INTERVIEW

3年前の自分に「今、幸せだよ」と言ってあげたい【前編】

会った時、「透明感がある人だな」と思った。実際、話を始めると真面目でまっすぐ。それでいて頑ななところがない、やわらかな人だ。もともと口数は多くないという上口さん。セクシュアリティについて、友達にも面と向かって言う勇気はまだないというが、自分の体験を通してLGBTについて知り、理解してくれる人が1人でも増えたらと、真摯にインタビューに応えてくれた。

2016/11/08/Tue
Photo : Taku Katayama Text : Yuko Suzuki
上口 翔子 / Shoko Kamiguchi

1985年、北海道生まれ。筑波大学卒業後、Webメディアで編集記者を経験。観光・旅行業を経て再び、編集・ライティングの仕事に従事している。思春期に自らの性指向に気づきはじめ、27歳でレズビアンと自認。『OUT IN JAPAN』に参加したことを機に、少しずつカミングアウトしている。自他ともに認める ”IT&ガジェットおたく”。富士山が好きで、少なくても年に1回は登っている。

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INDEX
01 リカちゃんよりファイブマン
02 遊び仲間は男の子
03 進んだ高校は ”ほぼ男子校”
04 本当は女の人が好き
05 恋をしてはいけない?
==================(後編)========================
06 カミングアウトを始める
07 その時、家族は
08 恋人ができた!
09 もう、自分を否定しなくていい
10 ひっそり、静かに暮らしていけたら

01リカちゃんよりファイブマン

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赤より青が好き

三人姉妹の真ん中。

4歳年上の姉は「ザ・女の子」といった感じで、リカちゃん人形と遊んだり、おままごとをするのが大好きだった。

「対して、私はそういうことにはまったく関心がなくて、超合金のロボットを組み立てたり、いわゆる ”戦隊モノ” に夢中で」

「5、6歳の頃、『地球戦隊ファイブマン』という番組がオンエアされていたのですが、そのキャラクターたちが描かれている枕で寝ていました(笑)」

おままごとより、ボール蹴りやバッティングなど男の子の遊びが好きだった。

身につけるものも、多くの女の子が好きな赤色ではなく青色。小学校には、スカートではなくズボンを履いて通っていた。

当然、姉のお下がりの洋服も着なかった。

姉には当時から、そして今でも「あんたは弟みたい」と言われている。

屈託のない小学校時代

ただ、両親に「女の子らしくしなさい」と言われたことはない。

「一度だけ、母にスカートを履かされて学校に行ったのですが、クラスメートにとってもその格好が珍しかったから、からかわれたんですね。それですごく嫌な思いをしたので、母に『もう二度とスカートを履きたくない』と言うと、受け入れてくれましたし」

「両親は、長女ということで姉に対しては厳しく、妹は末っ子ということでかわいくてしょうがない。その間にいた私は、よくも悪くも放ったらかしでした(笑)」

「三姉妹のうち、いちばん自由だった気がします」

今思えば、それがよかったのかもしれない。

小学校の間は、自分が男の子なのか女の子なのかと、性を意識したり悩んだりすることはなかった。

02遊び仲間は男の子

ガールズトークが苦手だった

中学校に進む頃になると、第二次性徴期を迎えて体にも変化が現れ始める。

さすがに「自分は女の子である」と意識した。

でも、女の子特有の人間関係が苦手だった。

「女の子ってすぐに、派閥というかグループを作りたがるじゃないですか。私のクラスでも、大きく分けると派手なグループとまじめなグループ、そのどちらにも属さないグループがあって」

「私はどのグループにも属したくありませんでした。だから、男の子とばかり一緒にいたんです」

中学生といえばみな、多感な時期だ。

そういう状況では、女の子たちから「あの子変わってるよね」と、仲間はずれにされかねない。

「ところが、相当変わっていると思われたのか(笑)、別扱いされているような感じで、いじめられることもなかったんです」

「全然女子っぽくはなかったけど、男性に媚を売るようなことも絶対にしなかったからでしょう。私としては媚びるも何も、男子はただ、一緒にいてラクな存在でしかなかったんですけどね」

