INTERVIEW
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男性との離婚を経て、女性と結婚。「すっごい幸せな気分」【前編】

今回のインタビューのために、大阪からパートナーと上京してきた瓜本淳子さん。「ふたりで休みをとるために、先週の休みの日から準備してたんです」。聞けば小学生の頃から、先に宿題を済ませてから思い切り遊ぶタイプだったという。しかし、ライフストーリーを語り始めると「行動するのに、なんも考えてへんかった」と自嘲気味に笑う。こちらは、そうとは感じない。身に起きる一つひとつを解決して、ことを済ませてから、誠実に着実に前へ進んできたのだろうと、彼女が語るストーリーを聞いて感じた。

2019/06/01/Sat
Photo : Rina Kawabata Text : Kei Yoshida
瓜本 淳子 / Junko Urimoto

1979年、大阪府生まれ。21歳のときに男性と結婚し、退職。その後、離婚して実家に戻り、SNSを通じてレズビアンのコミュニティを知った。足を踏み入れたところ、自身がレズビアンであると確信。現在、獣医師である同い年の女性パートナーと、動物病院で働いている。プライベートでは、パートナー・友人と「LGBTQ相互支援団体カラフルブランケッツ」を立ち上げた。また、心理面での手助けができるようになればと、この4月から通信制の大学にて心理学を学んでいる。

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INDEX
01 犬と猫とパートナーと
02 なんだか女の子が気になる
03 みんなと同じく自分も彼氏と
04 ガードマンの仕事を寿退職
05 レズビアンのコミュニティを発見
==================(後編)========================
06 女同士の恋愛に「しっくりきた」
07 女ともだちから恋人へ
08 両親に隠さず話せるという幸せ
09 ふたりの結婚記念日はいつ?
10 気を遣わず、自由に過ごすこと

