2025年7月1日から、世界的なハンドメイド化粧品メーカー・LUSH(ラッシュジャパン合同会社)が、同性婚の法制化を求めるキャンペーンを開始しました。LUSHによる同性婚法制化のキャンペーンは、今回で3回目になります。今回はどんなおもいでキャンペーンを展開しようと考えたのでしょうか。
LUSHのDEIに関する取り組み
世界的な大企業であるLUSHが、超大国アメリカと「闘う」姿勢を明確にしていることからも、真剣な姿勢が感じられます。
LUSHの「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンは、3回目

LUSHはこれまで2回、同性婚法制化を目指して活動する団体「Marriage For All Japan」(マリフォー)」をサポートしながら、キャンペーンを展開してきました。
第1弾となる2022年3月については、こちら(NOISE記事「〜結婚の自由をすべての人に〜 LUSHが同性婚法制化に向けた啓発キャンペーンを開始」)の記事で書いています。第2弾となった2022年6月は、その翌月に控える参院選を見据えたものでした。
そして今回、またもや参院選が間近に控えたこのタイミングで、LUSHは同性婚法制化を実現させるべく、キャンペーンを展開しています。
このタイミングでキャンペーンを実施することの重要性から、急遽開催が決定したのは約1カ月半前とのこと。急ピッチで準備が進められ、無事7月1日からキャンペーンがスタートしました。
社会の空気に流されない

LUSHは、単なる化粧品メーカーの座にとどまらず、これまでも同性婚法制化だけでなく、動物愛護などさまざまな分野にわたって、社会活動を展開してきました。
一方、2025年1月にアメリカでトランプ氏が大統領の座に返り咲いてからというものの、多様な人々がともに働くことを表す概念「Diversity(多様性)・Equity(公平性)・Inclusion(包括性)」(DEI)の推進を中止する企業が相次いでいますよね・・・・・・。
ですが、この「ご時世」にもLUSHは素早く反応しています。実は、大人気商品であるバスボムのうち3種類の商品名を「ダイバーシティ」「エクイティ」「インクルージョン」に変更したのです!
あえて社会の空気に逆らう企業の姿勢からも、LUSHがどれだけDEI推進に本気なのかがわかります。
しかも、米国連邦政府機関におけるDEIプログラムの中止を促す大統領令に署名がなされてからわずか2日後に、LUSHはアメリカで展開されている商品名を変更しました。会社全体が、DEI推進を常に実行し、その姿勢を今こそ示さないといけない! と強く思っていないと、大企業がこれだけのスピード感で商品名を変更できないはずです。
現在では、日本を含む全世界において商品名が変更されています。実は、取材した際にお土産としてこの商品をいただいたので、使うのが楽しみです(でも、もったいなくてまだ使えていません)。
同性婚法制化に向けて、LUSHが「主体」に
今回はマリフォーを「サポート」するだけではなく、LUSHがより主体性をもって動きます。
同性婚法制化を店舗で応援

今回のキャンペーンでは、マリフォーと同じように「結婚の自由をすべての人に」をスローガンとして、日本全国78実店舗で7月9日まで展開されます。
LUSH SPA 新宿店、LUSH 原宿店、LUSH 神戸三宮店の3店舗では、ハート形のシールにメッセージを書いて、窓に貼ることができます。店舗の外からでも、ハートの数がどんどん増えていく様子を視認しやすくするためです。
しかも、LUSH 神戸三宮店は1階の窓にメッセージを貼るので、商店街を通るかたに店外からもアクションの様子が見えるようになっているとのこと。
それ以外の日本全国にあるLUSHの店舗では、同性婚法制化を応援する姿勢を示す、小さいハート形のシールを貼れるパネルが設置されています。
LUSH SPA 新宿店は、2025年6月にオープンしたばかりの新しい店舗で、新宿駅新南口のNEWoManの向かいに位置しています。
同性婚法制化をネットで応援して、国会議員に働きかける

