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LGBTが「特別」ではなく「身近」な存在になるために【後編】

LGBTが「特別」ではなく「身近」な存在になるために【前編】はこちら

2017/07/26/Wed
Photo : Mayumi Suzuki  Text : Mana Kono
河村 真先 / Masaki Kawamura

1994年、愛知県生まれ。中高一貫の男子校を卒業後、大学は総合政策学部に進学。しかし、心身の不調で1年間の休学を経て、京都造形芸術大学の通信教育部に編入する。現在は同大学でグラフィックデザインを学びながら、LGBT当事者をモデルとした「ナナぶんのイチ写真展」の企画運営も行っている。

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INDEX
01 期待を背負って生まれた長男
02 男子校に入れば変われるかもしれない
03 自分で自分を追い詰めてしまう
04 膨れ上がる “生きづらさ”
05 自己表現が心の支えになった
==================(後編)========================
06 自分は当事者なのかもしれない
07 男らしさと女らしさ、二面性があって当たり前
08 自分を知って、他者と繋がりたい
09 LGBTは特別ではない、身近で対等な存在
10 それぞれが尊重しあえる社会

06自分は当事者なのかもしれない

小さな違和感の積み重ね

「通信制の学校とはいえ、1年間のブランクがあったので最初は大変でしたね」

「でも、やりたいことや楽しいことに直結する勉強なのでがんばれました」

好きなことに触れていたからか、気持ちも徐々に前向きになっていった。

そして同時に、自分のセクシュアリティについて、これまで以上に考えるようになっていった。

「特別何かきっかけがあったわけではないんです」

「でも、ちょうど前の大学をやめて新しい学校に編入するまでの間に、ひとりで色々と考えるようになりました」

もしかしたら、これまで自分が抱えてきた生きづらさは、セクシュアリティに由来していたんじゃないだろうか。

「違和感の原因は、些細なことの積み重ねだったと思います」

たとえば、大学に入ってから、男子がやたらと女子のことを気遣う雰囲気に違和感を覚えたこともある。

「男だけでいる時と、女の子がいる時とで態度が違ったりすることに、あれ?って思ったんです」

「女性にいい顔をしたい、モテたい」と思うのは、よくある男子の心情なのかもしれない。

だけど、自分にはその感覚を理解することができなかったのだ。

性別の違いによる独特な力関係も感じた。それも何故なのかはわからなかった。

「LGBTという言葉は前々から知ってはいたんですけど、身近な存在だとは思っていなかったし、もちろん自分がそうだとも思っていませんでした」

「でも、今までは周囲を気にして自分を取り繕っていたけど、もともと向いていた方向を見るとしたら・・・・・・って考え直した時、もしかしたら自分は当事者なのかもしれないって気づいたんです」

はじめての女装

自分のセクシュアリティについて、確信はしていなかったけれど揺れていた頃、一度女装メイクサービスを受けたことがある。

「今まで抑えこんでいた部分と向き合って、自分がどうしたいのか考えた時に、極端に男性的な生き方はしたくないと思ったんです」

これまで、意識して「男らしく」することもできなかった。

そもそも、「男らしく」生きる必要はあるんだろうか?

