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Writer/Jitian

東京都の同性パートナーシップ制度。2022年度内に導入へ

東京都が同性パートナーシップ制度を2022年度内に導入する方針であることが、2021年12月に明らかになりました。今回は、日本の首都・東京が同性パートナーシップ制度を導入することによる日本全体への影響度などを考えます。

あらためて、同性パートナーシップ制度とは

まずは、同性パートナーシップ制度とは何なのか、男女の法的な結婚や同性婚とはどのように違うのか、確認しましょう。

同性パートナーシップ制度に、法的な拘束力はない

同性パートナーシップ制度は、同性同士の二人が人生を共に歩むパートナーだと証明することを目的に、自治体で設けられている制度です。2015年に世田谷区と渋谷区で初めて導入されました。LGBTQの認知度の広がりや多様性の “波” に乗って、急速に全国に波及しています。

同性パートナーシップ制度の大きなポイントの一つは、同性パートナーシップ制度を使ってパートナーシップを宣言したり証明書を発行したりしても、それに法的な拘束力や権利はないということです。

例えば、同性パートナーシップを結ぶことで、男女で結婚している夫婦や戸籍で証明された家族と同様に、居住している自治体の公営住宅に住めるといった優遇を受けられるようになります。しかし、そもそも法的結婚と同じように、パートナーシップを組んだところで新たな戸籍が作られるわけではありません。

また、企業が同性パートナーシップを結んでいるカップルに対して、結婚している男女カップルと違う待遇(差別)をしたとしても、企業が罰せられることもありません。男女の法律婚とはまったく異なるのです。

東京都では12市区が「同性パートナーシップ制度」を導入済み

ここ数年で一気に導入が進められている同性パートナーシップ制度。しかし、都道府県レベルで見ると、実はまだ5府県でしか導入されていません(茨城県、群馬県、大阪府、佐賀県、三重県)。

先ほど述べたように、最初に同性パートナーシップ制度を採り入れた自治体は、東京都内の2区でした。それにもかかわらず、他の府県に先を越されて7年ほど経ってようやく東京都として導入されるのかと思うと、「やっとか」というのが正直な感想です。とはいえ、まずは一歩前進したと言えるでしょう。

東京都が同性パートナーシップ制度を導入する意義

日本の首都である東京都が、同性パートナーシップ制度を導入することによる日本全体への影響は、計り知れないものがあるはずです。

人口カバー率が増加

東京都で同性パートナーシップ制度が導入されること。目に見える大きな意義の一つは、人口カバー率が圧倒的に増えることでしょう。日本の人口の約1割に当たるおよそ1300万人もが、東京都に集中しているからです。

同性パートナーシップ制度を使う人が多ければ多いほど、支持する人が多いほど、日本も同性婚やLGBTQ差別禁止法の制定を見送ったり、対応を保留にしづらくなることは確実です。

人権が数の問題ではないことはもちろんです。しかし、見過ごせないほどの数の同性愛者がこの世にはいるんだぞ! と「数で見せる」ことは、国や政治を動かすにはやはり重要です。

東京と大阪、日本の2大都市圏が同性パートナーシップ制度を取り入れるという事実

日本の第2の都市である大阪府が、すでに同性パートナーシップ制度を採り入れているうえに、首都である東京都も採用するということは、同性婚法制化の実現にも大きな影響を与えるでしょう。

東京都知事は、内閣総理大臣に次いで発言力や権力があると言われています。また、現在大阪府知事を務める吉村洋文氏は、2021年10月に行われた衆議院議員選挙で躍進した政党「日本維新の会」所属の政治家です。

影響力の強い日本の2大都市で同性パートナーシップ制度が導入されれば、日本の多くの政治家も同性愛者の思いを無視することはできないはずです。

“同性パートナーシップ制度” で、いいわけではない

私は同性パートナーシップ制度ではなく、あくまで同性婚を実現させてほしいと思っています。

同性カップルについて「法律がない」のは、G7で日本だけ

先ほど、同性パートナーシップ制度はあくまで自治体の条例レベルのもので、法的拘束力はないと言いました。実は、先進国と言われるG7(アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)で、同性カップルに関する法律がまったくないのは、日本だけです。

G7と言っても、すべての国が何年も前から同性カップルの権利を認めてきたわけではありません。例えば、イタリアで男女の結婚に近い権利を同性カップルに認める「シビル・ユニオン」という法律の制定が可決したのは、2016年のことです。

日本はオリンピックを開催した国でありながら、同性カップルの権利が保護されていないどころか、LGBTQ当事者への差別を禁止する法律すらも見送られています。日本は、他国と比べて異常であると言ってもいいでしょう。

法的な結婚とはまるで違う、日本の同性パートナーシップ制度

同性婚法制化について議論がなされるとき、「同性パートナーシップ制度があるんだから、同性婚にこだわる必要はないんじゃないの?」と思う人がしばしばいます。ですが、やはりこれも「同性パートナーシップ制度より、同性婚法制化の方が絶対に良い」というのが私の答えです。

繰り返しになりますが、同性パートナーシップ制度には法的な拘束力がありません。よって、例えば同性のパートナーが市内の病院に入院しているというシチュエーションを考えた場合、あくまで同性パートナーシップ制度の “力”は、親族と同じように見舞いに行ったり意思決定に加わったりできる「可能性」を得られるものでしかないのです。可能性があるのみで、法律婚のような権利が約束された制度ではないのが現状です。

多様性がうたわれ、LGBTQが “流行り” である昨今、LGBTQ当事者であるという理由で病院側が上記のようなときに同性パートナーの関わりを断ったことが世に広まれば、バッシングの対象にはなるかもしれません。

しかし、病院がこのようなことを拒否したとしても、病院が人権侵害などの理由で法的な罰則を受けることありません。

同性パートナーシップ制度を利用しても、あくまで男女の結婚しているカップルや家族と同じ権利を有することができる「可能性」を手にできるだけです。現状、同性カップルには、法的に保障された権利がないのです。

東京都で同性パートナーシップ制度を導入するにあたっての課題

制度面での調整や都民の “感情” など、様々な要素を考慮しながら、東京都で同性パートナーシップ制度を導入する必要があります。

「同性パートナーシップ制度」。なぜ東京都の市区町村12市区しか導入されていないのか?

