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誰もが ”多様な性の当事者” である、と伝えたい【後編】

誰もが ”多様な性の当事者” である、と伝えたい【前編】はこちら

2017/05/13/Sat
Photo : Taku Katayama Text : Yuko Suzuki
鈴木 南十星 / Natose Suzuki

1995年、神奈川県生まれ。現在、中央大学総合政策学部4年生。1年生の秋に友人と2人でLGBTについて考えるサークルを立ち上げ、「誰もが多様な性について考えられるようなきっかけづくり」をと、活動を開始した。また、セクシュアル・マイノリティの支援を行うNPO法人のボランティアスタッフとして、学校や自治体などに出向き、レズビアンの当事者として講演活動を行っている。

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INDEX
01 女の人が好き
02 同性愛者って、汚いの?
03 ”らしさ” にとらわれて
04 レズビアンの看板を捨てた
05 母は知っていた
==================(後編)========================
06 仲間がほしい
07 活動を始めて見えてきたもの
08 LGBTは、”新種” ではない
09 与えられた性の役割から解き放たれて
10 「へー、そうなんだ」で済む社会に

06仲間がほしい

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大学内にLGBTサークルを立ち上げる

高校卒業を前に、クラスメイトたちにはカミングアウトしていた。

その後しばらくは、自分がレズビアンであることをオープンにするつもりはなかった。

だが、次第に心境が変わってきた。

「心おきなく話ができる、仲間がほしいと思ったんです」

自分が進もうとしている大学に、LGBT関連のサークルがあるらしいということをインターネットで知った。

ところが、いざ入学してそのサークルを訪ねようとしたら、そこは名前だけの幽霊サークルに。

強力なリーダーシップを持つ学生が卒業すると、その後を継ぐ人がなかなか出てこず、活動が立ち消えてしまう大学も少なくなかった。

「でも、どんな活動をしていたのか知りたくて、サークルにいた人を追いかけてみようと思いました」

「ひょっとすると連携していたかもと近隣の大学のLGBTサークルに遊びに行って消息を知らないか尋ねたり、ジェンダー研究をしている教授に聞いたりして」

リサーチは1年生の夏休みくらいまで続いたが、結局、直接連絡を取れる人には行き当たらなかった。

「じゃあ、自分でサークルを作ろう。そう思ったんです」

LGBT以外の人を除外したくない

大学では、本格的なゼミが始まる前、1年次に少人数のゼミが設けられていた。

そこでは、ジェンダーとセクシュアリティについて考えるゼミを選択。

そのゼミに集まったということは、LGBTについて少なくても関心はあるはず。

ここなら話してもたぶん大丈夫だろうと思い、まずは仲良くなった1人の女の子にカミングアウト。

「その上で、サークルをやりたいと思っていることを話すと、彼女が『じゃあ、一緒にやろうよ』と言ってくれたんです」

LGBTサークルというと、ピアサポート的な集まりを想像しがちかもしれない。

でも、自分はそれとは違った形のサークルを作りたいと思った。

中学時代から参加しているNPOなどの活動をするなかで、たとえば何かアクションを起こそうとする時、「LGBTvs非LGBT」という構造が生まれてしまう現場を目の当たりにすることが少なくなかった。

「だから、まずはLGBTのことを知ってもらうためにも、当事者ではないけれどセクシュアリティについて関心がある、考えたいという人が仲間になってくれたらいいなと思いました」

そして何より、「迷っている人」を除外したくなかった。

「この年代だとまだまだ恋愛経験が少ない、あるいは誰かを特別に好きになったことがない、という人も多いんです」

たとえば、「サークル、一緒にやろうよ」と言ってくれた友達も、「たぶん自分は異性愛者だけど、これから先、どうなるかわからない」と言っている。

「自分のセクシュアリティが何なのかわからない、迷っている、という人も少なくないんです。でも、そういう人たちが相談したり、話し合う場所がないんです」

でも、誰かと話すことで考え、自分自身のことがわかってくるようなこともある。

セクシュアリティについて悩み、インターネットで一生懸命調べたけれど、結局はいろいろな人の考えに実際に触れたことによって、自分というものが見えてきた、そんな自分の過去も思い出した。

「実際に話し合い、意見を交わすことがとても大事。そう思って、LGBTに興味がある人なら誰でもOK、セクシュアリティについて考えたい人、迷っている人も大歓迎、というサークルにしようと思いました」