「それで、極端に『男』として生きていきたいと思えないなら、『女』としてならどうだろう?って思ったんです」

そうして、勇気を出して女装イベントへ足を運んだのだ。

「まだ自分の中では確信していなかったし、やってみて違ったら、それはそれでいいかなとも思っていました」

「その時はじめて着た女性の服は、思い描いていた衣装の雰囲気とは違っていました」

「でも、『もっとこういう服を着たいな』というイメージが芽生えてきたんです」

女装イベントに参加したことで、新たな自分の一面を発見することができた。

07男らしさと女らしさ、二面性があって当たり前

自分は自分

現在、自身の性自認は「MTX」としている。

「でも、最初の頃は、自分は女性になりたいのかなって思ってたんです」

知識が少なかったこともあって、最初は「Xジェンダー」という概念を知らなかったのだ。

「だから、自分は『MTF』なんだろうと思っていました」

「でも、がむしゃらに女らしさを求めても結局作りものになってしまうだろうと思ったし、それはそれで自分が求めているものとは違うような気もしてきたんです」

それなら、「男」、「女」とはっきり区別する必要はないんじゃないだろうか。

もしかしたら、「自分は自分だ」という生き方だってありなのかもしれない。

「男であるという事実や役割からも逃げたくはないんです」

「女であっても、男であっても、どちらでなくても、生きる上で生じる責任があれば、権利もあると思います」

「今は、『男』の面も『女』の面も当然持っているものだし、自分のそうした二面性に向き合って生きていきたいなって思っています」

両親へのカミングアウト

セクシュアリティに気づいてから、カミングアウトまでそれほど時間はかからなかった。

「特に、両親には隠しごとをしたくないっていう思いが強かったんです」

それに、女性の服を買ったり髪を伸ばしたりすれば、遅かれ早かれ周囲にはバレてしまうだろう。

「これまで、親とはしっかり話し合いの場を持たずに、なあなあにしていた部分もあったので、今回はどういう結果になるにせよ、早い段階で話しておきたいという気持ちがありました」

そんな思いから、まずは母に打ち明けた。

これまで、性別に対して違和感を抱えていたこと。
女装を体験して、ネットでも女性ものの服を見るようになったこと。
そうしたら、精神状態も徐々に上向きになっていったこと。

