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もう決してあきらめない、ありのままの自分を【後編】

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2017/06/23/Fri
Photo : Mayumi Suzuki  Text : Mayuko Sunagawa
丸山 真由子 / Mayuko Maruyama

1984年、福岡県生まれ。東京女子大学英米文学科を卒業後、お茶の水女子大学にてFGM(女性器切除)の慣習について研究。現在、性のあり方にかかわらず、一人ひとりの人が生きやすくなる社会を目指して、LGBTについて理解を深めるための絵本の読み聞かせや「ジェンダーニュートラルな育児」を伝えるワークショップなどを開催している。3歳の息子と夫と3人暮らし。

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INDEX
01 妊娠を機に抱いた性別への違和感
02 今、振り返ってみると
03 男性に評価されたい
04 Xジェンダーである自分
05 家族と生きていく
==================(後編)========================
06 性指向への気づき
07 理解してほしい、セクシュアリティのこと
08 ジェンダーレスな育児を
09 子どもが自分らしく育つように
10 いつでも自分らしくいられるように

06性指向への気づき

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蓋をしていた感情

同性が好きだと気づいたのは、去年の8月くらい。ごく最近のことだ。

気づいたきっかけは、性別違和のことでコーチングを受けたこと。

性別に関することも含め、自分の情報を記憶するままに話していたら、「感情が伝わらない」と言われた。

事実は伝わるけれど、何を感じているのかが全然伝わってこない、と。

思えば昔から「何を考えているのかよくわからない」「宇宙人」「ロボットみたいだ」と言われることがあったし、人の感情についてもよくわからなかった。

それがコーチングを通して、自分の気持ちをずっと止めてきたんだな、というのがだんだんわかってきた。

自分の感情に蓋をしてきた理由のひとつが、「女性が好き」という気持ちだ。

「女の子が好きだという気持ちを必死で隠してきました。いつの間にか自分の心を意識する、感情を意識するというのがどういうことなのかわからなくなっていたんです」

女性を好きということだけは、器用に止めることはできなかった。

だから、すべての感情に蓋をして自分の心を見つめるということを無意識にしないようにしてきた。

「感情っていう言葉の意味を調べたんです。怒りや悲しみ、苦しみ、嬉しい、楽しいというのがあることがわかって」

「初めは感情を意識するというのが、どういう感じなのかわからなかったんですが、最近は自分の感情を少しずつ感じられるようになってきました」

「例えば、自分が話したことで相手が笑ってくれたらうれしいんだなって」

これまで自分が、周囲にいかに壁を作っていたのかがわかった。

女性が好き

夫に「中学の時に女の子が好きだった」と言ったことがある。
その時には「真由ちゃんらしいじゃん」と言ってくれた。

ただ、夫と些細なことで喧嘩になった時に、夫から「(男性と)不倫しないでね」と言われた。

だから、「男性には興味ないから大丈夫」と答えた。
伝えたとたん、涙が止まらなくなった。

夫に「女性(が好き)なの?」と聞かれたので、「うん」と答えた。

「わかりやすいね」と言われた。

女性が好きだということを、一番伝えてはいけない相手。それが夫だということはわかっていた。

しかし、どこかで女を演じて、異性愛者を演じて家族を成立させないといけないというやり方に限界を感じていた。

また、夫なら受け止めてくれるという甘えがあったからかもしれない。

今は、一番の理解者である夫に伝えられたことが、すごくよかったと思っている。

伝えることができてから、自分も夫も以前より穏やかに過ごせているように思う。

07理解してほしい、セクシュアリティのこと

家族へのカミングアウト

母とは昔から距離が近く、誰よりも密着して一緒にいた。

とにかく可愛がられて大切に育ててもらったと思う。

母に何でも逐一報告していたし、母の好きそうな人と付き合ってみたこともある。

東京で一人暮らしを始めた学生時代は、毎日電話をしていたくらい。
私と離れた母は落ち込み、毎日泣いていたそうだ。

結婚してから連絡は少なくなったが、それでも関係は変わらず良好だった。

母は私が結婚したことで「安心した」そうだ。

それが去年の5月、両親にカミングアウトをしてから連絡を取らなくなった。

「最初は性の帰属意識が持てない、みたいな話をしました」

「母は『一過性のものでしょ』、『理解できない』」

「昔、女の子が好きだったと話したら『私も昔女の子にあこがれたことはあるよ』って。『昔は同性愛は勘当されていた』とも言われて」

「自分の心を守るために、その後は親と距離をとりました」

それから、約半年間は一切連絡をしなかったが、

「体調を崩した時に子どもを見れなかったので、母が来てくれたことがあったんです。その時『Xジェンダーのこと勉強したよ』と言ってくれました」