07活動を始めて見えてきたもの

性は、ひとりひとり違っていい

そして1年生の11月、「中央大学セクシュアル・マイノリティ研究サークル」を設立。

何から始めたらいいのかわからなかったが、まずはLGBTサークルができたことをアピールしようと、SNSのアカウントを作成。

そして身近な友達、フェミニズムの勉強をしている人などから少しずつ「こういうの、興味ない?」と声をかけていった。

2年生になり、メンバーが4人になった時にサークルの方向性を固めた。

みんなで話し合って決めたスローガンは、「ひとりひとり違っている多様な性について考えよう」。

「考えるというのも、たとえば映画を題材にしたり、何か事件やニュースを取り上げて、それを糸口にセクシュアリティについて考え、意見を交わす」

「とにかく、いろいろな切り口からアプローチしていったほうが考えに幅と深みが生まれるんじゃないかな、と思うんです」

そして、サークル名も改めた。

「メンバーの誰からともなく、今の名前は硬いよ、って(笑)」

新しいサークル名は「ミモザ」。春先に咲く、黄色い花の名前だ。

「ミモザの花束を誰かに渡す時、『あなたに出会って、多様な価値観を知りました』という意味になるのだそうです」

私たちの思いにぴったりだなと思った。

学生相談室を巻き込む

「そもそも、困っている学生のサポートは学校が率先してやるべきじゃないか、と私は思いました」

大学には、学生相談室がある。

実際には、大学主体で、日本語ではまだうまくコミュニケーションが取れないでいる留学生、就活を頑張りたい人……など、同じ困りごとを抱えた学生が昼休みを利用して集まれる「ランチ会」を開いていた。

「そのテーマの一つに、『セクシュアリティについて悩んでいる人』というものを入れてはどうでしょう?と学生相談室に提案したんです」

しかし、話はスムーズには運ばなかった。

「セクシュアリティという極めて個人的なことを大学が詮索するようなことはできない、というのが最初の反応でした」

「でも、実際に悩んでいる人がいて、仲間が欲しいけどどうすればいいかわからず困っているからと言うと、『いや、この大学にはそういう学生はいないと思う』って・・・・・・」

いや、「いない」のではなく「言えない」だけなのだ、というようなやりとりが半年間ほど続いた。

そしてやっと、「セクシュアリティについて悩んでいる人」のランチ会を開催してもらえることに。

「私も参加しました。すると、そこに『自分のセクシュアリティがわからない』という男性の学生が来てくれたんです」

彼女ができてつきあい始めたけれど、彼女から「なんか違う」と何回も言われた。でも、何が違うのか、そもそもつきあうということがどういうことなのかわからない・・・・・・と、彼は話してくれた。

「それは、いわゆるLGBT的な悩みではないかもしれけれど、だからこそ、どこにもぶつけようがなく、誰に聞いたらいいのかわからなかったのだと思います」

ランチ会はそれ以後も続けられ、昨年も2回、開かれた。

やはり、求められているのだ。

08LGBTは、”新種” ではない

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「前例がない」から進められない?

LGBTについては社会の中でだいぶ認知されるようになり、教育現場での対応も、少しずつだが進んでいるようだ。

でも、ランチ会の一件を経験し、「まだまだ遅れている」と痛感した。

大学にはもともと人権意識が高く、事務方には諸々のハラスメント対応に特化した部署もある。

「それなのに、セクシュアリティの話を持ちかけると、急に引かれてしまう。言葉にはしないけれど顔の表情から、セクシュアリティのことをタブー視しているな、ということがわかります」

前例がないことはできない、ということなのかもしれない。

いや、その前に、LGBTについての正しい知識と理解がまだまだ足りないのだろう。

また、大学というのは大きな組織だから、「大学として」の動きとなるまでには、多くの手続きが必要となることもわかる。

「でも、だからこそ初動が大切というか、素早い対応が必要だと思うんです」

「今すぐにできること」はたくさんある

大学に限らず、世の中のLGBTに対する理解が進まないのは、LGBTを「新しく現れた人たち」と捉えているからではないか。

「たしかにLGBTという言葉が広まったのは、ここ数年かもしれません。でも、セクシュアル・マイノリティをめぐる問題は昔からあったことだと思うんです」

それなのに「新種」と捉えてしまう。

また、新たに取り組もうとすると、どうしても大げさに考えがちだ。

すると「そんな大変なことは、すぐにはできない」となって、どんどん対応が遅れてしまう。

「でも現実には、困っている人がいるんですよね」

しっかりした体制を整えることが重要なのはよくわかる。でも、まずは目の前の、助けを求めている人に手を差し伸べることが必要ではないか。

「たとえば、ランチ会の件にしても、私としてはただ会のテーマとして『セクシュアリティついて悩んでいる人』を加えればいいだけのことでは?なぜわざわざむずかしく考えるのか、不思議でした」

自分には分からない組織の事情や手順もあるだと思う。

「でも、もう少し当事者の声に耳を傾けて、直接話を聞いてみたら、今すぐできることはたくさんあるような気がします」

09与えられた性の役割から解き放たれて

「男らしさ、女らしさ」の呪縛

サークルを立ち上げて以降、基本的には自分がレズビアンであることをオープンにしている。

NPOのスタッフとしての講演活動も続行中だ。

「知ってほしい」という気持ちが強く、どちらの活動もおろそかにしたくない。

「知ってほしい内容も、LGBTのことに限りません。繰り返しになりますけど、自分のセクシュアリティがわからない、決めたくない、決められないという人たちがいる、ということも知ってほしい」