最初は少し驚いていた母。

しかし、薄々感づいていた部分もあったようで、反対されることもなかった。

「それで、母から父に軽く伝えてもらった後で、父にも直接カミングアウトしました」

「父はあまりリアクションがあったようには感じなかったんですけど、母と同じく、頭ごなしに反対するというわけでもなかったです」

LGBTに関する知識がどの程度あったかはわからないが、父も母も、偏見のようなものは持っていなかったように思う。

08自分を知って、他者と繋がりたい

新しい自分の発見

カミングアウトを経て、今まで自覚していなかった自分の内面が、少しずつ見えてくるようになってきた。

「将来への不安もあるといえばありますよ」

「でも、それよりも今は自分の内面をもっと知りたいなっていう、前向きな気持ちが出てきたと思います」

カミングアウト以降は化粧をしてみたり、髪を伸ばしたりするようにもなった。

「自分を表現することが楽しくなりました。嫌いだった自分に少しずつ肯定感が生まれていったんだと感じます」

自分の外見が少しずつ変化していくさまは心おどるし、新たな自分を見つけられたような気分にもなる。

また、新しい学校に通いはじめて環境も変わったということで、よりいっそう人生の再スタートを切ったような感覚が強かった。

自分には何ができるだろう

これまで、自分と同じようなLGBTの人たちとはあまり知り合う機会がなかった。

「でも、最近になってだんだんと当事者と交流したいという思いが出てきたし、自分にも何かできることがあるんじゃないかと思うようになりました」

しかし、既存のLGBTイベント団体に所属しようとは思わなかった。

「というのも、そういう団体は私とは考え方やスタンスが違いそうだな、って思ったからなんです」

もちろん、団体によって運営方針はさまざまだろう。

だが、LGBTの「理解」というよりは、「認知」を目標に掲げている団体が多いような印象があったのだ。

「まずは知ってもらうっていうのも大事だとは思うんですけど、やっぱり押し付けになってはいけない」

「相手が『知りたい』と思ったタイミングで、程よい情報量を伝えられるのが理想だなって思ったんです」

大事なのは対話であって、一方的な押し付けではない。

かといって、ベクトルが内輪になりすぎても良くないと思った。

「それで、まずは日記用に個人のSNSアカウントを作って、徐々に当事者の方とも交流するようになっていきました」

そうして交流を重ねる中で、自分に何かできることはないかと考えた。

結果、この夏、LGBT当事者をモデルにした写真展を開くことを決意した。

09 LGBTは特別ではない、身近で対等な存在

写真でメッセージを発信したい

あまりのつらさから、自ら命を絶とうとした過去。

ほかの人にはそんな思いをしてほしくないし、自分ももうしたくない。

「そんな時、つらい思いをしている人たちに、自分のことを発信すれば、『仲間がいるんだよ』と伝えられるかもしれないって思ったんですよね」

たとえセクシュアリティや歩んできた人生が違ったり、自分と完全に同じ境遇というわけではなくても、何か伝えられるものがあるかもしれない。

「悩みを測ることはできないですよね。自分の悩みがちっぽけだと思わないで欲しいんです」

そう思って発信ツールを「写真」にした。

それには、理由がある。

「今だったら、スマホで誰でも写真を撮れるじゃないですか」

「写真は奥が深いものではあるけど、間口の広さもあって身近な存在だと思うんです」

それに、現実に起きている一瞬を切り取って見せることで、「本当にこういう人間が生きているんだ」というメッセージを、よりリアルに伝えることもできるだろう。

「文章や絵といったほかのメディアもありますけど、それだとどうしてもある程度脚色が入ってしまうんですよね」

「もちろん写真にもそういう脚色はあるんですけど、他のメディアと比べたら感じられにくいものなのかなと思うんです」

まずは地元民から親しまれるように

写真展のコンセプトは、「LGBTは特別でない存在」だと伝えることだ。

「LGBTという存在は、優れてもいなければ劣ってもいない」

「ストレートの人たちと隔たりがあるわけでもなくて、あくまでグラデーションでつながっているような対等な存在だと思うんです」

どうすれば、LGBTが「特別でない身近な存在」だと思ってもらえるだろうかと考えた結果、作品のモデルは地元名古屋の在住者から選ぶことに。

「自分自身が無理なく活動するため、というのもありますが、地域の方により親しみを持ってもらうために、地域性も重視したんです」

たとえば、モデルの背景に地元の街並みが写っていたら、作品や被写体をより「身近な存在」だと認識しやすいだろう。

夏の展示はまだ準備段階ではあるが、今後もこうした取り組みを継続していきたいと思う。

「写真をメインコンテンツとして見せつつ、いずれは展示に足を運ぶ方同士の交流の場も提供できたらなと思っています」

10それぞれが尊重しあえる社会

問題解決への一歩

LGBTという存在は、本人が心に秘めているうちは、まわりから見て判別がしにくい場合もある。

「でも、たとえわかりにくかったとしても、そういう人は実際に存在しているんです」

だから、「当事者がこの場にいないから、何を言ってもいいや」とは思わないでほしい。

「まだまだ、当事者は生きづらさを感じていたり、アウティングなどへの問題を抱えていたりします」

「境遇は違えど、一人ひとりがもっと自分らしく生きるべきだし、生きることに特別な勇気が必要じゃなくなればいいなと思います」

それを現実にするのは難しいだろう。

だけど、こうやって自分が情報を発信していくことで、誰かの心に響いたり、何かのきっかけにつながる可能性はあるはずだ。

LGBTだけでなく、社会全体の課題

「LGBTが直面している問題をどうやって解決していくかと考えると、ただ理解者の人数を集めるというだけではダメだと思うんですよね」

それをすると、結局は多数決を認めてしまうことになるからだ。

マイノリティ差別に対して声をあげているのに、数に頼っては元も子もない。

「だから、LGBTとストレートが、お互いの違いや共通点をもっと見つめあって、尊重できるようになるのが理想だと思っています」

「LGBTは特別だから困っているんだ」というアプローチは、個人的にはあまりしたくない。

むしろ、「両者の間に違いはない」ということを、なんらかのメッセージで発信していくべきだと思っている。

「LGBTじゃなくても、自分の生き方を否定されたり笑われたりしたら、誰だって嫌なはずなんですよね」

「だから、LGBTに焦点を絞るというよりも、人間全体に『相手を尊重しよう』と訴えられるような活動につなげていけたらいいなと思っています」

あとがき
「取材を通して自分の経験や考えを見つめ直し、誰かの道標に」。柔らかく、ハッキリと続ける言葉が印象的な真先さん。取材の日は、夜行バスで早朝に到着し、ランドホーの事務所で身支度を。シンプルで可愛らしい装いへ■真先さんは、目の前にあらわれる現象のプロセスや人との関わり・・・物事の奥行きを大切に見つめる。今まさに、イベント開催に向けて静かな助走が始まっている。歓声も心地よい疲れも、きっと仲間と分かち合える。(編集部)

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