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ずっと恋愛不適合者なんだと思ってた。レズビアンだと気づいてから、一変した恋愛観【後編】

ずっと恋愛不適合者なんだと思ってた。レズビアンだと気づいてから、一変した恋愛観【前編】はこちら

2017/09/27/Wed
Photo : Tomoki Suzuki  Text : Mana Kono
島谷 優希 / Yuki Shimatani

1993年、富山県生まれ。駒沢女子大学人間関係学科に在学中、不動産系の株式会社LIVMOでインターンを経験。新卒で他の不動産企業へ就職するも、退職して再びLIVMOでフルコミッション契約を結ぶ。現在はフリーランスとして働く傍ら、自身が立ち上げたLGBT当事者向けの不動産サービス「Yu-Mo」の運営にも携わる。

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INDEX
01 活発だった幼少期
02 周囲の目を気にしていた
03 彼氏をちゃんと好きになれない
04 上京して人生をリセットしたい
05 東京での新生活
==================(後編)========================
06 初めて本気の恋をした
07 進路の変更
08 自分の得意ジャンルでLGBT支援ができれば
09 いつかは家族にも “レズビアン” だと伝えたい
10 カミングアウトで、心が軽くなった

06初めて本気の恋をした

レズビアンのパートナー

現在交際している女性のパートナーとは、大学を卒業する少し前にSNSを通じて知り合った。

「付き合って1年半、今では同棲もしています」

彼女と出会うまでは、大学でもずっと男性と付き合い続けていた。

「中高の時よりは長続きするようになって、1年半交際していた彼氏もいました」

大学に入ってからは、交際相手の “理想の彼女” を演じることで、やりがいに近いものを感じていたように思う。

「『こういう女が好きなんでしょ?』って相手の理想像を演じて、向こうが思い通りの反応をしてくれると、『よし!』って満足するんです(笑)」

「ちょっとゲーム感覚みたいなところもあったのかもしれません」

とはいえ、別れてから一切相手を引きずることもなかったから、周囲の友だちからは「スーパードライだよね」と言われていた。

「恋人と別れてひどく落ち込んでしまう気持ちも、今だったらわかるんですけど、当時は全然理解できませんでした」

「もし、今付き合ってるパートナーと別れたらって考えたら・・・・・・。すごく苦しくなります」

彼女にはなんでもしてあげたい

パートナーは、自分よりも年上。

「ロングヘアーでかわいい系です。私、見た目で言えばCanCam系の子が好きなんですよね」

最初はSNS上でやりとりをしていたが、直接会ってデートを重ねるうちに、徐々に恋心が芽生えていった。

「1ヶ月くらいで『好きだな』と思うようになって、生まれて初めて私の方から告白したんです」

「・・・・・・なんかちょっと照れちゃいますね(笑)」

“スーパードライ” だった自分が、初めて本気で誰かを好きになった。

「すごく、うれしかったです」

それまでは、「一度レズビアンの道に行ったらもう戻れないだろう」と思って躊躇していた部分もあった。

「でも、一歩踏み出したら踏み出したで、自分は恋愛不適合者じゃなかったんだって気づけたし、安堵感が大きかったです」

「それまでは “スーパードライ” って言われてたくらいだから、彼氏がいて恋愛しててもほとんど無表情で、すごく短気だったんですよね」

自分を抑えていたことで、どこか感情が欠落していたのだと思う。

「でも、今では彼女にも『付き合う前と今とじゃ全然表情が違うね、優しい顔になった』って言われます」

彼女には、見返りを求めずになんでもしてあげたいと思う。

「それまで、友だちが『彼氏と別れて悲しい』って言って泣いていたのは、こういうことだったんだ!って、ようやくわかるようになりました。本当に」

「みんなこういう気持ちだったんだな、って。私は今まで申し訳ないことをしていたな、って・・・・・・」

07進路の変更

不動産業界へ

当初は臨床心理士を目指して上京したものの、新卒時には不動産会社に就職し、現在に至るまで不動産業に携わっている。

進路を変えたきっかけは、ふたつ。

「まず、東京に出てきて、選択肢がこんなにもあるんだっていうことを初めて知ったことです」

富山と比べて、東京には様々な職業が存在することに驚いた。

「たとえば不動産にしても、富山だったら賃貸物件とかよりも土地の売買がメインになると思うんですよ」

「それ以外にも、東京にはニッチなビジネスだってたくさんありますよね」

