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自分らしいスタイルで生きていきたい【後編】

自分らしいスタイルで生きていきたい【前編】はこちら

2017/09/10/Sun
Photo : Rina Kawabata  Text : Mayuko Sunagawa
宮澤 茉莉 / Mari Miyazawa

1987年、埼玉県生まれ。多摩美術大学美術学部情報デザイン学科卒業。一般企業にてクリエイティブ制作職として勤務。昨年、FTMだと気づき周囲へカミングアウトした。長年女性として生活してきたことから、性自認は男性だが女性の恰好をして生活している。

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INDEX
01 女性らしい自分に違和感がなかった幼少期
02 ストレスフルな思春期
03 共存する男性と女性
04 本当の自分が見つからない
05 女性らしく振舞う
==================(後編)========================
06 FTMへの気づき
07 自分らしいスタイルで
08 転職活動
09 心からあふれ出たカミングアウト
10 セクシュアルマイノリティであることにとらわれない人生を

06FTMへの気づき

頭(脳)と体がねじれていたんだ

以前からFTMの存在は知っていたが、「FTMは思い込みなんじゃないか」「現実にはそんな人はいないんじゃないか」と思っていた。

それが去年、ツイッター上でFTMと知り合ったことをきっかけに、FTMが実際に存在することを知る。

自分もまたFTMであることに気がついた。

「そのFTMの人はとても男っぽい言動や振舞いだったので、自分はすっかり男性だと思って、男性として好きになったんです」

「それで告白したら『実は男じゃない』と言われて。本当にそんな人いるんだ!と、とても驚きました」

「身近にFTMの人がいることを知って、自分もFTMではないかと思い始めたんです」

長年抱えてきた「自分とは何者なのか」という問いも、他の女性との違いも、FTMが原因ならすべてスッキリ解決する。

「これまでの自分は頭と体の性がねじれて、自分が無理している状態であったことに、やっと気づいたんです」

自分が葛藤していた原因がわかってから、すごく世界がクリアになった。

「自分はこんなことで悩んでいたんだ!」
「本当にこんなことってあるんだ!」
「だから記憶がうまくつながらなかったんだ!」

パズルのピースが一つひとつはまっていくように、自分の心を整理していくことができた。

「自分が何者かわからなかった時には、人を信用することができませんでした」

「でも、自分の頭が男性だとわかれば、人との壁をなくすことができたし、以前よりも人を信用することができるようになったんです」

自分の存在が明確になることで、以前より自分に自信を持つことができた。

とても心が落ち着いて、男性・女性両方の自分を感じ始めた中学3年以前の安定した心持ちに戻れた気がした。

性自認は男性だけ

「私は頭が男で体が女に生まれてきてしまったと思っています」

男性である頭が間違ったのではなく、女性の体に間違えて生まれてきてしまったと思っている。

「生まれた時からとても長い間、女性として育ってきてしまったから、頭が男だったけれど、どちらとはなかなか決められない状態だったんです」

長年セクシュアリティに問題があるとは思い至らなかったし、セクシュアリティに対して悩みがなかったので深く向き合うこともしてこなかった。

「だから『男なの?』と人に聞かれると、今でも本当にそうだろうか?と、戸惑う部分はあります」

「でも、やっぱり自分は男性なんだというのはハッキリ感じています」

男性と女性が共存していたのでFTXという選択肢もあるが、自我があるのは男性のほうだけ。

男性と女性が共存していた頃は記憶が飛んでしまうくらい違和感があったから、共存している状態は自分の本来の姿ではない。

だから、FTMなのだと思う。

07自分らしいスタイルで

体は女性のままで

自分の頭の性と、体・見た目の性を一緒にしようという考えはあまりない。

頭と体が一致しないことに対する嫌悪感もない。

だから、頭は男性のまま、体は女性のままでよいと思っている。それに違和感も不満もない。

「長年女性の体で生きてきたので、そのままの状態が自然だと思うし、日常生活で自分の体の性別を意識することなんてあまりないから、体を変える必要はないと思っているんです」

