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「もっと幸せになっていいんだよ」。パートナーの言葉が、私を変えた【後編】

「もっと幸せになっていいんだよ」。パートナーの言葉が、私を変えた 【前編】はこちら

2016/12/25/Sun
Photo : Taku Katayama Text : Rei Suzuki
手塚 弥生 / Yayoi tezuka

1988年、東京都生まれ。レインボークルー代表、LGBTsコミュニケーター。男性と交際したことも数回あったが、24歳の終わり頃「女性も好きになれるかもしれない」と感じて出向いた新宿二丁目で多くのセクシュアルマイノリティに出会い、「人を愛するのに性別は関係ない」と気づき、自らのセクシュアリティをパンセクシャルだと自覚する。日本大学文理学部を卒業後、大手美容系会社へ就職し、財務、新規事業、広告営業など幅広く経験を積んだ。2015年に退職、レインボークルーを開業。LGBTに関する情報発信やコンサルティング、LGBT・ダイバーシティ教育・研修を手がけている。

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INDEX
01 めぐさんと出会って私は変わった
02 自分のなかで、ふたりの弥生が相克する
03 一番好きなのは、お母さん
04 運命の人は、女の子かもしれない
05 楽しくて絶望する二丁目の夜
==================(後編)========================
06 元カノが促した転職活動
07 めぐさんが教えてくれた、幸せの心構え
08 LGBTからマイノリティへ
09 世界の多様性に、いかに気づいていけるのか
10 こだわりを捨てることで、自分らしく生きる

06元カノが促した転職活動

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働き方を変えていこう

初めてつきあった女性は、ボーイッシュなレズビアンの女性。

別れる、別れないを繰り返した壮絶な関係が、約2年続いて別れることになるのだが、出会って間もないころ、2回目となる卵巣膿腫を患った。

「元カノが言ったんです。『やっちゃんさあ、毎日朝から晩まで働いてどうすんの。残業代ももらえないのにがんばって、身体壊してどうすんの』って、彼女なりの優しさだったんですね」

「それで、働き方を変えようって」

身も心もぼろぼろな状態から脱するべく、目が覚めたように転職活動を開始。

自分のセクシュアリティをカミングアウトしての転職活動だった。

大手企業2社から内定をもらうが、紆余曲折がありフリーランスとして起業することを選択。

現在、LGBTsコミュニケーターとして自ら立ち上げたレインボークルーの代表を務めている。

念願の開業届を提出したのは、2015年12月。27歳の誕生日だ。

初めての二丁目訪問から、およそ2年の月日が流れていた。

現在のセクシュアリティ

現在のセクシュアリティは、とりあえずしっくり来ているパンセクシュアルだ。

「二丁目に行き始めの頃は『女の子とつきあってみたい』という興味があったんですが、今は、いいなと思う人の性別がたまたま女性だった、というのがしっくりきます」

「ふつうに周りの男性の先輩をかっこいいな、とか思うし、男の人が嫌になったわけじゃないんです。私ディーンフジオカさんが大好きだし(笑)」

07めぐさんが教えてくれた、幸せの心構え

自分に優しくすることの意義

転機は、働き方を変えたこと。

そして、めぐさんと出会ったこと。
めぐさんとの出会いは、本当に大きい。

今、幸せを共有しているからだ。

出会って半年が過ぎた頃、めぐさんがブチ切れた。元カノの話を繰り返してしまったからだ。無意識の試し行動だった。

「私、自分がいちばん傷ついてると思ってたエゴイスティックな人間でした。めぐさんは嫉妬してるんじゃない。人にされたら普通に嫌なことを、堂々とする私に怒っていたんです」

「めぐさんは『私も幸せになりたいし、あなたも幸せにならなきゃいけない。その幸せってものをちゃんと受け入れ、手にする。その心構えをしてください』ってことを言ってくれたんです」

「それがなかったら、私は今、こういうふうに『幸せです』って言えませんでした」

めぐさんの真摯な愛に包まれて、自分へのまなざしも温かくなった。

自分が何者であるかの極端なこだわりがなくなり、楽になった。
自分自身のためにお金を使うことへの過剰な躊躇も、なくなってきた。

「仕事としてサービスを提供する側になったとき、受けていないサービスは人に提供できないんですね。人をおもてなしするとき、いいお店を知っておくために自分が食べる、人に優しくするためには自分にも優しくしないといけない」

