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Writer/酉野たまご

子宮頸がん検診のすすめ。レズビアンでも、性交渉未経験であっても。

20歳以上の女性であれば、2年に1回受けたほうがいいとされている「子宮頸がん検診」。住んでいる地域の自治体から定期的に送られてくる案内を見ながら、行くべきか、行かなくてもいいものなのかとずっと悩んでいたので、初めて検診を受けることを決めた。

レズビアンでも受けるべき? 「子宮頸がん検診」の必要性

子宮頸がんを発症する主な原因は、性交渉による感染だといわれている。

これまで「子宮頸がん検診」を受けたことがなかった私

私はレズビアンで、異性との性交渉をおこなったことがない。

インターネットで調べてみると、性交渉未経験の場合、子宮頸がんのリスクはかなり低いとされている。

「リスクが低いのなら、わざわざ検診を受けに行かなくてもいいか」
「噂によると、痛いらしいし、病院も遠いし・・・・・・」

そんなふうに考えていたけれど、定期的に家に届く「子宮頸がん検診」の案内を見ていると、本当に検診は必要ないのだろうか、と疑問が湧いてきた。

奇しくもSNSにて、友人の知り合いが子宮頸がん検診で引っ掛かったという話を目にし、不安が芽生えてきたところでもあった。

子宮頸がんの原因は、本当に異性との性交渉によるものだけなのだろうか?
レズビアンである私にも、子宮頸がんのリスクはあるのだろうか?

レズビアンに子宮頸がん検診は必要ないのか?

あらためて調べてみたところ、レズビアンだからといって100%子宮頸がんにならないとは言い切れない、ということがわかった。

子宮頸がんの原因のほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によるもので、性交渉のような強い刺激で細胞に傷ができ、奥深くまでウイルスが入り込むことによって発症することが多いのだという。

異性との性交渉がなかったとしても、粘膜への刺激があれば感染の可能性はあるらしい。

つまり、男性器の挿入がなくても、つまりは性交渉相手の性別に関わらず、粘膜への接触や刺激のみで十分に感染するため、レズビアンであっても関係なく子宮頸がんのリスクはある。

また、ごくまれにHPVが原因ではない子宮頸がんの発症もあり得るそうだ。ということは、性交渉がまったくの未経験であっても、感染リスクはゼロではないのだ。

私の母方の家系には、がんで亡くなった人が何人かいる。
多少なりともリスクがあり、かつ、自治体のサポートによって検診が受けられるのであれば、やはり受けておいたほうがいいのかもしれない。

病院が苦手な私にしては珍しく気持ちを奮い立たせて、子宮頸がん検診の予約をすることを決めた。

初めての子宮頸がん検診を予約

子宮頸がん検診を受けると決めた私は早速、自治体と提携している病院を調べることにした。

初めての子宮頸がん検診、私なりの病院選び

病院選びについては、初めてということもあって、少し時間がかかった。

自治体と提携している病院は、どこも家から微妙に遠く、徒歩だと30分以上かかるのだ。
また、できれば評判のいい病院にしたいと思って口コミを調べると、予想以上に不安になってしまう書き込みを見つけてしまって、だんだん気持ちが落ち込んできた。

しかし、せっかく決心したのだからと思い、考え方を変えた。
ウェブサイトが見やすい病院にしよう、と。

ただでさえ検診の予約は気が重く、これまでも「病院の予約って面倒だなあ」「私はレズビアンだから、無理に受けなくてもいいんじゃないか・・・・・・」という気持ちが捨てきれずに、子宮頸がん検診を先延ばしにしてしまっていた。

それなら、今後も検診が必要になったときにサッと調べて予約できるよう、ウェブサイトの情報が見やすい病院を選ぶことにしたのだ。

そして、比較的行きやすい場所にある病院の情報を見比べた結果、検診専門の医療検査センターで予約することを決めた。

ウェブサイトの見やすさで選んだだけあって、予約はとてもスムーズにできた。

「検診について」と書かれたページに予約の手順がのっていて、その情報にしたがって電話をかけると、慣れた様子で話すスタッフの方が誘導してくれ、すんなり予約の日が決まった。

私は病院だけでなく「予約の電話をかける」という行為も苦手なのだけれど、背に腹は代えられない。
自分自身の健康のためだから、と勢いをつけて電話をかけたのだけど、あっさり予約が終わったのでかえって拍子抜けしてしまった。

この時点では、無事予約ができたということにホッとして、大仕事が終わったかのような気分になっていた。

子宮頸がん検診に必要な持ちものと服装

予約の電話で「検診の日に持ってきてください」と言われた持ちものは、次の2点。

・自治体から届いた検診の受診票(割引を受けられる場合がある)
・不織布マスク(医療機関なので必ずマスクを着用してください、とのこと)

そして、私が個人的に「持って行ったほうがいいかもしれない」と判断した持ちものは、次の通り。

・ドリンクボトル(待ち時間があるため、喉がかわいたときのために)
・おくすり手帳(服用している薬を伝えなければならないときのために)
・読みかけの本(待ち時間に心を落ち着かせるために)

結果的に、上記のものはどれも持って行って正解だった。

検診専門の施設ということもあってか、平日の日中にもかかわらず待合室は人でいっぱい。待ち時間のあいだは水分補給をしたり、本を読んだりして過ごしていた。

また、記入をもとめられた問診票に「ホルモン剤服用の有無(ある場合は薬の名前と服用期間)」という欄があったので、おくすり手帳を見返して、普段服用している低用量ピルの名前と服用期間を調べることができた。

