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高校生で「Xジェンダー」の私でも、世界は変えられる。【後編】

高校生で「Xジェンダー」の私でも、世界は変えられる。【前編】はこちら

2020/02/01/Sat
Photo : Mayumi Suzuki Text : Ryosuke Aritake
今田 恭太 / Kyota Imada

2002年、静岡県生まれ。両親との3人家族で育ち、幼少期の頃から、男友だちより女友だちと遊ぶ方がしっくりきていた。5歳頃から自身のセクシュアリティに違和感を覚え始め、中学3年生の時に「東京レインボープライド」を知り、LGBTという言葉と出会う。現在、高校2年生。国内のさまざまなマイノリティを取り巻く環境を改善すべく、勉強中。

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INDEX
01 私は「インドア派な目立ちたがり」
02 友だちのほとんどは女の子
03 “女の子っぽい” 趣味と所作
04 想像できなかった「大人の自分」
05 トランスジェンダーというワード
==================(後編)========================
06 自分にフィットした「Xジェンダー」
07 当事者だから伝えていけること
08 世界は意外と簡単に変えられる
09 いち個人として輝ける社会を作るために
10 高校生の私の可能性

06自分にフィットした「Xジェンダー」

人それぞれの性

中学3年生の頃からLGBTに関する情報を収集し、「東京レインボープライド」にも参加。

自分自身がLGBT当事者であることも受け入れ、セクシュアリティで悩むことはなくなった。

LGBTについて知れば知るほど、セクシュアリティは括れないものだと感じ始める。

「男、女、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだけじゃなくて、1億人いれば1億通りの性があるな、って感じたんですよね」

