「付き合っている相手が、異性とふたりきりで会っていたら嫉妬してしまう」という話を聞くことがある。異性愛者の人たちの間でも意見が分かれると思うのだけど、レズビアンカップルの場合は、一体誰に嫉妬するのだろうか?
レズビアンカップルである私たちの「嫉妬問題」
レズビアンカップルである私とパートナーは、付き合い始めた当初、お互いの嫉妬のボーダーラインがわからず苦労した経験がある。
レズビアンカップルでも、男性とふたりきりだと嫉妬する?
私とパートナーは、付き合い始めて5年ほどになる。
今でこそ問題になることは減ったけれど、付き合いたての頃は、お互いの「嫉妬」についてもめたり、悩んだりすることも結構あった。
パートナーとは、レズビアン向けのマッチングアプリで出会ったのだけど、当時の私は自分のセクシュアリティがよくわかっておらず、とりあえずという気持ちで「バイセクシュアル」とプロフィールに書き込んでいた。
「男性よりも女性のほうが好きな気がするけど、男性のことがものすごく苦手というわけではないし、バイセクシュアルってことなのかなあ」と考えた結果だ。
結婚や出産への期待をほのめかしてくる親から、プレッシャーを感じていたせいもあるのかもしれない。
男性とも女性ともお付き合いした経験がなかったこともあって、自分の恋愛感情や性愛感情に自信がなかったのだ。
パートナーと付き合い始めてからは、自分自身のセクシュアリティについて思い悩むことはほとんどなくなった。
ただ、パートナーはそうではなかったようで、私が男性の友人とふたりで会うと言うと、嫉妬心を訴えてきた。
「だって、バイセクシュアルってプロフィールに書いていたから、男性のことも好きになるかもしれないんでしょ?」
だから行かないでほしい、と語るパートナーに、私は何と答えていいかわからずに戸惑った。
嫉妬する理由は、相手を信頼していないというわけではなく・・・
私のほうはといえば、パートナーが男性とふたりきりで会っても、女性とふたりきりで会っても、嫉妬することはなかった。
以前、かなり嫉妬心の強い人とお付き合いしていた経験があるというパートナーは「束縛されないのはありがたいけど、やきもちやかないの?」と、少しだけさみしそうだった。
そう言われて私も考えてみたのだけど、パートナーの実直な性格を鑑みると、男性や女性の知人とふたりきりで会ったとしても、心配するようなことは起こらないだろうという確信があった。
では、パートナーは私を信頼していないから嫉妬していたのか? というと、そうでもないのが難しいところだ。
パートナーは「信頼していないわけじゃなくて、少しでも可能性があるのが不安なの」「あなたが好きにならなくても、相手があなたのことを好きになって、距離を詰めてくるかもしれないし」と語った。
では、私が女性とふたりきりで会うことについては、どうなのか?
当時、パートナーに尋ねてみたところ、複雑な嫉妬心を明かしてくれた。
嫉妬を抱く対象の違い―レズビアンであるパートナーと私の場合
女性とふたりで会うのは構わないけれど「相手の女性のタイプによる」というのが、パートナーの嫉妬の実情らしい。
ボーイッシュなレズビアンの嫉妬の対象は「男性」と「ボーイッシュな女性」?

パートナーはボーイッシュな見た目の女性で、髪はショートカットでメンズライクな服を着ている。
だから、自分と似たようなボーイッシュな女性とふたりきりで会われると、つい嫉妬してしまうという。
私はそれを聞いて考えてしまった。
私は、パートナーいわく「フェミニンなレズビアン女性(フェム)」に見えるらしいのだけど、では自分と同じフェミニンな女性とパートナーが会うことを想像してみても、嫌だとか、嫉妬するとは思わない。
では、私が一切パートナーに嫉妬の感情をおぼえないのかというと、それも違う。
私はどうやら「犬」や「小さな子ども」に対して嫉妬心を抱くようなのだ。
異性や同性ではなく、犬や赤ちゃんに嫉妬してしまう
パートナーは動物が好きで、特に柴犬やコーギーなどの犬の写真や動画を見ると、デレデレと表情を崩す。
道を歩いていても、ものすごく遠い距離の先に柴犬を発見しては「可愛い!」と叫んでいる。
その様子を見ていると、ほほえましいという感情ではなく、おもしろくないような、モヤモヤとした感情が湧いてくる。
また、パートナーは友人の赤ちゃんや小さな子どもに会いに行くのが好きで、一緒に撮った写真や遊んでいる動画を見せては「可愛いでしょ」と自慢してくる。
それも私にとって、なんとなく心がざわざわする行為だ。
しばらくして、ようやく気がついた。
「もしかして私、犬や赤ちゃんに嫉妬してる?」
おそらく、パートナーは私以外の女性に対して愛情を示しているところを見せないから、私も嫉妬しないのだと思う。
ただ、犬や赤ちゃんに対しては明確に愛情表現をするので、自分への愛情がないがしろにされたように感じ、嫉妬してしまう。
私とパートナーでは、嫉妬心を抱くメカニズムがまるっきり異なるということがわかった。
それなら、と私は疑問に思った。
レズビアンカップルは、お互いの「推し」に対して、嫉妬心を抱くことはあるのだろうか?
「推し」に嫉妬するレズビアンカップルはどうするべきか?
レズビアンカップルとはいえ、私とパートナーでは「推し」のジャンルも傾向もかなり異なっている。(関連記事はこちらNOISE:レズビアンの推しは女性が多いのか? セクシュアリティと「推し活」の関係性)
レズビアンカップルの嫉妬と「推し活」の関係

