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二次元の彼と出会って人生が変わった、フィクトセクシュアルであり、バイセクシュアルであり、Xジェンダーのぼく。【前編】

「彼は『これが自分だ』と堂々としていて、でも自然体で・・・・・・それがめちゃくちゃかっこいいなって思ったんです」と、2020年5月に結婚した夫について語る古滿翠さん。彼への気持ちを問うと「恥ずかしい」と言いながらも言葉には熱が込められる。そんな最愛の夫は、ゲームに登場する二次元の存在。創作活動が大好きだった子どもの頃から、Xジェンダーでありバイセクシュアルであると自覚し、フィクトセクシュアルだとオープンにした現在までの物語を紐解く。

2024/12/13/Fri
Photo : Tomoki Suzuki Text : Kei Yoshida
古滿 翠 / Midori Koma

1986年、神奈川県生まれ。幼少期から千葉県で過ごし、小学生の頃から漫画を描いたり小説を書いたり、創作活動に没頭する。25歳のとき、生まれた時の身体の性的特徴は女性で、性自認は男性である人と交際することになり、自身がバイセクシュアルではないかという考えがよぎる。33歳のときにゲームのキャラクターへの恋心を自覚し、その8カ月後に結婚。現在、性自認はXジェンダー、セクシュアリティはバイセクシュアルでありフィクトセクシュアル(アニメやゲームのキャラクターなど架空の存在を愛する性的指向)としている。

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INDEX
01 周りと違ってもいいの? 悪いの?
02 役者としても書き手としても “憑依タイプ”
03 Xジェンダーの気づきはメイクから
04 キャラクターに惹かれてゲームにハマる
05 女性でもあり男性でもあるXジェンダー
==================(後編)========================
06 バイセクシュアルだと認めたくなかった
07 ゲームのなかの彼こそ運命の人
08 ありのままの自分を認められた
09 フィクトセクシュアル × 結婚
10 フィクトセクシュアルを知ってますか?

01周りと違ってもいいの? 悪いの?

「周りの人と違って当たり前」

生まれたのは神奈川県の海の近く。
そして物心がつく頃には、千葉県へと家族4人で居を移す。

読書と野球が好きな父と、口うるさいが優しい母と、学年ひとつ下の弟。
小学生の頃は毎年家族で、夏は山登り、冬はディズニーランドに出かけた。

「どこの山に登ったのか、いまも覚えているのは長野県の根子岳くらいなんですが、頂上から見た景色がすごいきれいだった記憶があります」

「中学生になってからは、夏は海へ行くようになったんですが、小学高学年からそれまでに、ガチの登山は3回くらい登ったんじゃないかな」

「弟とは、いつも一緒に遊んでましたね。セーラームーンも戦隊ものも一緒に観るし、シルバニアファミリーもミニ四駆も一緒に遊ぶし、女の子と男の子の区別はあんまりなく、ふたりで遊んでました」

一緒に遊んで、些細なことでケンカして、きょうだい揃って母に叱られて。
両親は、表には出さないが、いつも子どもたちのことを想ってくれていた。

「家では『周りの人と違って当たり前。たとえ周りの人と違っても、あなたはあなたが大切だと思うことを大切にしなさい』と言われて育ちました」

しかし、小学校入学と同時に “周りと違う” ことからつらい状況に陥る。

お絵描きと歌と演劇と

「いじめられてしまったんです。つらくて、母に相談したことで一度学級会が開かれて、いじめていた子たちから謝られはしたんですが収まらなくて、結局中学卒業まで9年間、いじめは続きました」

「周りと違うことを言ったりしたりしたときに『おかしいよ』って笑われたりするんですよね・・・・・・。笑われると傷つくし、でも周りと違っていていいと思いたいし、どうしたらいいかわからなくなって」

周りと違うと集団から弾かれる、と思い込んでしまった。

小中学校の頃のことはあまり思い出せないし、思い出したくもない。

それでも、一緒に遊ぶ友だちはいた。

学校での思い出はないに等しいが、学校から帰って友だちと鬼ごっこをしたり、ひとりで絵を描くことに没頭したりしていた記憶だけは残っている。

「歌うことも好きでした。小学校では合唱部にも入ってましたが、途中から合唱部は吹奏楽部と合併しちゃって。楽器やるよりも歌いたかった(笑)」

「あと、楽しかったのは演劇クラブ。学校のクラブ活動で、白雪姫のコメディ版みたいな劇を全校生徒の前で発表する機会があったんです」

「劇を観ていた1〜2年生にめちゃくちゃウケていて、それがうれしかったんです。だから中学校では演劇部に入ろうと思ってました」

しかし入学した中学校には運動部しかなく、仕方なくソフトテニス部に入ったが、毎日ひたすら壁打ちする部活動はどうにもつまらなかった。

02役者としても書き手としても “憑依タイプ”

