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世界は楽しいもので溢れてる! それを写真の力で伝えたい。【後編】

世界は楽しいもので溢れてる! それを写真の力で伝えたい。【前編】はこちら

2017/07/02/Sun
Photo : Taku Katayama Text : Mana Kono
案納 真里江 / Marie Anno

1993年、福岡県生まれ。幼い頃からアートへの造詣が深く、デザイン科の高校へ進学。高校卒業後は、ブライダル会社に写真編集兼カメラマンとして就職し、3年間の経験を経て独立する。フリーランスとしてブライダル写真を中心に撮影していたが、写真家レスリー・キーへの傾倒もあって、現在はアート作品に至るまで幅広く手掛けている。

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INDEX
01 マイペースな性格
02 母子家庭でもさみしくなかった
03 早く自立したい
04 夢はデザインの仕事に就くこと
05 初恋の相手は女の子
==================(後編)========================
06 写真をライフワークにしたい
07 カメラを通して人と繋がる
08 カミングアウトで現状を変えたい
09 ネガティブなのはもったいない!
10 否定的な意見も尊重したい

06写真をライフワークにしたい

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大好きだけど・・・・・・

高校生で初めてできた、女の子の恋人。

最初は周囲にも隠しておこうと思ったが、親しかった女友達にカミングアウトすることに。

「その子も最初はすごく驚いていたけど、その後はよく恋愛相談にのってもらうようになりました」

恋人との付き合いは1年続いたが、高校在学中に別れてしまう。

徐々に関係がうまくいかなくなっていったのだ。

彼女とは別れた方が、お互いのためになるだろう。

頭ではそう割り切っていたつもりだった。

でも、すぐに気持ちを切り替えられたわけではない。

「別れを告げたのはこちらからでしたが、それでも、私はその子のことがすごく好きだったんです」

「・・・・・・向こうがどれだけ自分のことを好きでいてくれたかは、今でもよくわかりません」

偶然のきっかけでカメラの道へ

ずっと家を出て独り立ちしたいと思っていたから、高校を卒業したらすぐに就職しようと決めていた。

「デザイン方面に進みたい気持ちはありましたが、卒業後すぐには難しそうだったので、一旦何か別のところに就職しなくてはと思っていました」

就職活動が始まる折に、たまたま知り合いが運営しているブライダル会社で人手が不足しているという話を聞いた。

「写真撮影や編集の手伝いから始めて、興味があればカメラマンもやってほしい」と言われ、その会社への就職を決めた。

もともとブライダル業界に興味があったわけではないが、「自立ができる!一人暮らしができる!」という喜びが大きかった。

迷いはほとんどなかった。

「高校2年生の時から写真部に入っていて、遊びで写真は撮っていたんです」

「その頃は1ミリもカメラマンになろうとは思ってなかったんですけど(笑)」

就職して必要に迫られてカメラを持つにつれ、仕事としての写真の楽しさを見出していくようになる。

「だから、なろうと思ってカメラマンになったわけではないんです(笑)」

「でも、楽しくてやめられなくなってしまって、これはライフワークにしようって思いました」

07カメラを通して人と繋がる

写真は単なる “もの” じゃない

「ブライダルって、すごくおめでたい場じゃないですか」

現場で写真を撮っていると、お客さんから「すごくいい仕事ですね」「頑張ってください」と言われることも多かった。

「あと、会社にはキッズスタジオもあったんですけど、私は子どもに警戒心を持たれにくくて好かれやすかったので、そっちの撮影も任されていたんです」

そこでも喜びの声を聞くことが多かった。

最初は表情が固かった人見知りの子が、撮影を進めていくにつれてリラックスしてナチュラルな笑顔を見せるようになっていく。

七五三撮影で、「本当は1枚だけにするつもりだったんだけど、どの写真もいい表情だから何枚も買いたくなっちゃうな」と言ってくれたお父さん。

自分の作ったものに対して、直接反応を聞くことができる喜び。

写真は作品として残るだけでなく、人と人を繋ぐ存在でもある。

それに、“もの” としてだけでなく撮影時の思いも作品に刻み込まれているから、写真を見返すたびに当時の記憶を呼び起こすこともできる。

「写真が担う役割みたいなものを、すごく間近で感じることができました」

レスリー・キーとの出会い

最初に勤めていたブライダル会社は3年で辞めて、その後1年間福岡でフリーランスのカメラマンをしていた。

「その時も引き続きブライダルだったり、幼稚園や小学校の遠足や運動会の撮影などをしていました」

「でも、フリーランスになったものの、このままフリーで何年も続けられているかっていうのはちょっと迷ってた時期があったんです」

ちょうどその頃に出会ったのが、写真家レスリー・キーだ。

「レスリーの名前は知っていたんですけど、どんな人なんだろうと思って『SUPERな写真家』っていう本を読んだんです」

その本を読んで、彼の人柄に惚れ込んでしまった。

「レスリーも小さい頃どちらかというと引っ込み思案だったらしいんですけど、カメラがあったからどんどん人とコミュニケーションをとることができるようになったんだそうです」

