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21歳、夢は「父親になること」【前編】

自ら「人見知り」だという味村優斗さん。シャイで口数も多くないのだが、どこか優しそうな雰囲気で、不思議と包容力を感じられた。話を紐解いてみると、中高時代から女性にとてもモテて、告白もされてきたという事実が発覚する。味村さんのこれまでと、これから。21歳、若いFTM世代の生き方に迫った。

2016/12/18/Sun
Photo : Mayumi Suzuki Text : Mana Kono
味村 優斗 / Yuto Ajimura

1995年、神奈川県生まれ。高校卒業後、フリーターを経て自動販売機のオペレーターとして就職。幼い頃から自身の性について疑問を抱き、19歳で性同一性障害と診断される。その後、戸籍変更、ホルモン治療を経て、来年には性別適合手術を予定している。現在、高校時代から付き合っている彼女と将来を考えている。

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INDEX
01 初恋は幼稚園の先生
02 自分はきっと普通じゃない
03 初めてできた彼女
04 誰にも言えない悩み
05 相談できる場所
==================(後編)========================
06 大切なパートナー
07 ホルモン治療のスタート
08 男性の名前に
09 未来に向かって一歩ずつ
10 これからがはじまり

01初恋は幼稚園の先生

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幼い頃の記憶

長女として生まれ、幼い頃は埼玉で生活していたのだが、当時のことはあまりはっきりとは覚えていない。両親が仕事で忙しかったからだろうか。

「両親は共働きだったので、あまり家にいなかったんですね」

それでも、4歳年下の妹が生まれる時は、きっと楽しみだったからだろう。病院の待合室のことや、母の容態が心配で泣き出してしまったことなど、鮮明に思い出すことができる。

「ずっと弟か妹がほしかったので、大喜びしていたことを覚えています」

「幼稚園の頃は、よく先生と遊んでいた記憶しかないですね。『先生にくっついているね』って言われていました」

覚えているのは、ほかの友達と遊んでいたことよりも、先生と一緒にいた思い出。

「今思えば、初恋はその幼稚園の先生だったのかもしれないです。本当に、気付いたらずっと一緒にいたんですよね(笑)」

優しく面倒を見てくれる先生。そんな幼稚園の先生に淡い想いを抱いていたから、いつも隣から離れず、くっついて行動していたのかもしれない。

両親の離婚

小学校にあがる頃、6歳年下の弟が誕生する。しかし、それとほぼ同じ時期に、両親の離婚が決まった。

普段から、ふたりの間にケンカが多いとは思っていた。しかし、共働きの両親とはあまり接している時間がなかったこともあって、離婚の前兆はそれほど感じていたわけではなかった。

「嫌だなとは思いましたけど・・・・・・。しょうがないかな、って感じでした」

両親に「どっちについていく?」と聞かれ、自分は母を選んだ。

しかし、お父さんっ子だった妹は、父についていくことを選択する。生まれたばかりの弟は、母方の祖母に預けられることになった。さみしさや不安よりも、妹と弟がこれからどうなってしまうんだろうと、心配する気持ちの方が大きかった。

