。

「サポートの仕事は、とても性に合っていました」

しかし、組織が大きくなるにつれマニュアル化・効率化が重視されるようになった。

会社からは、臨機応変な個別対応ではなく、マニュアルを遵守するよう指示が出されたのだ。

目指したいサポートとの違和感と業務の多忙さが重なって、心身共に疲れてしまった。

2014年6月、16年間続けていたユーザーサポートの仕事を辞めた。

療養期間をとろうと決めたのだ。

独立後のセッションの基盤

心療内科には、退職前に体調を崩しだした時期から通っていた。

ところが、受けたカウンセリングの手応えに納得できなかった。

そんな体験もきっかけの一つになり、独立する道筋へとつながる。

「心理カウンセラーの方と面談しましたが、心の中でしっくりいかない気持ちが残ったんです。伝えたことに共感をしてもらえた感覚が残らなかった、というのが正直な感想でした」

満足感が得られなかったという思いが、現在の仕事を始める大きなきっかけをくれた。

「不安や悩みを、気軽に話せる場所があればいいのに」

現在行っているシータヒーリング・カラーセラピーでは、相手の顔が見える分、細かな心の動きを受け取ることができる。

顕在的な気持ちはもちろん、ご本人が気付いていない感情や思いに寄り添ったセッションに努めている。

「色の持つ意味やキーワードをメッセージとして組み立ててお伝えするんですけど、この色がこういう意味! と決めつけ性格分析などをするわけではなく、色を入り口にしたカウンセリングと思ってもらった方が分かりやすいかもしれません」
「直観で色を選ぶということ自体が、顕在意識ではなく潜在意識を使うんですね。なので選んだ色とその人の心境が重なっているだろう、という前提で話を進めるんです。複数ある色のキーワードの中から、意識下でご本人は何が気になっているのかを探りながら話をうかがいます」

09ゲイは自分の一部分でしかない

LGBTに限らず、自分を大切に

現在、セクシュアリティを問わず様々な人がセラピーに訪れる。

今までの生き方に違和感のある人、自分の思い込みのクセを変えたい人、新しい目標への一歩を踏み出したい人…… 相談したい悩みの深度も迷いの方向もさまざまだ。

何が正解なのか、答えを求めてやってくる人たち。

「ちょっと迷うくらいが当たり前という心構えで、とにかく自分を大切にして欲しい」という。

「セクシュアリティもそう。いろんな人がいていいんだってことを、認められれば、他人にも寛容になれますよね。ひとつの定規で測る議論は簡単ですけど、そこに当てはまらない自分はダメなんだと思わないで欲しいんです」

「自分が考える自分らしさがあって、自分なりに自分を大切に・・・・・・ セクシュアルは抜きにして、自分を幸せにしてあげようねって」と優しく笑う。

ゲイかどうかがすべての判断?

LGBTの概念が報道されるたび、自分の公表は、エゴになっていないかとふと立ち止まることがある。

「こちらは『理解して欲しい』と思っていても、『手放しで賛同できないよ』と思う人がいても当然だと思うんですよね。そういう人たちには、ただ自分たちのような人もいるってことを知ってもらうだけでも十分だと思うんです。例えば同性婚に反対したら、心の狭い人だと言われてしまう、みたいな風潮は、ある意味逆差別を生んでしまいます」

「色々な立場や考えを踏まえた上で、『理解したよ』って返してあげられる大人が増えれば、素敵だなって」

LGBTもそうでない人も、さまざまな情報を得ながら、自分の考えが言える自由を大切にしたい。

10公表は、自分なりの誠意

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ラポールを築く

「顔出ししている・いないに関わらず、なんらかの発信をしている人は、やっぱり周りの人に自分を理解して欲しいのでは・・・・・・。例えば、ゲイ本人は、『ゲイということを知って欲しいんだ』と思っていても、それは『ゲイであるという “自分” を理解して欲しい』という意味なんじゃないかと思うんです」

たとえ相手の性指向や性自認を ”知って” いても、”どんな人間かを理解する” には、その人の人となりに触れてみなければわからない。

一つの言葉ですべてが表せるわけではない。

「ここまで生きてきてみて、ゲイであることを隠すのは、相手に対してイーブンじゃないかなって感覚を持つようになりました。と言うよりも、公表したら自分のもやもやが晴れた、というのが正解かな。ゲイは自分のほんの一部。だけれどその大事な一部分を偽らないことが、セラピーに来てくださる方に向けた、僕なりの誠意」

「『さ、ゲイってことは置いといて、さてどうしましょうね、お茶にしますか? コーヒーにしますか?』というくらい、当たり前のことなんです。それを隠すなんて、相手に誠実じゃないでしょ」

セラピーに訪れてくれる人とのラポール(信頼)を築く上で、外すことができない一部分だけれど、この一部分だけがすべてではない。

生きやすくなる現代

いまでは女友だちのほうがやや多いかもしれないという。

ふたりきりで旅行にいくことも、同じ部屋に泊まることも女同士の関係そのもの。もちろん異性同士のカップルのようなことにはならない。

お互いが気になっている男性の恋バナに花を咲かせて、SNSを見ながら「こんなことを書くなんて、この人やめたほうがいいよ!(笑)」などと言い合うこともしばしば。

“女性の友人” というよりも、仲の良い友人の性別がたまたま女性だったという方が、自然に感じる。

「ゲイが嫌いな人がいてもいいけれど、誰かを嫌う理由が “ゲイだから” というのはちょっと悲しいですよね。ゲイが特殊なフィルターではなくなって、一人の人間として理解してくれる人が増えていったらいいなと思います」

「現代の子どもたちは、自分が幼かった頃よりも、情報が溢れていて、選択した上で好きなものに接することができる。『僕を理解して!』という発信にであったら、大きな愛で受け止められる社会になれば素敵だと思う」

ゲイであることはアイデンティティの一つ。そして、それは大切なこと。一方、ゲイであることは、アイデンティティの全てではない、とも言える。自分にかけていた枠を外した時に見えてきたこと、自由になって手に入れたものは全て、新保さんの足跡に刻まれている。自然にたどりついた今、難しい話しはない。「さぁ、お茶でも飲みましょうか」と微笑むその表情に、ふと力が抜ける。セッションにもそんな優しい空気が流れているのだろう。

あとがき
自分に肯定的な返事を与えられた時、「しんぽんさん」は大きく変化した。ありのままを受け入れてくれる人との出会いは能動的。自ら少しずつ動き始めたきっかけが、今のしんぽんさんの礎だと知った■言葉にならない繊細な感情が、人にはある。そのひとつ一つをとても大切に受け止めてくれる。しんぽんさんはそんな人だ■お会いした時のいずれも、街の雑音は不思議といつしか気にならなくなった。そして心が静かになった。(編集部)

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