彼が「OUT IN JAPAN」のカメラマンとして、LGBT当事者のカミングアウトを応援してくれていることにも好感が持てた。

「あと、彼はすごくポジティブなパワーが強い人で、その面でもすごく勇気をもらったんです」

フリーランスとして駆け出しだった当時は、「とにかく仕事で写真を撮る」ということでいっぱいいっぱいだった。

そんな時に元気をくれたのがレスリーだったのだ。

「会社を辞めた時点で、福岡で何年かフリーランスをしてから上京しようって目標を決めていたんです」

レスリーとの出会いも後押しとなり、意を決して一昨年東京へとやってきた。

08カミングアウトで現状を変えたい

8syou_kumi

カミングアウトしても困らないだろう

レスリーがカメラマンを務めているということで、「OUT IN JAPAN」
への興味が徐々に大きくなっていった。

「最初は『カミングアウトをしたい』というよりも、『レスリーに写真撮ってもらいたい!』っていう気持ちが大きかったんです(笑)」

ただ、その頃はまだ家族にカミングアウトをしていない。

親に言わずにメディア露出をして、後出しのような形で伝わってしまうのは避けたかった。

「そんな時に、上京して仲良くなった友達がたまたまFTMの子だったんです」

「トランスジェンダーの友達は今までいなかったから、その時に “LGBT” っていう単語を初めて知って色々と調べました」

そして、LGBTを取り巻く現状を変えるためには、カミングアウトできる人間が率先して動いていべきだと思った。

「私はカミングアウトしてもそんなに困ることはないと思ったので、『OUT IN JAPAN』に応募したんです」

念願のレスリーによる撮影が叶った。

間接的なカミングアウト

「『OUT IN JAPAN』の撮影直後に帰省するタイミングがあったので、そこで母にもカミングアウトしようと思いました」

「でも、ちょっと怖くて面と向かっては言えなくて(笑)」

母はどことなく感づいている節があったから、恐らく言っても大丈夫だろうとは思っていた。

「でも、当時はまだ自分のセクシュアリティのことを誰かに伝えるのは慣れていなくて、怖いっていうイメージが勝手に先行していたんです」

「今は初対面の人にもサラっと言えるんですけどね」

それで、東京に戻ってから「レスリーって人に写真を撮ってもらったんだ」というメッセージとともに、「OUT IN JAPAN」のURLをLINEで母に送った。

「『えーすごいね』って言われて、そのあとは特に突っ込んで聞かれることはなかったです」

母は、否定することもなく肯定することもなかった。もしかしたら、自分の記事をしっかりチェックしていなかったのかもしれない。

「今に至るまで、私もその後のフォローとかを全然していないから申し訳ないんですけど(笑)」

今でも母は本音でどう思っているのかはわからない。

「でも、今回LGBTERの取材を受けたことで、この記事を母も読むと思うんです」

改めて記事を読んだ時、母はいったいどんな反応を示すだろう。

09ネガティブなのはもったいない!

