職場でのカミングアウトは自分らしくいるために大切なことですが、なかなか勇気が必要です。人それぞれ状況や事情も異なるので、簡単に伝えられないのが正直なところでしょう。今回は社会人のレズビアンの私がカミングアウトとの向き合い方を赤裸々に語ります。
レズビアンの私、職場でカミングアウトしたことがない
実のところ、私は自分がレズビアンであること、そしてパートナーが同性であることも職場の人に伝えたことはありません。しかし、私としては「職場では絶対にカミングアウトしたくない!」と思っているわけではなく、どちらかというとカミングアウトに対するハードルは低めです。
カミングアウトへのスタンス
私は、職場で自分のプライベートの話をそもそもあまりしないタイプです。
ただ、もし恋愛や結婚の話の流れで、職場の人から深く追求されたときには、レズビアンであることをカミングアウトするスタンスではいます。
とはいえ、これまで私が勤めていた会社の多くは「ハラスメント防止のため、従業員のプライベートはむやみに聞かない」という方針だったので、恋愛や結婚などについて、根掘り葉掘り質問されることはほとんどありませんでした。
それは、私が現在働いている職場も同じです。
つまり私は、話の流れによってはカミングアウトするつもりではあるものの、まだその機会がない・・・・・・という状況が続いている形です。
レズビアンのパートナーがいることは?
社会人のレズビアンが、職場で自分の性的指向を明かすか迷う場面で特に多いのが、パートナーの有無を聞かれたときではないでしょうか。
たとえば、「私の地元は〇〇ですが〇年前に横浜に引っ越して、それ以来ずっと横浜に住んでいます」とこちらが話すと、「今は一人暮らしなんですか?」「引っ越した理由はご家族の都合とかですか?」といった質問をされることがあります。
そういった質問に対して、私は「今はパートナーと二人暮らしです」「引っ越した理由の1つはパートナーの転職ですね」と答えています。
そこから、パートナーとは彼氏なのか旦那なのかと話を掘り下げられたら、はっきりと同性パートナーと伝えるつもりです。
ですが幸いなことに、現在の職場でパートナーとの関係性について深く聞かれたことはまだありません。
レズビアンの私が考える “カミングアウト” との向き合い方
30代に突入し、私が職場でカミングアウトする日も近そうだなと感じています。カミングアウトという選択肢を前に、自分らしくいるためのカミングアウトとはどんなものか、自問自答を繰り返しています。
結婚について聞かれたときの私の回答
職場の人との雑談の場では夫や妻、子どもなど家族の話がよくあがります。
「週末、家族で〇〇へ行った」「もうすぐ受験なのに、子どもが全然勉強しない」など、みなさん自然に家族の話をされます。
そうした会話の流れで、「そういえば、〇〇さんって結婚されていたんでしたっけ?」という言葉をかけられることがあります。
そういったとき、私はいつも「うちは結婚はしていなくて、事実婚ですね」と答えています。すると、それ以上質問されることはほぼありません。
事実婚を選ぶ理由(この場合、男女カップル)は、カップルによってさまざまです。夫婦別姓を希望していたり、そもそも婚姻制度のあり方について疑問を抱いていたり、両親や家族から反対されていたりと、事情はカップルによって異なります。
そのため、私を異性愛者だという前提で話を進めている相手の場合、「事実婚ということは、結婚しない・できない理由が何かあるはず。これは触れていいのだろうか・・・・・・?」と察して、深く聞かないでいてくれることがほとんどです。
私が職場でまだカミングアウトせずにいられる理由には、こうした含みのある伝え方のおかげでもあると思っています。
「レズビアンです」というカミングアウト、そのあとは “質問した側” の問題
カミングアウトをしたあとの相手の反応は、どうしても気になってしまうものです。相手を困らせたらどうしよう、気まずくなったらどうしようと、ついついその先のことを考えて不安になってしまいます。
こういった場合、私は「レズビアンだとカミングアウトしたあとは、質問した相手の問題」と考えるようにしています。
たとえば恋愛や結婚の話題で、これまでの恋愛や結婚の有無、パートナーの話などを職場の人から振られたとしましょう。その場合、こちらを「異性愛者である」という前提で話題を振っているケースがほとんどだと思います。
同性愛者だと想定していないうえで質問するわけですから、素直に「レズビアン」とカミングアウトすれば、予想外の回答に相手がうろたえてしまうこともあるでしょう。
とはいえ、どんな回答が返ってこようとも、それは質問した側の責任だと私は捉えています。
「聞かれたから、答える」だけなので、そのあとの反応や対応は、すべて相手側にゆだねることにしています。
カミングアウトする際に気をつけたいこと
カミングアウトするなら、アウティングされる可能性も考えておく
カミングアウトしたあとのことは、すべて相手側にゆだねる──といっても、アウティングされてもいいというわけではありません。
ただ、カミングアウトする以上は、アウティングの可能性も考えておく必要があると思います。
「この人は、むやみに私のセクシュアリティをいいふらさない人か」
「ジェンダーやセクシュアリティについて、古い考え方をしていないか」
「差別意識のある人ではないか」
カミングアウトするときは、上記のように相手を見極めることも、身を守るうえで大切です。その際、私は相手と自分の関係性、つまり親しさは切り離して考えます。
どんなに職場で仲のよい人であっても、その人がLGBTQ+に寛容であるとは限らないからです。
悪気なくアウティングしてしまう人もいる
差別や偏見がない人は、アウティングにつながらないかといえば、そうではない場合も。
LGBTの存在が特別ではないと思っているからこそ「あたり前のこと」として、悪気なく周囲にいいふらしてしまう人もいます。
私の働きやすさを思いやったり、よかれと思って上司や人事に打ち明ける人もいると、聞いたこともあります。
もし恋人や家族について質問されたときは、自分のセクシュアリティを安心して話せる相手なのか、自分のなかで考えてから伝えようと思っています。
そして、ここだけの話に留めてほしい場合は、カミングアウトする際に「アウティングをしないでほしい」と言葉を添えるのも大事かなと思います。
職場でカミングアウトしても、しなくてもいい
聞かれたら答えるスタンスの私ですが、聞かれたからといって無理にカミングアウトする必要はないと考えています。
まだ相手との関係が浅く、相手がLGBTQ+に理解があるかどうかわからないときは、話さないことにしています。
また、カミングアウトしていいか迷う場合は、いいよどむことも大切です。
相手から怪訝に思われないよう、つい平静を装いたくなりますが、とまどいを素直に表現するのもコミュニケーションの1つだと思っています。
「えっと・・・・・・」「うーん」など、歯切れの悪い反応は相手を不安にさせてしまう可能性があります。
ただ、このように “迷い” を表に出すことで、相手が「この話題は触れないほうがいいかもしれない」「深入りしすぎたかもしれない」とこちらの気持ちを推し量ってくれるパターンもあります。
そう、無理して話さないことが大切。そして「いいよどむ」という表現もあります。
過度に取り繕わずに、素直に感情を表現することを、私は現在進行形で実践しているところです。
カミングアウトするかどうかは個人の自由であり、正解はありません。大切なのは、自分にとって最も安全で、心地よい選択をすることです。
この記事が、職場でのカミングアウトについて考える助けになればうれしいです。