また、筋肉質でヒゲを生やしてという『THE・男性』の見た目には、自分は惹かれない。

「マンガ『はいからさんが通る』の藤枝蘭丸とか、ビジュアル系バンドのSHAZNAのIZAMとか、どっちかといえばそっちのタイプの男性だと思うんです」

中性的な男性に親近感がある。

今後、GID診断を受けることは今のところ考えていない。

GID診断を受けたところで、もう自分は完全な男性にはなれないと思っているからだ。

女性らしい見た目のままで

髪も長いし、服装もレディース向けのお店で買っている。

見た目だけなら、完全に自分は女性だ。

「もし10年前にFTMだと気づいていたなら、男性の服装に変えていたかもしれませんが、長い間女性として生きてきて、社会人としても女性の恰好で過ごしているので、いまさら変えなくていいかなと思っています」

どんな恰好が女性らしいのか悩むことはあるのが、女性の恰好に対する嫌悪感はあまりない。

また、周囲への影響も考えて、女性の恰好で生活している。

「会社の人たちも、今さら男性の恰好になって男性として扱ってくれと言われたら困るでしょう」

「社内でセクシュアルマイノリティに嫌悪を感じている人もいるかもしれませんから、変に波風は立てたくないというのもあります」

ただ、本音を言えば、社会に広く「自分は、本当は男なんです!」と言いたい気持ちはある。

08転職活動

カミングアウトをして臨んだ転職活動

現在、転職活動中。

セクシュアルマイノリティに理解を示してくれそうな数社の面接を受けた。

履歴書のプロフィールに「トランスジェンダー」と記載し、自分が本当は男であることをカミングアウトした。

あえて転職に不利になるであろうカミングアウトをする理由の一つは、本当は男性として働きたいという気持ちがあるから。

もう一つは、高校・大学で中退していることの理由が、セクシュアリティの問題にあったことを説明したいという気持ちがあるからだ。

しかし、案の定会社の面接官から「あなたが大丈夫だと思っていても、周囲はどう思うかわからない。みんなの理解が得られないと難しい」と言われた。

セクシュアリティに関して面接で突っ込まれた時に、うまく説明することができなかった。

やはりセクシュアリティの問題をカミングアウトしての就職活動はすごく難しいと思った。

カミングアウトをすることで、企業に余計な心配や不安を抱かせてしまう。

カミングアウトをすることで、自分から壁を作ってしまっているということを実感した。

転職活動を通して感じたこと

自分の経験から、就職活動においてセクシュアリティをあまり意識しないほうがいいと思っている。

就職活動で企業に求められているのは、性別云々の話ではない。

「何のスキルを持っていて、どういう仕事をしたくて、どんなビジョンを描いているのか」ということ。

これを明確に話せることが大事だと思う。

「いろんな会社を見ることが大事だと思います」

「中にはセクシュアルマイノリティを拒否する会社があるだろうけれど、ゲイでもレズビアンでもトランスジェンダーでも気にしない、って言ってくれるところはきっとあるはずだから」