これまで、富山にある仕事の中からやりたいものを選んでいたから、東京に出て新しい選択肢がたくさん存在することを知って、進路を考え直すようになった。

「そもそも臨床心理士を目指していたのも、『世間から認められる立派な仕事だから』っていう理由が大きかったんです」

自分は中高と落ちこぼれだったからこそ、安定した職に就いて親を安心させたいという気持ちが強かったのだ。

「だから、臨床心理士の仕事自体に憧れていたわけではなかったんですよね」

そうして進路を考え直している折に、現在勤めている不動産会社の社長と出会い、不動産業界へ進むことを決意する。

「上京する時に、自分で部屋探しをしてたんです」

「そうしたら、当時はまだ全然知識がなかったので、相場よりも明らかに高い物件を契約しちゃったんですよ」

後々相場を知り、「不動産って良心的じゃないな」と不信感を抱いた。

その後、飲み会で知り合った不動産関係の社会人にも「地方出身者はカモ」と言われ、不動産屋に対するイメージは最悪だった。

だが、社長と知り合ったことで、業界の印象がガラリと変わった。

「社長はすごい面白い人なんですよ。会った瞬間に『あ、この人いい人だな』って思いました」

そんな社長の人柄に惹かれ、学生時代にその会社でインターンをすることに。

「いずれこの会社で働きたいって思ってはいたんですけど、とりあえずは別の会社で社会人経験を積もうと思いました」

正攻法では勝てないから

「私、いわゆる就職活動はしていないんです」

新卒で入った会社も、知人からの紹介がきっかけだった。

「私は取り立てて能力もないし、正攻法だと勝てないだろうなって最初から自覚してたんです」

「なので、どうすれば手っ取り早く就職できるだろうって考えて、人脈を広げていこうって結論に至りました」

そうして無事採用された会社に1年ほど勤めた後、退職。

現在は、学生時代にインターンをしていた不動産会社で、フルコミッション契約で働いている。

08自分の得意ジャンルでLGBT支援ができれば

趣味を通じてできた仲間

現在のパートナーと付き合いだしてから、しばらくはLGBTの友だちを率先して作ろうとは思わなかった。

「でも、二丁目のバーにたまに遊びに行ってるうちに、フットサル好きの友だちができたんです」

“自分と同じレズビアンだから” というよりも、共通の趣味を通じて仲良くなった友人。

「それまでは、二丁目周辺にはアーティスト気質の人が多いってイメージがあったんです」

「自分は、そういうコミュニティにはあんまり合わないなって思ってたんですけど、そうじゃないスポーツマンタイプの人もいるんだとわかりました」

それから、二丁目も居心地がいいと思うようになった。

LGBT不動産サービスの立ち上げ

現在では、本業の傍ら、LGBT当事者に向けた不動産サービスの運営もしている。

「起業したってわけではなくて、まだサービスを立ち上げた段階なんですけどね」

セクシュアルマイノリティにとって過ごしやすい暮らしを提供できれば。

サービスの立ち上げは、そう思ったことがきっかけだった。

「部屋探しについて、LGBTの友だちに話を聞いても、審査とかでいろいろ問題があるみたいなんです」

カップルで同居するつもりでも、どちらかの収入のみで審査にかけられた場合、落ちてしまう場合も多いという。

「LGBTの中でも、レズビアンカップルはゲイカップルと比べて収入が少ないから、審査に落ちやすいという話を聞いたこともあります」

統計的に見ても、女性は男性と比較して収入が少ないというのが現状だ。

「なので、本来は夫婦にしか利用できないペアローンを同性カップルにも取り入れられたらと思います」

「女性同士でも、より良い住まいを手に入れられるようになってほしいんです」

09いつかは家族にも“レズビアン” だと伝えたい

仕事を通して誰かの人生に関われたら

本業も自分で立ち上げたサービスも、どちらも不動産関係だ。

「LGBTに限らず、お客さま全員に楽しくお部屋探しをしてもらいたいんです」

「賃貸ならその先の2年間、売買であれば一生ものの買い物になるかもしれません」

「そのお手伝いをするのって、お客さまの人生にすごく関わることじゃないですか!?」

仕事を続けていくうちに、そうした顧客からの喜びや感謝の声に触れることも増えていった。

「私は、人と関わる仕事をしたいと思うんです。家って、人々の暮らしの中ですごく大事なものですし」

「だから、一人ひとりに合った住宅の提案をいかにできるかってすごく考えているし、LGBTの方とも不動産を通して関われたら幸せだなって思っています」

今後の課題

今のところ、仕事も恋も順調だ。

でも、ひとつ気にかかっていることがある。

