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Writer/shu

居場所としての「拡張家族」がほしい。クワロマンティックの私の家族像

私が今後家族をつくるなら「拡張家族」がいいなと思っています。憧れるのは、私が愛してやまないNHKの朝ドラ『ちゅらさん』に登場するアパート「一風館」の住人たちのような関係性です。今回は、私が思い描く理想の「拡張家族像」について話します。

マジョリティな家族のかたちとクワロマンティックの私の間にある深い溝

「家族をイメージしてください」と言われたら、あなたはどんな家族をイメージしますか? 多くの方は、お父さんとお母さんがいて子どもがいる、そんな映像を思い浮かべるかもしれません。

クワロマンティックの私の悩みどころ

そもそも家族っていろいろなかたちがあっていいはずです。

子どもがいない夫婦、養子を迎え入れた家族、祖父母との同居、同性同士のカップル、独身とペットの暮らし、ひとり親の家庭、通い婚や週末婚の夫婦ーーーーーーすでにいろいろな形が存在しますよね。

それなのに「家族」と聞いたときに思い浮かぶのは、やはり “父・母・子” といった映像ではないでしょうか。クワロマンティックの私も同じです。

でも、私がこれからつくるかもしれない家族は、おそらくマジョリティな家族ではないだろう、とうすうす勘づいています。なぜなら、「恋愛感情と友情を区別できない/したくない」クワロマンティックの私にとって、家族をつくるということの想像がつきづらいからです。

恋人ができて、結婚して、子どもが生まれて・・・・・・という流れで、自分が家族を築いている姿を思い描けないんです。

「拡張家族」にビビッときた

新しく築く家族を想像できない私が、数年前に知ったのは「拡張家族」という家族のかたちです。「拡張家族」は、血縁関係や婚姻だけにとらわれない、さまざまなつながりの人同士で暮らす家族のあり方のこと。

職業も年齢もバラバラで、子どもがいる家族もいれば独身の人もいる。家事や育児などさまざまな場面で、お互いに頼り合い、できる人ができることをやる。子どもはみんなで育てる。

そんな家族のあり方が世の中にあることを知って、「こういう環境ってすてきだな」と思うのと同時に、私がほしい家族って、もしかしたら「拡張家族」かもしれないと思いはじめました。

憧れの拡張家族は『ちゅらさん』の「一風館」

『ちゅらさん』は、2001年4月〜9月に放送されたNHK朝の連続テレビ小説の第64作。主人公・古波蔵恵里(愛称:えりぃ)を国仲涼子さんが演じ、看護師として、母として成長する物語です。

『ちゅらさん』における「一風館」は私が憧れる拡張家族

沖縄の小浜島で生まれたえりぃは、小学生のとき、事情があって東京から島にやってきた1歳年上の少年・上村文也と結婚の約束をします。時が経ち、えりぃが上京して暮らしはじめたのが「一風館」というアパートです。

朝ドラフリークである私が、小学校一年生のときに放送された『ちゅらさん』。今でも大好きな朝ドラです。「一風館」は、えりぃが10代〜30歳前後までの多くの時間を過ごした場所で、この「一風館」の住人たちのつながりこそ、私の憧れの「拡張家族」だなと思っています。

えりぃが上京してきたときの住人は、
・みづえさん(夫とは死別。一風館の管理人。住人たちをやさしく見守っている)
・島田さん(妻とは死別。かつては医者だった。少々頑固なところがある)
・容子さん(独身。旅行代理店で働いている。朗らかな性格)
・柴田さん(独身。製薬会社の営業職。温厚な人柄)
・真理亜さん(独身。メルヘン作家。皮肉屋)

で、職業も年齢もバラバラで個性のある面々。

夜になると、女性陣は真理亜さんの部屋で、男性陣はリビングで世間話をするのが恒例。2週間に1度はみづえさんの手料理をみんなで食べたり、えりぃの家族や同僚が遊びに来たりします。

えりぃがいることで、一風館はいつも明るい雰囲気に包まれていますが、逆にえりぃが壁にぶつかって暗くなっているときは、みんなでリビングに集まって話し合い、容子さんや柴田さんは自分の社会人経験からやさしいアドバイスを、真理亜さんは少し厳しいけど、的を射た意見でえりぃの背中を押します。

やがてえりぃと文也くんが結婚し、子どもが生まれます。医師である文也くんと、看護師であるえりぃの忙しさを見て、住人たちが保育園の送り迎えを手伝ったり、一緒に出かけたりと、みんなで子どもを育てる様子が描かれています。

これってまさに「拡張家族」じゃないですか?

私は真理亜さんになりたいのかもしれない

私は、この住人たちの立場でいうと、真理亜さんになりたいのかも、と思っています。それはなぜか。

物語が進むと、みづえさんと島田さん、容子さんと柴田さんはそれぞれ結婚し、独身は真理亜さんだけになります。

家族仲が良くない環境で育ったことが影響して、真理亜さんは結婚しないことを周囲に公言しています。

でも、子ども好きな一面もあって、えりぃと文也くんの子どもと楽しく触れ合う姿も描かれています。それに、皮肉なことを言いながらも、家族のような存在ができたことには、内心うれしく感じているのです。

私と真理亜さんは、物書きという面は同じだけど、育ってきた境遇や結婚に対する考えは異なります。

でも、真理亜さんの一風館の中での立ち位置が、うらやましいなあと思うのです。子どもは好きなので身近にいるのはいいなあと思いますし、一風館にいれば、シングルでいたとしても孤独にはならずに済みますから。

私が描く理想の拡張家族

居場所としての拡張家族がほしい

孤独にはならずに済む・・・・・・。

そんな想いが出てきたとき感じたのは、「あ、私って居場所のひとつとして拡張家族がほしいんだな」ということ。

私にとって居場所は、「いざとなったとき頼れる存在」みたいな感じ。つらいことや悩みを、なんのためらいもなく話せる人がいると思えるだけで私は強くなれます。そんなふうに、心の依存先となる人が私には必要なんです。

それに、拡張家族って距離感がちょうどいいんですよね。いつも一緒にいるわけではないけど、たまに一緒にごはんを食べたり、悩みがあれば相談に乗ったり。

そうして、干渉しすぎず、心地の良い距離感でいることで、私は穏やかに暮らせるような気がします。

私はただともに生きていきたいだけ

クワロマンティックの私は、きっと “父・母・子” のような多くの人が築く家族のかたちは取れないんじゃないかって思っています。結婚することや子どもを持つことにも現実味はない。それでも私は、誰かとともに生きていきたい。

世の中には、さみしい思いをしている子どもがいたり、いつの間にか孤立して助けを求められくなった大人がいたりします。人は人に助けを求めていいはずなのに、そんな現実が存在することに嫌気がさします。

だったら私は、そんな存在に気づいて、その人の居場所になれたらいいなとも思うんです。誰かの拡張家族になれるかもしれない。
と本気で思っています。

 

■参考情報
シェアハウスで子育て「拡張家族」を実験 石山アンジュさん 親子もシングルも (GLOBE+)

 

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