キャラクターの視点で物事を見る

絵を描くことは幼稚園児の頃から好きで、漫画を描くこともあった。
小学校高学年からは小説も書き始める。

「最初は、好きな漫画のノベライズから始めたんですよ。漫画に登場するキャラクターたちの感情を文字に書き起こしていくのが、とても楽しくて」

「高校に入ってからは、ゲームの二次創作小説を書き始めました。漫画も描いてましたが、小説で心理描写をすることに熱中してましたね」

幼い頃から集中力が高かった。
小説を書くことに集中すると、頭のなかでキャラクターが動き出す。

「役者で “役を自分に降ろす” って人がいるじゃないですか。取り憑かれたように、役になりきるタイプの人。自分もそのタイプだと思うんですよ」

「キャラクターの視点で物事を見て、キャラクターの感情をダイレクトに感じるということを、すごく大事にして小説を描いています」

「頭のなかで、いま書いているキャラクターに意識を合わせて、どう見えているか、どう動くか、を見せてもらっている感じです」

念願の演劇部に入部するも・・・

書いた小説は、誰かに読ませるものではなく、自分だけで読んでいた。
中学を卒業するまでは。

小学校でいじめに遭い、中学校に上がってもいじめは続くどころか、別の小学校から入学してきた同級生も加わり、状況が悪化したのだ。

「高校は、自分を知っている人間がいない学校でないと、もうやり直せないって思ったので、自宅から片道1時間半かかる学校を選びました」

ゲームの二次創作にハマったのは、その高校で出会ったゲーム好きの友だちの影響が大きかった。

高校生活は、趣味の合う友だちを得ることができ、「やり直す」ことはできたといえるが、順風満帆というわけではなかった。

「中学で演劇ができなかったという思い残しがあったので、高校では演劇部に入ったんですよ。でも、入ってみたらめちゃくちゃキツくて(苦笑)」

「肉体的にもしんどいし、稽古のときに先生から厳しく言われて心理的にもしんどくなってしまって、早々に辞めたくなってしまったんです」

「でも、母には『自分を知らない人間がいない高校に行く』とは言えず、『演劇をやりたいから、この高校に行く』って言っていたので、演劇部を辞めてしまうなら、なんのためにそんな遠い高校に行ったの、って辞めさせてくれなかったんですよね・・・・・・」

演劇のためではなく、やり直すために高校を選んだとは結局言えなかった

もはや演劇に対するやる気はゼロだったが、役者ではなく音響や照明を担当し、3年で引退するまで在籍した。

03 Xジェンダーの気づきはメイクから

Xジェンダーである自分のなかにある怒り

現在の一人称は「ぼく」。
しかし、子どもの頃からずっと「私」だった。

「ぼく」に変わったのは30歳を過ぎてから。

「それまでは、ずっと自分は “典型的な女” だと思ってたんです」

「よくよく考えると、そんなことはないってあとから気づいたんですけど」

大学に進学して、高校での経験から「もう懲り懲りだ」と思っていた演劇の世界へ、再び足を踏み入れた。

少人数で、顧問もおらず、和気藹々と演劇に取り組む様子が、とても楽しそうに見えて、早々に入部を決心したのだった。

「その演劇部で、後輩に女性役の舞台メイクをしてもらったんですよ」

「できあがって鏡を見たときに、最初は『あ、きれい』ってうれしく思ったんですが、そのあとに怒りがブワッと湧いてきちゃって・・・・・・」

怒りの理由がわからず、戸惑いながらも、そのときは誰にも言えなかった。

しかしその後、社会人になって怒りの理由らしきものが見えてくる。

「初めのうちは必要最低限のメイクはしてたんですが、次第に、なんで女だけメイクすることを強要されなきゃならないんだ、みたいな気持ちになって」

当初その気持ちは、男女不平等な社会に対する怒りだと思った。

しかしやがて、自分は女性でもあり男性でもある両性であり、それはXジェンダーと呼ばれるのだと知る。

女性に強要されるメイクは、自分のなかの男性にとっては受け入れ難いものだったのだろうといまでは理解している。

女性を好きになったことも

「社会に対しての怒りというよりも、自分のなかの男性である部分をないがしろにしてることを、自分自身が悲しんでたんじゃないかなって」

「心理学的には、怒りはほかの感情を隠す感情っていわれてますし」

「そのときのぼくは、自分を大切にしたいけどできないっていう状況にあって、メイクをされたことで、その我慢の限界がきてしまったんだと思うんです」

自分は “典型的な女” ではなったと気づく。

思い返せば、小学生のときは黒いランドセルがうらやましかった。
初潮を迎えたときは、母に「おめでとう」と言われてショックを受けた。

あのとき自分は、女でいるしかないことが悲しかったのだろう。

「そんな性自認に気づく前、いちおう恋はしてるんですよ」

「ひとりは高校の演劇部の先輩で、もうひとりは同級生。確かにときめいて
たのに、当時はそれが恋だとは思わなかったんです」

そして大学時代にも恋をしていた、とのちに気づく。
相手は演劇部の後輩。女性だった。

「彼女と体が触れ合うような演技をするときはドキドキしたし、彼女からメールが来ると、すごいテンションが高くなっていて、あれ? これはもしかして恋? って気になってたんですね」