私が今回一番驚いたのは、現時点で東京都で同性パートナーシップ制度を導入している市区町村が、わずか12しかなかったということです。しかも、このうち2区は日本で最初に同性パートナーシップを導入した世田谷区と渋谷区なので、そこから10市区にしか広まっていないことになります。

しかも、この12市区の分布を地図で見ると、東京都の真ん中から東側に寄っています。私は、これは意外と由々しき問題なのではないかと思っています。つまり、東京都の23区を中心とする東側と、多摩地区を中心とする西側では、同性パートナーシップ制度やLGBTQに対する意識に差があるということです。

私は東京都の西側の出身です。地元では、同性パートナーシップ制度は導入されていません。今回この記事を書くにあたって市報をひっくり返しましたが、導入に向けて議論が活発になっていたり、導入が予定されていたりする様子は確認できませんでした。

そのほかにも、多摩地区でも全国的に有名で人口も多い八王子市や立川市、町田市でも同性パートナーシップが導入されていないということにも、引っ掛かりを覚えました。

一方、2021年10月からLGBTQ当事者や都民などのアンケート結果では、同性パートナーシップ制度の導入を求める回答が約7割もあったといいます。

都市部と地方では、LGBTQを含む差別や人権に対する意識に差があると言われています。それと同じように、東京都内でも23区をはじめとする都市部と、そうでない郊外との間で意識に差があると、私は考えています。

大きく見ると、東京都の東側は、家賃の高い地域に住めるほどの生活的余裕があります。人権や差別問題にも意識を向ける精神的余裕や知識、学力がある程度あると思われます。一方、西側は、東側に比べると人権や差別に対する意識がまだ高まっていない可能性があります。

まずは制度を取り入れることで市民の意識を変えるという側面もあります。
東京都には、ぜひ一刻も早く同性パートナーシップ制度を採用して欲しいと思う反面、西側を中心とした同性パートナシップ制度を導入してない地域への積極的な啓発活動などもあわせて広く実施して欲しいです。

東京都・足立区で導入済みのファミリーシップ制度、東京都も導入を!

東京都で同性パートナーシップ制度を導入している市区のうち、ファミリーシップ制度もあわせて導入しているのは、足立区のみです。

ファミリーシップ制度とは、同性パートナーシップ制度を利用する同性カップルの間に未成年の子どもがいる場合、子どもも含めて家族であると証明、宣言できる制度です。

あちこちで導入が進んでいる同性パートナーシップ制度に比べて、全国的に見てもファミリーシップ制度の普及率はかなり低いです。東京都にはぜひファミリーシップ制度も導入して欲しいと思っています。

前回の記事で、日本でLGBTQ差別禁止法などの制定が見送られる根本の原因の一つに、「LGBTQ当事者の遺伝子を引き継いだ子どもは生まれてはならない」という優性思想が根底にあるのではないかと指摘しました。

同性カップルが子どもを産み育ててもよいのだという制度が、まずは条例レベルでもいいから導入されることで、LGBTQが病気かのような誤った意識が変わるのではないでしょうか。

< 自治体ごとに微妙に異なる東京都内の同性パートナーシップ制度 >

最後に、すでに東京都内の市区で導入されている同性パートナーシップの制度設計が、それぞれ微妙に異なることも視野に入れなければなりません。中野区、世田谷区、国立市を例に見ると、以下のような違いがあります。

●中野区
同性パートナーシップ制度を宣言する2人の戸籍上の性別が同じでなければならない

●世田谷区
「同性」のカップルが宣言できる(戸籍上の性別だけでなく、性自認が同じである場合を含む)

●国立市
性別を問わず、事実婚など、幅広く利用可能

個人的には、国立市のパートナーシップ制度の方が、男女の事実婚にも適用できるなど汎用性が高く、よいのではないかと思います。

中野区で同性パートナーシップ制度を利用した場合、前回の記事でも話題に上げた、トランスジェンダーの戸籍変更の課題があります。同性パートナーシップ制度を利用した “戸籍上” 同性のカップルの一方が戸籍の性別を変更した場合、異性同士となるため、同性パートナーシップ制度を利用できなくなります。

戸籍の性別が「異性」になるなら法的に結婚すればよいとも考えられますが、同性カップルだけではない様々な「パートナー」「カップル」に適用できる同性パートナーシップ制度の方が、都民に広く活用してもらえるでしょう。

まずは、一刻も早い東京都の同性パートナーシップ制度の導入を。そして、将来的には日本において同性婚が認められ、現在、法的に認められた男女の結婚と同等の権利をLGBTQ当事者の人々も得られるようになるよう、願うばかりです。

■参考URL
・令和二年東京都議会会議録第二十二号〔速報版〕
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2021-4/02.html

・中野区パートナーシップ宣誓について(中野区)
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/101500/d026072.html

・同性パートナーシップ宣誓について(世田谷区)
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/002/002/003/002/d00165231.html

・くにたちパートナーシップ制度(国立市)
https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/kurashi/heiwa/sankaku/1621398471453.html

 

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