こうして、5人家族から、母娘ふたりの生活へと一転する。

「母は働いているし、家に誰もいないので、自分でなんとかやっていかないといけないなって感じでしたね。料理などの家事もしていました」

しかし、それから数年経って、妹も母が引き取ることになる。詳しい経緯はわからないが、おそらく父も経済的に苦しい部分があったのだろう。

「小学校3、4年くらいですかね。妹が戻ってきて、うれしかったです。それからも妹とはずっと仲良しです」

妹とは、小さい頃から出かける時もいつでも一緒だった。

「だから、今では周りからよくシスコンって言われていますね(笑)」

正直なところ、自分とあまり顔は似ていない。でも、頭が良くて運動神経もいい、なんでもできる自慢の妹だ。

「それと、ちょうど同じ頃から、おばあちゃんと弟も一緒に住みはじめることになりました」

こうして、父は不在ながらも、ふたたび家族5人生活となった。

02自分はきっと普通じゃない

徐々に芽生える違和感

小学校では、休み時間もよく友達と外で遊んでいた。活発なタイプだったと思う。

「4年生から、習い事でバスケをやっていました」

習い事をやりたくて、母のすすめではじめた地域のミニバス。きっと、性に合っていたんだろう。その後、中高でもバスケ部に所属することとなる。

「バスケをやっていて、チームプレイがうまくいった時とかは気持ちがいいですよね」

人と協力して何かを達成した時に、感じる喜びも大きかった。

そんな中、小学校中学年あたりから、性に対する違和感が大きくなってくる。

「好きになるのは、幼稚園の時から変わらず、ずっと女の子でした」

バスケを始めてからは髪もバッサリ短くしたが、それまではロングヘアーだった。両親に「長い方がかわいいから切らないで」と言われていたからだ。

ようやくショートカットにしてからは、外出時にも男子トイレを使うようになった。

「頭も気持ちも、軽くなってうれしかったです」

それまでは、女子トイレに入るにも、なんだかよそよそしい心地がしていた。でも、引け目なく男子トイレに入れるようになったことで、とても気が楽になった。

誰にも相談できない

性への悩みは膨れ上がっていく一方だったが、それを周囲に打ち明けることはできなかった。

「自分の中にとどめちゃう感じですね。人に言ったら関係が壊れちゃうのかなって思って」

「自分がみんなと違うなっていうことには、小さい頃から気づいていました。女の子を好きになるのは、普通じゃないって感じていたんです」

自分の中にあるモヤモヤの正体は、まだよくわからない。

でも、親を見ていても、「男と女が恋に落ちるのが普通だろう」とは気づいていた。だから、「女なのに女を好きになってしまう自分は、きっと普通じゃない」、そう感じていたのだ。

だけど、その気持ちは抑えこむ。誰にも言うことはできなかった。

「誰かに相談したかったですけど、相談する人がいなかったですね。言ってしまったら、気持ち悪がられるのかなって・・・・・・」

まわりの友達はもちろん、仕事で忙しそうな母への負担になるようなことは避けたかった。

03初めてできた彼女

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女子からの告白

中学の制服はブレザーのスカートだったけれど、それを着るのは嫌だったからいつもジャージ姿だった。

部活はバスケ部。多分、まわりからは「かっこいい女の子」と思われていただろう。

「でも、背が小さくて、中1の時は130センチしかなかったんですよ。中学の時、1年毎に10センチずつ、計30センチ伸びたんです」

「女子に告白されることはあまりなかったですけど、『男だったら付き合ってたのに』とはよく言われてました」

周りの女子にそう言われて、正直なところ、複雑な気持ちだった。

「なんで自分は男じゃないんだろう。男じゃない自分が悪い、やっぱり自分は女なんだ、という現実を突きつけられた感じでした」

そんな中、人生初の春は思いがけないタイミングで到来した。

「中1の頃、部活もクラスも同じ女の子に、メールで告られたんです。はじめて女子に告白されました」

彼女とは仲良くしていたけれど、まさか告白されるとは思っていなかった。メールにはストレートに「好きです」と書いてあった。

「まともに受けていいのかもわからなくて、とりあえず『そうなんだ』みたいな感じで返しました」

「まわりには女子同士で付き合ってる人は多分いなかったけど、スキンシップが激しかったり、くっついてる女の子たちが多かったですね」

その年頃だと、仲のいい女子同士でじゃれあったり、普通より少し距離が近いということもよくあること。だから、彼女がどういうつもりで「好き」と言ったのか、わからなかったのだ。