さらに、検査の際は専用の服に着替えることがあるので、脱ぎやすいボトムスか、上半身までたくし上げられるスカートやワンピースを着て行くのがおすすめだ。

子宮頸がん検診の体験談―不安な感情と、たったひとつのミス

子宮頸がん検診当日。予約が終わった直後とは打って変わって、私はまったく気が進まないまま、重い足を引きずって医療検査センターへ向かった。

レズビアンだからこそ感じていた、子宮頸がん検診への不安

以前から、子宮頸がん検診は「痛いらしい」「嫌な気持ちになるらしい」という噂を聞いていた。

「痛いってどのくらいだろう」「検診でそんなに嫌なことってあるのだろうか」と疑問に思っていたのだけれど、つい数か月前、通っている婦人科で似たような検査をした際に「もしかしてこういうこと?」という気づきがあった。

レズビアンでも人によって状況はさまざまだと思うけれど、私は異性との性交渉経験がなく、同性との性交渉もあまり頻繁にはおこなっていない。

だから、普段の私が陰部にふれるタイミングは、月経の期間にタンポンを入れたり、お風呂でケアをしたりするときくらいしかない。

しかし、検査では股を大きく開き、陰部に検査用の器具を入れる必要がある。

これがかなり気持ちの悪い感触で、またデリケートな部分に他人がふれているということもあり、しばらくショックを引きずるほど不快な気分になる経験だったのだ。

子宮頸がん検診の当日になって急にそのことを思い出し、直前のキャンセルができないシステムでさえなければ、今頃逃げ出していたかもしれない・・・・・・と思った。

子宮頸がん検診を実際に受けてみて

実際に検診を受けた際、スタッフのほとんどは女性の方で、いずれもニコニコとして優しい人たちだった。

「性交渉未経験」の欄にチェックを入れた私に、おそるおそる「痛いかもしれないですけど・・・・・・」と声をかけてくれたときも、必要以上にプライバシーにふれないようにしながら私を気遣ってくれているのがわかって、少し気持ちが楽になった。

ただ、この点は私の確認不足だったのだけれど、検査をおこなったのは年配の男性医師だった。

医師が男性であるとあらかじめわかっていたら、この施設で予約はしなかったかもしれない。

婦人科で女性医師から検査を受けたときでさえ不快な気分がぬぐえなかったのに、男性医師から検査を受けることがわかると、つい体が強張ってしまった。

ボトムスや下着をすべて脱ぎ、検査用の椅子に座った私に、男性医師が「力を抜いて」と指示を出す。
指示を受けるたびに「力を抜かなきゃ」と思うのだけれど、器具の感触が不快で、痛みもあって、どうしても下半身が緊張する。

いくらカーテンで仕切られているといっても、恥ずかしいような思いもあり、涙が出そうだった。

「力を抜いて」と言われるたびに何度も深呼吸を繰り返し、女性スタッフさんのいたわりの声も遠く感じながら、なんとか検査は終了した。

終わった後、女性スタッフの方から「気分は悪くないか」と心配そうに声をかけられた。

正直なところ、今すぐ家に帰ってふとんにもぐってしまいたいくらい、痛みと気持ち悪さでいっぱいな気分だったのだけれど、強がって「痛かったけど、大丈夫です」と答えた。

待ち時間もふくめて1時間くらい。検査自体にかかった時間もほんの数分間だった。

傷みの余韻は数十分続いたけれど、その日の夜には消えていた。

レズビアンの人たちへ、私から伝えたいこと

子宮頸がん検診に抵抗のある人は「女性医師のいる病院」を選ぼう

初めて子宮頸がん検診を受けた結果、レズビアンとして個人的に思ったことがある。

それは、女性医師から検査を受けられる病院を探したほうがいい、ということだ。

子宮頸がんのリスクがゼロではないかぎり、そして自治体からのサポートがあるかぎりは、やはり検診を受けるにこしたことはない。

ただ、特にレズビアンにとっては、男性医師に検査をされるという経験がものすごくショックに感じたり、緊張のあまり必要以上に痛みを感じたりする可能性が、異性愛者の女性よりも高いように思う。

婦人科で検査を受けたときは、正確には子宮頸がん検診とは違う内容だったかもしれないけれど、比べると痛みも不快感もかなりましだった。
女性医師のほうが、感触や痛みについて知っていることが多い分、丁寧に検査をしてくれる場合が多いのではないかと推測している。

レズビアンであっても、子宮頸がん検診を受けたほうがいいと思う理由

私以外にも、子宮頸がん検診に不安を感じて、ついつい先送りにしてしまっている人がいるかもしれない。

レズビアンであればなおさら「子宮頸がんにはならない」「感染リスクが低い」と思い込んでしまい、検査の必要性を感じていない人もいると思う。

ただ、繰り返しになるけれど、相手の性別に関わらず、粘膜への接触や刺激のみで十分に感染するため、レズビアンであっても関係なく子宮頸がんのリスクは存在するそうだ。

そして、異性との性行為や妊娠・出産に縁遠い分、レズビアンは婦人科系のほかの病気に気づくことができるタイミングも限られている。

検査の方法や私自身が体験した気持ちから、もちろん無理をしてまで検診を受けなくてよいのだけれど、病気が深刻な状態になってしまう前に、いち早く気づけるよう、受けられる検診はぜひ受けておいたほうがいい、というのが私の伝えたいことだ。

どうしても検診が怖いという場合は、総合病院や検査用の医療センターではなく、女性スタッフのみの婦人科などで相談してみてはいかがだろうか。

私も次回以降は、普段通っている婦人科で検診について相談してみようと思っている。

 

■参考情報
医療法人翔光会 産婦人科にしじまクリニック
がん情報サービス
エマ婦人科クリニック名古屋栄

 

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