INTERVIEW

”不思議ちゃん” が見る大人たちは、「みんな無理してる」【後編】

”不思議ちゃん” が見る大人たちは、「みんな無理してる」【前編】はこちら

2017/06/15/Thu
Photo : Mayumi Suzuki Text : Junko Kobayashi
小澤 れい / Ozawa Lei

1997年、神奈川県生まれ。姉、弟2人と共に、幼稚園から中学校まで私立の一貫校に通う。高校はバンタンデザイン研究所高等部に進み、美容師免許を取得。大手チェーンの美容院に就職するが、人間関係に悩み退社。現在は、ライターやレズビアン風俗で働きながら、宅建の資格取得に目指して勉強を始めた。

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INDEX
01 20歳のバースデーカミングアウト
02 カミングアウトは自分のエゴ
03 ”不思議ちゃん” と呼ばれて
04 普通は嫌、変な子になりたい
05 性に対する好奇心
==================(後編)========================
06 ヘアメイクの夢を追いかけるも・・・
07 家族との関係
08 バイセクシュアルからレズビアンに
09 みんな癒やしを求めている
10 好きなことを好きなようにやる

06ヘアメイクの夢を追いかけるも・・・

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NYでみたプロの仕事

進路に迷い、ずっと好きだったヘアメイクの道に進むことを決めた。

姉から「どんなにお金がかかっても、ヘアメイクの技術が一番の学校に行きなよ」と言われ、素直に従うことにした。

入学した学校は、高校の卒業資格と美容師の国家資格を取得できる高等専門学校。

「週4日はヘアメイクの授業で、週1日が高校の一般科目の授業でした。夏休みと冬休みは通信の授業があるので結構大変でした」

それでも、美容師免許を取りたいと思ったのは、専門職への憧れがあったから。

高校1年生の研修旅行でニューヨークを訪れた。

開催されていたニューヨークコレクションのバックヤードに特別に入れてもらい、そこでプロのヘアーメイクの仕事を目の当たりにする。

「職人だ!と思いました。コレクションに出演するモデルさんに何気なく話しながら、実はモチベーションを上げていたり、コミュニケーションが細やかで気遣いがすごいんです」

体調が悪そうなモデルに声をかけたり、全体の進行の中でモデルを疲れさせない配慮もしていた。

「自分もこんな気配りをしながら仕事ができる人になりたい、頑張ろうと思いましたね」

プロの世界を覗いて、自分の目標ができた。

高校生活は、ひたすらヘアーメイクの勉強に熱中する3年間を送った。

尊敬できる大人との出会い

中学生までに出会った大人は、自分を子供扱いして上から目線で話してきた。

「ところが高校の先生たちは、今までの大人とは全然違ったんです。大人ぶらないというか、高校生を大人と対等に扱ってくれるんです」

「遊ぶ時は、一緒になってめちゃくちゃ遊ぶし、切り替えが上手いんです」

そんな先生に出会えたことが嬉しかった。

授業は実践的な内容が多くて楽しかったし、「相手がやっていることで間違っていたり、違うと思うことを伝えないのは優しさじゃない」と、時には人としての在り方を教えられた。
「プロの世界を知ることができて、格好いいなと思いました」

その他にも心に残っている言葉がある。

「『大人は嘘を簡単につくからね』とか、教えてくれるんです(笑)」

綺麗事ではない、リアルな社会を教えてくれる先生の話しに何度となく引き込まれた。

卒業後、無事に美容師免許を取得して就職するが、人間関係などに悩み、半年で辞めてしまう。

応援してくれた先生の期待に応えられなかったことが悔しくて仕方ない。

「いつか、途中で辞めてすみませんと謝りに行かないといけないですね・・・・・・」

07家族との関係

父親の不倫

家族との思い出で、辛いのは父親が不倫をしていたこと。

幼稚園の時、母親から「お父さん、不倫しているんだよ」と聞かされた。
不倫の意味はわからなかったが、母親の雰囲気から悲しいことが起きているのはわかった。

3、4ヶ月後、父親が家に帰ってきた。

「留守にしていたのは、出張だと思っていたんですが、今思えば不倫相手のところに行っていたんですね」

その後も父親は不倫を重ねる。

そんなことがあっても、両親が子どもの前でケンカをしたことはなかった。

高学年になってドラマで不倫を知り、両親の間で何が起きているか理解することができた。父親がバツ2で、母親がバツ1。

幼稚園や小学校の頃のアルバムを見ると、母親がいつも不機嫌そうな顔をしている。その頃が一番酷かったのかもしれない。いろいろあったが、今両親の仲は良い。

家族に愛されたい

反抗期のイライラは、姉弟にぶつけていた。

「お母さんに文句を言うと機嫌が悪くなって、ご飯を作ってくれなくなるんです(笑)。だから、お姉さんに不満をぶつけることが多かったかな」
姉は、嫌なことを誰かが引き受けなくちゃいけないなら、自分がというタイプ。