「それまで、少しは彼女を好きだと思う気持ちはあったんですけど、言われたら余計好きになっちゃって(笑)」

「どうしたいの?」と聞いたら、「気持ちを知りたい」と言われ、自分の想いを素直に伝えた。

そうして、人生初の彼女ができた。

オープンな関係性

当時のことを思い出すのは、なんだかちょっぴり照れくさい。

「彼女は、結構強気でサバサバしてるタイプの子でした」

「付き合ってからは、浮かれてましたね。やっと彼女ができたので、ものすごくうれしかったです」

どこに行くにも、ずっと一緒だった。放課後は彼女を家まで送っていたし、ふたりで遊びにいくこともあった。恋人らしいことができて、とてもうれしかった。

ふたりの関係は、比較的オープンに周囲に伝えていた。

「彼女が友達に話していたので、部活の子たちも知っていました」

女性が好きだということを自分からは特に明言していなかったが、友人たちは、いたって自然に受け入れてくれていたと思う。

まわりから「レズじゃない?」といじられたり、いじめられるようなこともなかった。共学だったため、男子もこの関係を知っていたが、特に何も言われなかった。

ところが、ラブラブだった彼女とは、半年ほどで破局してしまうことに。

「どっちも好きな人ができたみたいな感じなんですけど・・・・・・(笑)」

恋多き思春期。次に好きになったのは、あまり面識のない女の子だった。しかし残念ながら、彼女とは付き合うことはなかった。

04誰にも言えない悩み

“障害” と言われたくない

「中学生くらいの頃は、結構我慢していた部分もあったので、いろいろ病んでいたというか、落ち込んでたこともありました」

友達にも恋人にも恵まれた中学校生活だったが、その反面、自分の体に対する違和感は増していくばかりだったのだ。

「男の子の体になりたい、というおもいは結構前からありましたね」

「この体が嫌だなと思ってはいましたが、仕方がないかなっていう感じは強かったです」

当時は、まだLGBTの知識もあまりなかった。携帯は持っていたが、家であまりネットを使えなかったため、自分で調べることもできなかったのだ。

だから、自分の心と体のズレにモヤモヤを抱きつつも、諦めて受け入れるしかなかった。

周囲から、「性同一性障害じゃないの?」と言われることも何度かあった。

「でも、受け入れられなかったんで否定していました。自分が “障害” だって認めたくなかったんです。だからと言って、自分がレズだとも思っていませんでした」

自分はいったい何者?

自分に障害があるとは認めたくないけれど、レズビアンでもない。

自分はいったい何者なんだろう。わからない・・・・・・。

「中学の頃は、けっこう死にたいと思ってました」

「体のことも全部含めて、自分のことがよくわかんなかったんです。だから、親とぶつかったり、おばあちゃんにも八つ当たりしちゃったりして、かなり反抗してましたね」

反抗することはあっても、家族に悩みを相談することはできなかった。仕事で忙しい母に、これ以上心配ごとをかけたくないという気持ちが強かったのだ。それに、長女として生まれ持った責任感のようなものも、どこかで邪魔をしていたのかもしれない。

「自分がなんなのかわかんないんですよ。なんで生きてるんだろうって」

将来にも、希望を持つことができなかった。

「女の子のことが好きだから、結婚もできないんじゃないかって思ってました」

「結婚して子供を持つことが、小さい頃からの憧れでした。父親になりたかったんです」

そうして、ひとりぼっちで苦悩していた中学生時代。暗闇から抜け出すきっかけとなったのは、高校で待ち受けていた新たな出会いだった。

05相談できる場所

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恵まれた高校生活

自宅の近所にあったということで、特に迷わず進学を決めた高校。ところが、この選択がまさかの転機となった。

「悩みを乗り越えるきっかけになったのは、高校でいろいろ相談できる場所ができたことでした」

「高校では、まわりに自分と同じような人がいっぱいいたんです。相談できる人がいたことで、だいぶ気が楽になりました」

1学年上には自分と同じFTMの先輩がいて、同学年には男同士で付き合っているカップルもいた。ほかにも、ゲイであることをオープンにしている学生が多かった。

さらに幸運なことに、そういう人たちへ対する風当たりの強さなども、これといって感じられなかったのだ。もちろん、いじめなどもない。

「だから、女の子のことを好きになっても、友達に相談することができたんです」

今思えば、性の多様性にかなり寛容な高校だった。そうした周囲の理解があったから、高校に入学してからは、ひとりで悩む時間も徐々に減っていった。

もしも今、中学の頃悩んでいる自分に声をかけられるのであれば、「もっとオープンにしちゃってもいいよ」と言ってあげたい。

きっと、まわりには受け入れてくれる人がいるはずだから。

母のうつ病

高校のバスケ部では、キャプテンを務めた。

「でも、後輩からナメられるタイプだったので、みんな言うことを聞いてくれないんですよ(笑)」

体育会系のいわゆる怖い先輩というよりも、「優しい先輩」と言われることが多かった。

そうして、順風満帆な高校生活がスタートしたかと思いきや、また新たな問題が勃発する。

「その頃、お母さんがうつ病になったんですよ。それで色々と・・・・・・」

母は以前から抑うつ気味だったのだが、高校入学あたりから一気に病状が悪化してしまったのだ。

「そこから、ガサツというか、短気になりはじめたんです。今まではそんな人じゃなかったんですけど、物に当たるようにもなりました」

「お母さんに八つ当たりされるのがしんどくて、もう家にいたくなかったですね」

それでも、母は朝も夜も休みなく働いていた。父と離婚し、女手ひとつで3人の子ども達を育ててきた母。仕事に対してのストレスや鬱憤が大きかったのかもしれない。

「一応、今は回復してよくなっています。何回か入院も繰り返していたんですけど、通院の成果もあったようです」

現在、母は新しいパートナーと一緒に暮らしている。今は親元を離れて生活しているので詳しい状況はわからないが、あちらもどうにかうまくやっているようだ。


<<<後編 2016/12/20/Tue>>>
INDEX

06 大切なパートナー
07 ホルモン治療のスタート
08 男性の名前に
09 未来に向かって一歩ずつ
10 これからがはじまり

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