01犬と猫とパートナーと

一軒家に3人と4匹で

現在の仕事は動物病院の看護師長。

「受付業務とか、会計したりお薬をつくったり、入院しているコのお世話とか、ペットホテルの管理とか。仕事は、いろいろです」

「診察のときに、ネコちゃんやワンちゃんを支えてあげたりとかも」

獣医師が3人に、看護師が4人。全員が女性だ。
入院室やペットホテルも備えるため、泊まり込んでの夜勤もある。

「院内にカメラを設置していて、24時間モニタリングできるので、ほとんどの場合は病院から徒歩3分の自宅に帰りますが、やはり重症のコがいるときは病院に泊まりますね」

病院から徒歩3分の家には、ゴールデンレトリーバーとチワワの犬2匹、猫2匹、同僚の獣医師、パートナーと賑やかに暮らしている。

「住んでいるのは3階建ての一軒家。1階が同僚のスペース、2階がリビング、3階が私たちのスペースとして使っています」

「同僚は、ごはんとか散歩とか、犬と猫の世話も手伝ってくれるので、一緒に暮らすことで、とっても助かってます」

病院の受付は11時からだ。

「10時30分までには病院に行くんですが、パートナーと私が起きるのは、出かける10分前(笑)」

「帰宅するの頃には、もう日付が変わっているので、けっこうギリギリの生活ですね。家が近くて良かったです」

実は動物アレルギー

パートナーとは、2015年に開催された「関西レインボーフェスタ!」で結婚式を挙げ、2018年には大阪市でパートナーシップを宣誓。

そして、パートナーも動物病院で副院長を務めている。

つまり、家にいても病院にいても、パートナーと動物たちと、24時間一緒にいる毎日だ。

「実家でも犬を飼ってたし、動物のいない生活は考えられないですね」

ゴールデンレトリーバーとチワワは保護犬を引き取った。

「猫たちは、病院の前に捨てられていたコと、患者さんから『もらい手が見つからない』と相談されたコです」

「我が家の犬と猫は、とっても仲良しで、特に同じ時期に引き取ったチワワと猫がラブラブなんですよ(笑)」

「じゃれたり、追っかけっこしたり。お互いに小さいときから一緒だから、ほんと仲が良くて」

しかし、実は動物に対してアレルギーをもっている。

発症したのは2年ほど前。急に咳が止まらなくなり、呼吸が苦しくなった。

「おかしいな、と思って病院に行ったら、犬にも猫にも、どっちにもアレルギーをもっているって言われて」

「でも、薬で抑えられるから、ぜんぜん大丈夫です!(笑)」

パートナーとの関係は、もちろんスタッフ全員が知っている。

入り口にレインボーフラッグを掲げる、LGBTフレンドリーな動物病院なのだ。

そんな職場の理解もあり、パートナーとは、火曜の休診日のほかにもう1日、一緒に休みをとり、休日も一緒に過ごすことができている。

02なんだか女の子が気になる

小学生の頃は遊びに夢中

「子どもの頃は、ずっと外で遊んでいるような子でした」

「集合住宅に住んでいたので、同い年の子もたくさんいて」

「鬼ごっこをしたり、ゴム跳びをしたり・・・・・・、あと缶蹴りとか」

「今はゲームが好きで、家でもやったりするんですが、小学生の頃はあんまりしなくて、外で遊んでましたね」

4つ年上の姉がいるが、一緒に遊んだ記憶がない。

姉が中学校に上がった頃に、母の姉家族の養子となったのだ。

「実は、母が病気だったので、幼稚園に入る5歳くらいまで、姉と2人で、施設で育ったと聞いてます」

「でも、あんまり覚えてないんですよね」

「施設でも一緒にいたし、母が回復してからも、しばらくは4人で一緒に暮らしていたはずなのに(笑)」

父には “じゃじゃ馬娘” と呼ばれるほどのお転婆っぷり。

スカートよりも、パンツをはいて走り回っていることのほうが多かった。

とにかく、外でみんなと遊ぶのが好き。

小学生の頃は遊びに夢中で、恋愛に興味を持ったのは中学校に入ってからだった。

恋かどうかも分からない

「女友だちと、『あの子、かっこいいね』とか男子の話をしたりしてたし、ジャニーズで誰が好きだとか言ってたりしました」

「でも、なんだか女の子のことも気になって・・・・・・」

「中学1年と3年のときに、一緒のクラスだった女の子。誰にでも優しい感じの子で。自然とその子に目がいくんです」

「そのときは、恋かどうかも分からなかったけど、今思うと、その子のことが好きだったんじゃないかなと思います」

中学校のクラスでは、おとなしいタイプだった。

人見知りもあって、自分から積極的に話しかけることもなかった。

「友だちもいたけれど、公園でただただ話すだけだったり」

「中学のときは、じっと静かにしてる感じで」

「でも、悩みはなかったですね。むしろ、なんも考えてへん感じでした(笑)」

家族も仲が良かった。

姉が養子に出てから一人っ子になってしまったが、姉を含め、親戚みんなで出かけることも多かった。

「姉がいなくなって寂しいってことはなかったです。犬もいたし、自分の部屋ができたし(笑)」

「家族とも、なんでも話す感じだったし」

中学校時代は穏やかに過ぎた。

03みんなと同じく自分も彼氏と

年下の彼にナンパされ

小学生は遊びに夢中で、あっという間に時が過ぎ、中学生は部活もせず、静かに過ごしているうちに終わった。

そして高校生。

周囲につられるように、恋愛に対する興味が高まってきた。

「ある日、友だちと心斎橋の街を歩いていたら、途中でナンパされて」

「プリクラ撮ったり、カラオケ行ったりして、知り合った当初はグループで遊んでいたんですが、なんとなく彼と付き合うようになったんです」

周りの友だちにも彼氏ができ始め、そのうち自分も男の子と付き合うんだろうなと思っていた。

自然な流れだった。

「彼は年下だったんですが、バスケットボールをやっていて、背が高くて、かっこよかったですね」

買い物に行くのも、ただ話すだけでも、彼とのデートは楽しかった。

「でも、家がちょっと遠くて、あんまり頻繁に会えなかったんですよね。携帯もなかったから、連絡もそんなにはとらなかったし」