「私はそういう役目だから好きにしていいよ」と、嫌な役目をいつも買って出てくれた。

小学校の下校時に、知らない人に手を引っ張られ、車に連れ込まれそうになったことがある。

怖くて怖くて、思い出すだけで泣いていた。

「その時お姉さんが『私がれいと代わってあげたら良かった・・・・・・』って言ってくれたんです。あっ、お姉さんに愛されているって、気持ちが温かくなりました」

4人兄弟だったので、親や祖父母の愛情を奪い合うことがあった。姉は父方の祖母に好かれ、弟達は母方の祖母に気に入られていた。

「私は、誰に好かれればいいの?って」

国際結婚を反対していた日本の祖母は、初孫だった姉をとても可愛がった。

「自分も何とかして、おばあちゃんに愛してもらおうと、敬老の日にプレゼントを送ったり、電話をしたり頑張ったんです」

高校を卒業する頃には、祖母は一番の理解者となり、仕事の愚痴をいつも聞いて応援してくれた。祖母は昨年他界したが、たくさん愛してもらったと感謝している。

08バイセクシュアルからレズビアンに

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男性への告白

高校生の時、好きになった男性に告白した。

相手は28才で、通学していた高校の関係者だった。

「私は好きな人に対して、悪いところをズバズバ指摘してしまうんです。そんなことをすると大体嫌われるんですけど、その人は『わかるよ、俺もそう思うよ』と聞いてくれました」

そんな寛容さに惹かれ、好きという思いを告げるがフラれてしまう。

「私は高校生だったし、相手は世間体を気にしたのかな・・・・・・」

フラれてしばらくしすると、友人と参加したパーティで知り合った男性を好きになる。

「出会った時、私は21歳と嘘をついていたんです。でも連絡を取るようになり、嘘をついているのが嫌で、正直に17歳って伝えたんです」

17歳と告げられた相手は、驚いたが笑ってくれた。

そんな大らかさが好きになり、告白するが今度は彼女がいることを知る。

その人を好きな気持ちは今でも残っている。好きになると告白せずにはいられない。

「好きという思いを伝えたいんです。カミングアウトと似ていますよね」

男性に対する恐怖心

男性との初体験は19才の時、相手は外国の人だった。

「お姉さんには『初めては絶対に好きな人とね』と言われていたんですけど、好きな男性があらわれなくて、勢いでした・・・・・・」

初じめての感想は「こんなものか」。その後も、好きになる男性に出会わない。

「それまでバイセクシュアルだったんですけど、ちょっと怖い思いをして、今は男性がダメになっています」

「ひどい扱いを受けて、もう男性は無理ってなりました」

今、バイトをしているレズビアン風俗は、自分が落ち着くことができる場所。

「周りにいる人たちと、自分が似ていて」

セクシュアリティや性のことなど、普段は隠すようなことを気楽に話すことができる。

初めて会った人でも、打ち明け話しをして、互いに泣いてしまったこともある。

デリケートな部分を共感できる者同士は、すぐに打ち解けることができる。

09みんな癒やしを求めている

世の中は多様化している

男性との行為は本能的、女性とのそれは精神的なつながりだと思う。

レズビアン風俗にはプレイコースがあるが、何もせずゆったり話して終わることもある。

「気持ちが満たされればいいんです。その満たされ方は人ぞれぞれで、話して満足する人もいれば、くっついているだけで良い人もいるし。そういうのは女性ならではですよね」

男性相手の風俗で働いている人が、お客さまとして訪れることもある。そんな女性たちに出会うと、みんな癒やしを求めていると感じる。

「意外だったのは、女性同士の行為、男性とは違う女性同士のソフトな世界に、興味を持っている人が実は沢山いるってことなんです」

「偏見をなくし、おもいのままに癒やしを求められる世界がもっと広がればいいのに。口では気持ち悪いとか、変とか言っている人ほど、どこかで気になっていると思います」

風俗は男性を満たすサービスが多いが、最近は色々なサービスが登場している。

「世の中が多様化してきているんですよね。カミングアウトする人が少しずつ多くなっているし、同性同士の結婚式もあります。素直に欲しいものを求めるようになってきていると思います」
自分がレズビアン風俗に働き続ける理由の一つは、女性との行為の方が満足できるから。