「『LGBTのことテレビでやってたよ』って教えてくれたり、昨年からは、LGBTのことが書かれている新聞記事を取っておいてくれたりも」

それからは以前のように連絡を取るようになり、関係も回復した。

今年の1月、朝日新聞に掲載された自分の記事も両親は見てくれている。

「まだ父とは直接話せていないんですが、記事を見て『今までそんなふうに思ったことなかったよね』って2人で話しているみたいです」

周囲へのカミングアウト

地元に帰ると毎回必ず会う仲のよい友達や、大学時代の親しい友達にはカミングアウトをしている。

「みんな『見た目は変わったけど、中身は変わってないね』って」

「『性別じゃなくて、あなたはあなただから』と言ってくれました」

現在、パート勤務をしている職場の社長には、新聞記事の掲載をきっかけにカミングアウトしたが、「勇気ある行動だ」と応援してくれた。

「逆に自分自身がセクシュアリティに、変に縛られていたんじゃないかと思います」

人にカミングアウトするのは、怖くない。
むしろセクシュアリティのことを言わないともう耐えられない。

自分のことをわかってほしい。

だから、セクシュアリティに関してフルオープンになった。

でも、カミングアウトしてみると「Xジェンダーは理解されにくい」と思うことがある。

性別に対する帰属意識が持てない。
性別に違和感がある。
でも、完全に男だとは思っていない。

そう伝えると「じゃあ何なの?」と言われ、理解されないこともある。

「ママ友にカミングアウトした時も『ふーん』って感じだったんですけど、しばらくしてから『でも女性らしいよ』と言われちゃって(苦笑)」

「でも、まあいっか、って思っています。それでも、ちゃんと表出できたというのが大事だと思うんです」

08ジェンダーレスな育児を

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男女のカテゴリ分けをしない世の中に

LGBTやXジェンダーという言葉を知る前までは、男性女性のどちらにも当てはまらないというもやもや感があった。

女性のカテゴリに押し込められていることが嫌だった。

今は「男であれたら」と思うけれど、今すぐどうこうするタイミングではないとわかっている。

「今は、子どもにとっての“お母さん”として生きているので、男女分けが少しでもなくなったら、息がしやすくなると思っています」

女はこうあるべき、男はこうあるべきというのがなくなればいい。

現状、こうあるべきという押し付けは幼児の教育現場でも感じていることだ。

「子どもが通っている幼稚園でも、男の子は黒、女の子は赤。あまりにきっぱり分かれていると性別への違和感がある子は、より違和を感じやすくなってしまいます」

「最近、子どもが『どうして男の子と女の子がいるの?』って聞いてきたんです」

「人間にも動物にも男と女という性別があるけど、そうじゃない人もいるんだよ」と伝えた。

「体の形に関わらず、自分の好きなことをやっていいし、好きな遊びをしていい」

「男の子だから女の子だからというのは関係なく、人を好きになっていい。おかしいことじゃないと子どもに伝え続けたいです」

ジェンダーから自由になって、自分らしく生きていってくれたらと願っている。

子育てにおける “お母さん” の負担

自分の出産と産後は壮絶で、トラウマになるくらいの体験だった。

「出産後から、太ももの付け根に出刃包丁がずっと刺さったようなすごい痛みがあって。原因は、出産時に仙骨の神経が切れてしまったんじゃないかっていうことなんですが・・・・・」

「産後7ヵ月まで寝たきり。痛みで5分と座っていられないんです。寝ながら授乳して、家中を這って移動していました」

「途中から実家の母に来てもらいましたが、すごく大変だったんです」

産後、体調を崩した時も「普通の母親」のようにならないといけないと、気を張って無理をしていた。

その経験から、女性の体を持っている人に育児負荷がかかり過ぎていると思うようになった。

子どもが生まれたら “お母さん” の役割にどうしても縛られてしまう。

働く女性が増えてきてはいるが、現在でも子育ての多くを女性の体を持っている母親が担っているのが実情だ。

「“お母さん” の役割に縛られず、女性がその人らしく生きるお手伝いができたらいいな」

「将来的にはいつか、世の中のお母さんに寄り添える存在になりたいなと思っています」

09子どもが自分らしく育つように

絵本の読み聞かせとワークショップ

現在、LGBTについて理解を深めるための絵本の読み聞かせとワークショップを定期的に開催している。

「例えば、家族の中で毛色が違う猫が主人公の絵本とかを読み聞かせして、グループごとに絵本の感想を話してもらいます。その後に、資料を使って多様な性に関することを簡単に説明しています」

「男らしさ女らしさってなんだろう、お父さんの役割お母さんの役割という固定観念を外してみようって問いかけて」

「それから、社会的には多様な性が存在していることを知ってほしい。それを知るための、きっかけづくりができたらいいなと思っています」

「現在はFacebookやTwitter、ブログで告知しているので、性別違和に関心のある方、私のブログに共感してくださる方の参加が多いですね。だから、子どもの参加者が少なくなってしまって・・・・・」

「今は安心して話せる人が来てくれている現状があって、まだまだ異性愛者のお父さんお母さんとの間には壁があるので、自分から何ができるのか考えていったほうがいいかな。今後どう進めていくのか課題ですね」