「生物学上、男女では分けられるかもしれないけど、概念としての性は、みんな違うなって」

「そう考えるうちに、自分のセクシュアリティに関しても、決めたくない、って思うようになりました」

「だからといって、性が定まってないわけじゃないから、クエスチョニングも違うんですよね」

詳しく知っていくほどに、どこにも当てはまらないような気がしていく。

「Xジェンダー」という存在

「その過程で、『LGBTER(エルジービーター)』を知ったんです」

「たくさんの方の記事を読んでいく中で、『Xジェンダー』の人がいることを知りました」

「Xジェンダー」という言葉は、知識として知っていた。

しかし、「Xジェンダー」を名乗る人に出会ったことがなかったため、単なる概念に過ぎなかったのだ。

「初めて読んだのは、トランスジェンダー(MTX)/パンセクシュアルで、ろうの佐藤涼太郎さんの記事でした」

「記事を読んで、自分も同じかもしれない、ってドスンと心にくるものがありました」

具体的なエピソードに共感した、というわけではない。

シンプルに「Xジェンダー」であることを受け入れ、自分らしく生きている姿に、感銘を受けた。

「それまでは『Xジェンダー』に対して、理解し得ない部分があったけど、輪郭がはっきりしたような感覚でした」

ようやく自分自身にフィットする言葉を、見つけられた気がした。

男でも女でもある自分

「今は、自分のことを “男でも女でもある” って思ってます」

性別を決めることに意味がない、という思いもあるが、それ以上に揺るぎない意識がある。

「あんまりない例だと思うんですけど、日によって気分が変わるんですよね」

「男っぽくいたいなって日があれば、女の子っぽくいたいって思う日もあるんです」

男だからズボンをはく、女だからスカートをはく、という枠にハマりたいわけではない。

その日の服装の雰囲気や所作、言葉遣いなどが、ほんのり変わる程度。
それでも、どちらとも定義しないことで、より自分らしくいられる。

「セクシュアリティがゆらゆらしてるから、男でも女でもあるな、って思ってます」

07当事者だから伝えていけること

カミングアウトはさらっと

「Xジェンダー」だと自認してから、自分を偽らなくなったように感じている。

「自己紹介で、さらっと『私はMTXです』みたいに言うことはあります」

「でも、『今日こそ言うぞ』って準備して、カミングアウトしたことはないんです」

友だちとの会話の中でも、恋愛の話になれば、普通に「私、男の人が好きだから」と話す。

「友だちにも、さらっと受け流させます(笑)」

セクシュアリティで悩んでいた中学生の頃、「ゲイなの?」と聞かれたことがある。

その時は偏見を恐れ、「違う」と、答えた。

「最近は、私が隠してないからだろうけど、失礼な質問も少なくなりました」

「多様な性が認められ始めているからか、言わなくても察してくれる人も多いですね(笑)」

忘れられない母のひと言

話は、中学生の頃にさかのぼる。

「自分のセクシュアリティについて、悩んでいた時期のことです」

塞いでいた気持ちが、あふれ出してしまっていたのかもしれない。

母から、言われた。

「私は、あなたがどんな性別でも、愛し続けるからね」

その言葉は、悩み落ち込む自分を、ホッと安心させてくれた。

「多分、母なりに感じる部分があったんだと思います」

LGBT草の根活動

今在籍している高校の授業で、LGBTというワードが出てくることは、まったくと言っていいほどない。

「まだ教科書の記載も薄いし、保健体育の授業ではスキップされました(苦笑)」

「外部からLGBT当事者やアライの講師が来て、講演をするようなことも、特にないです」

学校で取り扱ってくれないのならば、自分が動こうと思った。

「友だちからホモフォビア的な発言が出てきた時に、『LGBTって人がいるんだよ』って、言うようにしました」

「LGBTに関して調べ始めた頃は、不自然なくらいに言ってたと思います(苦笑)」

当初、友だちは「え、何言ってんの?」というリアクションだった。

「基本的に目立つことが好きだし、自分を受け入れたら周囲の目も気にならなくなったので、何を言われても伝え続けました」

友だちやクラスメイトの間では、LGBTという言葉が浸透してきている。

「言い続ければ、みんなわかってくれるし、何より私っていう歩く具体例がいるから(笑)」

「私はXジェンダーでね」と、改まって話すことはない。

あくまでも日常会話の中に、「LGBT」や「男性が好き」というワードを散りばめるだけ。

それだけのことでも、変化は起き始めている。

08世界は意外と簡単に変えられる

社会に対する関心

中学3年生で「東京レインボープライド」を知り、LGBTについて調べた。

自然とLGBTを取り巻く社会課題に意識が向き、徐々に社会全体に興味を持つようになる。

「もともと社会科が好きだったけど、LGBTを調べるようになって、より好きになりました」

「どんどん、社会全体に対して深い関心を覚えるようになっていきましたね」

「今も本は好きで、オールマイティに読むけど、社会派要素の強いものも多いですね」

「最近は、Netflixのドラマ『13の理由』のノベライズ本を読んでます」

アメリカのティーンエイジャーのいじめ、自殺をめぐる問題を描いた作品だ。

6000人の署名

高校に進んでから、社会課題解決のために動いている高校生と会う機会があった。

「すごいプロジェクトを動かしている高校生がいることを知って、自分もできるんじゃないか、って思ったんです」

そんな考えが頭に浮かんだ2018年の夏、「愛知県の小学校の教室で、児童が熱中症で亡くなった」というニュースを見た。

ふと、自分が通ってた小学校には、エアコンがなかったことを思い出す。

「地元の公立の小中学校を調べたら、一校もエアコンを設置していなかったんです」

「その事実に怒りを覚えて、署名サイト『Change.org』に、『エアコンを設置してあげたい』という思いを書き込んでました」

ネット署名の難しさは知識として知っていたため、大量に集まるとは考えていなかった。

集まったらいいな、くらいの気持ち。

「だけど、早い段階で『6000人に達しました』という通知メールが届いたんです」

「そんなに集まるなんて思ってなかったから、びっくりしました」

『Change.org』の運営者が、自分の書いた内容に賛同し、メールマガジンで拡散してくれていたことを、後から知らされる。

応援してくれる人がいることが、うれしかった。

発信することの大切さ

署名活動は7月末から始めたが、9月には市議会でエアコン導入の議論が始まるタイミングだった。