男の子になりたい

ある時、教師に「おまえはいつも男の中にいるな」と不思議がられたが、それ以上のことは何も言われなかった。

「ただ自分としては、だんだん膨らんでくる胸がすごくイヤで、男の子になりたいと思うようになっていました」

「バスケットボールをやっていたこともあって髪の毛もショートにしていましたし、見かけは本当に男の子のようだったと思います」

その頃ちょうど、テレビドラマ『3年B組金八先生』を見ていて、「鶴本直」を通して性同一性障害という言葉を知った。

「ああ、直のような人もいるんだと思って、あの番組は熱心に見ていました。でも、自分は男の子になりたいと思いながら、直とも違うような気がして」

「いったい私は何なんだろうと、その頃からようやく気になり始めたんです」

とはいえ、毎日バスケットボールに夢中で、自らのセクシュアリティについてそれ以上に考え込むことなく、中学時代は過ぎていった。

03進んだ高校は、”ほぼ男子校”

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IT技術者を目指し、高校へ

高校は工業系の ”高専” に進んだ。

父親がロボット系の仕事をしていた影響で、自分もロボットを作りたいと思ったからだ。

また、家にはわりと早い時期からパソコンがあり、中学生の頃にはすでにそれを使いこなしていた。

「その頃、ホリエモンが活躍したり、世の中がITバブルに沸いていたこともあって、インターネットに関する仕事がしたい!と思ったんです」

「SNSも盛んになってきていましたから、とにかくIT系の何か新しいことをやってみたいと。その学校は、ソフトウエアとハードウエア、どちらも学ぶことができるというので受験しました」

そして無事合格。

その学校は実家とは違う県にあり、しかも2年生までは全員、寮に入ることになっていたので、親元を離れての高校生活が始まった。

「寂しくはありませんでした。興味のあることを学んでいたし、合格祝いに父親が買ってくれたノートパソコンで、ブログを始めたりネットサーフィンをしたり」

「インターネットを通して世界が広がっていくような気がして、わくわくしていました」

ある日、インターネット上でたまたま「LGBT」という言葉を目にする。

「LBGTをキーワードに検索して、個人のブログを読んでいました。レズビアンはL、ゲイはGと呼ぶんだなとか、そういう人たちは新宿2丁目に行くんだなとか」

「LGBTにとって日本は生きづらくて、海外に出て行く人が多いことも、この頃に知ったんです」

でも、当時はまだ、自分がその当事者であるという自覚はなかった。

”彼氏” ができた

工学系ということもあって、そこは、ほぼ男子校だった。

全校生徒200人のところ、女子は40人だけ。クラスによっては、女子が1人しかいないところもあった。

「周りはITの話で盛り上がれる男子ばかり。女の子同士のわずらわしさもなくて、毎日がすごく楽しかった」

自分の容姿はボーイッシュだと思っていたが、男子生徒から見れば紛れもなく女の子。

ある時、男の子から告白された。

「失礼な話なんですけど・・・・・・彼のことがすごく好き、というわけではなかったんです。でも、高校では私も普通の女の子として扱われていたので、男の子に告白されたらつきあうものだ、と思っていて(笑)」

「ただ、つきあうといっても、その中身は男の子同士で遊んでいるような感じでした。一緒にゲームをしたり、ふたりともアニメが好きだったので漫画雑誌の発売日に朝早く買いに行ったり」

「それはそれで、楽しかったんです」

04本当は女の人が好き

これは憧れ?それとも・・・

”彼氏” は趣味が合うから一緒にいてラクだったが、ドキドキはしなかった。

胸がときめいたといえば断然、中学時代の女子バスケ部の先輩だった。

「バスケ部では、チームワークを強化するためか、1つ上の先輩とペアを組んで練習をするという取り組みがあったんです。そこで私は、ペアになった先輩のことを好きになってしまって」