アートが持つパワー

「私はそんなに人生で大変だったことってないんですけど(笑)、その中でもちょっとした波ってあるじゃないですか。しょうもないことで落ち込んだりとか」

そういう時、美術館などで作品を見て元気をもらうことが多かった。

「アートの力ってすごいなって思っていて」

「すごくパワーをもらえたり、それを見るだけでいろんなことを考えたり、感動して泣いたり、すごい力がありますよね」

「私も、できることなら写真を撮って、撮られた人にもその写真を見た人にもハッピーになってもらいたいんです」

落ち込んでる人が見て元気になれるような、幸せになれるような作品が撮れたら。

「これからも、写真の引き出しをもっと増やしたいなと思っています。いろいろなものが撮れるようになりたいんです」

自分はポジティブすぎる性格だと思うし、まわりにも前向きな友人が多い。

「でも、もったいないくらい物事をネガティブに捉えている人って、たまにいるじゃないですか?環境によるから仕方ないなとは思うんですけど」

「そういう人に、もっと世界って幸せとか楽しいもので溢れてるんだよって、私の作品を見て気づいてもらえるきっかけになったらいいなって思います」

恋愛に性別は関係ない

現在、自分の性指向は「パンセクシュアル」と公言している。

「最初はパンセクシュアルという言葉を知らなかったので、自分はバイセクシュアルだと思っていたんです」

最初に付き合った彼女と別れて社会人になった時に、男性を好きになったのだ。

「その時は付き合いはしなかったんですけど、自分はバイセクシュアルなんだな、って思いました」

「どっちもいけるんだなって(笑)」

その後も、女性と男性を両方好きになることが何度か続いた。

「でも、『OUT IN JAPAN』でパンセクシュアルの人と出会って、『パンセクシュアルってなんだろう?』って思って色々調べたんです」

パンセクシュアルは、男性・女性に限らず、トランスジェンダーも恋愛対象に含まれる。

「これまでにFTMの人を好きになったこともあったので、ざっくり言っちゃうと、性別という概念があんまりないんですよ」

「パンセクシュアルだと、恋愛する時に性別を重視する人はゼロに近いとも思うんです」

「好きになった人」が、好きな人。

「そこに性別はあんまり関係ないかなって感じです」

10否定的な意見も尊重したい

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動かなければ変わらない

「Facebook上でLGBTに関する記事をシェアするんですけど、自分自身が当事者だとは、公にはっきりとカミングアウトしていないんです」

LGBTの友達も多いし、なんとなく察している人も多いだろう。

「それで、あんまりちゃんとしたカミングアウトは必要ないかと思っていたんです」

しかし、今年3月に開催されたレインボー国会に撮影で参加して、色々な人の話を聞いたことで、意識が大きく変化した。

「2020年のオリンピックにはほかの国の方も来るし、LGBTに関して日本はすごく遅れてるから、法律も色々変えようっていう流れがあるんです」

だから、これからの3年でLGBTを取り巻く環境も大きく変わるんだと思っていた。

「でも、レインボー国会で話を聞いて、私はすごく甘えていたなってことに気づきました」

誰かが変えてくれる・・・・・・どこかにそんな気持ちがあった。

でも、このままいけば、きっと状況はほとんど変わらない。

そうひしひしと痛感したのだ。

「これは、本当に動かないと変わらないと思って。私は顔も名前も出せるし、カミングアウトしても大丈夫なので、動けるんなら動かないとな、と思いました」

LGBTについて知識がない人にも、「知りたい」と思ってもらえるきっかけになれればと思った。

LGBTがもっともっと身近な存在になっていけたら、海外の先進国と同じように、日本でも当事者とそれ以外の人との溝が埋まるだろうと思った。

「私自身、LGBTについて知らないことや勘違いしていたこともいっぱいあったし、それは情報が少ないから仕方なかったと思います」

「そこは地道に埋めるしかないですね」

多種多様な意見があっていい

自分がパンセクシュアルであるということを、「気持ち悪い」と感じたり受け入れたくないと思う人だっているだろう。

「でも、人の気持ちは変えられるものではないし、無理して変えなくてもいいと思っています」

「嫌だとかおかしいって意見は、それはそれで尊重したいと思うんです」

個々の違う意見は、大切にするべきだと思う。

「LGBT全体にしても、アライとして応援してくれる人もいれば、否定的な人もいるじゃないですか?」

「その環境も、私はすごく大事だなと思っています」

意見がひとつしかないことはおかしい。

多種多様な考え方になるよう、平等性を尊重したい。

「『こっちが正しいからそっちはおかしい』って、声が大きい方が勝つというルールには違和感があるんです」

「だから、理解してもらえなかったとしてもしょうがないですね。私は私で動いていくので、それを見てちょっとでも気にしてもらえたらいいな、って思います」

あとがき
笑顔が咲いた。楽しかったご家族との昔話しもワクワク顔の真里江さん■取材後「母からセクシュアリティのことを全面否定されて喧嘩を。でも、驚くほどストレスはなくて。私は私で生きて行くと思います」とメールが■自分が、誰かの悩みの原因?と気になることがあるけれど、悩みはその人のもの。 今、真里江さんは帰省に向けて、お母さんと仲直り作戦を立てている。LGBTERからも真里江さんの言葉を少し届けたい。作戦コンセプトは「母を安心させてあげたい」だ。(編集部)

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