社会の大きな流れでいえば、女性を好きになる男性と、男性を好きになる女性しかおらず、男性は「男らしく」女性は「女らしく」振る舞うことになっている。

「でも、自分は男性だけど本当のことを言えばスカートがはきたいという人はいるでしょうし、女性だってガハハと口を開けて笑ったほうが自分らしいという人もいますよね」

体の性の問題にかぎらず、そんなふうに「男性だから〜しなければ」「女性だから〜でなければ」といった、生活の中にたくさん存在しているジェンダーの問題で息苦しさを感じ、苦しんでいる人もいるのでは。

「それによって自分のセクシュアリティに悩んだり、わからなくなっている人は少なくないんじゃないかな」

いろいろな人に出会って話をすればするほど、強くそう感じる。

生きる誰もが多様な性の当事者

男性だからといってお酒が強くなくても、女性でも甘い物が苦手だってかまわない。

「社会が、なんていうと大きな話になってしまうけど(笑)、簡単に言えば、誰もが『〜らしさ』に縛られなくていいんだよということを知ってほしいな、と思うんです」

LGBTについても、同じだ。

「ボーイッシュなMTF、ガーリーなFTMがいても、いいですよね」

セクシュアル・マイノリティは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの4つに分類されているが、実際の性のあり方はどんな言葉でも分けきれないほど多様だ。

「だから、性的にマジョリティかマイノリティかとか、LなのかGなのかBなのかTなのかということではなくて、生きる誰もが多様な性の当事者」

「そう考えることができたら、今社会の中で起きているLGBTやジェンダーにまつわる問題や課題も、意外に早く解決に向かうような気がするんです」

10「へー、そうなんだ」で済む社会に

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悩み、苦しんでいる子の力になれた!

以前、中学校に出向いて講演をした後、SNSを通じて連絡をくれた生徒がこんなメッセージを送ってくれた。
 
ーー誰にも打ち明けてはいないけれど、今、同性とつきあっている。話を聞いて、それは悪いことではない、このままでいいんだと思えましたーー

「私自身、中高生の頃はロールモデルとなるような大人を見つけられず、自分はこれでいいのか、同性を好きになることは『治る』ものなのかと思い悩んだ時期がありました」

だから、生徒からそう言われ、うれしくてたまらなかった。

「あの時の私と同じように悩み、苦しんでいる子を1人でも減らせたんだ!と感激してしまって」

自分のセクシュアリティについて悩みや疑問を持っている子どもたちは、身近にお手本となるような生き方をしている大人を見つけられない。

さらに、セクシュアル・マイノリティへの否定的な扱いばかりを目にして、正しいポジティブな情報がなかなか得られない。

絶望的な気持ちになって、自分を責め、否定し続けている子がいるかもしれない。

それは、とても苦しい。

知ってほしい、だから語り続ける

講演といえば、こんなこともあった。

教師向けの講演会で、当事者として話をしていた時のことだ。

「先生たちはみんな、話を聞きながら『うーむ』って、むずかしい顔になってしまうんです」

「トランスジェンダーについて話をしたら、『男は男らしくするもんだ』『それじゃあ、武士道はどうなる』と言い出す先生もいて」

一方、中学生や高校生に話をした時の反応の多くは、「へー、そうなんだ」。

「大人たちの多くはきっと、与えられた性の役割をこなし続けてそれが体にしみこんでいて、違う生き方もあると言われてもなかなか理解できないんでしょうね」

今はLGBTという言葉だけが先行している。

「会社でも学校でもLGBTについての知識がないまま『とにかくこの新しい課題をクリアしなくては』と焦っているような印象を受けます。それでは、現実にそぐわない対応になりかねません」

正しい知識を持ってほしい。

そのためにも、まずは当事者の生の声に耳を傾けてほしい。

その強い思いがあるから、これからも講演に出かけ、自分や仲間たちの話をしていくつもりだ。

「子どもたちは大人たちほど性の役割にとらわれていなくて、先入観もあまりないから、『こんな性のあり方もあるんだよ』と聞いても『へー』と言って、その事実を受け止めるだけなんです」

その先に、本当の意味で「そうなんだ」と受け入れるには、やはりある程度、広い知識が必要だ。

でもまずは、受け止める。

「最初は、それでいいと思うんです。自分のつらい経験や失敗も含めて、『こんなふうに生きている人もいるよ』ということを、彼らに知ってもらえたらうれしいな、って思います」

あとがき
弾ける感じ、それがなとせさんだ。表情も手振りも、その全身でおもいを伝えてくれる。なとせさんの魅力をあえて1つに絞るとすれば、それは行動力■既存のプロセスにこだわらず、とてもシンプルにアプローチできる。対象の大小に関わらず、少しこわいと思う時でさえも■それは喜怒哀楽から始まる。難しさのないおもいは、いつしか仲間を増やした。「うれしい」「恥ずかしい」「苦しい」・・・。感情の言葉が並ぶ。胸がすく感じ。どうぞこれからもそのままに。(編集部)

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