また、企業側に求めることは、1人の社員として普通に扱ってほしいということ。

「気づかいや配慮が必要なケースもあると思うんですが、偏見を持たずに普通に接してほしいですね」

「自分の場合は特別な配慮や待遇が必要なわけではないから、どんな仕事ができるのか、というところで評価してもらいたいと思っています」

自分は物をつくる制作職だから、作品集を見てスキルを買ってくれる職場を見つけていきたい。

カミングアウトをしていてもしていなくても、自分らしく働ける職場を求めていきたい。

09心からあふれ出たカミングアウト

同僚・友人へのカミングアウト

自分がFTMだと気づいた瞬間、フェイスブックに思わず書き込んでしまった。

十数年、人生がうまくいかず悔しい思いをしてきた原因がやっと見つかったことに驚き、この衝撃を早くいろんな人に伝えたいと思ったからだ。

「笑い話ですが、体は女性ですが頭は男性でした」と投稿した。

Facebookでつながっている友人からは、それほど大きな反応はなかった。

みんな「そうなんだー」という感じで、強い拒絶をされることもなかった。

「セクシュアリティの違いなんて、本当は大したことじゃないんだなって思いました」

それから職場の同僚や学生時代の友人にも、次々カミングアウトしていった。

「上司は『ふーん、そうなんだ』という感じ。『頭が男ってどんな感じなの?』と興味を持って聞いてくれたし、否定されることはなかったですね」

ゆったりした社風でやさしい人たちが多いこともあり、ごく自然に受け入れられたのだろう。

大学の友人にも先日カミングアウトしたが、「そうなんだー」と自然に受け入れてくれた。

「昔からの友人には個性的な人だと思われていたから、それがセクシュアリティに関係があったんだ、と思う程度だったんでしょうね」

両親へのカミングアウト

両親へのカミングアウトは、最初はLINEだった。

「本当は、頭は男性なんだ」といった内容を伝えたと思う。

母はひどくショックを受けたようで、初めはレズビアンだと勘違いしていた。

「母の頭の中には、世の中には男性と女性しかいなくて、セクシュアルマイノリティで知っているのはゲイとレズビアンくらいなんだと思います」

「そんなこと言ったら、おばあちゃんが悲しむでしょ」と言われた。

「セクシュアルマイノリティは嫌悪されるべき存在で、自分の娘が普通の女性じゃない、というのはあり得ないことなんだと思います」

強い嫌悪感があるのが伝わってきた。

本当は母に「このせいで長年苦しんできた。今まで迷惑かけてごめんなさい」と伝えたかったが、母の反応を見てそれを言うことはできなかった。

一方、父はすんなり受けとめてくれた。

「・・・・・・だから高校の時は大変だったんだね」と言ってくれた。

その後、母とは約1年、話し合いを繰り返した。

当初はセクシュアリティの話を出すことさえタブーだったが、なんとか理解が得られるよう繰り返し話した。

ある時、母は「もうあんたのことはあまり構わないようにするわ。ちょっとふっきれた」と言った。

「母は『子どもは親の分身』という気持ちが強かったんですが、その意識を変えることができてきたから、受け入れてもらうことができたのだと思います」

10セクシュアルマイノリティであることにとらわれない人生を

自分の好きなことに打ち込みたい

自分がFTMだと気づいたのは約1年前。

それ以前までさまざまな困難はあった。

それでもセクシュアリティに捉われず、大きく悩むことなく生きてこられたことはよかったと思っている。

「セクシュアリティに関して悩むことに時間を使われなくてよかった。そればかり討論する人生でなくてよかったと思っています」

もっと早く気づいていたら、マイノリティであることにとらわれた人生になっていたかもしれない。

その世界でしか、生きられなくなってしまっていたかもしれない。

今後もセクシュアルマイノリティであることに、とらわれずに生きていきたい。

自分の趣味や絵を描くSNSコミュニティの仲間との関係など、自分の好きなことに打ち込んでいきたいと思っている。

支え合いながら一緒に生きていけるパートナーを

もしFTMだと気づかず女性のままでいられたら、女性として男性を好きになって、結婚して幸せになる、という人生があったのではないかと考える。

できるなら男性と恋愛・結婚したいが、今は男性とは付き合えないんじゃないかと思っている。

なぜなら男性と付き合うと、どうしても女性としての振舞いを求められるからだ。

女性の振舞いをしている自分は自分らしくない。

ありのままの自分でいられる人と一緒にいたいと思っている。

今、すごく好きな人がいる。

マンガを描くという共通の趣味があり、ありのままの自分でいられる居心地のよい人だ。

今は好きでいるだけで幸せだ。

ずっと彼のことを好きでいられたらいいと思っている。

将来の夢は、自分の好きな人に寄り添い、サポートしていくこと。
その夢を心に思い描くと、頑張って生きていこうと思える。

誰かと一緒に支え合いながら生きていけたらうれしい。

今を大切に生きていきたい。

あきらめずに将来の夢を追いかけていきたい。

あとがき
茉莉さんのカミングアウトは、自分が何者かを知って溢れ出したものだと知った。きれいでスッとしたスタイルの茉莉さん■と言っては、“それはFTMじゃない!” という人がいるかもしれない。戸籍変更後が上位、のような序列めいたラベルがあるとすれば、困ったなぁと思う■誰かと比べなくなった時、自分のいる今日が最良で心地良いと思える気がする。でもたまには比べてしまうから・・・、どこか切り取った[部分]から、自分への絶対評価を採用したい。(編集部)

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