2026年5月、日本テレビ系のトークバラエティー番組『上田と女がDEEPに吠える夜』で「レズビアンと社会」が特集されました。番組内で、カミングアウトに触れる場面があり、当事者である私は過去に家族や友達に打ち明けたときのことを思い出しました。
テレビ番組で語られた「レズビアンのカミングアウト」。異性愛者がリアクションに迷う理由
『上田と女がDEEPに吠える夜』では、司会が「レズビアンだとカミングアウトされたときに、どう返せばいいのか」と当事者であるゲストにたずね、おのおのが実際にあった周囲の人のリアクションについて語る場面がありました。一連のやりとりをみて、異性愛者が反応に慎重になりやすい背景を考えました。
そもそも周囲にレズビアンがいない? 実はカミングアウトしていないだけかも
番組では出演者のひとりが「身近にレズビアンがいない」という旨を語り、当事者のゲストが「レズビアンがいないことにされる問題」に言及していました。
異性愛者が「身近にレズビアンがいない」と感じるのは、実際に人数が少ないからではなく、レズビアンがカミングアウトしづらい構造が社会にあるからでしょう。
日本では、レズビアンとして広く知られるロールモデルがほとんどおらず、テレビに登場するセクシュアルマイノリティの多くは女装家やゲイの男性でした。
そのため、若い頃から未来像を描きにくく、そして「レズビアン」という言葉にたどり着くのに時間がかかってしまうことも。
さらに、レズビアンは男性向けのAVなどで性的ファンタジーとして扱われやすいという傾向があり、カミングアウトした場合、興味本位の質問や性的な話題を振られることもあります。この「不適切な注目を浴びるリスク」から、口を閉ざす当事者は少なくありません。
こうした背景が重なり、レズビアンだと打ち明けずに生活している人が多い状況が生まれているのです。
カミングアウトで異性愛者が戸惑うのは「反応に正解がない」から
番組のやりとりにもあったように、カミングアウトされたときに「どう返すのが正解なのかがわからない」と戸惑う異性愛者は少なくないでしょう。
軽く返してよいのか、真剣に受け止めるべきなのか。その判断がつきにくいのは、これまでそうした場面に触れる機会がほとんどなかったからだと思います。
「レズビアンに出会う機会が少ない」と感じる構造のなかで、これは悪いことではなく、むしろ自然な反応です。
では、実際にどのような反応が望ましいのでしょうか。
番組ではレズビアンの当事者であるゲストたちがおのおの、カミングアウトした際の周囲のリアクションを語っていましたが、当事者によって求める反応は異なるものです。
軽やかに受け止めてほしい人もいれば、真剣に向き合ってほしい人もいる。つまり正解はひとつではなく、関係性やその人のこれまでの経験によって変わるのです。
だからこそ、多くの異性愛者は「こう返せば間違いない」という答えをみつけられずにいるのかもしれません。
異性愛者からセクシュアリティを明かされたとき。レズビアンの私の反応
レズビアンのカミングアウトについて考えていたとき、ふと気づいたことがあります。
セクシュアリティを明かすハードルは、レズビアンだけのものではなく、環境によって誰にでも生じうるということです。
そのきっかけになったのが、クィアの友達が多く集まる食事会に参加したときでした。
そこでは、参加者のほとんどがセクシュアルマイノリティだったので、異性愛者がいることは当人にセクシュアリティを明かされるまで私は知りませんでした。
異性愛者の方から「私は異性愛者で・・・・・・」と打ち明けられた瞬間、私は少し不思議な感覚になりました。
普段は「異性愛が前提」の社会で生きていますが、その瞬間はマイノリティとマジョリティの立場が入れ替わっていたからです。
「異性愛者がマイノリティ」というその場で、異性愛者であることを明かした人は、気まずそうな表情をしていたようにみました。
その人にとっては、あの場で異性愛者であることを言葉にするのは勇気のいる行為だったのかもしれません。
そのとき私が感じたのは「どう返すべきか」という迷いではなく、相手が安心して話せる空気を保ちたいという気持ちでした。
レズビアンである私がカミングアウトするときと同じように、相手にもその人なりの背景や文脈があります。
だからこそ、特別扱いせず、相手が疎外感を抱かないようにコミュニケーションをとるよう意識しました。
そうしてセクシュアリティを明かされる側に立ってみて、初めて「カミングアウトされる側にも、こんなふうに戸惑いや気づかいが生まれるのだ」と実感できました。(関連記事はこちらNOISE:「異性愛の恋愛相談」にのるとき、レズビアンの私が意識していること)
レズビアンの私のカミングアウト体験談。両親・きょうだい・友達に伝えたときの反応
家族や友達にカミングアウトしたときに返ってきた反応は、うれしかったものもあれば、少し胸にひっかかるものもありました。ここでは、私が実際に目のあたりにした「現実のリアクション」と、そのとき当事者としてどう感じたのかを率直に語ります。
両親にレズビアンだとカミングアウトしたとき