その感情が憧れからくるものなのか、恋愛感情なのか、自分でもわからなかった。

が、とにかく3年間ずっと、その先輩に「好きだ」と言い続けた。

「先輩としても、そこまで後輩に慕われたら悪い気はしなかったのでしょう。かわいがってくれて、どこかに旅行に出かければおみやげを買ってきてくれたりしました」

「実は、高校進学の際も、先輩が通っている学校に行きたくて本人に『同じところに行きたいんです』と相談したことがあるんです」

「でも、やっぱりそういうことで進路を決めちゃいけないと思ってあきらめた・・・・・・という経緯があるんです」

気がつけば、女性を目で追っていた

高校では、1年生の間のみだが携帯電話の利用が禁止された。

先輩とも連絡が取れなくなり、そのまま疎遠に。

「告白してくれた男の子とつきあうようになったのは、好きだった先輩と会えないし連絡も取れなくなったことがあるかもしれません」

その後も、彼氏と仲良くしながらも女の先輩や後輩を好きになった。

「私は人見知りなのですが、そのぶん、一度仲良くなるとその人とずっとつきあうんです。彼のことは嫌いではなかったから結局、おつきあいは10年続きました」

「でも、その間にも気がつけば女の人を目で追っていたんですよね」

大学でも、そして卒業後に就職した東京の会社でも心を惹かれる相手は、男性ではなく、女性の先輩だった。

「先輩と彼氏と、どちらを優先するかとなったら絶対に先輩。そうやって彼氏の誘いを何度か断っているうちに、彼のほうから別れを切り出されました」

05本当は女の人が好き

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正真正銘の恋

そう、就職した会社でも、ある女性の先輩を好きになったのだった。

「最初は、単に一緒にお酒を飲みに行く関係でした。先輩も私も仕事が好きで、いつも仕事の話をしていたんです」

ところがある日、先輩が「そういえば私たちって、プライベートな話をしないよね」と言い出した。

先輩とはすっかり仲良くなって、信頼もしていたので、この人になら話しても大丈夫だと思い、「実は、女の人を好きになることがよくあるんです」と打ち明けた。

「その時点ではまだ、彼女に恋愛感情を抱いていることに自分でも気づいていなかったのですが、打ち明けたことをきっかけに気づいてしまって」

自分の恋愛対象は女性なのだと自覚し、認めた瞬間だった。

先輩に自分の思いを伝えたい。

変だと思われ、避けられるだろうか。

でも、胸の内を打ち明けたい。

苦しくて苦しくて、ある夜、一緒にお酒を飲みに言った40代の男性の先輩に相談した。

「彼は、『俺がもしゲイの人にそうやって告白されたら気持ちが悪くて、一緒に働きたくない。だからあなたも、彼女には思いを伝えないほうがいい』と言いました」

やっぱりそうか・・・・・・と思いながらも、やはり気持ちを抑えられずに彼女に告白。

だが、「私の恋愛対象は女性ではないの」と断られた。

「ただ、だからといって私のことを避けるわけでもなく、それまで通り飲みに付き合ってくれました」

「殺すぞ」と脅かされ

ところがある日の夜中、携帯電話に知らない人からラインが届いた。

「殺すぞ、というような内容でした」

本人から聞いたことはなかったが、好きになった女性の先輩には彼氏がいた。

ラインの送り主はその男性だった。

「先輩と私が頻繁にお酒を飲みに行くし、先輩が私の家に遊びに来たこともあったりしたので、その人は二人の仲を疑ったようです」

翌日、先輩に聞くとやはり、彼女はその男性から責められたという。

「もともとその人はDVもあったようで、この一件をきかっけに二人は別れたのですが、私も先輩とは気まずくなってしまって。何より、先輩を顔を見ると『殺すぞ』と言われたことを思い出して、怖くなってしまうんです」

 

<<<後編 2016/11/10/Thu>>>
INDEX

06 カミングアウトを始める
07 その時、家族は
08 恋人ができた!
09 もう、自分を否定しなくていい
10 ひっそり、静かに暮らしていけたら