INTERVIEW

”不思議ちゃん” が見る大人たちは、「みんな無理してる」【前編】

ヘアメイクの勉強をしていた人らしい、個性的なファッションで現れた小澤れいさん。20歳とは思えない、落ち着きと存在感も印象的。幼い頃から ”不思議ちゃん” と呼ばれていた小澤さんは、好奇心のままに、大人の世界を泳いできた。ピュアな感性で、見てきたものは何だったのか。そして、どこへ向かおうとしているのだろうか。

2017/06/13/Tue
Photo : Mayumi Suzuki Text : Junko Kobayashi
小澤 れい / Ozawa Lei

1997年、神奈川県生まれ。姉、弟2人と共に、幼稚園から中学校まで私立の一貫校に通う。高校はバンタンデザイン研究所高等部に進み、美容師免許を取得。大手チェーンの美容院に就職するが、人間関係に悩み退社。現在は、ライターやレズビアン風俗で働きながら、宅建の資格取得に目指して勉強を始めた。

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INDEX
01 20歳のバースデーカミングアウト
02 カミングアウトは自分のエゴ
03  ”不思議ちゃん” と呼ばれて
04 普通は嫌、変な子になりたい
05 性に対する好奇心
==================(後編)========================
06 ヘアメイクの夢を追いかけるも・・・
07 家族との関係
08 バイセクシュアルからレズビアンに
09 みんな癒やしを求めている
10 好きなことを好きなようにやる

01 20歳のバースデーカミングアウト

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母親はレズビアンが嫌い

父親とフィリピン人の母親、姉と双子の弟の6人家族。

父親の故郷である横須賀で、家族と暮らしている。

「父方の親戚が両親の国際結婚に反対していたんです。それを押し切って結婚したので、母はつらい目にもあったみたいです。だから、子ども達が “ハーフ” だといじめられないように、学校選びから何から気を配ってくれました」

母親は兄弟全員を、幼稚園からエスカレーター式の私立学校に通わせた。

そんな家族は今も仲が良く、誕生日やイベントには全員が集まる。

最近迎えた20歳の誕生日も、家族で食事をした。

「少し前から、20歳の誕生日に、私がレズビアンということをお母さんにカミングアウトしようと思っていたんです」

父親には、誕生日に母親を泣かせることを言うかもしれない、と伝えていた。

「父が『妊娠でもしたか?』と聞くので、違う、実は私バイセクシャルと話したんです」

「あー、それだったんだ」と特に驚いた様子はなかった。

問題は母親だった。

なぜなら、母親はレズビアンが大嫌いだから。

「母親は5人兄弟の真ん中で、弟がオネエで、妹がレズビアン。お姉さんの娘もバイセクシャル。母親の祖国フィリピンは、日本より性に関してオープンでLGBTは身近なのに、娘がレズビアンであることは許せないらしいと分かっていたんです」

「お母さんに、同性愛者ってどう思う?って聞いたことがあるんです。そうしたら『病気だと思う』ってサラッと答えられ、あーやばいなと思っていました」

母親は絶対に泣く

誕生日、家族でケンタッキーを食べて、いつものようにたわいもない話しをして過ごしていた。

「あまりにいつも通りの雰囲気で、カミングアウトするのを忘れそうでした(笑)」

このままではいけないと、思い切って告白する。

「私、実はバイセクシャルなんだ」

母親は返事をせず、何のことが理解できない様子。

気まずい雰囲気は、姉と弟たちが必死にフォローしてくれた。

姉弟は自分がレズビアンということも、レズビアン風俗でアルバイトをしていることも知っていた。

だから「あぁそうなんだ、それっポイよね」とあえて受け流してくれ、母が荒れることもなくカミングアウトは終わった。

「お母さんは絶対に泣くと思っていたんですけど、思いのほかショックがなかったみたいで良かったです」

母親は「あなたが一人娘なら悩んだけど、4人兄弟だから平気。まだなんとかなる」と言っていた。

その後、ソファーで横になっていると、母親の声が聞こえてきた。弟相手になぜレズビアンが嫌いなのかを話していた。

「『お母さんが学生の時、レズビアンの友だちに彼女を紹介されたんだけど、どう接すれは良いかわからなくて、そこから無理になった』って話しているんです」

弟は「その理由くだらないよ(笑)」と。

そんな家族の会話を聞きながら、20歳のバースディは終わった。

02カミングアウトは自分のエゴ

素のままの自分を愛して欲しい

バイトをしているレズビアン風俗で、カミングアウトの相談をされることが多かった。

話しを聞きながら、ふと20才にカミングアウトしようと思い立った。

「お店のSNSに『実は自分はバイセクシャルで親に言うか迷っているんです』みたいな質問がくるんです。質問に答えているうちに、そうか私も言おうかなという軽いノリで決めちゃいました(笑)」

