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Writer/雁屋優

「ハッピープライド!」と素直に言えないLGBTQで障害者の私が、レインボープライドを捉え直す

新型コロナウイルスの感染拡大で中止や延期になっていたレインボープライドが各地で復活しつつある。2022年9月17日、18日に行われるさっぽろレインボープライドもその一つだ。しかし、私自身、レインボープライドに乗りきれない気持ちも抱えている。レインボープライドを巡る私の思考から、レインボープライドについてそれぞれ考えてみてほしい。

LGBTQで障害者の私が、レインボープライドに抱く違和感

レインボープライドは本当に「あらゆるセクシュアルマイノリティ」のためのものだろうか。

LGBTQの私とレインボープライドとの関わり

私が自身のセクシュアリティがマジョリティに属するものではないことを自覚してから、レインボープライドの存在を知るまでには数年を要している。そして、参加を迷う頃には、新型コロナウイルスの感染拡大で各地のレインボープライドが中止や延期、オンラインのみでの開催となっていたのだった。

先日、とあるご縁で東京レインボープライドのオンラインイベントに登壇させていただき、カミングアウトについて、「カミングアウトのメリットとデメリットを天秤にかけて判断していて、結果家族にはカミングアウトしていない」と話してきた経験もある。

どこのレインボープライドにも足を運んだことのない身でありながら、東京レインボープライドのオンラインイベントに登壇した以上は、レインボープライドに無関係とはいえない。

しかし、「東京レインボープライドのオンラインイベントに登壇したし、さっぽろレインボープライドにも行って場の空気を味わってみよう!」と単純に思えない私がいる。私はLGBTQではあるが、レインボープライドに複雑な思いを抱えているのだ。

パレードに参加できないLGBTQの存在

企業や団体がさまざまなブースを出展し、LGBTQへの理解啓発につなげようとする。人々が行き交い、レインボーに染まる一帯。私が写真や映像で見たレインボープライドはこのようなシーンから始まって、徐々に盛り上がり、イベントの目玉であるプライドパレードの様子が映し出される。その様子は本当に楽しそうで、見ているこちらまで気分が上向きになる。

それでも、私は “プライドパレードに参加する自分” を想像できない。大きな理由として、私はLGBTQであるだけではなく、障害者でもあることが挙げられる。遺伝疾患、アルビノゆえに日焼けを避けなくてはならないし、太陽の眩しさは人より強く感じる。発達障害特性もあって、パレードの長い距離を人に見られながら歩くことも苦手で、そのための体力もない。

とはいっても、私は、本気でプライドパレードに参加したいと思えば、多少無理をして参加できる側なのだろう。日焼けや眩しさはグッズで対策すればどうにかなるし、前日までに睡眠や食事、休養をしっかり確保して、人に見られることに関しては自身のスイッチを切り替えれば、参加できないこともない。

しかし、多少の無理をしても、プライドパレードに参加できないLGBTQ当事者もいるだろう。2022年9月17日、18日開催のさっぽろレインボープライドにおいて、18日に開催されるパレードのコースは全長約3kmとある。家から出ること、全長約3kmのコースを歩くこと、さらには人に見られながら歩くこと。これらに困難が生じるLGBTQ当事者は存在しうる。

心身がある程度健康なLGBTQ当事者しか、パレードに参加できないのではないか? そんな疑問がどうしても消えない。プライドパレードの意義を私も認識しているし、運営している方々に感謝する一方で、この疑問の存在を忘れてほしくないのだ。

それでもパレードすることには意味がある

パレードの批判ともいえる意見を書いた上で、それでもパレードには意味があると私は考える。パレードをすると、パレードがあることを知り、そのためにパレードを見るべく足を運ぶ人々だけでなく、当日パレードのことを知らずに通りかかった人々も、パレードを目にする。これはリアルにパレードを行っているからこその、偶然だ。

パレードを偶然見かけた人々の何割かは、「何のパレードだろう?」とスマホで検索するだろう。情報化の進んだ現代だから、場所と日付で検索すれば、望む答えは得られる。そして、「ああ、LGBTQのパレードなんだ」と知る。そこから、詳細を調べてみるかもしれないし、ブースを覗いてみるかもしれない。パレードは、LGBTQのトピックに興味のなかった人々との偶然の出会いの場にもなりうるのだ。

LGBTQやALLYだけで盛り上がっていても、LGBTQに関するトピックについて考え、行動する人を増やすのには限界がある。LGBTQ関連のトピックに興味を持っていなかった人々と偶発的に出会うことで、関心を寄せ、ALLYを名乗るほど積極的ではなくてもライトに味方になる人々を増やせるかもしれない。その手段として、パレードは有効に思える。

私自身のパレードへの思いはこのように複雑に入り組んでいる。

プライドパレードの歴史

プライドパレードはある日突然現れたのではない。そこには歴史がある。

世界的に見るプライドパレード

『ふれる社会学』(ケイン樹里安、上原健太郎編著、北樹出版、2019年/NOISE記事『雁屋優の書架 1.『ふれる社会学』を入口にLGBTQを知る』)「第9章 レインボーにふれる」(中村香住執筆)において、プライドパレードの歴史にふれている箇所がある。「第3節 セクシュアル・マイノリティの運動の歴史」で、以下のように書かれている。