また、産前産後の母親向けに「月に一度、自分が主役の時間を持とう」というテーマで、自宅でワークショップを開いている。

「お母さんじゃなくて自分に戻れる時間を持ってほしい。過去のこと、今のことを振り返って、それから10年後どうなっていたいというのを考えてもらいます」

「過去のワークショップでは、『10分の空き時間でいいからパンケーキを焼いてみたい』ってお母さんがいました」

「子どもと2人きりでいると、毎日耳元で大音量で泣かれて、家事もできないという状況になる。特に保育園に入れないと大変なんです」

自分もそういう経験をしてきたから、他のお母さんもきっと悩んでいるに違いない。

一人で抱えているお母さんの手助けをしたい。

活動のゴール

絵本の読み聞かせとワークショップの主旨は、「子どものありのままを受け入れられる親であれるように、まずは親が自分自身を大切にしよう」だ。

「親のコミュニティにいると、お父さんお母さんが自分の性別で自分の行動を制限しているなって」

「性別による行動の抑圧を解放して、自分自身でいながらきちんとやりたいことをやって自然体でいれば、自分の子どもも自分らしくいられるんじゃないかと思うんです」

誰もが男女という枠組みを取っ払って、性別による行動の抑圧を解放し、一人ひとり違うことが当たり前になる世の中になるといい。

その理想の世の中が、今の活動の先につながっていると信じている。

10いつでも自分らしくいられるように

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お父さんになりたい

「自分のことを女性だと思っていた頃から、パートナーと同じようにきちんと稼いで、一緒に子育てするというのが目標でした」

「今は経済的に夫に甘えているので、将来的にはちゃんと稼げるようになりたい」

今はまだ、子どもの心と向き合うことと、自分が働くことの間で揺れている。

「自分にとって、家族にとって何がベストなのか、どのタイミングがっていうのを考えています」

子育てと仕事の両立で悩む母親は多いと聞くが、自分の場合、性別違和があるからそれとは違う。

“お父さん” になりたい。それが自分の理想だ。
それは、家の中でも、社会の中においても経済的な柱になるという意味。

「自分の中にも男性は働く人で、女性は家にいるという固定概念がまだまだあって。だから、男の人の役割をしたい、社会に出て経済的な柱になりたい、って思ってしまうんですね」

家庭でも社会でも柱になる。それが理想としてある。

「いつかはジェンダーをテーマに、起業できたらいいなと思います」

「まだ自分に何ができるのかわからないですけど、LGBTだとかXジェンダーだとか名乗らなくても、一人の社会人として当たり前に生きていけるような社会にしていきたい」

自分らしさの扉

4年前、妊娠をきっかけに始まった性への違和感。

この4年の間に、自分自身が性自認・性指向を受け入れられるようになったし、ずっと蓋をしてきた感情の意識化・表出もできるようになった。

また、家族や周囲へのカミングアウト、読み聞かせやワークショップの活動など、自分自身のおもいを広く伝えることもでき始めている。

「より自分でいることに居心地がよくなってきています。格段に今の自分のほうが好きですね」

「以前はずーっといつも怒ってイライラしていましたが、最近はちょっとリラックスして過ごせるようになりました」

「これからは型にはまっていたものを、どんどん捨て去っていきたい」

今現在も悩み、葛藤しながら、自分らしさの扉を一つひとつこじ開けている。

先日あった幼稚園の入園式。父母と子どもの写真を撮る際にお父さんは腕組み、お母さんは手先をクロスして胸元に置くというポーズを取らされた。

性別分けをしたポーズを取らされることに、吐き気がして泣いた。
手先を揃えるのは絶対に嫌だったので、手を握ったままクロスさせた。

「こういう場面では、まだまだ従わなきゃと思っちゃうんですよね。今思えば嫌だって言えばよかったんですけど(苦笑)」

「自分だってお父さんみたいなポーズをしたい。どんな場面でも、自分らしくいられるように主張できるようになりたい」

「自分のしたいように生きていきたいんです」

このまま“お母さん”という役割の中に埋もれて自分を消して、自己主張をせずにいたら、どんどん自分が消えて存在しないようになってしまう。

それは嫌だ。どんな場面でも誰が相手でも自分の心を常に持つことをけっしてあきらめたくない。

これからも一つひとつ扉を開けていって自分を解放していきたい。

あとがき
しげちゃんこと、丸山さん。触れたら壊れそうな繊細さを感じる人。それが第一印象だった。喜怒哀楽の全てを閉じ込めることになった時間を手繰り寄せるように、丁寧に進める話しには、少しずつ感情の言葉が聞こえてきた■今、『お母さん係』の時間と大切に向き合っているシゲちゃん。自分であることを諦めない静かな決意は、どこかで形作られてしまった役割から、世の中の各係さんを少しずつ解放してくれそうだ。(編集部)

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