署名提出の1週間前には、公立校の教室へのエアコン設置が決まった。

「だから、エアコン設置そのものではなく、設置を前倒ししてもらう内容に変更しました」

同じ年の11月、署名を受け取った市は、「2年後までに設置完了する」という予定を、1年前倒しして動いてくれた。

怒りの感情に任せてのスタートだったが、実際にアクションを起こしてわかったことがある。

「自分が思ってるより簡単に、世界は変えられることを知りました」

「そして、発信することの大切さも、すごく学びました」

発信すれば誰かしら共感してくれるが、発信しなければ誰にも届かない。

当たり前のことだが、行動に移したからこそ、実感を得ることができる。

「この署名活動は、私の自信につながってます」

これからも、社会課題を解決できるような活動を行っていきたい。

09いち個人として輝ける社会を作るために

今こそ知りたい「難民問題」

今、関心を持っている分野は、外国人労働者や難民の問題。

目を向けるきっかけとなったのは、動画の無料配信プロジェクト「TED Talks」。

「もともと『TED Talks』が好きで、そのイベント『TEDx』に行ったんです」

「そこで難民の話をされている方がいて、聞いているうちに興味が湧きました」

すぐさま難民について調べ始める。

2017年、2万人弱の外国人が、日本の入国管理局に難民申請を出していた。

しかし、認可されたのは、たった20人。

「認可されなくても、日本に滞在はできるけど、強制送還や強制収容の恐怖と隣り合わせという事実を知りました」

難民の子どもは、日本で生まれても日本国籍は持てず、健康保険を使うこともできない。

「日本で生まれて日本語を話す彼らは、日本人じゃないの? って不思議でした」

自分が生まれ育った街は工場が多く、日常的に外国人労働者とすれ違う。

「中国やフィリピンの方が多いんですけど、市民の人たちは彼らにいいイメージを抱いてないな、って肌で感じます」

何気ない視線、言葉から、そう感じられてしまう。

「今はまだ外国人労働者や難民に関する知識が少ないので、どうすれば問題を解決できるか、考えつきません」

「だから、ひたすら学んでいるところです」

「大学に進んだら、社会学やジェンダー学を勉強したいな、って考えてます」

正当に評価される社会

将来的には、社会的にマイノリティとされている人が、いち個人として輝ける社会を作っていきたい。

「例えば、セクシュアルマイノリティの方は、セクシュアルマイノリティだから企業に採用されることもあると思います」

「でも、男か女かとか、誰が好きかって、働くこととは直接関係ないじゃないですか」

それはセクシュアルマイノリティに限らず、外国人労働者にも言えること。

「本当に必要なものは、個人のスキルや特技が、正当に評価される社会だと思うんです」

「マイノリティとしてじゃなくて、個人として見てもらえる社会にしていきたい」

そう考えるようになったのは、自分がセクシュアルマイノリティだから。

「自分自身もマイノリティである、ということは、間違いなく原点ですね」

そして、かつては見いだせなかった将来が、今は見えてきている。

「自分のセクシュアリティがわかったし、性に関係なく好きなことができる時代になりつつあるから、今は自分のビジョンも見えてます」

男性であり女性でもある自分がCAを目指しても、おかしくない時代だ。

今以上に、個々がそれぞれのスキルを使って、活躍できる社会にしていきたい。

「そのための環境作りに、携われる人になりたいです」

10高校生の私の可能性

絞り切れていない進路

現在、高校2年生。来年の今頃は、受験シーズンだ。

「実は、まだ志望校を決められてないんです(苦笑)」

「日本の大学を考えつつ、海外も視野に入れてます。外国は、日本以上に多様性に富んでるから」

もともと海外への興味は強く、中学2年生の時に中国、高校1年生の時にオーストラリアへ、短期研修で赴いた。

「どちらも1~2週間で、留学と呼べるほどではないけど、いい経験になりました」

「今は、アジアの大学に興味があるんです」

一部のアジアの国ではイスラム教により、同性愛者は処罰の対象となることがある。

「その環境の中で、LGBT当事者がどのように過ごしているのか、興味があるんです」

「興味のある分野の勉強ができる大学を、選びたいです」

まだ知られていないLGBT

日本国内のLGBTを取り巻く環境も、課題は山積みだと考えている。

「『東京レインボープライド』に参加した時、お祭りと勘違いして来たであろう女子高生が『LGBTって何?』って、言ってたんです」

「多様性が保護されるようになってきているといっても、LGBTと関わりがない人は、本当に知らないんですよ」

「女子高生の言葉を聞いた時に、その現実を認識しました」

「当事者側にいると、多くの人に知られてるって錯覚しちゃうんですよね」

1人でも多くの人に知ってもらうため、まずは身近な人たちに伝えている。

「ただ、友だちに話しても、自分事として受け取ってもらえないという課題があります」

「性のことって、遅かれ早かれ誰でも悩むものだと思うんです」

しかし、LGBTというワードを出すと、途端に他人事のように聞こえてしまうのだろう。

「もし、自分と違うセクシュアリティの人の話を聞いたら、無関係と思うんじゃなくて、自分事として捉えてほしいですね」

自分が社会人になる頃には、社会全体がいい方向に変わっていてほしいと願いつつ、いい方向にもっていかなければならないとも思う。

そして、自分以外のマイノリティの人たちにも、安心してほしい。

「もしセクシュアリティで悩んでる人がいたら、『あなたは1人じゃないし、病気じゃないし、異常じゃない』って、伝えたいです」

自分自身もLGBTという言葉を知り、1人じゃないんだ、という安心感を得られた経験がある。

中学時代の自分のように塞ぎ込んでいる人に、声をかけ、寄り添いたい。

そのため、私ができることは、たくさんの知識を蓄え、有効なアクションを模索すること。

あとがき
高校生が世界を変えるーー。どのような人物を想像するだろうか。主張の強い? 近寄りがたい? 恭太さんは、とてもシンプルな疑問からひたむきに行動する。その核は、おもいやり■TRPやLGBTERへの共感は、世の中へ答えを求めるだけではなく、自分(たち)にできることを大切な軸にしているからだと感じた。自分の体を使って世の中を知り、考え、行動する恭太さん。マザー・テレサの言葉を思い出す。[リーダーを待っていてはいけない。一人からやりなさい。人から人へ](編集部)

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