「休みの日は、彼もバスケットの試合とかで忙しかったし」

「だんだんお互いに興味が薄れてきてしまったのかな・・・・・・」

「1年半くらいで自然消滅してしまいました」

バンドメンバーと離れたくない

その後も、何人かと付き合ったが、やはり同時に、気になる女の子もいた。

隣のクラスの女の子。

あんまり話したことはないけれど、廊下などで見かけると、どうしても目で追ってしまう。

「でも、やっぱりまだ、それが恋だとは思いもしなくて」

「女の子が気になるけど、周りの友だちと同じように、自分は男の子と付き合っていたし」

「男の子と手を繋いだり、キスをしたりするのも嫌じゃなかった」

「でも、それはもしかしたら恋愛自体に興味があったし、友だちとの話の輪のなかに入っていけるから、周りと同じく “恋愛” をしていたのかも」

「今は、男性にはまったく興味ないですから(笑)」

それなりに恋愛も経験した高校時代。

当時、熱中したものといえば、軽音部で結成したバンドだった。

バンドメンバーは4人。全員女の子のガールズバンドだ。

「私はベースを担当してたんですが、メンバーみんな仲良くて」

「3年生のときは大学に行こうとも思ってたんですが、メンバーと離れたくない気持ちが強くて、そのうちの3人で、警備会社で働き出しました」

卒業してからは、工事現場のガードマンをする毎日。

18歳の女の子の仕事としては珍しかった。

「なんでガードマンだったんですかね? 気づいたらやってました」

「言い出しっぺは私じゃないのは確かです(笑)」

04ガードマンの仕事を寿退職

高校の同級生と結婚

軽音部のバンドメンバーと一緒に始めたガードマンの仕事。

日に焼けて、肌は真っ黒になるし、体力的にもキツイし、大変だったが、自分自身はこの仕事を気に入っていた。

「工事現場のおっちゃんたちが優しいんですよ。お菓子とかくれたりして(笑)」

「暑いし、寒いし、しんどかったけど、やりがいは感じていました。楽しかったし、辞めたいとは思わなかったですね」

「ただ、今になって、その時の日焼けのせいか、顔のシミがすごい気になってます(笑)」

思いの外、メンバーたちと現場で会うことは少なかったのは誤算だったが、みんなも辞めずに仕事を続けていた。

最初に辞めたのは自分だった。

21歳のとき、高校の同級生と結婚したのだ。

「街で偶然出会ったんですよ。久しぶりに」

「仲が良かったグループのひとりで、高校のときに実は私のことを好きやったって言われて・・・・・・。付き合うことになりました」

付き合ってから結婚するまではトントンと話が進んだ。

結婚が決まり、ガードマンの仕事は寿退職。

幸せな気持ちだった。

夫の浮気、そして離婚

「彼は会社員で、私はパートの仕事を始めて」

「結婚当初は、お互いにお金を貯めて、子どもをつくっていこうねって話してました」

「彼はゲームが大好きな人で。その影響で私もゲーム好きになってしまったんだと思います」

結婚生活は楽しかった。

子どもをつくるという夢もいつか叶うと信じていた。

「でも、5年くらいで離婚しました。向こうが浮気をしてしまったんです」

「浮気を許そうという気持ちはなかったですね。無理でした」

「私は、もう完全に冷めてしまっていたので別れるしかないと思っていたんですが、向こうが離婚を認めなくて、半年くらい話し合いを続けました」

「でも、どうしても私が無理で、離婚しました」

「5年間、夫婦でしたけど、未練はなかったです」

浮気されたのは、ショックだった。

「でも、それがなかったら、離婚しなかっただろうし、そしたら、自分がレズビアンだと知ることもなかったと思うから」

その後、実家に戻り、近くで事務の仕事を見つけて、働き始める。

05レズビアンのコミュニティを発見

自分は “そう” だ

離婚した頃、巷でSNSが流行り出した。

たくさんのコミュニティがあるなかに、同性愛者のコミュニティがあるのを知り、何か心惹かれるものがあった。

「それまでは、同性愛のコミュニティがあるなんて知りませんでした」

「SNSで同性愛を検索すると、コミュニティがズラッと並ぶのを見て、びっくりしました」

そもそも今まではパソコンにも、あまり触れずに暮らしてきたので、ネットの情報にも疎かった。

同性愛者のことは、テレビなどで知ってはいたが、自分と結びつけて考えることはなかった。

「“20代の同性愛者” というコミュニティを見つけて、すぐに自分に結びつきました。なぜかは分からないんです」

「自分は、“そう” だと思いました」

中高生のときは、女の子が気になっていながらも、まったく思いもよらなかった本当の自分の想い。

今になって、ようやく知ることができた。

男性と結婚して、子どもをつくろうとしていた当時からは想像もつかないことだったが、不思議と戸惑いはなかった。

レズビアンの友だちができた

「すぐにコミュニティに参加して、オフ会みたいなのにも行きました」

「初めてリアルにレズビアンの人に会ったときは、自分と似たような想いをもった人がたくさんいるって、感激しました」

「女性だけど女性が気になる、女性だけど好きな女優がいる、とか。共感できることもいっぱいで」

「同じ20代だし、話も合うし、友だちもたくさんできました」

女の子が気になるとか、あの子かわいいねとか、思ったままを素直に口に出せる友だち。

レズビアンの友だちといると、解放されたような気持ちになれた。

ふざけて、話しているだけで楽しかった。

そして、SNSでのやりとりが深まるなかで、恋愛に発展することもあった。

人生で初めての、女性との恋愛だった。

 

<<<後編 2019/06/03/Mon>>>
INDEX

06 女同士の恋愛に「しっくりきた」
07 女ともだちから恋人へ
08 両親に隠さず話せるという幸せ
09 ふたりの結婚記念日はいつ?
10 気を遣わず、自由に過ごすこと

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