「この循環っていうか、自分に何かをすることは、私が大好きな人に何かをしてあげることの第一段階になる。そのことに気付けたのも、めぐさんとの対話がきっかけなんです」

もっと幸せになろう

「『君は十分がんばっている。もっと幸せになっていいんだよ』ってめぐさんは意識的に言ってくれる。私が言葉にしないとわからないタイプのせいもあるけど、私が自分を幸せにすることに抵抗を感じていたのを、わかってくれているんだと思う」

「『好き』とか『愛してる』よりも『君といられて幸せだよ。君はもっと幸せになっていいんだよ』って意識的に言ってくれるんです」

めぐさんは、ひたすら話を聞いてくれた。そんなめぐさん自身もまた自分に向き合い、さまざまな解のあり方を模索してきていた人なのだ。

08LGBTからマイノリティへ

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ストレートには理解できない世界

LGBTsコミュニケーターとして今、オールジェンダーがコンセプトのエステサロンの立ち上げを手がけている。

コンサルタントとして、培ってきたノウハウを存分に活かせている。

「実はもう、LGBTという言葉にとらわれなくなっています。LGBTの人とストレートの人の間にたって両者のコミュニケ—ションを円滑にする情報発信やコンサルティングをやっていますが、LGBTsコミュニケーターって名乗れるのも、あと数年だなって思っていて」

LGBTという言葉よりも、マイノリティという言葉の方がしっくりする。

「『LGBTを理解』っていうけど、本当の意味で理解することってストレートの方には無理だと思ってるんです。背が高い人がタイプの人に、背の低い人の魅力をいくら伝えたってその良さがしっくり来ないのと一緒で、本当のところでわからないのは仕方ないと思っています。その人の好き嫌いや価値観にもよるし」

「『同性を好きになっても、好きになる気持ちは一緒だ』といっても、好きになったことがなければその気持ちって分からないですよね。LGBTに対して現状理解のない日本を冷静に見すえたときに、気持ちの部分までの理解は無理だって思ったんです」

善意や希望的観測を排除したシビアな見方だが、自らを長らく異性愛者だと思ってきたからこそ獲得していた冷静な視線だ。

マイノリティ性で養う思いやりの感覚

「でもこれを、マイノリティの問題としてとらえると理解ができます。左利きの方は改札通りにくいですよね、右利き用にできているから。血液型がAB型の人って事故のときに輸血がたいへんですよね」

「たぶん誰もがどこかマイノリティのところがある。そんな自分のマイノリティ性にフォーカスすれば、少数派ゆえの感覚が見えてくる。それと同じのことが、性別とか人を愛する分野にもあるんです」

自分のマイノリティ性に気づこう、というアプローチは非常に有効だ。

「感覚的には理解しにくいからこそ、どういう感覚なのかフォーカスしていく。知識としてのLGBTも大事ですが、それによって逆に、とんでもない宇宙人みたいなのを想像される可能性もある」

「そして『LGBTって傷つきやすいらしいよ』『こういうことを言ったらいけないらしいよ』という憶測のようなリアクションが生まれてしまったら、それこそコミュニケーションの弊害になってしまいます」

09世界の多様性に、いかに気づいていけるのか

男だから、女だから、の生き辛さ

セクシュアリティの問題は、LGBTだけの話ではないと考えている。

「会社員のとき『女のくせに』って思われてなめられていたし、自分でも『女だから周りの人にバカにされたくない』ってがんばっていました。美容のことに詳しくないのに、女性だからという理由で女性向けの美容サービスを考えろと言われて本当は苦痛でしたね(笑)」

「セクシュアリティの問題って、LGBTだけじゃなくてストレートの男性にも女性にもあるんです」

「女だから男だからって、なんとなく社会に認められているものがあって、そこに合わせなくちゃいけない場面にぶち当たるとストレートの人でも生きづらい。男だから女だからじゃなくて、本当なら『あなただから』ってなることも多いのに」

トランスジェンダーの感覚へ

振り返れば、今まで自分の中の男性性と女性性の間を揺れ動いてきた。

「私もずっと父親や長男の役割を務めなきゃいけないと思って、自分のなかの女性性をおざなりにしていたんです。社会から求められている性別の役割と、自分が知って思っている自分の性別とのぶつかりあいを、ずっと抱えていた。だから、そういう意味ではトランスジェンダーの感覚がわかるんです」