パートナーは、男性アーティストや男性Youtuber、野球選手などに推しが多い。
一方私は、宝塚歌劇などの舞台俳優、アイドル、作家など幅広いジャンルに推しがいて、そのうちの体感8割くらいが女性だ。
私はパートナーの推しに嫉妬を感じないけれど、それはパートナーの推し活の様子が「男子学生が、憧れの同性の先輩を追いかける」ような、イメージに見えているからかもしれない。
そして、パートナーはというと、付き合い始めた当初は私の推しにも嫉妬していた。
「ふうん、そういう人が好きなんだ」などとふてくされた顔で言われると、私も困るし水を差されたような気分になってしまう。
そこで、私はパートナーの嫉妬心と折り合いをつけるために、対策を打つことにした。
推し活の様子は、基本的にパートナーには見せない。
特に男性俳優や中性的な雰囲気の女性モデルなど、パートナーの嫉妬心を煽りそうな推しの写真を飾ったり、スマートフォンのロック画面に設定したりはしないように気をつけた。
そして、推しの話をするときは、見た目などではなく、創作活動への向き合い方や作品の内容が好きだということを伝えるように努力した。
嫉妬しない、させないために。私たちレズビアンカップルの暗黙のマナー
よく考えれば、パートナーにとっての犬や赤ちゃんも、ある意味「推し」と呼べる存在かもしれない。
男性アーティストやYoutuberの「推し」に対して、パートナーがデレデレと表情を崩すことはないけれど、犬や赤ちゃんに対しては思いっきり甘い顔になるからだ。
だからといって、パートナーに「犬や赤ちゃんの話をしないで」と強要する気にはなれなかった。私が推しの話をしないのも、してほしくないのも、私自身の勝手な思いによるもので、パートナーの行動はパートナーが決めるべきだと思ったからだ。
やがてパートナーも、犬や赤ちゃんの話はするものの、思いっきり表情を崩してデレデレすることは減っていった。
お互いの気持ちを尊重して、嫉妬の対象をわざわざ相手のいるところで持ち出さない。これが私たちレズビアンカップルの暗黙のマナーのようになった。
レズビアンカップルが「嫉妬」とうまく付き合うために
漫画『きのう何食べた?』にも示されている、嫉妬心との付き合い方

今回書いたことは、あくまで私とパートナーの間のことなので、レズビアンカップルすべてに当てはまることではないと思う。
異性愛者のカップルすべてが、異性とふたりきりで会われると嫉妬するわけではないように。
私は付き合い始めた当初、自分がバイセクシュアルかもしれないと伝えたせいで、パートナーの嫉妬の種を増やしてしまっているのではないか、と悩んだ。
しかし、よしながふみ氏の漫画『きのう何食べた?』を読み、ゲイカップルの片割れ「ケンジ」がパートナーの「シロさん」に対し、性別を問わず幅広く嫉妬する姿を見て、そういうふうに嫉妬する人もいるものなのか、と少し肩の荷が下りた気がした。(関連記事はこちらNOISE:漫画『きのう何食べた?』23巻が教えてくれた、ゲイカップルの幸せのサンプル)
相手を信頼していないわけじゃないし、バイセクシュアルであろうとなかろうと、好みのタイプの同性であろうとなかろうと、好きな人が心を動かされる可能性が少しでもあるなら警戒してしまう。たとえ、手の届かない「推し」という存在であっても。
漫画の中で、シロさんはそんなケンジのふるまいを鬱陶しがりつつも、だんだん歩み寄りを見せて、ケンジが傷つかずに済むようにと配慮を重ねるようになっていく。
奇しくも私とパートナーの暗黙のマナーが、シロさんやケンジの行動とリンクしていて、きっとこの選択も間違いじゃないんだ、と思えた。
我慢するわけではなく、少しだけお互い譲り合うということが、良好なパートナーシップを続けるコツなのかもしれない。
異性のカップルよりも、関係性が離れてしまいやすいと言われるレズビアンカップルにおいては、特に。
レズビアンカップルの「嫉妬心」の現状
付き合い始めてから5年ほど経った今、パートナーも私も、お互い誰かと会うことに制限をかけてはいない。
一緒に暮らし始めてから、それぞれの友人・知人と会う時間を尊重しあおうと心がけるようになったし、ふたりでいる時間を大切にすることで、少しずつ信頼が生まれていったのかもしれない。
また、私もパートナーもお付き合いしていること、そしてレズビアンであることを親しい人にカミングアウトするようになり、誰かとふたりきりで会う機会を警戒する必要が以前よりは減ったこともある。
嫉妬の感情は一見面倒に思えるけれど、お互いの心を完全に理解するのではなく、大切な部分を侵害しないように尊重しあうように意識するための、大切なきっかけにもなる。
これからも「嫉妬」とうまく付き合いながら、レズビアンカップルとして、パートナーといい関係を続けていきたい。
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