カミングアウトすることを姉に話したら「両親に自分の気持ちを押しつけるということだよね」と確認された。

「100%自分のエゴだと答えました」

カミングアウトは本当の自分を受け入れて欲しいという、価値観の押し付けだと思っている。

絶対にしないといけないわけでも、しないのが悪いとも言えない。

「でも、私は ”ありのまま” の素の自分を受け入れて欲しいと思うタイプなので、親にも知って欲しかったんです」

カミングアウトできて、自分の気持ちはスッキリした。

みんながカミングアウトしなくてもいい

カミングアウトの相談をされた時は、してもしなくてもどちらでもいいと答える。

「ぶっちゃけエゴだし、誰かを守るためにカミングアウトしない、という選択肢もあると思うんです・・・・・・」

レズビアン風俗で一緒に働く人には、絶対にカミングアウトをしないと決めている人もいる。

「その子はFTM、お姉さんもFTMみたいで。ある日、お姉さんがお母さんにカミングアウトしたら、お母さんがショックで大泣きしてしまったらしいんです。それを見たら、絶対にカミングアウトできないと言っていました」

カミングアウトをするのが正しいのではない。選択肢の一つなだけだ。

「LGBTであることを隠している罪悪感から逃れるために、カミングアウトをする人もいますし。どうするかは、個人の自由だと思います」

自分がカミングアウトをした理由は、言いたいから言っただけ。

そんな自分の話しに勇気づけられる人がいたら、それはそれで嬉しい。

03”不思議ちゃん” と呼ばれて

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ちょっと変わった子

20歳になった今も、変わっているとよく言われる。

小学校から呼ばれていたあだ名は” 不思議ちゃん” 。

「一人で勝手に行動しちゃう子どもでした」
記憶にあるのが、小学校の図工の授業で水彩画を描いていた時のこと。

「最初はみんなと一緒に筆で描いていたんですが、途中からなんだか物足りなくて、絵の具を手につけてべちゃーとやっていました(笑)」

生徒の個性を大事にする教育方針だったので、先生には「いいね〜」と褒められた。

「手の方が絶対にいい、みたいな確信があってやっちゃうんです。私の筆洗いの水だけ汚くなるんですけどね」

身体は大きい方だったが気が弱かったので、低学年ではいじめられたこともある。

「◯◯ちゃんに見つかったらダメ」というゲームがあり、よく標的にされていた。
「私に見つかったら負けになるので、私を見るとみんなが全力で逃げるんです。今ならいじめとは思わないですが、当時は嫌でしたね」

他にも学校に持っていった物を盗られたり、壊されたりしたことを覚えている。

いじめられる弱い自分が嫌で、自分を変えるために4年生から柔道を習う。柔道を始めて自信がついたのか、高学年になるといじめられることが少なくなった。

女子とは話が合わない

高学年では女子のおしゃべりより、男子とサッカーをしている方が楽しかった。

しかし、男子と遊ぶようになると、他の女子から嫉妬されるという意味不明なことがおきた。

「男子と遊ぶ女子と、女子で固まるグループに分かれたんです。女子で固まる方の女子から、何で男子と遊ぶの!?、と否定されるんです」

男子と遊びたいなら遊べば良いじゃん、と言ってはみたが解決するものではない。

そして、「れいは一匹狼だからいいよね」と、さらに女子のグループからシャットダウンされてしまう。

そもそも、女子とは話が合わなかった。

◯◯君好きという話しにも、あまり興味がなかった。話しを振られても、話題となっている男子が格好よければ「格好いい」と言うし、格好良くなければ「微妙だね」と言うだけ。

「れいはそいう子だもんね〜、というポジションを確立していましたね」

男子には恋愛感情がわかなかったが、女性の先生が好きだったのは覚えている。

街を歩いていても女性の方が気になった。

そんな思いは中学生になり、同級生の女子とふざけ半分でキスをするうちに「女子でいける」という確信に変わる。

04普通は嫌、変な子になりたい

レズビアンという個性

中学生になると、女子って面倒くさいと思うことが多くなった。

「彼氏をとった、とってない。嘘をついている、ついていないの繰り返し。もう何でもいいじゃんって感じです(笑)」

周りが異性への関心を高める中で、自分には彼女のようにつき合う子ができた。
「友だちなのか、彼女なのか・・・・・・。名前がつかない関係というんでしょうか。クラスで席が前後だった女の子なんですけど、授業中にキスをしたりしていました」