男にならなきゃいけないと、思っていた。

男より、男らしいくらいに。

「昔はよく周りの人、特に男の人に張り合っていました。でも張り合うべきは男の人ではなかったし、周りの誰かや自分自身でもなかった。大切なのはそこじゃなくて、自分がしたいこと、できることは何か、そして人を思いやるという意味でマイノリティ性に気づくことだった」

「世界の多様性をいかにキャッチしていくか、それができる柔軟性を養うことの方がよっぽど大事なんだって気づいたんです」

10こだわりを捨てることで、自分らしく生きる

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原因を、深堀りしても意味がない

LGBT当事者には、もう少し視野を広げてもらいたいと思っている。

「私が当事者だからきつい言い方になるけれど、自分のうまくいかないことの原因を、レズビアンだから、ゲイだからというセクシュアリティのせいだけにするのはどうなのかなって」

変えられないことについて悩むのをやめて、今すぐ前向きになることを伝えたい。

それは楽しいことだから。

「一生一緒にいたい子がいたら、その方向に行けるようふたりで考えないと、いつまでたっても幸せを味わえない。なんでレズビアンに生まれたんだろうと考えれば考えるほど、変えられないことだからどうしようもなくて悲しくなる。でもレズビアンだからこそ今のパートナーに出会えたかもしれない」

「セクシュアリティに原因や理由を求めること自体、私はやめちゃったんです。だったら『どう生きたいのか』を考える方が、絶対楽しいですよ」

言葉にこだわり過ぎないで

LGBTという言葉に救われた時代もあったが、ネットとSNSが普及した現在、自分が何者かを探ることは容易になった。

だからこそ言葉によるカテゴライズに、懸念がある。

「分類は大事ですが、言葉にこだわりすぎると生き方が限定されちゃう。小さいときから女の子が好きでレズビアンだと自覚していても、死ぬ直前に男の人を好きになったら、それでも自分のセクシュアリティに悩むんですか? 自分が何者かを知る過程で知識に翻弄されてしまうぐらいなら、好きな格好をして好きな人を好きでいればいい。好きな人がいなければ、自分の生きがいを見つければいい」

「言葉や悩みの原因が、生きやすくしてくれるなら突き詰めればいいけど、幸せにならず、悲しいことが多いなら、それはいらないでしょ、そう思うんです」

分類がしっくり来なければ、無理に当てはめなくてもいいのだ。

そこに当てはまらなくても、絶望なんかしなくていい。

「アイデンティティと、何かのカテゴリーに当てはめることを、きちんと区別しておかないと、自分の首を締めるような言葉の使い方、考え方をしちゃいます」

「特にLGBTの方って、世間が当たり前って思っていること(性別は男女2つしかないとか、異性を好きになるものだとか)に疑問を呈する感覚をせっかく持っているんだから、世の中で当たり前だと思われているおかしなことに気づく力がストレートの方よりずっとあると思うんです。それは仕事や人生に役立てられるだろうし、うまく昇華していけると思うんです」

人って流動的なもの

「今はパンセクシュアルだけど、バイセクシュアルやレズビアンになるかもしれません。今日ふと思ったんです。そもそも性別という概念がなくなる日がくるかもしれないなって。なんか流動的なんですよ」

「セクシュアリティだけじゃなく、人ってそもそもめちゃくちゃ流動的です」

自分のビジネスをレインボークルーと名付けたのも、「その人自体が虹であるかのように、いろんな色をもっている」という意味を込めている。

「LGBTを知ってもらいたくて、前は声高なアクティビストのようでしたが今は違います。セクシュアリティは自分の目や鼻のように大切な要素だけど、それだけが自分じゃない」

「今は自分を女性だと思っているけど、突き詰めるときっと女性でも男性でもどっちでもいいんです。女だから男だからと意識してきたけれど、そういうのを近いうちに、超えちゃうんだろうなって思うんです」

いつも自分と向き合って、正直に誠実に、答えを出してきた弥生さん。
より柔軟に、しなやかに、成長を続けているのは、彼女が今、かけがえのない幸せに満たされているからに違いない。

あとがき
熱量が高く、アグレッシブなのに、どこか華奢な壊れやすさを感じた弥生さん。自罰的に生きてきた今までを聞いて、その遠因が見えた◆[親に求めきれなかったものを、恋人に求める]。その説がどうであるかは分からない。ただ、最愛の人に巡り会えた今、どこか「あの時」にはできなかった時間を取り戻しているように思えて、ホッとした◆弥生さんが受け取った「無条件の肯定的配慮」・・・・・・安心安全な場所をもてたなら、人は存分に自分を生きられる。(編集部)

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