7月9日までに、実店舗に足を運ぶことは難しい人は、オンラインで署名に参加することも可能です。LUSHは、7月31日までオンライン署名プラットフォーム「Change.org」にて署名を集めています。
そして、実店舗で募ったメッセージやシール、オンライン署名をもとに、参院選後、各政党の党首に同性婚法制化の要望書を提出することが、キャンペーンのゴールです。
注目すべきなのは、要望書を提出するのはマリフォーではなく、LUSHであるということ。社会活動を行う団体をサポートする企業はあれど、企業そのものが政治家に直接働きかけることは、企業が利益拡大を見据えて行うロビー活動以外では珍しいのではないでしょうか。
なぜLUSHは同性婚法制化のためにそこまで行動するのか
以前の記事にも書いた通り「結婚の自由をすべての人に」訴訟が展開されているかたわらで、LUSHはマリフォーをはじめとする団体と共に活動してきました。訴訟では、高裁でも続々と違憲判決が下されているにもかかわらず、国会ではまだ本格的な議論が始まってすらいませんよね・・・・・・。
こうしたなかで、LUSHは次のような考えで、今回から踏み込んだアクションを取ることにしたそうです。
・・・・・・一刻も早く同性婚の法制化を実現するには、同性婚の法制化に賛同する声が、支援団体や訴訟原告からだけではなく、企業を含めた社会全体からもあがっている事実を作り、その可視化された声を国会議員に直接届け認知させる必要があると考えます。
現時点で、高等裁判所では5つの違憲判決が出ています。また2023年FNN世論調査では、全世代のうち7割以上が同性婚を法律で認めることに賛成、20代においては9割以上が賛成するという前向きな結果も。
そんななか、国会が動かないことがもどかしい・・・・・・。
そんな私たちのおもいを、世界的大企業として受け止めて行動するLUSHには、私たちもあきらめちゃいけない! と、励まされますね。
同性婚法制化に対する人々のおもい
LGBTQの人も、そうでない人も、企業も一緒に声を上げてくれていると、うれしくなるものですね。
ブランドコミュニケーションマネージャー・小山大作さんのおもい

先ほども書いたように、残念ながら世界的にDEI推進は後退しています。そんななかでLUSHがキャンペーンを行う理由をあらためて小山さんにうかがうと「世間が抱く、LUSHへの期待に応えたい」と話してくれました。
今まで熱心に社会活動を行ってきたLUSHに対し、お客さんをはじめとする周囲の人たちから「LUSHならアクションを起こしてくれるはず!」と頼りにされているそうです。
実際、これまでの「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンの際には、アウティングを懸念してわざわざ家から遠い店舗まで足を運んだ当事者や、家族などの身近な存在には言えないけれどLUSHの店員にはカミングアウトした当事者がいたとのこと。
私自身を含めて「LUSHを応援したい」「LUSHなら安心できる」と感じているLGBTQ当事者が多いのですね。
また、LUSHのYouTubeでは、同性婚法制化に向けた内容が投稿されると、賛否両方の意見が寄せられます。でも、否定的なコメントを削除したり、コメント欄そのものを閉じてしまったりすることはしていません。
はたから見れば「炎上」しているかもしれません。ですが、企業というプラットフォームを社会に提供し、人々が社会問題を通してつながるためのハブになることが、LUSHの役割だと考えているそうです。
ほかの日本の大企業のように「事なかれ主義」ではなく、議論や衝突、批判を恐れない。LUSHのぶれない姿勢に感銘を受けました。
LGBT当事者ではないけれど、同性婚法制化のために声を上げる
7月1日のキャンペーン開始日に、LUSH SPA 新宿店に足を運ぶと、早速シールにメッセージをしたためている若者がいたので、お話をうかがいました。
中学生だという平野さんと彩那さんは「結婚の自由をすべての人に」訴訟は知らなかったそうですが、日本で同性婚が実現していないことはTikTokで知っていたそうです(社会問題に関心を持つ入口もTikTokなのか! と、ジェネレーションギャップに改めて驚きました)。
今回は「LGBTQの当事者ではないけれど、自分たちの一言で社会が変わったら」というおもいで、メッセージをしたためていました。
2人は、LUSHがキャンペーンを展開していることについて「企業が社会活動をすることで、いい社会になると思う」「LUSHがキャンペーンをやってくれてうれしい」と感じていると言います(見知らぬ大人に突然質問されても、社会問題に対して自分の意見を堂々と述べられる中学生たち、しっかりしすぎ!)。
お客さんを巻き込みながら展開しているLUSHのキャンペーン。同性婚法制化に賛成する意見が集まる現場を目撃して、LUSHと2人には「一緒に声を上げてくれて、ありがとう!」と、温かい気持ちになりました。
こうして集まった一人ひとりの声が、国会議員に届きますように、国が動きますように・・・・・・と、あらためて願わずにはいられません。
■参考情報
・結婚の自由をすべての人に:同性婚の法制化を求める3回目のキャンペーン(ラッシュジャパン合同会社)
・多様性・公平性・包摂性の言葉の可視化向上を目的に3種類のバスボムの商品名を変更:多様性・公平性・包摂性の言葉の可視化向上を目的に3種類のバスボムの商品名を『ダイバーシティ』『エクイティ』『インクルージョン』に変更(ラッシュジャパン合同会社)


