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Writer/あさか

カズレーザーの結婚によせて。レズビアンがバイセクシュアル女性におもうこと

先日、バイセクシュアルであることを公表していたお笑い芸人、カズレーザーが二階堂ふみと結婚を発表しました。すると、一部のSNSユーザーによる「結局は女性と結婚するのか」といったバッシングが相次ぎました。レズビアンコミュニティでも耳にすることのある「バイセクシュアル女性は結局男性とつきあう」などの、バイフォビア(バイセクシュアル嫌悪)に、レズビアンとして反論してみます。

カズレーザー結婚へのLGBTQ+コミュニティの反応

バイセクシュアルを公表していたカズレーザー

カズレーザーは、日本のテレビに出ている芸能人で数少ない、バイセクシュアルをカミングアウトしているお笑い芸人です。「芸能人 LGBTQ+」と調べると、必ずといっていいほど検索にあがってくる人でもあります。

カズレーザーは、自身のセクシュアリティについてオープンに、さまざまなところで発言してきました。例えば、以前出演した番組で、バイセクシュアルに関する質問をされ、「(男女どちらがすきなのかは)季節で変動する」「夏は露出が多いから女性がいいな~って思うんですけど、冬は男性の方がシルエットがかっこいいんです」と答えたこともありました。

結婚発表後のカズレーザーへのバッシング

バイセクシュアルとしても有名なカズレーザーが、女優の二階堂ふみとの結婚を発表したことで、祝福の声もありましたが、バッシングも相次ぎました。

・バイセクシュアルだというのは嘘だったのか?
・ほんとうは異性愛者だったのでは?
・結局は女性と結婚するのか

といった声が、LGBTQ+コミュニティの中からも外からも聞こえてきたのです。

そもそもバイセクシュアルとは、男性にも女性にも性的にひかれるという性的指向です。異性と恋愛や結婚をしたからといって、バイセクシュアルではなくなるわけではないですし、異性愛者に「なる」わけでもありません。

カズレーザーの結婚のニュースは、バイセクシュアルに対する無理解や差別があらわになってしまった一件でしたが、バイセクシュアルに対するLGBTQ+コミュニティ内の差別は、他でもよく見聞きするように感じます。

レズビアンコミュニティは、バイセクシュアル女性に厳しい?

例えば、わたしの出入りするレズビアンコミュニティも、バイセクシュアル女性に「厳しい」と感じることがあります。実際のところ、バイフォビアは、レズビアンコミュニティの中でどんな形であらわれるのでしょうか。インスタや女性同士の恋愛リアリティショーを例にとって考えていきます。

バイセクシュアル女性はタイプじゃないレズビアン?

先日、インスタを見ていたら、レズビアンのインフルエンサーが「バイセクシュアル女性はタイプじゃない」と動画内で発言し、議論をまきおこしていました。

コメント欄には
・バイセクシュアル女性に対する差別だ
・そんなことを言うべきじゃない
・バイフォビアが当たり前になってしまっている

といった批判的なものがある一方で
・この人のタイプなんだから、しょうがない
・誰でもタイプはあるはずだ

など、インフルエンサーを擁護するような人たちの発言も見られました。

わたし自身は「フェムやボイどっちがタイプか?」のように、わかりやすい外見上のタイプなら、ある程度納得できる気がします。でも「バイセクシュアルはタイプじゃない」と言うのは、差別的なんじゃないかと思います。

レズビアンコミュニティ内の、バイセクシュアルへの「厳しさ」を垣間見たきもちでした。

レズビアンバーにはバイセクシュアルであることを隠して行く?

バイセクシュアル女性がレズビアンバーに行くときは、バイセクシュアルであることを隠して行くというのも、何度か見聞きしたことがあります。

わたしの友人のバイセクシュアル女性は、以前「レズビアンバーでバイセクシュアルだと伝えたら、盛り下がるから口にしない」と言っていました。

また、以前わたしがバイセクシュアル女性と一緒にレズビアンバーに行ったときのこと。当時、そのバイセクシュアル女性にはつきあっていた彼氏がいましたが、そのことはまったく話に出ませんでした。バーテンダーさんにふられた恋愛話も「すきな女の子いるの?」というものだけでした。

このように、バーをはじめとしたレズビアンコミュニティでは「異性との恋愛話」が、ご法度になっているようにも思います。

それによって、バイセクシュアルの人たちがせっかくレズビアンコミュニティなどに行っても「隠さなければならない」と、居心地の悪い思いをしていることが多いように見受けられます。

“彼女たちの恋愛シェアハウス” のリウォンさん

今回のカズレーザーに対するものだけでなく、今までもバイフォビアが芸能人へ噴出したことがあります。

今年4月から日本でも限定的に放送されていた『彼女たちの恋愛シェアハウス ~To Get Her~』という、韓国の女性同士の恋愛リアリティショーにまつわる議論です。

キャストのひとり、リウォンさんが、誹謗中傷を受け、同番組が一時放送を休止したことがありました。

リウォンさんに対するバッシング内容には、さまざまなものがありましたが、そのうちのひとつが「リウォンさんは異性愛者だ」という決めつけでした。

根拠になっていたのは、リウォンさんが番組出演以前に男性とお付き合いしていたことです。本人もこれに関しては認めていますが、自身は「今は女性を愛する女性です」と反応しています。

繰り返しになりますが、異性とお付き合いをしていたことがあるからといって、異性愛者であるとは限りません。

異性との交際経験を理由に「この人は異性愛者だ」と言うことは、バイセクシュアルやパンセクシュアルの存在をまったくないものとしてしまっていて、まさにバイフォビア・パンフォビアです。

バイセクシュアル女性は結局男性と結婚する?