クラスメイトから「あいつらはレズビアンだ」と言われても、だから何とかわした。

他の女子たちと同じではない自分が、どこか嬉しかった。

「その女の子のことが、特に好きというわけではなかったんですよね(笑)好奇心ってあるじゃないですか」

レズビアンの世界に対する興味と、人とは違う自分になりたいという思いが、その頃は “レズビアンキャラ” を後押しした。

「そもそも男子とキスをしたいとは思わなかったんです。胸が大きかったので、男子から『胸さわらせて〜』と言われ、いいよ触ればと軽く流していました」

男子は胸なんて触る勇気はない。大人びていた自分は、男の子の幼稚な気持ちを見抜いていた。

家族の中で、自分だけが「普通」

父親の人生は、ドラマができると思うくらい劇的だ。

暴走族に入っていた父親は、高校卒業前に「そのままヤクザになるか、足を洗うかどちらかにしろ」と親に言われ暴走族をやめた。そして、祖父母から台湾の大学に行かされる。

「これからは中国語が必要になるからって。でも中国語は全くできなかったので、苦労したみたいですよ。大学を卒業して、そのまま台湾で働き、しばらくして帰国したそうです」

就職した日本の会社では、営業としてがむしゃらに働き、会社の売上の7割を父親が稼ぐまでに。その後小会社の社長になった。

そんな父親の武勇伝を聞くのが大好きだ。

母親はフィリピン人で感情のまま生きる人。お姉さんは勉強ができて、弟は双子でモデル並のルックス。

それぞれ個性がある家族の中で、自分は勉強ができるわけでもなく、大人しくて目立たない存在。

「劣等感とまではいかないですけど、普通な自分が嫌でした。家族はみんな個性的なのに、何で自分だけが『普通』なんだろうって」

そんな思いもあり、小さい時からあえて変な子になろうとしていた。

05性に対する好奇心

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大人の世界を覗きたい

クラスで特定のグループにいるわけではなく、誰とでもつき合うことができるので、先生からは頼られる存在だった。

中学校の修学旅行では、イジメられていた子と一緒の部屋になってくれないか、と先生からお願いされるほど。

「イジメられている子の保護役になっていましたね」

そんな、先生から信頼される優等生の顔とは別に、実は誰も知らない別の顔があった。

「性に関する興味が凄く湧いてきて、グレーなアルバイトに興味をもったことがあるんです・・・・・・」

お金に困っていたのではなく、大人の世界を覗いてみたいという純粋な好奇心。

「どんな世界なんだろうと思ったんですが、なーんだこんなものかって・・・・・・。大人は自分たちと、何も変わらないし」

好奇心を抑えることはできない。

自分の気持ちに素直に行動していた。

高校生ではメイド喫茶

大人の世界への好奇心と、他の子と違っていたいという思いは、高校生になった時のバイト選びにも影響する。

「初めてのバイト先は、みんな居酒屋とかが多いんですけど、普通じゃつまらないと変な対抗心みたいなものがあって、メイド喫茶を選んだんです(笑)」

もちろん両親には内緒。授業で遅くなると嘘をつきながら働いた。

ところがある日、働いていたメイド喫茶が調査が入る。

「バイトをしていた私も質問を受けたりしながら、それが朝までかかって。さすがに朝帰りはマズイと姉に電話をして、上手くごまかしてもらったんです」

両親にはバレなかったが、隠しているのが嫌だったのでメイド喫茶でバイトをしていたと話した。

「お母さんからは怒鳴られました」

メイド喫茶には、医師や弁護士など先生と呼ばれる人が客として来ていた。

「そんな人たちから聞く話しが凄く面白くて、勉強になったんです。だから両親に、このバイトをしたことを後悔していない、むしろ誇りに思っているからと言い返しました」

実際、メイド喫茶で見聞きしたことは、いい経験だったと思っている。

初めてのバイトがメイド喫茶というのも、ユニークで自分らしい。


<<<後編 2017/06/15/Thu>>>
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06 ヘアメイクの夢を追いかけるも・・・
07 家族との関係
08 バイセクシュアルからレズビアンに
09 みんな癒やしを求めている
10 好きなことを好きなようにやる