“ 1969年6月28日にストーンウォールの反乱が起きた。これは、ストーンウォール・インというニューヨークのゲイバーに警察が捜査で突入してきた際に、ゲイたちが歴史上はじめて真っ向から対立して反乱を起こした事件である。
このストーンウォールの反乱を皮切りに、同性愛者の権利を主張するゲイ解放運動が始まった。翌年の1970年にはニューヨークで最初のプライドパレードも開かれた。”

ストーンウォールの反乱をきっかけにLGBTQの解放運動が高まり、1970年6月にニューヨークでプライドパレードが開かれたことから、世界中にプライドパレードが広まっていった。

東京レインボープライドの歴史

日本にもプライドパレードが根付いている。その中心地となったのは、首都東京だ。日本では1994年に第1回レズビアン&ゲイパレードとして開催されたのが、日本のプライドパレードの最初となった。

その後、レズビアンとゲイ以外のLGBTQ当事者からの批判も受けて、名称をプライドパレードと変え、運営方式や運営団体も移り変わりつつ、開催中止となる年も何度かあったが、東京のプライドパレードは今に至るまで、続けられてきた。

可視化、そして抗議のためのプライドパレード

大まかにプライドパレードの歴史を見てきたが、プライドパレードは元々LGBTQへの不当な扱いへの抗議、そしてLGBTQの存在の可視化として始まったものだ。ストーンウォールの反乱、また、第1回レズビアン&ゲイパレードで掲げられた横断幕に「今ここにいる!!」という文言が読み取れることからも、それは明らかだ。(参考:東京レインボープライド公式サイト

いないことにされてしまわないための可視化、そしてより生きやすい社会を作るための抗議としてのプライドパレードは、LGBTQの権利を獲得していくために欠かせないものだと思う。

関連イベントを通してLGBTQの理解を深める

リアルのレインボープライド、そしてプライドパレードだけでなく、オンラインでもさまざまなイベントが行われていることにもふれておきたい。

オンラインでマネーセミナー、リアルの交流会などの関連イベントも

さっぽろレインボープライドでは関連イベントとして、特定のセクシュアリティの交流会やLGBTQと関係する領域のことも考えるイベントが行われている。

例えば、2022年6月には、「LGBTQの「あれこれ」~当事者が語る様々なテーマとマネーセミナー~」と題したオンラインイベントが開催された。LGBTQ当事者ならではのトピックと、LGBTQ当事者向けのマネーセミナーを抱き合わせたイベントで、好きなトピックの回に参加して、マネーセミナーも受けられる、魅力的なイベントだった。

LGBTQ当事者がファイナンシャルプランナーをはじめとした専門家にお金の相談をしに行っても、自身のセクシュアリティや望む生活スタイルを正直に言える雰囲気ではなくて、徒労に終わってしまうことがあるが、このマネーセミナーでは、当事者で専門家の方々の話を聞けるので、その不安は軽減される。

また、さっぽろレインボープライドの当日はLGBTQ、ALLY、皆のための空間を作り上げているが、セクシュアリティが同じであったり近かったりするからこそ話せることもある。同じもしくは近いセクシュアリティの当事者で集まる交流会が、そのようなニーズにもしっかり応えている。

「LGBTQ×〇〇」のイベントも開催

LGBTQ当事者の困難が、LGBTQであること単体で生じるわけではない事実にも向き合った関連イベントも存在する。「医療系学生×LGBT」と題した、現役医療系学生とLGBTQ当事者がラジオ形式で話すイベントや、性的マイノリティと宣教の課題を考える講演会、何らかの依存を抱えるLGBTQまたはALLYのためのイベントなど、LGBTQ×〇〇の掛け合わせのイベントが既に開催されていたり、開催予定だったりする。

LGBTQ当事者も、マジョリティと同じように生活をしている。病院にもかかるし、信じる宗教がある人もいるかもしれないし、何かの依存症を抱える人もいるかもしれない。生活においても、LGBTQであることが影響するケースがある。そういった事実を踏まえれば、これらの関連イベントはとても有意義に思える。

リアルとオンライン、それぞれのよさを活かして

私自身も、東京レインボープライドのトークライブに登壇させていただいたほか、さっぽろレインボープライドの関連イベントのいくつかに参加した。オンラインもリアルも、どちらも経験してみたが、どちらにも長所と短所がある。リアルでの参加となると、緊張してしまうのだが、その場にいる重みを味わうよさもある。

プライドパレードに足を運んでみる

プライドパレードについていろいろ書いてきて、一つ結論した。

無理はしない前提で、足を運んでみる

ここまで書いてきたが、私自身がプライドパレードに参加する気には今のところなれない。ただ、何も見ずに一人もやもやするのも、何か違う気がする。そんなわけで、間を取って、さっぽろレインボープライドで行われるプライドパレードを見に行くことにした。

見に行くのであれば、自分の体を気遣いながらでも可能だ。それに、場の空気を味わってこそ、考察できることもあるだろう。そんなわけで、無理はしない前提で、さっぽろレインボープライドに足を運んでみる予定だ。

■参考
さっぽろレインボープライド公式サイト
さっぽろレインボープライド公式 Instagram 
東京レインボープライド2022公式サイト

 

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