レズビアンコミュニティにおけるバイフォビアがどのように噴出しうるのかが少し見えてきたところで、レズビアンでありノンバイナリーであるわたしがバイフォビアにどう反論できるのか考えてみました。

男性を「選ぶ」?

「バイセクシュアル女性は結局男性と結婚する」という文章には、あたかも女性同士が結婚できるようなニュアンスが含まれています。「女性同士でも結婚できるのに、男性を選ぶ」みたいなイメージです。

でも、実際は、みなさんがご存じの通り、今の日本の法律では、同性婚はできません。

ですから、結婚したバイセクシュアル女性たちが、男性を「(積極的に)選んで」いるとは限りません。戸籍上は女性の人にとって、戸籍上男性以外の人との結婚は、現状は不可能だから、異性婚をしたという人もいるかもしれません。

パートナーシップ制度と比べ、法律婚をすると、配偶者控除や法的相続、離婚時の財産分与、遺族年金のうけとりなど、さまざまなことが保障されます。

そのため「結婚したい」といった願望から結婚している人だけでなく、法律婚をしないと生活が苦しくなる人もたくさんいます。結婚して、自分の「家」から出たい人もいるでしょう。

逆に、どのようなセクシュアリティであっても非婚主義者など、結婚はしないと決めている人もいます。結婚する・しない理由は人によってさまざまです。

そんななか、バイセクシュアル女性たちだけが、結婚した理由を「女性より男性を選んだ」というふうに単純なかたちで理解されるのは、おかしいと思います。

レズビアンが被害者で、バイセクシュアルが加害者?

「バイセクシュアル女性は、結局男性と結婚する」という言説は、あたかも「裏切る」方がバイセクシュアル女性で「裏切られる」方がレズビアンというような錯覚をもたらします。

でも、実際には、結婚しているレズビアンもいれば、パートナー関係にあった女性が結婚すると言って離れていってしまって「去られた」バイセクシュアル女性もいるはずです。

必ずしもいつも「去られる」方がレズビアンで「去る」方がバイセクシュアル女性、ではないと思います。

いないことにされるトランスジェンダーやノンバイナリー

LGBTQ+の結婚にまつわる議論で、置いていかれがちなのがトランスジェンダーやノンバイナリーです。

結婚したレズビアンやバイセクシュアル女性、パンセクシュアル女性のなかには、戸籍上は男性のトランスジェンダー女性やノンバイナリーと結婚した人もいると思います。

「結婚ができない vs できる」「レズビアン vs バイセクシュアル女性」「ゲイ vs バイセクシュアル男性」と単純に図式化されるなかで、トランスジェンダー女性のレズビアンや、ノンバイナリーのバイセクシュアル、トランスジェンダー男性のゲイなどが、いないことにされているようにも感じます。

去年、日本初男性同士の恋愛リアリティショー『Boyfriend』でコメンテーターをつとめ、ドラアグクイーンとしても有名なドリアン・ロロブリジーダが、トランスジェンダー男性のキラと結婚したというニュースがありました。

かれらのように、戸籍上は男女であるから結婚したけれども、実際は男性同士のカップルである人たちは、今までもたくさんいます。

このように「バイセクシュアル女性は、結局男性と結婚する」という言説は、バイセクシュアルだけでなくトランスジェンダーやノンバイナリーも排除してしまっています。

LGBTQ+は、レズビアンやゲイだけではない!

バイセクシュアルやパンセクシュアルの人たちは「同性愛者vs 異性愛者」という構図のなかで、ふたつに引き裂かれてしまうことが多いのだと思います。

性的指向に関して想定されている「クィアネス」や「LGBTQ+らしさ」は、結局のところ「同性愛」だということもいえそうです。

でも、当たり前ですが、LGBTQ+の中には、レズビアンやゲイ以外にも、トランスジェンダーやノンバイナリー、アセクシュアル、アロマンティック、クワロマンティックなどなど、さまざま存在しています。

プライドパレードに参加するとよく思います。

一見「シスヘテロカップル」に見える人たちが、実は

・ノンバイナリー同士のカップルだったり
・片方がバイセクシュアルだったり
・パンセクシュアル同士のカップルだったり
・トランスジェンダー同士のカップルだったり
・トランスジェンダーとノンバイナリーのカップルだったり
・アセクシュアルとパンセクシュアルのカップルだったり

そしてもちろん、パートナーがいなくても、いたことがなくても、バイセクシュアルである人、レズビアンである人、パンセクシュアルである人、ゲイである人たちなどもみな、LGBTQ+コミュニティの一員です。

かれらの誰もが、コミュニティから排除されず、居場所を見つけられるのが理想です。

バイセクシュアルやパンセクシュアルをターゲットにして責めるなどして、LGBTQ+コミュニティ内部でいがみ合うのではなく、差別的な今の日本の制度に一緒に抗いながら、内部にもある差別や偏見をなくす努力を、わたしもしていきたいと思います。

 

■参考情報
幻冬舎plus『同性カップルと事実婚、法律婚は、権利がこんなに違う一覧』
デイリー 『ズレーザー バイ男女好みは「季節で変動」』

 

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