自由な世界

世の中が多様化してきているとはいえ、自分の欲望を出せない大人がほとんど。

「仕事も嫌々やっているし、セクシュアリティも隠したりしていますよね」

レズビアン風俗のお客さまで、会社からイジメを受けながらも、我慢して仕事に行く人がいる。

やりたくないのにやったり、こうしなくてはいけないと思い込んで無理をしている大人が多い。

「私はいろいろなことを気にしていないから、セクシュアリティとかオープンにできるのかもしれないですね。レズビアンですと言っても『それっぽいね』でおさまるし(笑)」

周りから何を言われても、いちいち気にしない。

「非難したい人はどうぞしてください、という感じです。フリーターで結婚もしていない自分が、失うものは何もないですし」

既婚のお客様もいるが、世間体を気にしながら生きる姿が窮屈に見える。

「LGBTは恥ずかしいことでも、悪いことでもないんです」

セクシュアリティで悩んでいる人は、どこかで後ろめたさを感じているように思う。

もっと自由に生きて欲しい。

だから、自分が全てをさらけだすことで、心のどこかでわだかまりがある人に、こういう世界もあることを知ってもらいたい。

10好きなことを好きなようにやる

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尊敬する父親の生き方

「不倫とかするところはクズなんですけど(笑)、こういう大人になりたいと思わせる生き方をお父さんはしているんです」
家族のため仕事のためと、やりたいことを我慢している大人が多い中、父親は自分の気持ちにブレーキをかけない。

「好きなことを、好きなようにやるんです」

やりたいことのために家族が犠牲にならないよう、金銭的な責任はしっかり果たすところも尊敬する点だ。

「数年前、お父さんが大学に通うために会社を休職したんですけど、その間も家にお金が入ってくるようにしてくれたんです。お金は大丈夫だからと言い切るのが、凄いですよね」

大手の美容室から内定をもらったときは、父親もとても喜んでくれた。

「知り合いに『娘が日本一の美容室に入った』と、嬉しそうに話していたんです。辞めてしまった時は『もったいないな』と寂しそうで、そんなお父さんの表情を見たら、ちょっと心が痛みました・・・・・・」

今は、落ち込んでいた気持ちも吹っ切れ、父親のように自分も好きなことをやろうと思っている。

最近始めたのは、宅建の勉強。

「お父さんに『不動産をやりたいから、誰か資格を取って欲しい』と言われ、じゃあ、頑張ってとるわーとノリで言っちゃいました(笑)」

宅建の資格を取得したら、大学で法律を学びたいとも思っている。

父親のように、自分がやりたいことをとことん追いかけたい。

不器用でいい

今までの生き方を振り返ると、自分はなんて不器用なんだろう思う。

「友人たちからも、世渡りベタと言われます。変に目立とうとしたり、人のことを放っておけなかったり、遠回りばかりしているんです」

人から相談されることも多い。

相談されると聞き流すことはできす、その人の気持ちを丸ごと受け止めてしまう。

「感情移入して、一緒に落ち込んじゃうんです。嫌な気持ちがどんどん心に溜まってしまい、ある時にパカって飛び散るんです」

ストレスが溜まってくると、突然泣き出してしまう。

泣いて泣いて、それでストレスを発散する。

「法律の勉強をしたいと思ったのは、お客さまの話しを聞いたからなんです」

あるお客さまが、会社にバイセクシュアルだと知られ「お前病院に行ってこいよ」と、言われたことを知った。

「そんなことをされて、法的に問題ないのかと怒りがこみ上げてきたんです」

小さい頃から、誰とでも分け隔てなく仲良くできた自分。弁護士になって立場が弱い人たちを守れたらいいと思う。

今の生き方について、尊敬する父親からは「バイセクシュアルとかレズビアンとか、決めつけるな」と言われている。

「いつか運命の男性に会った時のために、選択できるようにしておけって(笑)。父親らしいアドバイスですよね」

絶対に女性でないとダメというわけではないが、今はレズビアンなのだとしっくりきている。「10年後、30歳の自分も相変わらずチャランポランしているかもしれません(笑)。ただ、自分の気持ちに正直に生きていたいですね」

あとがき
れいさんが語る “無理” について、ハッとした。過酷なトレーニングを自ら課すアスリートは?心身を壊してしまったら、それは無理?などなど、考えてみたい■一つ一つにキリキリせず、全体感も大切だと気づけたれいさんの取材だった。例えば各界隈のNGワード。NGだと心に留めながら、でも言葉狩りはしない。発言の裏に、知識量や経験の違いがあることを知っているから■そこには、様々なアライを増やすヒントが潜んでいそうだ。 (編集部)