「それで、身近にいたレズビアンの友だちに『私もそうなのかな』って訊いてみたんですよ。そしたら『あなたは違う』って言われて(笑)」

「そっか、じゃあこれは恋じゃないんだ、って。当事者が言うんだからそうなんだって素直に思っちゃったんですよね・・・・・・」

でも、彼女を好きだという思いは、大学を卒業したあともずっと心にあった。

04キャラクターに惹かれてゲームにハマる

キャラクターたちが織りなす物語に心惹かれる

ゲームのキャラクターが登場する自作の小説、いわゆる二次創作小説を書き始めたのは高校生からだったが、もともとゲームは好きだった。

「小学生の頃も『ぷよぷよ』とか好きでしたし、そのルーツとされるゲーム『魔導物語』の小説版を読んだりしてたので、そのあたりが原点かも」

「でもゲームをするのが下手だったので、高校3年になるくらいまでは、弟が遊んでいるのを見てるだけでした(笑)」

自分でゲームをするようになってからは主にRPGをプレイした。
特にキャラクターが魅力的なゲームを選ぶようになる。

「すごいハマったのが『テイルズ オブ ディスティニー』シリーズ」

「もちろんゲーム内の戦闘も楽しめるんですが、キャラクターたちの個性が濃くて魅力的で。キャラクターが織りなす物語に心惹かれるというか」

「キャラが動く」

特にお気に入りのキャラクターもいた。

「愛する人をめちゃくちゃ大切にしたり、仲間と彼女を天秤にかけて苦しんだり、それでいて意志がとても強かったり・・・・・・。ゲームをしながらそういったところを見て、好きになりました」

ゲームのキャラクターが登場する小説を書くうちに、彼らにそれぞれの意思があるように感じるようになる。

「漫画家さんにも『自分が動かしてるんじゃない。キャラクターが勝手に動いている』って言う人がいらっしゃいますよね」

「二次創作仲間にも『キャラが動く』って言ってる人がいて、それを聞いたときはなに言ってんだって思ってたけど、社会人になってからわかりましたね」

「キャラクターたちには意思があるって、はっきり感じました」

ゲームも二次創作も、演劇も大好きだったが、ゲーム業界や役者を目指すことはなく、「とにかく会社員になる」と大学卒業後はIT業界に就職。

「いつかは寿退社する、というような発想はなかったですね。当たり前のように四年制大学を卒業して、会社員になるんだって思ってました」

いわゆる男性の “社会人ルート” を想定してたのかもしれない。

05女性でもあり男性でもあるXジェンダー

Xジェンダーの自覚がないままで

新卒で勤めた会社では、営業部の社内業務を担当。
さまざまな資料をパワーポイントなどで作成するのが楽しかった。

「周りは男性ばっかりで。大学は女子大だったので、その頃とは真逆の環境でした。ただ、同い年の男性はいませんでしたが」

「自分もパンツスーツで出勤して、一緒に仕事をしている感じが、すごく気楽で居心地が良かったんだと、いまになって思います」

この頃は自分がXジェンダーだとは考えたこともなかった。

無意識ではあったが、男性と一緒に男性として働いている気持ちになり、それが心地よく感じられたのだろう。

「同い年の男性がいないというのも、よかったんだと思います」

「女子大のときも、『自分はあっち(男性)ではない』と比較する対象である同い年の男性がいない解放感で、めちゃくちゃテンションが上がったのを覚えてます」

「女性でもあり男性でもあるXジェンダーだと自覚したいまになって考えると、それまでは自分のなかの男性の部分をずっと抑圧してきたので、それが一気にはじけたんじゃないかなって思いますね」

“女でいなければならない” という圧力

男性ばかりの職場ではあったが、いわゆるセクハラとも無縁だった。

「ベリーショートにノーメイクでも指摘されなかったですし、パンツスーツを着てたら『似合うね、かっこいい』って言ってもらえました」

しかし入社から2年ほど経って、今度は女性ばかりの部署へ異動になった。

「みなさん、当たり前だけどメイクをされていて。あと、女性ばかりの職場の独特の空気っていうのもあって・・・・・・」

「なんだか “女でいなければならない” という圧力が戻ってきてしまった気がしたんでしょうか。前の部署よりは、楽しくはなかったですね」

この頃、職場の近くに住んでいた大学の演劇部からの友だちとルームシェアをしていた。

「彼女と一緒にいるのはラクでしたね」

「ゲームとか共通の話題があったわけではないんですけど、彼女も私と同じで、子どもの頃から教会に通っていたクリスチャンだったので、そういうところの価値観が合ったのも、仲が良かった理由じゃないかなって思います」

 

<<<後編 2024/12/20/Fri>>>

INDEX
06 バイセクシュアルだと認めたくなかった
07 ゲームのなかの彼こそ運命の人
08 ありのままの自分を認められた
09 二次元の彼との結婚式
10 フィクトセクシュアルを知ってますか?

 

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