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Writer/きのコ

ポリアモリーは ”自己愛が強い” のか? 他者の尊重と優先について

複数の人と同時にそれぞれが合意の上で性愛関係を築くライフスタイル「ポリアモリー」。当事者である私のもとには、日々さまざまな質問やお悩みが届く。今回は「ポリアモリーは自己愛が強いのではないかと思う。自己より他者を優先・尊重することはあるのか?」という質問にお答えする。

ポリアモリーにおける自己愛と他者尊重が交錯する恋愛関係のあり方

ポリアモリーの恋愛における優先と尊重

今回は「お付き合いにおいて誰をどのように優先あるいは尊重するか」ということについて、考えてみたいと思う。

以前、こういった質問をいただいたことがある。

「恋人を悲しませないためにその恋人を何よりも優先させるという事はありますか?

例えば、恋人に悲しい出来事が起きて落ち込んでいる時に、もう1人の恋人とデートの約束があったらそれを取りやめるというような事です。

お話を伺っていると、ポリアモリーの特徴として自己愛が他人への愛情より勝るために嫉妬や独占欲を感じにくく、自己の複数人への愛情を優先させる傾向にあるのではないかという疑問が湧きました。

ですので、ポリアモリーの愛情において、他者を自己より尊重するということがあり得るのかを教えていただきたいです。」

緊急時の優先判断

恋人を悲しませないために、その恋人を何よりも優先させるということは、私にはあり得る。

ただし、例にあるように「恋人に悲しい出来事が起きて落ち込んでいる時に、もう1人の恋人とデートの約束があったらそれを取りやめる」かどうかについては、「どうするかは実際そういうことが起こってみないと分からない」と言うしかない。

「父親と母親が溺れ死にそうになっていて、浮き輪が1つしかないなら、どちらに投げますか?」とかいう質問と似たような感じだといえる。

チームとしての恋愛関係

実際のところ、恋人に悲しい出来事が起きて落ち込んでいる時に、もう1人の恋人とデートの約束があったら、もう1人の恋人と一緒に、落ち込んでいる恋人を慰めに行きたいと思う。

皆でチーム的にお付き合いしている以上、カップル内の誰かが落ち込んでいたり困っていたりする時には、他の皆でその人を支えられるような関係でいたい。

ポリアモリーにおける自己愛と他者尊重のバランス

 

自己愛とは何か

「ポリアモリーの特徴として自己愛が他人への愛情より勝るために嫉妬や独占欲を感じにくい」ということについてだが、そもそも “自己愛” とは何だろうか。

これは文字通り自分を愛する心のことで、人間が生きていくうえで必要なもの。

「自己愛性パーソナリティ障害」などという病気もあって、自己愛は自分自身への独りよがりな陶酔としてネガティブに捉えられがちだが、自己愛それ自体が悪いもの、というわけではない。

健全な自己愛と他者尊重

人は誰しも自分の中に、良い面と悪い面とをもっている。そのどちらをも含めて自分で自分を受容し、自分で自分の味方になることが健全な自己愛のあり方だといえる。

自己愛が他人への愛情より勝るのは自然なことだ。安定した自己愛をもっていて、自分で自分の機嫌を取る力があれば、確かに嫉妬をしにくくなったり、独占欲を感じにくくなったりするということはある。

尊重と優先の違い

最後の「他者を自己より尊重する」というのは、最初の「他者を自己より優先する」と同じ意味だろうか。

細かい言葉遣いの話だが、私は、尊重と優先とはかなり意味の違う言葉だと思っている。

人は誰でも、他者と自己とを優先順位をつけずに等しく尊重することができるし、双方を尊重したうえで恋人を優先することも、自分を優先することもできるものだと考えている。

ポリアモリーだけなのか? 自己愛と他者尊重のバランス

全体を通して質問している人が言いたいのは「自分のやりたいことを我慢してでも、他者(恋人)を優先することがあるのか? ポリアモリーは自分勝手でいつでも自分の都合を優先するのではないか?」ということだと思われる。

これに関しては、もちろんポリアモリーであってもモノガミーであっても「自分を優先することも、恋人を優先することもある」といえるのではないだろうか。私自身もそうだ。

自己犠牲と自己尊重

自己犠牲と健全な自己愛

私だって、恋人のために自分のしたいことを我慢することがないとは言えない。

ただし、それをずっと続けていると、自分の自尊心や主体性が損なわれていってしまうと思う。程度が過ぎればモラルハラスメントになってしまう可能性もある。

私はとあるパートナーとお付き合いしていた頃、最後にはモラハラによって主体性や自己肯定感が失われ、自分のしたいことや言いたいことを大切にできなくなり、いつも彼を優先して我慢してしまう時期があった。

究極の状況においては、自分を優先することによって自分の尊重を取り戻すべき場合もあると思う。

日本文化と自己愛

滅私奉公とか自己犠牲という言葉に表されるように、自分を捧げて他者に尽くすことを尊いと見なす文化が日本にはある。

それはそれで美しいものだと思うが、その規範意識に囚われすぎると、自分を大切にすることができなくなり、自己愛が不健全な状態に陥ってしまう。

また、その価値観を他人に押し付けることで、他人の自己愛を損なってしまう場合もある。

自己尊重と他者尊重の共存

まずは自己を尊重するからこそ、他者をも尊重することができる。そのうえで、自分を優先してもいいし、他人を優先してもいい。

基本的には自分を尊重するし自分を優先してもいい、と心に決めておいてこそ、普段は自分の気持ちに余裕をもって、時には恋人を優先したりできるのだと思う。

自己と他者とは、椅子取りゲームのように「どちらか一方しか尊重できない」というようなものではないし、誰しも常に恋人を自分より優先しなければならないものでもないことを、忘れないでいたいものだ。

■参考情報
自己愛 | 時事用語事典

 

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