「家族には、まだ自分のセクシュアリティをカミングアウトしていないんです」

別に、バレたらバレたで、それでもいいかなとは思っている。

「でも、できればそろそろちゃんと言えたらいいなと思ってます」

「今付き合ってる彼女を本気で好きなので、ちゃんと恋人がいるよっていう報告的な意味でも、言いたいなと思ってるんですよね・・・・・・」

自分の口から言わずとも、遅かれ早かれどのみちバレてしまうだろうとも思う。

「ただ、今は実家を出て両親とは離れて暮らしているので、話し合いのために時間を作るのが現実的にちょっと難しいんです」

カミングアウトするのであれば、しっかり丁寧に伝えたい。

「以前、我が家で兄にゲイ疑惑がかかっていたことがあったんですよ。なかなか彼女ができないってだけで、実際は違ったんですけど(笑)」

その時に、LGBT特集のテレビ番組を見ていた母が、「受け入れがたいことではあるけど、もしも本当にお兄ちゃんがゲイだったとしたら、受け入れないといけないよね」と、ポツンと口にしたことが印象に残っている。

「お兄ちゃんはゲイじゃないよ!むしろ私の方だよ!って感じだったんですけどね(笑)」

「でも、お母さんはそこまで悩んで考えていたんだなって思いました」

だから、仮に自分がカミングアウトしたとしても、母はきっと受け入れてくれるだろう。

「母は、いつも私の選択を最優先にしてくれるんです」

「大学受験をする時も『がんばりなさい』って言ってくれたし、上京にも肯定的でした」

高校の教師にですら「お前に受験は無理だ」と言われていたが、母だけは応援してくれた。

「母だけじゃなく、父もすごく優しいんです」

「それもあって、両親から援助してもらって大学に通っているうちは、レズビアンの道には踏み込まないでおこうという思いもありました」

社会人になって、金銭的にも自分自身で責任が取れるようになってから、その道をゆこう。

ずっと、そう心に決めていたのだ。

「親には、これまでたくさん迷惑をかけてきたので・・・・・・」

10カミングアウトで、心が軽くなった

LGBTも暮らしやすい社会へ

仕事面では、同性カップルも異性カップルと同じように、住みよい部屋探しができるようになることが目標だ。

「私が今やっているLGBTの不動産サービスがなくなるのが理想です」

「そのためには、このサービスがもっと影響力を持っていかないといけないので、どうやってブランディングしていくかが課題ですね」

この夏には、電子書籍の出版も予定している。

「LGBTが暮らしやすくなるためには、世の中にもっと興味関心を持ってもらうことが大事だと思うんです」

「欧米ではLGBT問題でデモが起きることもありますが、日本だとほとんどないじゃないですか?それって、関心度の低さが由来していると思うんですよね」

その関心度を少しでも上げることが、自分にとっての課題だと思う。

「不動産的な意味でもそうですけど、LGBTがもっと暮らしやすい社会に、ちょっとずつでももっていけたらいいなと思っています」

あまり気負いすぎないで

「今は、職場でもプライベートでもカミングアウトしています。でも、前の職場ではカミングアウトできないことで、すごくストレスがありました」

「恋人がいない」と言えば異性との合コンに誘われるし、「彼氏がいる」と言えば関係性を詮索される。

「最初はどうにか彼女を彼氏に変換して話していても、『写真を見せて』って言われたら終わりなんですよね」

でも、今では仮に「彼氏いるんですか?」と聞かれても、自然に「彼女がいますよ」と返すことができる。

「そう言えるようになってからは、『実は、当事者側が気にしすぎているんだな』と感じるようにもなりました」

「カミングアウトしても、案外みんな、『そうなんだ』って普通に受け入れてくれるんですよね」

当事者には、何かしらの引け目を感じている人が多い気がする。

「もちろん、ある程度伝える人は選んだ方がいいと思いますけど、受け入れてくれそうな仲間をなるべく早く見つけて、カミングアウトしてみたらいいんじゃないかと思います」

自分のことを理解してくれる人がひとりでも増えれば、格段に生きやすくなるはずだから。

あとがき
「東京の方が望むチャンスに出会えると思うんです」と話した。その言葉は、大学受験から備えた自分を追い込める実行力。親元を離れてからも奮闘する優希さんを想像した■テキパキと話す唇が一瞬強く結ばれた。瞳が潤んだのは、両親の話しになったとき。好きになるのは同性だと、まだ話してはいない。「・・・今までもたくさん心配かけてきちゃったので」と■離れた場所からだけど、富山まで届けたい。優希さんが祈っている両親の毎日、溢れた涙の理由も。(編集部)

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