母にカミングアウトしたとき、最初の反応は「そうなんだ」とごく自然で、とくに構えている様子もありませんでした。その瞬間は安心したものの、続いて返ってきたのは偏見に満ちた不適切な質問の数々で、思いがけず傷ついたのを覚えています。
父は「なんとなくそうかなと思っていた」と静かに受け止め「実はお前に男性を紹介しようと思っていたんだけど・・・・・・」と少し肩を落としていました。その姿に嫌悪感はなく、むしろ申し訳なさのような気持ちがわきました。
ただ、カミングアウト後もLGBTに対する無理解は随所に残り、結果として、今は適度な距離を保ちながら関係を続けている状態です。
きょうだいにレズビアンだとカミングアウトしたとき
私には姉がひとりいます。姉にカミングアウトしたときの反応は「そうなんだ!」と、朗らかなものでした。彼女がいることを伝えると、自然な感じで「どんな人?」と話を聞いてくれました。
その反応に、私は肩の力が抜けて「この人にはいろいろ話せる」と安心したのを覚えています。
姉はもともと穏やかな性格で、身近にゲイやレズビアンの友達もいたため、理解のある反応が返ってくるだろうと予想していたのですが、それでもカミングアウトする瞬間は緊張しました。
だからこそ、姉のポジティブな受け止め方に心がふっと軽くなりました。
友達にレズビアンだとカミングアウトしたとき
カミングアウトする友達には信頼できる人を選びました。
打ち明けたときの反応はみんな自然で「そうなんだ!」「どんな人が好きなの?」「彼女さんも紹介してよ」と、まるで日常の延長のように受け止めてくれました。
ぶしつけな質問や無理解な発言は一切なく、私を「レズビアン」という属性ではなく、ひとりの人間としてみてくれている感覚がありました。
私のセクシュアリティは、私を構成する要素のひとつ。友達はそのことを理解しているかのように、特別扱いするでもなく、かといって軽く流すわけでもなく、普段の会話の延長でパートナーのことを聞いてくれました。
その距離感がとても心地よく、私にとってはこのくらいの温度感がいちばんしっくりくると感じます。(関連記事はこちらNOISE:カミングアウトの「どこまで話すか」問題。LGBT当事者の友達とノンケの友達に伝えたこと)
レズビアンだとカミングアウトするとき。状況によって求める言葉は変わる
私自身は、多様性を受け入れつつある時代に生きてきて、当事者と気軽につながれる環境にあるため、カミングアウトの際も「そうなんだ」くらいの温度感がちょうどよく感じます。しかし、そうした環境にいない人もいます。
勇気を振り絞った人には、真剣に向き合う言葉が必要

周囲に理解者が少ない人や、否定的な言葉を受けた人にとって、セクシュアリティを明かす行為は大きな決断です。
そんな背景を抱えながら勇気を振り絞って話してくれた相手には、軽い相づちよりも、まずは真剣に向き合う姿勢が求められます。
たとえば「話してくれてありがとう」「どんなセクシュアリティでもあなたが大切な人であることは変わらないよ」など、カミングアウトした本人の不安や迷いに寄り添う言葉なら、誠実さが伝わるでしょう。
大げさに共感する必要はありませんが、相手がどんな気持ちでその場に立っているのかを想像し、その重さに合った温度で返すことが大切です。
オープンな人には、自然体のリアクションが心地よい場合も
セクシュアリティをオープンにしているレズビアンにとって、相手から返ってくる自然体のリアクションは、とても心地よいものです。
すでに自分のセクシュアリティを隠さずに生きている人は、それを特別な告白として扱われるより、日常の一部として受け止めてもらえるほうが安心できるからです。逆に、必要以上に深刻に扱われると距離を感じてしまうこともあります。
「そうなんだ」「彼女さん元気?」といった、普段の会話の延長にある言葉は「どんなセクシュアリティのあなたも受け入れるよ」という言葉以上に、ありのままの自分を受け入れてくれる安心感をあたえてくれます。(関連記事はこちらNOISE:噓をつきたくない場合はどうしたらいい?「職場でのカミングアウト問題」レズビアンの私の場合)
レズビアンがカミングアウトで求めているのは過剰な気遣いではない

レズビアンだとカミングアウトされたとき「どんな言葉を返せばいいんだろう」と迷う人もいるでしょう。
求められる言葉は、相手との関係性や相手の状況によって変わり、勇気を振り絞った人には真剣に向き合う言葉、すでにオープンに生きている人には自然体のリアクションが心地よいこともあります。
けれど、どんな相手であっても共通して大切なのは「この人はどんな思いで今、私に話しているんだろう」と想像することです。
完璧な言葉を探す必要はありません。相手の背景やこれまでの人生にそっと思いを寄せながら返すひと言が、何よりの安心につながります。
カミングアウトに向き合うときに必要なのは、特別な知識よりも、その人を大切に思う気持ちなのだと思います。
■参考情報
日本テレビ系のトークバラエティー番組『上田と女がDEEPに吠える夜』で「レズビアンと社会」
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